バカとテストとウチの弟   作:グラン

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今回はムッツリーニがメインです


第六十五問 急げ!海人の元へ

  SIDE 愛子

 

 

「い、急がなきゃ!」

 

 

ボクは足を引きずりながら洞窟を逆戻りしている

悪路のせいで捻った足がズキズキ痛む

だけどそんなの気にしてられない

 

 

「・・・ボクのせいだ・・・」

 

 

海人君は様子がおかしいって言ったのにボクが聞く耳を持たなかったから・・・

でも後悔するのは後!

今は急いで助けを呼びに行かなくちゃ

そうしているうちに出口が見えてきた

 

 

「お願い!誰か居て!」

 

 

誰かがいてくれれば事情を説明して助けを呼ぶことができる

そう願いながら出口をくぐる

しかし・・・

 

 

「誰も・・・いない・・・」

 

 

周囲には誰もいなかった

考えてみれば当然だ

ここは☆1エリア

本気で勝ちを狙いに行くならこんなところで戦ってるわけがない

勝負を諦めたチームはとっくに部屋に戻って自習をしている

 

 

「どうしよう・・・」

 

 

本部があるのは☆4エリアの真ん中

ボクが今いるのは☆1エリアの一番東側

遠すぎる・・・でも・・・

 

 

「・・・迷ってる暇はないよね・・・」

 

 

ボクは再び走り出す

ここで気をつけないといけないのは戦死だ

もちろん補習が嫌とかそういうことじゃない

今回のルールでは片方が戦死するともう片方も召喚獣が消えてしまう

つまり僕が戦死してしまうと海人君の召喚獣も消える

海人君はあの化け物と戦う術をなくしてしまうのだ

 

 

「戦闘をなるべく避けながら急ごう」

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE ???

 

 

工藤愛子が洞窟から出て行った

 

 

「クククッやはり工藤を逃がすために自分が残ったか、計算通りだ」

 

 

そして俺はスイッチを操作し、入り口を塞いだ

 

 

「これで終わりだなぁ島田海人」

 

 

おっと、ここで姿を見られたら全く意味がない

そう思い俺はその場を立ち去った

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 康太

 

 

「せっかくですから召喚獣の操作の練習をしていきましょう」

 

「・・・そうだな」

 

 

俺達にはもう勝ち目はない

だが、せっかくだから操作の練習をしようということになった

姫路もだいぶ慣れてきたのかほとんど怖がらなくなってきたので今は☆4エリアに向かっている

 

 

「あ、北条君です♪」

 

 

姫路が指差した先には北条と島田、それに明久に雄二に秀吉に木下姉などなど、FクラスとAクラスの主要メンバーが勢ぞろいしていた

居ないのは海人と工藤愛子ぐらいか

 

 

「ん?姫路か」

 

「こんなところでどうしたんですか?」

 

「全員考えていることが同じというわけだ」

 

「ああ、点数の消費を抑えてイベントで一気に稼ぐ」

 

「姫路さん達もでしょ?」

 

「あ、いえ、私たちはもう優勝の目はなさそうなので、せめて召喚獣の操作の練習をしようかと・・・」

 

 

そんな他愛のない話をしていると・・・

 

 

「おいお前たち」

 

「「鉄人!」」

 

「西村先生と呼べ。っと、それよりもお前ら、工藤と島田弟を見なかったか?」

 

「見てないな」

 

「僕達も」

 

「私たちはお昼に一緒でしたけど・・・」

 

「海人に何かあったんですか?」

 

「100番のタブレットだけGPSが作動してないんだ。あの二人は不正をするようなタイプじゃないし、気になって見回りをしているんだ」

 

 

海人や工藤が不正?

・・・ありえないな。根本じゃあるまいし・・・

 

 

「ん?あれ、工藤ちゃんやない?」

 

「あ、ホントだ。でもなんかフラフラして・・・あ、こけた」

 

 

・・・?様子がおかしい

そう思った俺はすぐさま工藤に駆け寄る

すると・・・

腫れた足

擦りむいた膝

土だらけの体操服

そして・・・涙でグチャグチャになった顔

 

 

「・・・工藤!なにがあった?」

 

「愛子!どうしたの!?」

 

 

異変に気付いた他の連中も駆け寄ってくる

 

 

「・・けて・・・助けて・・・海人君が・・・海人君が死んじゃう!」

 

 

ボロボロ涙を零しながら工藤がそう言った

その言葉に真っ先に反応したのは・・・

 

 

「海人に何があったの!?」

 

 

海人の姉、島田美波だった

 

 

「メールを見てボク達は洞窟の中に入ったんだ。そしたら物理干渉能力を持つモンスターが襲ってきて、海人君はボクを逃がすために囮に・・・点数が総合科目で100万点もあって勝ち目もなくて・・・」

 

「洞窟?それに物理干渉能力を持つモンスターだと?馬鹿な、そんなものがいるわけが・・・」

 

「嘘じゃないです!早く助けに行かないと海人君が・・・」

 

 

工藤は必死に叫ぶ

嘘をついているようには見えない

そもそも嘘をつく理由もない

 

 

「場所は!?海人はどこにいるの!?」

 

「☆1エリアの一番東側の壁沿いにある洞窟の中に・・・」

 

 

そこまで聞くと島田は勢いよく飛び出して行った

 

 

「待て!島田姉!危険だ!戻れ!」

 

 

慌てて後を追う鉄人

 

 

「俺達も行くぞ明久!」

 

「うん!」

 

「美春も行きますわ!」

 

「土屋君!愛子の事お願いね!」

 

「姫路、本部に行って学園長に今の話を報告してくれ!」

 

 

そう言うと雄二、明久、清水、木下姉、北条は走り出した

 

 

「俺も行ってくるで」

 

「な、何言ってんのよ!アンタの点数じゃ役に立たないわよ」

 

「いざとなったら素手で戦ったるわ!友達がピンチなんや、じっとしとくなんてできへん」

 

「・・・待って、私も行く」

 

「勝負はええんか?」

 

「・・・友達の方が大事に決まってる」

 

「さよか・・・ほな行くで!」

 

「ちょ、ああもう!」

 

「ま、待ってほしいのじゃ!」

 

 

秀吉、小山、中島、霧島も後を追う

俺も向かいたいところだが、工藤を放っておくわけにはいかない

それに総合科目だと、俺はこの中で最弱

何の役にも立てないだろう

俺は・・・なんて無力なんだ

友達のピンチに駆け付ける事すらできないのか・・・

 

 

「康太君・・・」

 

 

そんなことを考えていると工藤が俺を抱きしめた

 

 

「康太君、そんな顔しないで。海人君ならきっと大丈夫だよ。みんなが助けてくれる」

 

 

工藤は俺にそう言うが、その声は涙声だった

そうだ・・・一番つらいのは工藤だ

助けを呼ぶ為とはいえ海人を置いて逃げてきたんだから・・・

俺なんかよりずっとつらいはずだ

 

 

「・・・そうだな、海人はきっと大丈夫だ」

 

 

そう言って俺は工藤を抱きしめると、工藤は俺の胸の中で泣き出した

まず、この合宿が終わったら勉強をしよう

もう二度と・・・こんな想いをするのは御免だ

 




海人の元に急ぐ美波達
はたして間に合うのか?

次回も頑張ります

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