バカとテストとウチの弟   作:グラン

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リアル多忙につき、更新が遅れました
申し訳ありません
これにて如月ハイランド編は終了
今回は久々に『彼ら』が登場します


第七十五問 女の敵にはお仕置きを・・・

  SIDE 海人

 

 

「雄二君、戻って来ないね」

 

「そうね・・・って、代表?」

 

「・・・雄二、やっぱり私と出かけても楽しくなかったのかな・・・」

 

 

俯いて寂しそうに呟く霧島さん

ちょっと様子を見てこようかな?

 

 

「お食事中失礼します。お客様の中に霧島翔子様はいらっしゃいますか?」

 

「・・・私です」

 

 

女性のスタッフの方がやってきて、僕達に声をかけた

 

 

「これから行われるウエディング体験なのですが、実は予定していたお客様が急遽キャンセルをしてしまいまして、よろしければ是非参加していただきたいのですが・・・」

 

「・・・でも雄二が・・・」

 

「坂本様でしたらすでに控室の方に移動しております」

 

「「「え?」」」

 

「我々スタッフが事情を説明したところ、霧島様に良い思い出をプレゼントしたいからちょうどいいと快く承諾頂けました」

 

「・・・雄二・・・」

 

 

霧島さんは嬉しそうにポロポロと涙を流す

 

 

「よかったね霧島さん」

 

「うん」

 

「ほら、花嫁役がそんな顔してちゃダメでしょ」

 

「では霧島様、こちらへどうぞ」

 

 

そう言って霧島さんはスタッフに連れられて控室へ

 

 

「坂本君ってば姿が見えないと思ったらそういうことだったのね」

 

「戻って来なかったのは恥ずかしかったからかな?雄二君も素直じゃないね」

 

「それじゃあ食事も済んだことだし、前の方に移動しましょ」

 

 

僕達は会計を済ませて会場が良く見える場所に移動した

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 雄二

 

 

「・・・おいこらてめえら、これはどういうことだ?」

 

 

目を覚ました俺は・・・なぜかタキシードを着ていた

 

 

「もちろん、これから始まるウエディング体験に雄二と霧島さんに参加してもらうためだよ」

 

「ふ、ふざけんな!なんで俺が翔子と・・・海人と木下姉にやらせりゃいいだろ!」

 

「アンタが二人の邪魔をしなければそうしてたわよ!折角、『急遽キャンセルが出た』って言って海人たちに頼み込むってシナリオを考えていたのに!」

 

「そ、その点に関しては俺が悪かった」

 

「・・・雄二を気絶させたのは島田じゃがな」

 

「うぐっ・・・」

 

 

・・・急に気が遠くなったと思ったらてめえが原因か

 

 

「と、とにかく!アンタにはウエディング体験をしてもらうわ!」

 

「断る!」

 

「そう・・・ならこっちにも考えがあるわ」

 

 

そう言うと島田はすぅっと息を大きく吸って

 

 

「きゃあああああ!!助けて!坂本雄二に襲われ・・・むぐむぐ」

 

「や、やめろ!俺を社会的にも肉体的にも殺す気か!」

 

 

俺は島田の口を慌てて塞ぐが、こいつはいまだに演技をやめず、バタバタと暴れている

くっ・・・今の叫び声を聞いたスタッフがこの光景を見たらどう考えても誤解されちまう

 

 

「だーわかった!ウエディング体験でも何でもやってやるから暴れるのはやめろ!」

 

「最初から素直にそう言えばいいのよ」

 

 

俺がそう言うと島田は暴れるのをやめた

 

 

「ちなみに雄二、ここは防音だから声は外には聞こえないよ」

 

「テメエら図ったな!?」

 

 

クソッ!こうなったら隙を見て逃げ・・・

 

 

「・・・ちなみに逃げたらこの映像をこの遊園地の大型モニターに流す」

 

 

そう言ってムッツリーニ見せたのは今の、暴れて嫌がる島田を俺が抑え込む映像

くっ、やけに必死に演技をしやがると思ったらこのためか

これを第三者がみたらどう見ても俺が島田を襲っているようにしか見えない

 

 

「・・・この映像はウエディング体験が終わったら消してやる」

 

 

素直に参加するしかないようだな

 

 

「わーったよ、逃げも隠れもしねえ。どうせ体験だしな」

 

 

そう言って諦めつつ服装を整える

 

 

「霧島様の準備ができました。坂本様、スタンバイお願いします」

 

「あいよ」

 

 

そう言って俺は舞台袖に立つ

 

 

『それでは新郎の入場です。皆様、拍手でお出迎えください』

 

 

かなりの数の拍手が聞こえる

いったい何人いやがるんだ?

