バカとテストとウチの弟   作:グラン

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一話で終わらせるつもりでしたが、思いのほか長くなったので前編、後編で分けます
今回は番外、野球メインです


第五十一問 練習試合 前編

  SIDE 海人

 

 

今日は野球部の練習試合

って言っても、僕を含めてレギュラーは誰も出ていない

一年生のみでチームを組んで試合をしている

智也君曰く『ウチは選手層が薄すぎるので他のメンバーに試合経験を積ませたい』との事

 

 

「押されてるわね・・・」

 

 

隣で姉さんが呟く

え?なんでいるのかって?

応援に来てくれたんだよ

姉さんだけじゃなくて他のみんなもね

 

 

「まぁ相手は星凰学園だからね」←美波についてきた

 

「たしか去年の甲子園出場校だっけか?」←翔子から逃げてきた

 

「・・・全国優勝の経験もあるらしい」←それを読み切って待ち伏せしていた

 

「強いチームなんですね」←智也を見に来た

 

「・・・男の写真は撮ってもつまらない」←新聞部に依頼されて写真を撮りに来た

 

「補欠では歯が立たぬようじゃな」←仲間外れは寂しいのじゃ!

 

 

と、まあこんな感じでいつものメンバーが集合している

 

 

「海人が投げればあんな連中イチコロよ!」

 

「そうッス!海人先輩なら完封間違いなしッス!」

 

 

姉さんと球太郎君がそう言った

え?球太郎って誰だって?

ほら、第三十三問で野球部の出し物の受付をやってた僕の後輩だよ

 

 

「でもまぁベストメンバーやないのはお互い様やで」

 

「だな、見たところレギュラーどころか、ベンチ入りの選手もほとんどいない。二軍かそれ以下の連中だな」

 

「あれで二軍・・・それにしても向こうの選手たち・・・やけに殺気立ってない?」

 

「・・・それは別の理由だろうな・・・」

 

 

(((((ちくしょう!あんなに可愛い娘に応援してもらいやがって・・・羨ましい!)))))←男子校

 

 

さて、試合はもう終盤で八回表で8-0でリードされている

あ、練習試合だからコールドは無しだよ

 

 

「ふぅ・・・海人、ブルペンに行くぞ。投球練習だ」

 

「ん?今日は僕は投げない予定じゃなかった?」

 

「そのつもりだったが・・・そろそろあいつは精神的にも限界みたいだからな」

 

 

智也君はマウンド上の一年生を見ながらそう言った

 

 

「わかったよ。それじゃ、行こうか」

 

「ああ。英雄、ここは頼んだぞ」

 

「了解や」

 

 

そう言って現場を英雄君と野村君に任せて僕達はブルペンに移動した

 

 

「中島に任せて大丈夫なのか?」

 

「問題ない。あいつはバカだが、野球に関しては真面目だからな」

 

 

隣を歩く雄二君に智也君が答える

・・・って、んん?

なんかみんなついて来てるんだけど・・・

 

 

「みんなもついてきたの?投球練習なんて見てもつまらないと思うけど?」

 

「ウチは海人を24時間見ても退屈なんてしないわ」

 

「美波が行くなら僕も行く」

 

「わ、私も・・・その・・・こっちの方が気になるというか・・・」

 

「・・・海人の写真を頼まれている」

 

「仲間外れは寂しいのじゃ」

 

「頼むから俺を翔子と二人にしないでくれ・・・」

 

「・・・私は雄二について行く」

 

 

まぁいいか・・・

他に投げてる人もいないし、迷惑にはならないだろう

そう思い、僕は投球練習を始めた

・・・しかし・・・数分後、あの場に誰も残さなかった事を激しく後悔することになる

 

 

  SIDE OUT

 

  NO SIDE

 

 

「お疲れさんや」

 

「あれ?北条先輩と島田先輩は?」

 

「向こうで投球練習や。海人に少し投げさせるつもりらしいで」

 

「そうですか・・・ん?なんだこれ?」

 

 

そう言った彼は、ベンチに置いてある物を見つけた

・・・いや、『見つけてしまった』

 

 

「これは・・・レモンの蜂蜜漬けだな」

 

「島田先輩のお姉さんのじゃないか?ほら、たまに差し入れとか持ってきてくれるし・・・」

 

「なるほど・・・じゃあ遠慮なく・・・」

 

「だ、だめッスよ!ちゃんと先輩から許可を貰ってからじゃないと・・・「球太郎、食べへんのか?」・・・って!中島先輩まで何やってるんッスか!?」

 

 

野村は必死に止めるが、中島を筆頭に全員がハチミツレモンを手に取り、食べ始めた

・・・そして・・・事件は起こった・・・

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 美波

 

 

「海人、調子良さそうだね」

 

「だな、清涼祭のときの怪我の影響もなさそうだ」

 

 

そんな会話をしながら海人の投球を見ていると・・・

 

 

「北条先輩!海人先輩!大変ッス!」

 

 

一人の野球部の生徒が慌てて走ってきた

あれは・・・確か海人の一番弟子(自称)の野村君だったかしら?

あんなに慌ててどうしたんだろう?

