バカとテストとウチの弟   作:グラン

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これにて玲編は終了
はたして二人は仲直りできるのか?


第八十問 姉想い、弟想い

  SIDE 海人

 

 

「それで?このタイミングで来るってことはあの人絡みでしょ?」

 

 

アキ兄さんは真剣な目でそう言う

どうやら要件はわかっているようだ

 

 

「率直に言うよ。玲さんと仲直りして欲しいんだ」

 

「・・・あの人に何を言われたの?」

 

「ち、違うよ!これは僕達の意志で・・・」

 

「アキ、アンタがウチの事を想ってくれているその気持ちは凄く嬉しいわ。でも玲さんの気持ちもわかってあげて欲しいの」

 

 

姉さんがそう言うがアキ兄さんは何も言わない

周りのみんなも黙り込んでしまった

 

 

「アキ兄さん。玲さんは今日、また海外に戻るって言っていたよ」

 

「・・・え?」

 

「仕事が忙しくなって、もう日本には戻らないかもしれないって・・・だからせめて最後にもう一度アキ兄さんの顔を見たくて日本に来たって・・・このままで本当にいいの?仲違いしたまま二度と会えないかもしれないんだよ?それで本当に後悔しない?」

 

「・・・」

 

 

僕がそう言うとアキ兄さんは再び黙り込む

と、その時

 

 

(ピッ)

 

 

『・・・では、警戒態勢が続いています』

 

 

テレビがの電源が点いた

 

 

「む、すまぬ。リモコンを踏んだようじゃ」

 

(このバカ!この大事な時に!)

 

(す、済まぬのじゃ!)

 

 

優子さんと秀吉君がボソボソ話し、テレビの電源を切ろうとし・・・

 

 

「待って!!」

 

 

姉さんが秀吉くんを止める

 

 

「姉さんどうしたの?」

 

「文月空港占領テロ・・・ここって玲さんがいるはずじゃ・・・」

 

 

まだ飛行機の出発時間にはなっていない

でも、もし昼食をとるために早めに着いていたら空港に居てもおかしくわない

 

 

「アキ兄さん!これ・・・」

 

 

そう言って振り返るがそこにはもうアキ兄さんの姿はなかった

 

 

「アキ、まさか空港に?」

 

「僕も行ってくるよ」

 

「待ちなさい!ウチも行くわよ!」

 

 

僕達も慌てて立ち上がり、空港へと向かった(美波の持つ合鍵で施錠)

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 玲

 

 

私は、早めにホテルをチェックアウトし、アキ君との思い出の場所を目に焼き付けながら空港に到着

だが・・・さすがに早く着きすぎた

せっかくなので昼食は和食にしようと空港内にある食堂で食事を済ませた

すると・・・

 

 

「?何やら向こうが騒々しいですね?」

 

 

何やら人混みができているのでそちらに移動し、覗き込む

すると小学生位の男の子に刃物を突き付けている男とそれを取り囲む警官の姿があった

 

 

「近づくんじゃねえ!このガキをぶっ殺すぞ!」

 

 

かなり熱くなっている男は刃物を振り回しながらそう叫ぶ

どうやら人質がいるせいで逮捕に踏み込めないようだ

 

 

「貴方も早く避難してください」

 

 

周りの市民を避難誘導している警察官に声を掛けられ、その場を離れようとしたその時

 

 

「うええええん、おねえちゃぁぁん」

 

「あきひさ!」

 

「え!?」

 

 

捕まっている男の子と男の子の姉と思われる女の子が目に写った

そしてその女の子の言葉にとっさに反応する

今・・・たしかに『あきひさ』って・・・

 

 

「あの子・・・あきひさって言うんですか?」

 

 

私の質問に泣きながら頷く女の子

・・・これも何かの縁ですね

 

 

「大丈夫。あなたの弟は私が助けます。その代わり一つ約束してください。弟さんの事を大切にしてください。約束できますか?」

 

「できます!約束します!だから弟を・・・あきひさを助けてください!!」

 

 

私はその子の頭を撫でて前に出る

そして・・・

 

 

「その子を離してください!私が代わりに人質になります」

 

「君!何をバカなことを・・・」

 

 

近くにいた警官がそう言うが気にせず、私はまっすぐに犯人を見る

犯人は私の身体をイヤらしい目で舐めまわすように見て・・・

 

