バカとテストとウチの弟   作:グラン

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タイトルでどんな内容かわかってしまうという・・・
今回、野球描写はほぼありません


第八十五問 死球

  SIDE 優子

 

 

いよいよ試合開始

ウチは後攻なのでみんなが守備についた

 

 

「きゃー!」

 

「海人くーん!」

 

「かわいー!」

 

「こっち向いて!!」

 

 

海人君は凄い人気ね

それに向かって海人君は手を振っている

・・・なんだろう?

なぜかすっごくイライラするわ・・・

これで調子に乗って打たれでもしてみなさい

ただじゃおかないんだから!

 

 

『アウト!』

 

 

ワンアウト・・・

 

 

『アウト!』

 

 

ツーアウト・・・

 

 

『アウト!チェンジ!』

 

 

・・・あっさりとスリーアウトチェンジ・・・

この苛立ちはどこにぶつければいいのかしら?

 

 

「海人、調子良さそうやな」

 

「えへへ」

 

 

少し照れたような笑みを浮かべて海人君はベンチに座った

 

 

「相変わらず凄い人気ね」

 

「そうなのかな?よくわからないや」

 

「そう、まぁ別にどうでもいいけど」

 

 

なんか嫌味みたいな言い方になっちゃった

・・・何言ってんだろアタシ

別に海人君が悪いわけじゃないのに・・・

でも、なぜか女の子に手を振っている海人君を見たらイライラした

あぁもう!なんなのよ!この苛立ちは!

 

 

(優子さん機嫌悪い?なんで?)

 

 

はぁ・・・変な態度とっちゃったな・・・

後で謝らなくちゃ・・・

試合は順調に進んでいった

 

 

一番野村君→内野安打

二番大村君→送りバント、1アウト二塁

三番夏川先輩→レフト前ヒット、一点先制

四番中島君→ツーランホームラン、二点追加

五番常村先輩→ツーベースヒット

六番北条君→ライト前ヒット

七番田中部長→セカンドゴロ、2アウト

八番宮本君→三振、スリーアウトチェンジ

 

 

と、こんな感じだ

まだ一回なのに3対0

これは勝ったわね

 

 

「さ、守備だ。油断せずに行こう」

 

「う、うん」

 

 

海人君は少しそわそわしながらこっちをチラチラ見ている

・・・やばっ、さっきの事気にしているのかしら?

投球に影響が出なければいいけど・・・

 

 

『アウト!』

 

 

ワンアウト・・・

 

 

『アウト!』

 

 

ツーアウト・・・

 

 

『アウト!チェンジ!』

 

 

あっさりとスリーアウト

なんかデジャブ・・・

っと、それより投球に支障が出る前に謝らなくちゃ

 

 

「あ、あの、海t・・・」

 

「海人、次の打席海人の番やで」

 

「あ、うん」

 

 

謝りそびれちゃった・・・

そっか、さっき八番で終わったから次は九番の海人君の番だ

仕方ない、後で謝ろう

 

 

「・・・」

 

「?智也、どうしたんや?そんなに難しい顔して・・・」

 

「向こうの計6人の攻撃、明らかに全員ピッチャー返し狙いだった。これは偶然か?」

 

 

あ、それ、アタシも思った

やけに海人君の打球処理が多いなぁって

 

 

「たまたまだろ?打撃の基本はピッチャー返しって言うしよ」

 

「それは・・・そうですが・・・」

 

 

北条君は何やら嫌な予感を感じているようだ

でも・・・アタシも何か・・・胸騒ぎが・・・

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 明久

 

 

「見て見てアキ!海人がやったわよ!」

 

「見てるって、ちょっと落ち着きなよ美波」

 

 

美波は両手をパタパタ振りながらはしゃいでいる

よっぽど海人の活躍が嬉しいのだろう

 

 

「ま、海人も調子がいいみたいだし、この勝負はもらったな」

 

「・・・楽勝」

 

 

雄二と霧島さんも試合を見つつそう呟いている

・・・ん?