 

 

「どうした?そんなに慌てて・・・」

 

「それが・・・選手が全員倒れたッス!」

 

「はぁ!?」

 

 

それを聞いた北条と海人は慌てて走り出し、ウチ達もそれに続いた

そしてベンチに到着

そこで見たものは・・・顔を真っ青にして、お腹を抑えてぐったりしている選手たちだった

 

 

「一体何があった?」

 

「えっと・・・そこに置いてあった海人先輩のお姉さんの差し入れを食べて、そしたら急に・・・」

 

「へ?ウチ、そんなの持ってきてないわよ?」

 

「あ、あの・・・それ、私のです」

 

 

申し訳なさそうに瑞希が手をあげる

あぁ、可哀想に・・・必殺料理人の餌食になったのね・・・

 

 

「お、オイラはつまみ食いなんてしてないッス!信じて欲しいッス!」

 

 

必死に弁明する野村君

ええ、わかってるわよ・・・

だって、食べてたらそんなにピンピンしているわけないもの・・・

 

 

「みんなどうしたんやろな」(パリパリ)

 

 

前言撤回

例外がいたわ

 

 

「ひ・め・じ?まさか薬品なんていれてないよなぁ?」

 

「え、えっと・・・」

 

「い・れ・て・な・い・よ・な?」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

「・・・ごめんなさ・・・いたたた!ちぎれる!耳がちぎれちゃいます!!」

 

「何度言ったらわかるんだ!?この耳は飾りか!?あぁ!?」

 

 

北条がキレた

 

 

「まぁまぁ智也君、落ち着いて。まだ試合中なんだから・・・」

 

「そうだな、とりあえずもう少し待ってもらって、無理なら中止にするしかないな」

 

 

北条は溜息をつきながらそう言った

動ける部員は海人、北条、中島、野村君の四人

知っての通り、野球は九人でやるスポーツなので人数が足りないのだ

 

 

「仕方ないわね・・・とりあえず何か飲み物買って来るわ」

 

「あ、僕も行くよ。一人じゃ持てないでしょ?」

 

「わ、私も行きます」

 

 

そう言って私達は自販機にジュースを買いに行った

そして人数分のスポーツドリンクを買って戻る途中

 

 

「ったく、いつまで待たせんだよ」

 

「なんか、向こうの選手が全員、腹を壊したらしいぞ」

 

 

相手チームの選手がブツブツ言ってる姿が見えた

どうやら試合中断で待たされて苛立っているようだ

 

 

「大体、文月如きが俺達に勝てるわけねぇんだよな」

 

「エースの島田って奴も外見が良いからチヤホヤされてるだけだろ?あんなチビにまともな投球なんてできるかよ」

 

「知将とか言われている北条だってヤマ勘がたまたま当たってるだけに決まってるぜ」

 

 

((プチン))

 

「み、美波、姫路さん、落ち着いて・・・」

 

 

アキがビクビクしながらウチと瑞希を宥める

・・・が、ウチと瑞希はそれをスルーしてベンチに向かって早足で歩く

フフ、ウチの海人をバカにするなんていい度胸じゃない・・・

アイツらにはオシオキが必要ね

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 海人

 

 

「やっぱりだめッス!みんな動けそうにないッス」

 

「そうか・・・仕方ない、試合は中止だ。向こうの選手にもそう言って・・・「北条!」・・・ん?」

 

 

向こうから姉さんと姫路さんが・・・なぜか怒りの表情を浮かべながら向かってくる

どうしたんだろう?

 

 

「試合再開よ!」

 

 

買って来たスポーツだリンクをドンっと置きながらそう言った

 

 

「あのな・・・そりゃできれば最後までやりたいところだが、メンバーが足りないんだ。仕方ないだろ?」

 

「メンバーならそこにいるわ!」

 

 

そう言って姉さんは雄二君達を指差した

 

 

「なるほど、その手があったな~せやけど、それでも足りんで?」

 

 

雄二君達が入っても8人

まだ人数が足りない

 

 

「ウチが入るわ」

 

「女子を試合に出せるわけないだろ。大体、坂本達だって運動神経が良いとはいえ素人だぞ」

 

「だって・・・悔しいじゃない!あいつら向こうで海人やアンタの悪口言ってたのよ!」

 

「ほぅ・・・そいつは聞き捨てならねえな・・・」

 

 

姉さんが悔しそうに呟くと、背後から声が聞こえた

 

 

「アンタらは・・・常夏先輩!」

 

「くっつけるな!常村と夏川だ!」

 

「ちょっと様子を見に来てみりゃ随分と面白いことになってるじゃねえか」

 

「全くだ・・・おい一年坊主!・・・ユニフォームとグローブを貸せ。選手交代だ」

 

「ちょ、先輩方、まだやると決まったわけでは・・・」

 

 

すっかりやる気になっている先輩方に智也君はストップをかける

 

 

「アキ・・・お願い」←上目使い

 

「北条君、早くやろう!ほら、雄二もムッツリーニも準備して」

 

「なんで俺まで・・・「ヒソヒソヒソ」・・・喜んでやろうじゃないか」

 

 

雄二君にアキ兄さんが何かを囁くと雄二君がやる気になった

まぁ多分翔子さん絡みでなにか脅したんだろうな・・・

 

 

「・・・始めよう」

 

 

なんか康太君もやる気になってる

・・・なんか姉さんが凄く悪い顔でニヤリと笑ってるけど・・・

気のせいだよね?うん、きっと気のせいだ

 

 

「全く・・・仕方ないな・・・」

 

 

北条君は諦めたような表情を浮かべながら相手チームに選手交代を伝えに行った

 




試合に参加することになった明久達
はたして結果はどうなるのか・・・

次回も頑張ります

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