不死者の王と害虫の王   作:仮面の人

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6月18日に脱字修正


第1話

Dive Massively Multiplayer Online Role Playing Game通称DMMO-RPG仮想世界で現実のごとく遊べるゲームである。

 

西暦2126年に発売されたYGGDRASIL。このゲームは他のDMMORPGを超える広大なマップ、プレイヤーの自由度が人気を呼び、日本国内で最もプレイヤーを集めたDMMORPGである。2126年発売初日から12年の時が過ぎ、遂に終わりの日がやって来た。

 

 

 

此処はナザリック地下大墳墓、ギルド アインズ・ウール・ゴウンの本拠地。第九階層・円卓の間。此処に居るのは顎に行くにつれ細くなってる骸骨と紫色のスライムが器用に席についている。

 

「いやぁ〜本当にお久しぶりです、モモンガさん」

 

「いえ、此方こそお久しぶりですヘロヘロさん。正直来てくれるとは思いませんでした。2年ぶり位でしょうか?」

 

「そんなに時間が経ってましたか。最近残業ばかりで時間の感覚が変なんですよね」

 

「それ、かなり危ないんじゃ無いですか?」

 

「身体ですか?もう、ボロボロですよ」

 

「うわぁ」

 

「マジで、大変ですよ」

 

二人は、キャラクターを器用に動かしドン引きしているモモンガとくねくねと体を変形させるヘロヘロ。ヘロヘロの愚痴は止まらずモモンガが聞く側に回り話が続く。

 

「いやぁ〜済みません本当に、最後なのにくだらない愚痴に付き合ってもらちゃって」

 

「いえ、忙しい中私が此方に誘ったので、これぐらい何とも思いませんよ」

 

「ありがとうございます、でも………流石に睡魔には勝てないのでログアウトします」

 

「そうですよね。身体、お大事に」

 

「それにしても実際の所、ナザリックが無事だとは思いませんでしたね」

 

ヘロヘロの悪気の無い一言にモモンガの心が軋む。

 

「ナ、ナザリックはギルメンの皆さんで作り上げた我々の誇りですからね。ギルド長として維持するのは当たり前ですよ」

 

「本当、モモンガさんがギルド長で良かったです。モモンガさん、次会う時はユグドラシルIIとかですかね?それはそうと、長年お疲れ様でした。また何処かで」

 

モモンガは一瞬だけ、口ごもり返答がおくれる。

 

「お疲れ様でした」

 

ヘロヘロはログアウトし、残るのはモモンガだけ。モモンガは先程言おうとしていた言葉をこぼす。

 

「今日がサービス終了の日ですし、お疲れなのは理解出来ますが、せっかくですから最後まで残っていかれませんかーーーー」

 

当然返答はなし。

 

「また何処かで、ですか……いつ会えるか分からないのに?…………巫山戯るな!!!」

 

モモンガは激情に身任せ、level100のステータスを振るい、円卓を殴る。

 

「アインズ・ウール・ゴウンは!ナザリックは!ナザリック地下大墳墓は!皆んなで作り上げた物だろ!何で簡単に捨てられるんだ!」

 

そう、僕が所属するギルド アインズ・ウール・ゴウンはユグドラシルではその名を知らぬ者は居ないと言われる程の大きなギルドだった。参加条件は二つ、アバターが異形種である事と、社会人である事である。最大で41人のギルドメンバーが居たけど其の内37人が辞めてしまった。

 

モモンガがギルドに対する想いを叫んでる時、円卓の間の扉が開く。

 

「おや?モモンガさんだけですか?」

 

入って来たのは2メートル越えの巨体。全身が黒光りし、服は修行僧の様な物を着ている。

 

「ローチさん!来てくださったんですね!」

 

「ええ、私がログイン出来ない間、私達家族の家を守り続けたモモンガさんのお声でしたからね。ご無沙汰してました、大体半年ぶりですねギルド長」

 

「はい!お久しぶりですローチさん!」

 

「処で、此処に居るのはモモンガさんだけですか?」

 

「いえ、先程までヘロヘロさんが居ました」

 

「ヘロヘロさんが、入れ違いですか……寂しいですね」

 

「そうですよね………処で仕事は大丈夫ですか?確か職場で横領があったとか」

 

「一週間前に落ち着き始めてましてね。3日前に社長から直接こんな事を言われました。今回の件は、お前だけが活躍した。褒美として一週間の休みと部長に昇進だ、私としてはもう少し昇進させたかったが周りが五月蝿いからな、此れからも仕事に励む様にと」

 

「凄いじゃないですか!部長に昇進って!あれ?ローチさんだけなんですか?活躍したのって」

 

「ええ、他の人は横領した人からお金を少し貰って動かなかったそうです」

 

「うヘェ〜嫌な事実ですね」

 

「全く持ってそのとうりです」

 

二人はたわいもない話で盛り上がる。

 

「おや?モモンガさん、時間が迫って来てますよ?」

 

「あ!本当ですね。最後ぐらい玉座で終わりますか」

 

「でしたら、彼方の杖を持って行きましょう」

 

ローチはそう言い、杖のある方向を指差す。

 

「ですね、最後ぐらいみなさんも許してくれますよね」

 

「ええ、ナザリックを守り続けたモモンガさんなら誰も反論しませんよ」

 

モモンガはローチの言葉を聞き、杖を手に取る。杖は七匹の蛇が絡み合い、その口に色違いの宝玉を咥えてる。

 