 

 

「美波、靴ひもほどけてるよ」

 

「え、あ、ホンt・・・あれ?切れてる」

 

 

どうやら靴ひもが切れたようだ

・・・不吉だなぁ・・・

 

 

(ゴッ!!)

 

 

「お、海人も打っ・・・」

 

 

音を聞いてグラウンドを見る

てっきり海人が打ったんだと思ったが・・・現実は違った

打席で・・・海人は倒れていた

 

 

「お、お兄様!?」

 

「ちょ、ちょっと、今、投球が頭に当たったわよ!?」

 

「や、野球のボールって石みたいに固いんでしょ?」

 

「海人君大丈夫かな?」

 

 

ぶつけた投手の人は・・・ニヤニヤと笑っている

あいつ・・・まさかわざと・・・

・・・ハッ!!

 

 

「キ・・・キ・・・キサマァァァァァァ!!!」

 

「み、美波ちゃん!落ち着いてください!」

 

「※◆〇Ⅷ☆Д×¥△Ⅲ―――!!!」

 

 

もはや人の言葉ですらない声を上げながら美波は金網にへばりつく

そしてよじ登って行こうとするのを僕達は必死に止める

 

 

『島田君に変わりまして、代走、曽我君』

 

 

そして海人は担架で運び出され、代走の子が出てきて試合再開

 

 

「再開してんじゃねえぞオラッ!!反則だろうが!!さっさとこの世から退場しろやゴルァ!!」

 

 

ブチキレた美波は普段とはまるで違う口調で相手投手に遠回しに死ねと叫ぶ

このままじゃマズイ

美波はいつ乱入してもおかしくない位ヒートアップしてる

ここは・・・

 

 

「み、美波!あんな奴ら放っておいて、それより海人の所に行こうよ」

 

「そ、そうですよ!海人君の事が心配です!」

 

 

僕と姫路さんがそう言うと美波はピタリと動きを止める

ふぅ、これでなんt・・・あ、あれ?

 

 

「き、消えました!?」

 

「そ、そんな!?たった今、美波の身体を掴んでいたはずなのに!?」

 

「かいとぉぉぉぉぉ!!お姉ちゃんが今行くからねぇぇぇぇぇ!!」

 

 

振り向くと美波は叫びながら出入り口に向かって走っていた

この一瞬であの位置に!?

 

 

「っと、雄二、僕も行ってくるから鉄人に伝えておいて!」

 

「わかった」

 

 

僕は雄二にそう告げて美波の後を追った

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 優子

 

 

「う・・・そ・・・か、海人君!!」

 

 

アタシは慌てて倒れた海人君に駆け寄る

 

 

「テメェ・・・わざと当てやがったな!!」

 

「おいおい、言いがかりはやめてくれよ。手が滑ったんだよ。悪い悪い。ごめんなちゃーい」

 

「ぎゃははは」

 

 

向こうの投手の人がそう言うと周りの連中もケラケラと笑っている

なんて奴らなの!?

頭なんて・・・下手すれば死ぬかもしれないっていうのに・・・

 

 

「この・・・」

 

「やめろ英雄!曽我、代走だ。藤本、次の回から行くぞ。投球準備をしておけ」

 

 

北条君はそう言うとベンチに戻っていき、海人君は担架で運ばれていく

 

 

「おい智也!どういうつもりや!」

 

「どうもくそもない。手を出せばあいつらと同じだ。俺達は野球選手だ。ケリは野球で付ける」

 

 

一見、冷静に見えるが、北条君の握られた拳は怒りで震えていた

それより・・・海人君大丈夫かな?

