続けられれば続けていきたいと思います!
0話 火拳の誕生
目を瞑れば、すぐにでも思い出せる。
仲間との出会い、冒険、戦い、盃を交わした兄弟との暮らし。
暇な時なんて無かった。
毎日が新鮮で、どんちゃん騒ぎ。バカみたいに競ったり、喧嘩もしたな。
そして、最も記憶に新しいのは海軍と白ひげ海賊団の全面戦争。
おれのヘマが、全てを招いちまった。
それでも親父たちは、こんなおれを助けようと命を掛けてくれる。
弟のルフィも随分と無茶をした。
まったく、兄の心配も知らずに後先考えないで行動しやがってよ。
だが、その弟に助け出されたのもまた事実。
泣き虫だったあいつが、強くなったもんだぜ。といっても、まだ危なっかしいのは変わりない。
だから、兄貴が守ってやるのは当然だろ?
例えこの身が滅んだとしても⋯⋯な。
おれは、大将赤犬の手で殺された。
内蔵が焼かれたんだ、まず助からねぇ。
それに、自分の命の終わりくらい自分で分かる。
なのに⋯⋯何で。
おれはまだ生きてるんだ?
それに⋯⋯。
ゆっくりと瞼を開けると、視界には美しい金髪が映る。端正な顔の女だ。静かに口ずさむ歌声が眠気を誘う。
暫く見つめていると、女はおれの視線に気づいた。
「あら、起きちゃった?」
こっちに近付いてくる。
そして、微笑みながら
「〜〜〜♪」
まず、おれの身長は185㎝とだけ伝えとく。
この女は巨人族か!と、最初は思ったさ。
けどな⋯⋯逆だ。この女がデカイんじゃなくて、おれが小さいんだよ。
「あぶぅ」
「よしよし、良い子ね〜エース」
言葉も話せねえ。
体も上手く動かねえ。
此れまでの状況を考えて、おれは一つの結論に至った訳だ。
非常に信じられないし、信じたくもないが⋯⋯。
おれ、赤ん坊になってるじゃねーか!?
▽▼▽
衝撃の事実から一週間。
赤ん坊の体になったせいで行動範囲が限られてるが、少しだけ状況が整理できた。
まず、ここはおれがいた世界とは違う世界らしい。自分で言っててバカらしくなるけどな。
その理由としては、単純に文明が違いすぎるからだ。
それなりに海を渡ってきたおれでも、聞いたことも見たこともないものばかり。
まあ、だからと言って別世界だと決めつけるのは早計かもしれん。だが、頭に入れておいても損はない筈だ。
はぁ、参ったな。
親父達がどうなったのか気になるが、まずは自分自身を何とかしねぇと⋯⋯。
「もう、エース。お昼寝の時間でしょ?」
んで、目の前の金髪の女の事だけどな。
どうやらおれの母親らしい。
生前のおれのお袋は、おれを産んでから死んじまったそうだ。だから、母親ってもんがどんなのか分からない⋯。
まあ、でも、こうして抱き寄せられるのは⋯⋯あんまり悪い気はしない。
こう、何というか。温かいっていうのか?
分からねえけど。
そうそう、後はおれの名前がエースのままだったんだよ。
ただの偶然でも、これはありがたいぜ。
新しい名前が付けられても違和感しかないし、困るだけだ。
そう言えば、父親の方はまだ見たことがないな。
生前のような奴じゃないことだけは期待したいぜ。
そんな事を思っていると、お袋はお馴染みの子守唄を歌ってきた。
ああ、くそ、また眠気が⋯⋯。
赤ん坊のせいか、何故かこの歌を聴くと落ち着く。
こ、これが母親の力か。
おれの意思とは関係無しに、瞼は勝手に閉ざされていく。
そしてそのまま、おれは深く眠りに着いた。
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