バカとテストとウチの弟   作:グラン

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対韋駄工業、ついに決着
勝つのはどっち?

そしてなんとここで一組のカップルが・・・
後書きにおまけ小説あり


第八十九問 恋心

  SIDE 美波

 

 

この試合もいよいよ最終回

九回の攻撃は二番の大村君からだ

新田君のストレートや他の変化球は打てているものの、ナックルは未だに誰も打てていない

 

 

「しっかし点が入らねえ試合だな」

 

「こっちは海人が頑張ってるからね」

 

「でも、向こうの投手は厄介ね。ランナーを出してもここ一番でナックルを投げて0点に抑えているんだもの」

 

「お兄ちゃん頑張れ!」

 

 

野球はどちらかが点を取らないと決着が着かない

今日はかなり暑いし、このままだと海人の体力が心配ね

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

 

ん?なにやら凄い勢いで階段を上がってくる足音が・・・

 

 

「あれ?小山さん?今日は来れないはずじゃなかったの?」

 

「試合が早く終わったから見に来たのよ」

 

「なるほどね~愛しの中島君の勇姿を見たくて走って来たと」

 

「べべ、別に英雄の事なんて・・・ほら、体育館とこの球場って近いし・・・」

 

からかうように愛子が言うと小山さんは顔を真っ赤にして否定する

っていうか体育館と球場ってかなりの距離があったはずなんだけど・・・

 

 

「そ、それより!試合はどうなってるの!」

 

「えっとね、今九回の表で・・・あ、ちょうど今から中島君の打順だね」

 

「そ、そう。あれ?まだ無得点?」

 

「うん。向こうのピッチャーが凄いんだよ。ナックルってボールを投げるんだって」

 

「ああ、ありゃいくら中島でも打てねえかもな。ほら、ちょっと苦しそうな表情してるしよ」

 

 

それを聞いた小山さんは急にフェンスに向かって走り出し・・・

 

 

「英雄!!」

 

 

大声で叫んだ

 

 

「なに腑抜けた顔してんのよ!シャキッとしなさい!やる前から諦めて様な顔してんじゃないわよ!アンタみたいなバカが考えたって打てるわけないでしょ!からっぽの脳みそなんて使ってないで死ぬ気でくらいついていきなさいよ!」

 

 

それを聞いた中島君は・・・何かが吹っ切れたような表情に変わった

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 英雄

 

 

どうする・・・どうすればあの球を打てるんや・・・

いっそナックルは捨ててストレート狙いか?

 

 

「英雄!!」

 

 

この声は・・・

 

 

「なに腑抜けた顔してんのよ!シャキッとしなさい!やる前から諦めて様な顔してんじゃないわよ!アンタみたいなバカが考えたって打てるわけないでしょ!からっぽの脳みそなんて使ってないで死ぬ気でくらいついていきなさいよ!」

 

 

友香・・・

 

 

「相変わらず手厳しいな・・・」

 

 

そう呟きながらフッと笑う

いつだってそうや・・・

友香は俺の背中を押してくれる

俺が野球を続けられる場所を探してこの文月学園を紹介してくれた

アイツのおかげで俺は今ここにおる

この恩を返すために俺にできることはただ一つ

このバットでチームを勝利に導くことだけや!!

そして・・・俺はこの試合が終わったら友香に・・・

 

 

(新田、内角に直球だ。外れても構わん)

 

(はい)

 

 

『ストライーク!』

 

『ファール!』

 

 

追い込まれてしもうたか・・・

せやけどかえってわかりやすい

コイツはナックルに絶対の自信を持っとる

九回ツーアウトツーストライク・・・

ここで投げる球は当然・・・

 

 

(これで・・・終わりだ!)

 

 

「ナックルや!」

 

 

俺はバットを思いっきり振った

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 海人

 

 

「追い込まれたね」

 

「ああ、次は間違いなくナックルだ」

 

「でも、裏をかいて外してくるんじゃない?」

 

「いや、それはない。あいつはナックルに自信を持っているし、正直言ってナックル以外は大したことない平凡な球だ」

 

「多分新田君はナックルをまともに打ち返されたことがないんだよ。だからわかってても打てないと思って自信を持って投げてくる」

 

「それ、打てるの?」

 

「・・・ここが勝負所だ。ここで英雄が打てれば勝算はある」

 

 

そして新田君は振りかぶって・・・投げた!