まぁ何割かはスタッフが用意したサクラだろうが

そしてスポットライトを当てられた俺は壇上へと歩いて行く

 

 

『それでは新郎のプロフィールを・・・』

 

 

おいおい、そこまで用意してんのかよ?

 

 

『・・・省略します』

 

 

手ぇ抜きすぎだろ・・・嘘でもいいからなんか言えよ

 

 

『ま、紹介なんていらねぇよな』

 

『興味ナシ~』

 

『ここがオレたちの結婚式に使えるかどうかが問題だからな』

 

『だよね~』

 

 

なんか聞き覚えのある声だと思ったら入り口で島田に蹴り飛ばされたバカップルじゃねえか

 

 

『・・・・・他のお客様のご迷惑になりますので、大声での私語はご遠慮頂けるようお願い致します』

 

 

スタッフが注意を促す・・・が、

 

 

『コレ、アタシらのこと言ってんの~?』

 

 

そうだよテメエらだよ

 

 

『違ぇだろ。オレらはなんたってオキャクサマだぜ?』

 

『だよね~』

 

『ま、俺たちのことだとしても気にすんなよ。要は俺たちの気分がいいか悪いかってのが問題だろ?これ重要じゃない?』

 

『うんうん!リョータ、イイコト言うね!』

 

 

・・・すげえなこいつら

一体どんな教育を受けて来たらこう育つんだ?

 

 

『それでは、いよいよ新婦のご登場です』

 

 

構わず続けるスタッフ

下手に手出しができないってところか

そして・・・足元にスモークが立ち込め、スポットライトを当てられた翔子・・・が・・・

 

 

「・・・雄二」

 

 

皺ひとつない純白のドレスを着こなしている翔子の姿を見て俺は思わず言葉を失った

見惚れていたんだ

 

 

「・・・私、おかしくない?ちゃんとお嫁さんに見える?」

 

「あ、ああ。よく似合ってるぞ」

 

 

普段なら絶対に言わないセリフ

つい本音が出ちまった

後で明久達にからかわれるな

 

 

「・・・嬉しい」

 

「しょ、翔子!?」

 

 

すると翔子は肩を震わせ、ポロポロと涙を流し始めた

 

 

「・・・ずっと夢だった。雄二のお嫁さんになること。雄二と二人で結婚式を挙げる事。雄二は私と結婚してくれないかもしれない。だから体験でもこうやって雄二と結婚式を挙げることができてうれしい」

 

 

翔子の言葉に会場が静まり返る

まるで俺の返事を待っているかのように・・・

だが・・・

 

 

「翔子、俺は・・・」

 

『あーあ、つまんなーい!』

 

 

空気の読めないバカがそこにはいた

 

 

『マジつまんないこのイベントぉ~。人のノロケなんてどうでもいいからぁ、 早く演出とか見せてくれな~い?』

 

『だよな~お前らのことなんてどうでもいいっての』

 

『ってか、お嫁さんが夢です、って。オマエいくつだよ?なに?キャラ作り?ここのスタッフの脚本?バカみてぇ。ぶっちゃけキモいんだよ!』

 

『純愛ごっこでもやってんの?そんなもん観るために貴重な時間割いてるんじゃないんだケドぉ~あのオンナ、マジでアタマおかしいんじゃない?ギャグにしか思えないんだケドぉ』

 

『そっか!コレってコントじゃねぇ?あんなキモい夢、ずっと持ってるヤツなんていねぇもんな!』

 

 

・・・こいつらの辞書に常識の文字はないんだろうか?

昔の明久でもこんな馬鹿なことしねえぞ

ん?海人の奴、キレてるな

マズイ、これだけ観客がいたら海人の事を知ってる奴がいるはずだ

 

 

?「ここは我々に任せてもらおう」

 

「お、お前は・・・」

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 優子

 

 

「あいつら・・・」

 

「ちょ、海人君!?」

 

アタシの隣で静かに立ち上がった海人君

その表情は怒りに染まっていた

この表情、見覚えがある

根本を殴った時と同じ顔だ

マ、マズイ

学園内ならともかく、こんな公衆の面前で暴力事件なんて起こしたら・・・

 

 

「ダ、ダメ!!」

 

「離して優子さん!あいつらは!あいつらだけは!!」

 

「気持ちはわかるけど、お願いやめて!海人君は有名人なのよ!暴力事件なんて起こしたら海人君、学園にいられなくなっちゃう!そんなのアタシ嫌よ!」

 

「うっ、で、でも・・・」

 

 

アタシは海人君にしがみついて止める

 

 

「お客様、奴らはこちらで処理しますのでご安心ください」

 

 

そう言ってアタシ達の隣に立つスタッフ

っていうか変装した秀吉

海人君は頭に血が昇って気付いてないようだ

 

 

『F部隊、出撃じゃ』

 

 

秀吉がトランシーバーに小声でそう言う

すると死神の格好をした集団があいつらを取り囲んで・・・

って、どこかで見たことあるような・・・

 

 

『女性を傷つける者は・・・』

 

『誰であろうと許さない』

 

『女の敵は・・・』

 

『『『『我らの敵!!』』』』

 

『FFF団参上!』

 

 

あれってやっぱりFクラスの・・・あいつらまで呼んでいたの!?

