第五十三問 脅迫状
SIDE 明久
「おはよー雄二」
「おう、今日は島田と一緒じゃないのか?」
「うん、今日は海人が朝練休みだから一緒に来るんじゃないかな?」
などと言いつつ下駄箱を開けた
(パサッ)
下駄箱から一通の手紙
こ、これはまさか・・・
「ハッ!」
こっちをジッと見ている悪友の姿
そして何かを企むようにニヤリと笑う
「ま、待って雄二!この事は美波には内緒に・・・」
「わかってないな明久、俺はお前の幸せが大嫌・・・(パサッ)・・・ん?」
雄二の下駄箱からも一通の手紙、しかもそっちは可愛らしい便箋にハートマークのシール
「「・・・」」
「雄二」
「明久」
「「お互い見なかったことにしようじゃないか」」
そう言って僕達は別々の道を進む
二人とも教室には向かっていない
理由はもちろん手紙を読むためだ
「美波には悪いけど、やっぱりこういうのって嬉しいものだよね♪」
もちろん美波以外の女の子と付き合う気はないけど、好意を寄せてもらって悪い気はしない
僕はトイレに入り、封を切って手紙を読む
・・・そこにはたった一言
『警告する。島田美波と別れろ。さもなくば実力行使に移ることになる』
「・・・なんだよ・・・これ・・・」
手紙を引き裂いてやりたいところだが、そうすると手がかりが無くなるので我慢する
僕は手紙をしまい、トイレを出る
『最悪だぁぁ!!』
「?雄二?」
遠くの方でゴリラの悲鳴が聞こえた気がする
それから昼休みまで、授業の内容は全く頭に入って来なかった
美波はいつも通り授業を受けていたから多分美波の方には脅迫状は入っていなかったんだろう
「アキ?」
もしかして・・・美波は僕と別れたがっているのかな?
それを見た第三者が手紙を出したのかも・・・
「アキってば」
美波は僕の事嫌いになったのかな?
それで・・・
「美波は・・・僕と別れたいのかな?(バキッ!)・・・ゴハッ!」
「殴るわよ?」
・・・殴る前に言って欲しいものだ
「全く・・・様子がおかしいと思って心配してみれば・・・何を急にバカなことを言ってるのよ。ウチがアキと別れたいわけないでしょ?だってウ、ウチはアキが大好きなんだから」
顔を耳まで真っ赤にしながら美波はそう言った
・・・可愛い
「美波!」
「きゃ!」
僕は美波を抱きしめた
「ちょ、ちょっとアキ!こんなところで何するのよ!離しなさい!恥ずかしいでしょ!」
「嫌だ!美波は僕の彼女なんだ!絶対に離さないぞ!」
「ああもう!なにがあったか知らないけどとにかく落ち着きなさーい!!」
☆数分後☆
「・・・落ち着いた?」
「はい、すいません」
「全く・・・ウチにだって心の準備ってものが・・・」(ブツブツ)
美波は顔を真っ赤にしてブツブツ呟いている
「それで?何があったのよ?正直に答えなさい」
「実は・・・これが下駄箱に・・・」
「そ、それってまさかラブレター?・・・そう・・・それで・・・ウチと別れたいの?」
美波は泣き出しそうな顔でそう呟く
「ち、違うよ!これはラブレターじゃないし、僕が好きなのは美波だけだ!たとえ世界一の美女から告白されたって美波を選ぶに決まってる!」
「アキ・・・」
美波は顔を赤くしてこっちを見つめる
・・・さっきのセリフ、だんだん恥ずかしくなってきた
「そ、それで、中身はこれなんだけど・・・」
僕は手紙を美波に渡す
すると美波はワナワナと震え、手紙を破り・・・って!
「わー!!ストップストップ!気持ちはわかるけどそれを破ったら犯人を捜す手がかりがなくなるから!」
「くっ・・・仕方ないわね・・・」
美波は渋々と言った感じに手紙を僕に返す
「美波の方にはこんな手紙入ってなかったの?」
「ええ、なかったわよ」
「お主らはさっきから何を騒いでおるのじゃ?」
「何かあったんですか?」
僕と美波のやり取りを見ていた秀吉と姫路さんがこっちにやってきた
「実は・・・」
僕は二人にも相談することにし、手紙を見せた
「これは酷いのぅ」
「愛し合う二人の仲を引き裂くなんて許せません!」
「それでどうしようかと思ってさ・・・」
「そうじゃのう・・・潔く島田と別れ・・・(ギロッ)・・・じょ、冗談じゃ」
秀吉の冗談に美波が激しく反応し、殺気を出して睨み付ける
「そ、そうじゃ!こういうことならムッツリーニに調べてもらうのが一番じゃ!」
なるほど、たしかにムッツリーニなら調べれそうだ
「土屋君でしたら確か屋上の方に向かっていましたよ」
屋上か・・・よし、善は急げだ!