やっぱりナックルだ!!

 

 

(キンっ!!)

 

 

「打った!!」

 

「ジャストミートだ!!」

 

「いや、マズイ!あそこは・・・」

 

「多岐君の守備範囲・・・」

 

 

左中間に飛んだ球に向かって多岐君が走り込んでいる

そして打球に向かって飛びついた

結果は・・・

 

 

「抜けた!!」

 

 

多岐君のダイビングキャッチは一歩届かず結果は二塁打

 

 

「どうやらナックルを過信していたのは新田だけじゃないようだな。多岐も打たれると思ってなかったんだろう。スタートが遅れていた」

 

「でも点に結びつかなかったわよ?」

 

「おいおい、まだこっちの攻撃が終わったわけじゃないだろ?」

 

「そういうことだ。まぁ見ていろ」

 

 

(打たれた・・・俺のナックルが打たれた・・・)

 

(落ち着け新田。今のはまぐれだ。偶然だ)

 

 

「アイツは実戦経験が少ない。そして一番の決め球を打たれた今、アイツの精神状態はメチャクチャだ。そしてナックルの弱点をここで突かせてもらう」

 

 

新田君が投球モーションに入ろうとしたその時

 

 

「走った!!」

 

「なっ!?速すぎる!?まだ投球モーションに入ってな・・・」

 

「いや、あれでいい」

 

 

新田君は三塁に・・・投げられず、ボールを落としてしまう

結果、英雄君は楽々セーフ

 

 

「危ないなぁ・・・」

 

「そうでもない。気付かなかったか?アイツ、グローブの構え方が悪すぎて握りが後ろから丸見えなんだよ。ナックルみたいな特殊な握り方していたら牽制なんて出来やしない」

 

 

たしかに、変化球の握りをした後に走られるのって嫌だよね

 

 

「そしてこんだけ決め球の隙を突かれたんだ。この状況で・・・」

 

(なっ、甘い!?)

 

「まともなピッチングができる奴はそうそういない」

 

 

常村先輩の打った打球はレフト前ヒットとなり、一点先制

次の田中先輩は凡打に倒れ、スリーアウトチェンジ

あとは僕がこの回を抑えれば僕達の勝ちだ!頑張るぞ

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 多岐

 

 

最終回、ツーアウト

 

 

『一番センター多岐君』

 

 

あと一人アウトになったら終わりの状況で俺の打順

状況はかなり悪い

この回俺が出塁できても俺の次の打者の岸川はバントの達人だが、自身の出塁率はかなり低い

代打に島田の球を初見で打てる奴がいるかと言えばいない

ここは小技に頼れない

普通に打つしかないな

 

 

『ストライーク!』

 

 

今のはカットボールか

次は緩急つけてくるはずだ

 

 

『ファール!』

 

 

くっ!読み通りスローカーブだったのに予想より球速差があって打ち損じてしまった

次は何だ!?カットボールか?それともスプリット?

島田は振りかぶって・・・投げた!

 

 

「んな!?」

 

『ストライーク!バッターアウト!ゲームセット!』

 

 

どっちでもない・・・直球だと・・・?

まさか変化球投手なのに直球を決め球にするとは・・・

完全に読みを外された。完敗だな

 

 

「「「「「「「ありがとうございました」」」」」」」

 

 

こうして俺の高校最後の夏は終わった

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 明久

 

 

「やったやった!!アキ!海人がやったわよ!」

 

「お兄ちゃんが勝ったですっ♪」

 

 

美波と葉月ちゃんが嬉しそうにはしゃいでいる

 

 

「ふ、ふん。英雄もなかなかやるじゃない」

 

 

そっぽ向きながらそういう小山さん

でもその表情は・・・

 

 

(嬉しそうね)

 

(嬉しそうだね)

 

(お姉さん、嬉しそうです)

 

(葉月ちゃん、あれはツンデレって言うんだよ)

 

「聞こえてるわよ!そこの四人!」

 

 

小山さんはそう言いながらこっちを睨む

 

 

「友香!!」

 

 

グラウンドの方から声が聞こえる

アレは中島君?