 

 

「木下」

 

 

けっこうなスピードで当たったわよね

 

 

「木下」

 

 

まさか死んじゃったり・・・

 

 

「木下」

 

「え、な、なに!?」

 

「ペンが逆だ」

 

 

ダメだ・・・海人君のことが気になって全然集中できない

 

 

「木下、悪いんだが、救急車を呼んで海人を文月総合病院に連れて行ってくれないか。そこで念の為、精密検査をしてもらってくれ」

 

「あ、うん。いいけどスコアブックは・・・」

 

「この試合は書かなくていいぞ。あいつらとの試合記録など残す価値もない」

 

「わ、わかったわ」

 

 

普段の冷静沈着の北条君からは想像もできないような殺意に満ちた声

アタシはこの場にいるのが怖くなり、救急車を呼びながら海人君のいる医務室へと向かった

 

 

  ※数分後※

 

 

病院に到着

レントゲンなどで精密検査をしてもらい、アタシはドアの外で検査の終了を待っている

 

 

「優子!」

 

「美波!吉井君!」

 

「木下さん、海人は?」

 

「今検査をしてもらっているところよ」

 

 

ここまで走って来たのか、二人は息を切らしている

 

 

「お待たせしました」

 

「先生、海人君は?」

 

「心配いりませんよ。異常なし、気を失っているだけです。もうじき目を覚ますでしょう」

 

「そっか、よかった・・・」

 

 

アタシ達は先生に連れられて海人君のいる病室に入る

海人君はまだ目を覚ましておらず眠っていた

 

 

「海人君・・・」

 

 

アタシは眠っている海人君の手を握った

 

 

「!!」

 

 

海人君の手は綺麗・・・とは言えなかった

何度も豆ができて潰れて固くなった手

一体どれだけ練習すればこうなるんだろう?

なのに・・・たった十数球で降板なんてあんまりじゃない・・・

 

 

「ゆ・・こさ・・・」

 

「海人君!?気がついたのね!」

 

「海人!よかった、心配したんだから」

 

「えっと・・・僕・・・」

 

「覚えてない?デッドボールを受けて気絶してたのよ」

 

「デッド・・・!!試合!試合は!?」

 

「落ち着いて。えっとテレビのリモコンは・・・」

 

「あ、こっちにあるよ」

 

 

そう言って吉井君はテレビの電源を入れた

 

 

『グングン伸びる・・・入ったぁぁぁ!!ホームラン!』

 

 

ちょうどホームランが出たところだ

まさか相手チームじゃないでしょうね!

 

 

『文月学園四番中島、これで五打席連続ホームランです』

 

「「「「はっ?」」」」

 

 

五打席連続?

ってことは最低五点は追加

初回に三点取ってるから、少なく見積もってもこっちの点は八点

 

 

『えー文月学園、今の満塁ホームランで四点追加、現在2回裏41対0です。未だ文月学園の怒りの攻撃が終わりません』

 

「「「「41点!?」」」」

 

 

予想を遥かに上回る点差だ

っていうかまだ二回裏!?

 

 

「ね、ねえ、これってコールドゲームにはならないの?」

 

「コールドは5回以降で10点差、7回以降で7点差だから、少なくとも5回の相手チームの攻撃が終わらないとコールドゲームは成立しないよ」

 

「うわ・・・相手に同情してしまう・・・(カキンッ)あ、常村先輩もホームランだ」

 

「ふん、海人をこんな目に合わせたんだから当然の報いよ!(キンッ)北条も打ったわね」

 

 

結局、99対0という大差でウチの学校は勝利を収めることとなった

桜場火の選手は全員、疲れ果てて死んだ魚のような目をしていたという

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ※おまけ※

 

 

北条「ちっ、100点差はつけられなかったか」

 

常村「こんなもんじゃ怒りは収まらねえんだがな」

 

夏川「ああ、次会ったらただじゃおかねえ」

 

中島「海人・・・仇はとったで・・・」

 

野村「英雄先輩!海人先輩はまだ生きてるッス!遠い目をして空を見上げないでくださいッス!!」

 

田中「やめんか!縁起でもない!」

 

 

 

桜場火工業は彼らの触れてはならない逆鱗に触れてしまったのだ




文月ナインの怒り爆発!!
無理矢理な展開ですいません

次回も頑張ります

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