 

「いいだろう。おいそこの警官。その女に後ろ手で手錠を掛けろ」

 

 

暴れることを警戒してかそんな要求をしてきた

警官は困ったような表情をみせる

 

 

「やってください」

 

 

私がそう言うと渋々警官は手錠を掛けた

 

 

「よし、それじゃあこっちに来い。他の奴は変な動きを見せるんじゃねえぞ」

 

 

そう言われ、私はゆっくりと犯人に近づき・・・

 

 

「その子を離してください」

 

「ふん、ほらよ!」

 

 

犯人は男の子を突き飛ばすように離し、代わりに私の腕を掴んだ

 

 

「お姉ちゃん!!」

 

「あきひさ!よかった!」

 

 

泣いている男の子を抱きしめる女の子

二人はそのまま警官に保護された

助かってよかったですね

そう安堵の笑みを浮かべていると

 

 

「人の心配してる場合か?」

 

 

そう言って男は私の頬に刃物を突きつける

 

 

「オラてめえら!道を開けやがれ!さもないとこの女をぶっ殺すぞ!」

 

 

刃物を振り回しながら男はそう叫ぶ

さすがに両手が塞がっていては抵抗できませんね・・・

 

 

「お前の身体を堪能するのはここを離れてからだ。たっぷり可愛がってやるぜ」

 

 

私の胸を揉みながらイヤらしい目でそう言う

もう・・・おしまいですね

こいつが人質である私を手放すはずがない

きっとさんざん弄ばれて最後には殺されるだろう

でも・・・別人とはいえアキ君を救うことができてよかった

アキ君・・・どうかお幸せに・・・

そう願ったその時だった

私と犯人を取り囲む警官の隙間から一つの影が飛び出してきた

 

 

「汚い手で・・・姉さんに触れるんじゃねえ!!」

 

「ふごっ!」

 

 

いきなりのことに反応できず吹っ飛ぶ犯人

そして私が視線を上げるとそこには・・・

 

 

「アキ君・・・?」

 

「姉さん!大丈夫!?ああ、ほっぺたから血が・・・えっとハンカチは・・・」

 

 

どうやら犯人の持っていた刃物で頬を切ってしまったようだ

でも、そんなことはどうでもいい

アキ君が目の前にいて私の事を『姉さん』と呼んでくれている

それだけで嬉しくて涙が止まらなかった

 

 

「!!」

 

 

ハンカチを取り出し、私の頬にそれを当てるアキ君

・・・の、後ろに犯人が刃物を持って血走った目でこっちを睨んでいる

 

 

「ふざけやがって・・・ぶっ殺してやる!!」

 

「アキ君!危ない!」

 

 

私はとっさにアキ君を突き飛ばし犯人とアキ君の間に割り込んだ

そして・・・脇腹に激しい痛みを感じた

視線を向けるとそこには犯人の持っていた刃物が刺さっていた

 

 

「キサマアアアアアアアaaaaaaa!!!!」

 

 

アキ君は大声で叫びながら犯人を再び殴り飛ばし私を抱きかかえた

 

 

「姉さん!しっかりして!姉さん!!」

 

「アキ君・・・嬉しい・・・です・・・私の事を・・・姉さんと呼んでくれるのですね・・・」

 

「そんなのいくらでも呼ぶよ!」

 

「ふふ・・・アキ君は優しいですね・・・あんなに酷い事をした私に・・・」

 

「もういいから!今は喋っちゃダメだ!!」

 

「姉さんは・・・幸せ者です・・・大好きなアキ君の胸の中で死ねるなんて・・・」

 

「バカな事言わないで!!きっと助かるから!!」

 

「手錠のせいでアキ君を抱きしめることができないのが唯一の心残り・・・」

 

「もういいから喋らないで!!」

 

 

私を抱きかかえたまま涙を流すアキ君

最期に見るアキ君の顔が笑顔じゃないのは少し残念です・・ね・・

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 美波

 

 

救急車で運ばれた玲さんを追ってウチ達もタクシーで病院へ

 

 

「アキ!玲さんは!?」

 

「何とか一命は取り留めたって。しばらくは入院しないといけないらしいけどね」

 

「そっか・・・」

 

「でも無事で何よりだよ」

 

「みんな、心配かけてごめんね」

 

「明久が謝る事ではなかろう」

 

「そんなこと気にしなくていいから、お姉さんの傍にいてあげなさいよ」

 

「うん」

 

「それじゃ、玲さんの無事も確認できたことだし、ウチ達は帰るわね」

 

 

そう言ってウチ達は病院を後にした

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 明久

 

 

美波達を見送った後、僕は姉さんの病室へと戻る・・・のだが、正直言ってかなり気まずい

さんざん冷たい態度を取ってきて、今更どんな顔をして会えばいいんだろう?