 

 

「どうしたのかな?」

 

「勝利の喜びを一番に友香に伝えたいんじゃない?ほら友香、行ってあげなよ」

 

「しょ、しょうがないわね」

 

 

そう言う小山さんの表情はやっぱり嬉しそうだった

 

 

「友香、勝ったで!」

 

「見てたんだから知ってるわよ。本当にバカね」

 

 

笑顔でそう言う中島君にそっけなく返す小山さん

 

 

「友香、俺なお前に言いたいことがあんねん」

 

「なによ。こんなところで。もったいぶってないでさっさと言いなさいよ」

 

「ああ、わかった。友香!!俺は!!お前の事が!!好きやぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「んな!?」

 

 

中島君の突然かつ衝撃の告白に小山さんは顔を真っ赤にする

 

 

「小学校の頃からずっと好きやった!!この想いは今でも変わってへん!!大好きや!友香ぁぁぁぁ!!」

 

「ちょ、ちょっとやめなさいよ!こんなところで・・・」

 

 

ちなみに周りには人がたくさん・・・っていうか試合終了直後なのでウチの学園の生徒はほとんど残っている

これを聞いているウチの女子生徒は興味津々のまなざしで二人のやり取りを眺めている

 

 

「お前の笑った顔が好きや!怒った顔も好きや!クールな感じやけど本当は優しい所も好きや!今ここから見える白いパンツも好きや!」

 

 

・・・最後のは関係ないんじゃ・・・

 

 

「お前の全てが大好きy・・・『やめろって言ってんでしょうが!』・・・フゴッ!」

 

 

小山さんはどこから取り出したのか、バレーボールをアタックして中島君の顔面にぶつけた

さすがバレー部のホープ

 

 

「な、なにすんねん・・・って危なっ!」

 

「ううううううっさい!!英雄のバカバカバカ!!」

 

 

『グラウンドに物を投げ入れないでください』

 

 

小山さんは自分の持ち物(体育館シューズや水筒など)を中島君に向かって投げつけ、アナウンスで注意をされる

 

数分後、二人は鉄人と共に球場関係者に謝りに行き、荒れたグラウンドはFFF団協力の元キッチリと整備された

 




  ☆おまけ・後日の女子会☆


優子「へー結局、中島君と付き合うことにしたんだ」

友香「ま、まぁ英雄なんてアタシが付き合ってあげなきゃ誰とも付き合えないだろうし、しょうがなくよ」

美波「素直じゃないわね」

翔子「・・・羨ましい、私も雄二にあんな風に言われたい」

瑞希(わたしもいつか北条君と・・・)

友香「わ、私のことはいいじゃない!それより、優子こそどうなのよ」

優子「アタシ?アタシはそんな人いないわよ。アタシなんか好きになる物好きがいるとも思えな・・・?なによ?その可哀想なものを見るような目は?」

((この子、本気で言ってるの?))

(海人君、苦労しそうですね)

(海人、お姉ちゃんは応援してるわよ)

愛子「みんな、おまたせ」

美波「遅かったわね」

愛子「えへへ、面白い物が手に入ったんだよ」

優子「何これ。ボイスレコーダー?」

友香「何が入ってるの?」

愛子「じゃ、再生するよ」(ニヤリ)

『英雄、アンタの気持ち、恥ずかしかったけどすごく嬉しかったわ』

友香「ぶっ!?」

優子「これって友香の声・・・」

友香「一体どこでこんな物!ちょ、離しなさ・・・むぐむぐ」

優子「まぁまぁ」(ニヤニヤ)

美波「ちょっと静かにしててね」(ニヤニヤ)

『バカだけど野球している時は本当に楽しそうで、みんなが英雄から離れて行った時も傍にいたのも、根本に脅されて素直に言うこと聞いていたのも、ただアタシがそうしたかったから。だって・・・』

友香「んー!!んー!!」(ジタバタ)

『アタシも・・・英雄の事大好きだから!』

美波「ほほう」(ニヤニヤ)

優子「そっけない事言っておいて・・・」(ニヤニヤ)

友香「・・・いっそ殺して・・・」


第一回暴露大会

出演者(被害者)小山友香


次の被害者は誰だ?ww


次回も頑張ります

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