 

 

「な、なんだよテメエら!」

 

「あ、アタシ達はオキャクサマ・・・」

 

 

FFF団があの二人を取り囲む

あっちはあいつらに任せよう

 

 

『花嫁さん!?花嫁さんはどこに行きましたか!?』

 

 

司会のスタッフの声を聞いてアタシ達はステージに視線を移す

するとそこには代表の姿はなく、ベールが投げ捨てられたように置いてあった

 

 

『霧島さん!霧島翔子さん!みなさん花嫁さんを探してください!!』

 

「僕達も探そう!」

 

「ええ!」

 

 

アタシと海人君は慌てて席を立つ

 

 

「坂本君!何してるの!早く代表を探さないと・・・」

 

「悪いがパスだ。面倒だし、便所にも行きたいしな」

 

「な、何言って・・・」

 

 

そう言って坂本君は外に出ようとする

 

 

「雄二君」

 

「なんだ?」

 

「場所はわかってるの?」

 

「・・・便所くらい適当に探せば見つかるだろ」

 

 

そう言って去って行った

 

 

「な、なんなのよアイツ!!見損なったわ!」

 

 

傷ついている代表を放っておくなんてどういう神経してるのよ

 

 

「素直じゃないんだよ。雄二君は」

 

 

海人君は苦笑いを浮かべながらそう言った

 

 

「どういうことよ?」

 

「だってさ、トイレに行くのにわざわざ外に行く必要なんてないと思わない?」

 

 

そう言われてみればたしかに・・・

 

 

「多分雄二君にはこういう時に霧島さんが行きそうな場所がわかるんだよ」

 

 

そうなのかな?

本当に面倒だから帰ったんじゃ・・・

 

 

「だったら見に行ってみる?」

 

 

そう言ってアタシ達も坂本君の後を追う

っと、その前に会場の方を見てみると・・・

 

 

「テメエら!オキャクサマにこんなことしていいと・・・ふべっ」

 

「ちょっとやめなさ・・・ぶっ!」

 

 

張りつけにされたあの二人に向かって他のお客さんがパイ投げをしていた

上の横断幕には『公開処刑、張りつけパイ投げの刑』と書かれていた

 

 

F「はい、一列に並んでください」

 

「くたばれ!!」(べちゃ)

 

「女の敵!!」(べちゃ)

 

 

他のお客さんもノリノリであの二人に向かってパイを投げている

あれ・・・いいのかなぁ・・・?

 

 

「優子さん?行かないの?」

 

「あ、うん。今行くわ」

 

 

・・・見なかったことにしよう

 

 

  ※数分後※

 

 

アタシと海人君は出口付近に隠れている

すると坂本君の姿が見えた

隣には代表、その表情はとてもうれしそうな笑顔だった

 

 

「ね、言ったとおりでしょ」

 

「ほんとね。アタシ、坂本君の事、誤解してたわ」

 

 

素直じゃないだけで本当は優しいのね

 

 

「それじゃあ僕達も帰ろうか」

 

「うん」

 

 

そう言ってアタシ達も文月ハイランドを後にした

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 秀吉

 

 

「お疲れ様、今日はありがとね」

 

「これくらいお安い御用なのじゃ」

 

「じゃあまた明日」

 

 

そう言って明久達と別れる

姉のデートのお膳立てというのは少々複雑な気持ちじゃが、姉上も楽しそうじゃったし、よかったのじゃ

・・・はて?なにか大切なことを忘れているような気がするが・・・なんじゃったかのう?

そんなことを考えているうちに家に着いた

 

 

「ただいまなのじゃ」

 

 

む?暗いのう?

誰もおらぬのか?

しかし鍵は開いておったし・・・

 

 

(ガチャ)

 

 

ドアの鍵が閉まる音が聞こえた

振り向くとそこには・・・

 

 

「welcome♪」

 

「oh・・・」

 

 

・・・満面の笑顔の姉上が立っておった

 

 

※五秒後、木下秀吉の悲鳴が鳴り響いた※

 




結局、海人と優子はくっつきませんでしたね
彼の恋愛成就はいつになることやら・・・

次回も頑張ります

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