ま、まぁ、まだ目を覚ましてないはずだし、とりあえず病室に入ってから考えよう

そう思い僕は病室のドアを開けた

 

 

「!!」

 

 

起きてるぅぅぅぅ!!

おもいっきり目が合ったし・・・ど、どうする・・・

 

 

(どうしましょう?あんな最期の言葉みたいなことを言っておいてどんな顔をすればいいのか・・・)

 

((気まずい))

 

 

「え、えっと・・・もう起きても大丈夫なの?」

 

「はい、奇跡的に内臓は傷ついてなかったようですし、傷口が塞がり次第退院できるそうですよ」

 

「そっか」

 

 

「「・・・」」

 

 

無言

 

 

「そ、そういえばあの犯人、逮捕されたみたいだよ」

 

「そ、そうですか。それはよかったです」

 

 

余談だがあの後犯人は逮捕された

なんでも強盗殺人で指名手配されていて海外に逃げようとしたところを巡回していた警官に見つかり、人質を捕って立てこもったらしい

 

 

「「・・・」」

 

 

はい話終わったぁぁ!!

再び無言

はぁ・・・今更意地を張っても仕方ないし、冷たい態度を取ったことを謝って早く仲直りしよう

 

 

「姉さん、今まで冷たく当たってごめん」

 

「いいんですよ。全部姉さんが悪かったんです。私はアキ君が色恋沙汰に現を抜かして勉強が疎かになるんじゃないかと思っていました。しかしアキ君は美波さんの彼氏として恥ずかしくないよう勉強を頑張り、生活態度もきちんと改善していましたね。・・・むしろアキ君の幸せの妨げになっていたのは姉さんの方でした。私は本当に愚かでした」

 

「姉さん・・・」

 

「アキ君、美波さんと二人で幸せになってくださいね」

 

「うん」

 

 

そしてその日、僕と姉さんは一晩中お喋りをした

今までの時間を埋めるように

・・・ん?・・・何か忘れているような・・・

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 優子

 

 

「疲れたのじゃ・・・」

 

「色々あり過ぎたからね」

 

 

今年に入って事件への遭遇率がやたら高い気がするわ

今度お祓いにでも行こうかしら・・・

 

 

「明久は無事仲直りできたかのう?」

 

「きっと大丈夫よ」

 

 

姉弟喧嘩か・・・

そういえばアタシって秀吉と最後に喧嘩したのいつだろう?

この子あんまり怒らないから喧嘩に発展しないのよね・・・

もし・・・秀吉があんな感じで怒ったら・・・

 

 

「?姉上?どうしたのじゃ?」

 

「なんでもないわ。それよりアンタ何か食べたいものある?」

 

「姉上が作ってくれるのかの?嬉しいのじゃ。じゃが明日は学校じゃし、時間も遅いし、簡単なもので済ませた方がよいじゃろう」

 

「そうね。なんたって明日からは期末テストだ・・・し・・・」

 

 

・・・時が・・・止まった

キマツ・・・テスト・・・

 

 

「ああああああ!!」

 

「忘れてたのじゃあああ!!」

 

 

この後、アタシと秀吉は慌てて勉強したのだが、一夜漬けで成績が上がるはずもなく普段より成績が落ちたのだった

 

 

  SIDE OUT

 

 

 

  ※後日談※

 

 

数日後、吉井玲は担当するはずだった新プロジェクトから全面撤退

自身は日本に残り、弟との時間を大切にする道を選んだ

 

明久も現在住んでいるアパートから元のファミリーマンションへと引っ越し

玲と二人で暮らすこととなった

 




次回より夏の高校野球編
ただ・・・対戦する高校の名前がまだ二つしか決まってない・・・
ありとあらゆる野球漫画を読んで学校名をパクる予定ですww

次回も頑張ります

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