「ギルド武器、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン。作るの大変でしたね」

 

「はい、中には奥さんと喧嘩してまで素材回収に来た人も居ましたね」

 

「いやいや!有給全部使って参加した人が言ってもインパクトないですよ!」

 

「あーー、実は有給取ったことが無くてですね、上司と同僚に流石に有給取れと言われた後突然先輩が有給申請出しといたぞ?と言われまして。それが丁度素材回収の日とかぶったんですよ、ですから有給全部使って参加してしまえと」

 

「ローチさんって真面目だけど何処か抜けてますね」

 

「会社でも言われますよ。それにしてもモモンガさんがその杖持つと完全に魔王ですね」

 

「それを言ったらローチさんは名前どうりですね」

 

そう、ローチさんの種族は一世紀前に流行った漫画に出てくるキャラクターがモチーフの種族。テラフォーマーと言う種族でぶっちゃけゴキブリである。しかもローチさんは最上位種の祈る者(インヴォーカー)だ。僕の種族は死者の大魔法使い(エルダーリッチ)の最上位種の死の支配者(オーバーロード)だ。ヘロヘロさんはスライムで最も最強に近い古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)である。

 

「名は体を表すと良く言うでしょう?」

 

「ローチさんの場合そのまんまですよね?それにしても、祈る者になれたのはユグドラシルの中でローチさんだけですか」

 

「まぁ、魔法も使えない、通常のスキルも使えない、常時発動型特殊技術(パッシブスキル)も通常のは余り使えない、装備は今着てるのだけ。武器は専用武器のみ使用可能だけど条件付き、アクセサリーはギリギリ装備可能。癖のあり過ぎる種族ですしね。それに、ゴキブリに成りたい物好きも早々居ませんよ」

 

「その代わり、筋力値と俊敏値、耐久値はユグドラシルのどの種族の中でも飛び抜けて高いじゃ無いですか。後、アレが使いたい放題でしたっけ?」

 

「はい、そのとうりです。まぁ、下手したらlevel50でlevel80後半の敵を素手でワンパン出来ますしね」

 

「下手したらとか言ってますけどそれ、ギルドのメンバーの前で実演した人が何言ってるんですか。たっちさんとか落ち込んでましたからね?」

 

「あれは驚きでした。たっちさんが俺、ワールドチャンピオンなのにゴキブリ負けた………あれ?ゴキブリが正義なのか?とか口走って他のメンバー全員で正気に戻しましたね」

 

「笑い話じゃ無いですからね!それより早く玉座に行きましょう」

 

「ですたら最後ぐらい支配者ロールプレイして見ましょうよ、モモンガさん」

 

「良いですね!」

 

「では」

 

「我が王の意のままに」

 

「付いて来い、我がギルド最強の害虫にして我が友、害虫の王よ」

 

二人は悪役ロールプレイで部屋を出る。

 

「あれは確か、戦闘メイドのプレアデス達であの執事は確かえーと?」

 

「セバスですよモモンガさん、ギルド長何ですから名前覚えてあげて下さい」

 

「ローチさん、もしかしてNPCの名前全て覚えてるんですか?」

 

「家族の名前を覚えるのは当たり前の事ですよ?」

 

「家族……そうですね。此処に居るNPC達全員家族ですよね!」

 

「はい、私達の大事な家族です」

 

「そうですね。だったら、つき従え、最後ぐらい家族で集まって終わるましょう」

 

メイド達と執事を連れて玉座に辿り着いた二人。

 

「いつ見ても此処の迫力には慣れませんね」

 

「僕は割と慣れましたけど」

 

「臆病者なんですよ、私」

 

「意外ですね。さて、待機。確か彼女はアルベドでしたね」

 

「合ってますよ、モモンガさん。彼女はナザリックの守護者達の総括者で、最上位のNPCですよ。ですが流石の私でも設定魔のダブラさんのキャラの設定は覚えて無いんですけどね」

 

「確認して見ます?この杖があれば見れますけど」

 

「お願いします」

 

モモンガは杖を使い、アルベドの設定をスクリーンとして表示させる。

 

「長いですねこれ」

 

「あははは、まぁダブラさんですし。あれ?最後の何だ?」

 

「どうしましたか?モモンガさん」

 

「アルベドの設定の最後にビッチであるって書いてあるました」

 

「流石にそれは予想外でした」

 

「うーん、最後だし少しだけ設定弄りますか」

 

「これは私も賛成ですね」

 

「でしたら、こんなのはどうでしょう?」

 

ローチは空中に浮いているコンソールを器用にタップし、文字を入力する。

 

「こんなのは如何ですか?モモンガさん」

 

「どれどれ?えっ⁉︎何ですか!この設定!」

 

アルベドの設定は、ビッチからモモンガを愛してるに変更されていた。

 

「別に良いじゃないですか、モモンガさんだってアルベドの様な美人に愛されるのは嫌じゃないですよね?」

 

「う!そ、それは……そうですけど」

 

「それより早くしないと強制ログアウトされますよ?最後ですからモモンガさんが締めて下さい」

 

「はい!では、私と同時にアレを」

 

「「アインズ・ウール・ゴウンに栄光あれ!!!」」

 

時刻は午前0時ジャスト、モモンガとローチはサーバーダウンによる強制ログアウトを受ける筈だった。

 

 


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