僕と美波は屋上へと向かった
☆屋上☆
「ムッツリーニ!力を貸して!」
「・・・何かあったのか?」
「このままじゃ美波と別れなきゃいけなくなるんだ!」
僕はそう言ってムッツリーニとなぜか近くにいた雄二に脅迫状を見せた
「お前はお前で大変だな・・・」
「どうしたのさ雄二。そういえば雄二の下駄箱にも手紙が入ってたよね」
「ああ・・・俺のはラブレターだったな・・・」
「なんだよ!全然大変じゃないじゃないか!心配して損した!」
「ちょっと坂本!アンタには霧島さんがいるでしょ!浮かれてんじゃないわよ!」
「・・・一番下を見てみろ」
そう言って雄二は僕達に手紙を見せる
内容は雄二への愛を綴った手紙
そして一番下には・・・
『2-B 尾賀間稔二』
「「・・・ごめん」」
「わかってくれればいいんだ。まぁそれはともかく、お前たちの方の犯人は島田に好意がある奴と見て間違いないだろうな」
「え?なんでそんなことがわかるの?」
「島田には脅迫状は届いてないんだろ?お前らのどちらかに好意を持った奴の犯行だとすれば、自分の好きな人の恋人に送るだろう?」
言われてみれば確かにそうだ
好きな人に脅迫状を送る奴なんているわけない
「・・・わかった」
「え?もうわかったの?」
「・・・犯人は白いパンツの女」
「「「お前は何を調べたんだ!?」」」
ムッツリーニの意味不明な発言に全員がツッコむ
「・・・これを見ろ」
そう言ってムッツリーニはノートパソコンを開いて動画を再生する
「・・・今日の朝の下駄箱の映像」
そう、下駄箱が映っている。それはいい
問題は・・・
「「「なぜ下から映す!?」」」
「・・・企業秘密」
全く・・・
・・・ん?ちょっと待て
「ねぇムッツリーニ、これってFクラスの下駄箱だよね?ってことは美波のパンツを覗くつもりだったのかな?」
「・・・そ、そんな事実はない」(ブンブン)
「・・・今日の美波のパンツは?」
「・・・ライトグリーン」
「やっぱり覗いてるじゃないか!!」
僕は即座にこの変態の首を締め上げる
美波は隣でスカートの裾を抑えて顔を赤くしている
「落ち着け明久。今は犯人捜しが先だ」
渋々変態を放し続きを再生する
「・・・ここだ」
画面には人影
ちょうど顔は見えないが、女子の制服を着ているので、まぁ女装でもしてないかぎりは女子だろう
そして僕の下駄箱に手紙を入れ、カメラに近づいてスカートの中が・・・
「アキは見ちゃダメ!」
・・・見える直前に美波に目隠しされた
くっ・・・もう少しだったのに・・・
・・・あれ?
「ちょっと待ってよ!おかしくない?犯人は美波に好意を持っている人物なんでしょ?だったら犯人は男のは・・・ず・・・」
「「「「あっ」」」」
僕達の頭に一人の女子生徒が浮かんだ
美波の事が好きなツインドリルの彼女を・・・
「美波、これって・・・って!いない!?」
『キサマノシワザカァァァ!シミズミハルゥゥ!!!!』
『ヒィィ!な、なんの話ですの!?』
遠くから怒声と悲鳴が聞こえた
☆数分後☆
「冤罪ですわ!美春は無実です!確かに原作では美春が犯人ですが・・・本当に違うんですの!」
清水さんは必死に無罪を主張する
ちなみに美波は・・・
「全く姉さんは・・・証拠も無いのに人を疑ったりしちゃあダメでしょ!」
「で、でも・・・」
「でもじゃない!いつもいつも姉さんは・・・」
野球部のミーティングを終え、たまたま通りかかった海人に説教を受けている
とはいえ、無罪という証拠も無いし、清水さんが疑わしいのも事実
一体どうすれば・・・
・・・あっ!ある!清水さんが犯人かわかる方法が・・・
「清水さん」
「なんですの?」
完璧だ
彼女が犯人なら・・・白いパンツをはいているはずだ!
「ちょっと君のパンツを見せてくれないか?」
直後、屋上に平手打ちの乾いた音が鳴り響いた
犯人は誰だ!やっぱり美春か?それとも・・・
次回も頑張ります