バカとテストとウチの弟   作:グラン

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今回はちょっと短いです



第四十八問 とある姉弟の過去 絶望編

  SIDE 美波(幼少期)

 

 

学校が終わった

私は急いで荷物をまとめ、全速力で走り出す

向かう先は・・・海人の入院している病院だ

 

 

「かーいと♪お見舞いに来たわよ」

 

「あ、お姉ちゃん。毎日ありがとう」

 

 

私は勢いよく病室のドアを開けた

今、海人が言った通り、私は毎日学校が終わった後、海人のお見舞いに来ている

 

 

「でも、病院内で走っちゃダメだよ」

 

「だって早く海人に会いたかったんだもん」

 

 

え?性格が変わり過ぎ?

それは・・・

 

 

  ☆回想☆

 

 

「海人・・・その・・・今まで酷い事してごめんなさい・・・私の事なんてもう・・・嫌いになったよね?許してなんて都合のいい事は言わない。それでもどうしても謝りたかったの。本当にごめんなさい」

 

「お姉ちゃん、泣かないで。もういいから」

 

「でも・・・」

 

「僕、ずっと信じてたよ。きっといつか昔みたい仲良く出来るって。嫌いになんてなってないよ。だって僕・・・お姉ちゃんの事大好きだから」

 

「海人・・・う、うわあああああん!ごめんね・・・ごめんね・・・」

 

 

  ☆回想終了☆

 

 

と、まぁこんな感じで、海人は私の事をあっさり許してくれた

そう言うわけで、今は海人の事、大好きよ♪

 

 

「えっと・・・はい、今日の分のプリント」

 

「うん。ありがとう」

 

 

私は先生から預かってきたプリントを渡した

ちょっとしたお知らせとかばかりだから別に毎日持って来る必要はないわけだけど・・・

どうせ毎日お見舞いに行くからそのついでだ

そんなことを考えていると一枚のプリントを見て海人の手が止まった

なんだろう?と思い私はプリントを覗き込む

そこには・・・海人が所属している野球チームの次の試合予定が書かれていた

そう・・・海人はエースに選ばれ、次回の試合の先発に決まっていた

しかし腕が折れているので当然参加できない

全部・・・私のせいだ

 

 

「・・・ごめんね・・・せっかくエースに選ばれたのに私のせいで・・・」

 

「お姉ちゃんのせいじゃないよ。気にしないで。腕が直ったらまた頑張ればいいから」

 

 

そう言って少し寂しそうに微笑む海人

いままでの努力が全部無駄になったんだ

辛くないわけがない

なのに海人は私に対して文句一つ言わない

本当に優しい子だ

 

そして数か月が経ち、海人は退院した

そしてすぐさまリハビリを開始

もう一度野球をする為、海人は毎日リハビリに励んだ

 

しかし・・・神様は無情にも海人を再び絶望の淵に叩き落とした

それは、ある程度日常生活ができるようになった頃に起こった

だいぶ腕が動くようになったので久しぶりに軽くキャッチボールをしようとして、私と海人は公園に移動

そして海人はボールを投げた・・・が

ボールは私の元に届くことなく転々の足元まで転がってきた

まだ本調子じゃないのかな?と思いながら、私はボールを拾い上げ、海人の方に視線を向ける

するとそこには・・・肩を抑えてうずくまっている海人の姿があった

 

 

「海人!?どうしたの!?しっかりして!」

 

「い・・痛い・・・痛いよ・・・」

 

 

私は慌てて海人の手を引き、病院へと急いだ

そこで医者が発した言葉は・・・海人にとって死刑宣告に等しいものだった

 

骨折は完全に治っている

しかし、肩に後遺症が残っており、日常生活には支障はないが、激しく動かす事は出来ない

つまり・・・もう二度と野球は出来ないということだった・・・

私は必死に直してほしいとお願いした

『なんでもする。私の腕を海人にあげてもいい』と言った

しかし、医者が首を縦に振ることはなかった

海人は・・・何も言わずただ茫然と立ち尽くしていた

 

病院からの帰り道・・・

私と海人は何も言わず家に向かって歩いていた

何も言えない・・・掛ける言葉が見つからない

『ごめんなさい』?

謝ったところで海人の肩は直らない

じゃあ『元気出して』?

怪我の元凶である私にそんなことを言う資格なんてない

結局、一言も喋らず、私と海人は家に着いた

海人はフラフラとおぼつかない足取りで自分の部屋に入った

私は何も言えないまま、自分の部屋に入る

すると隣の海人の部屋から・・・泣き声が聞こえた

海人は『大きくなったら野球選手になりたい』と言っていた

私は・・・その夢を海人から奪ってしまったのだ・・・

 

それから一週間が経った

海人があまり笑わなくなった

また一週間が経った

海人がほとんど笑わなくなった

更に一週間が経った

海人が全く笑わなくなった

そして・・・ついに学校に行くことも拒絶し、部屋からほとんど出てこなくなった

 

 

「海人、最近ご飯を食べてないじゃない。お姉ちゃん、海人の好きなもの何でも作るから・・・だからお願い、ここを開けて出てきて・・・」

 

 

そう呼びかけるが返事はない

私は・・・どうすればいい?どうすれば償える?

そして私がとった行動は・・・料理を作る事だった

美味しいものを作ればきっと海人は食べてくれる

そう思った私は必死に料理を作り続けた

・・・が、結果は玉砕

部屋の前に置いておくが『食欲が無いから』と言って食べてくれない

毎日がその繰り返しだ

これじゃあ、いつ病気になってもおかしくない

でも・・・わたしはもうどうしたらいいのかわからない

元気の無い海人を見るのが辛い、苦しいよ・・・

これは天罰なの・・・?

私が海人に酷い事をしたから・・・

でも・・・それなら・・・

 

 

「それならなんで海人から夢を奪うのよ!海人は何も悪くないじゃない!奪うなら私から奪いなさいよ!なんで・・・なんでよ・・・神様・・・」

 

 

私は涙を流しながらそう呟いたが、その問いかけに答える者はいなかった

 




希望を奪われた海人
はたして生きる気力を取り戻すことは出来るのか?

次回も頑張ります

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