バカとテストとウチの弟   作:グラン

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更新が遅れました・・・
また、作者の野球好きのせいで随分長くなってしまいました
申し訳ありません



第三十四問 海人VS英雄

  SIDE 優子

 

 

「全く・・・愛子も代表も強引なんだから・・・」

 

 

アタシは今、野球部の出し物の会場に来ている

三回戦が終わったアタシに代表が『・・・お昼は終わったし、海人の応援に行ってくるといい』と言い、愛子からは『島田君、まだ落ち込んでいるかもしれないし、励ましてあげなよ。優子が応援したらきっと喜ぶよ』と言われ、教室から締め出された

まぁ確かに時間があったら行くつもりだったけど・・・

何でアタシが応援したら喜ぶのかしら?←鈍感

 

 

「あ、優子」

 

「あら、友香じゃない」

 

 

空いている席を探していると友人の小山友香がこっちに気付き声を掛けてきた

彼女とは根本に脅迫された者同士として交流があり、その後も根本の動向について情報交換を行っている

 

 

「友香は中島君の応援?」

 

「な、何言ってるのよ!アタシが何で英雄なんか・・・」

 

 

とか言いつつもその手には青の札がしっかりと握られている

全く、素直じゃないんだから・・・

 

 

「そう言う優子こそ、島田君の応援?」

 

 

アタシが手に持っている赤の札を見ながら友香はそう言った

 

 

「ええ、ちょっと色々あって落ち込んでるはずだから一言励まそうと思ったんだけど・・・ちょっと遅かったわね」

 

 

もう海人君は準備運動に入っているため、声を掛けることはできそうにない

まぁ見たところだいぶ落ち着いているみたいだし、大丈夫かな?

 

 

「にしても・・・愛子も代表もアタシが応援に行ったら海人君が喜ぶって言ってたけど、なんでかしら?」

 

(この子・・・本気で言ってんの?)

 

 

友香が何か言いたそうな表情をしている

どうしたんだろう?

 

 

『それではこれより野球部の出し物、エースの島田海人君VS四番打者の中島英雄君の真剣勝負を開始いたします。実況は私、新野すみれがお送りします♪』

 

 

アナウンスが流れ始め、簡単にルール説明が始まる

えっと・・・よく野球のルールは知らないけど、ようするに打ったら中島君の勝ちで、打たれなかったら海人君の勝ちってことよね?

 

 

『えー次にどちらが勝つかの予想投票の結果ですが、島田君が99票、中島君が95票とほぼ互角です。どちらもみなさんの期待に添えるよう頑張ってくださいね』

 

 

アタシは持っている札に視線を向ける

するとそこには『99』と書かれていた

ってことはアタシが最後だったんだ・・・

 

 

『それでは、勝負開始です!主審を務めるのは体育教師の大島先生です。よろしくお願いします』

 

「それじゃ、始めるぞ。プレイボール!」

 

 

大島先生が片手を上げて勝負開始を宣言する

 

 

「いよいよね」

 

 

隣で友香が札を握り締めながら呟く

 

 

「行くよ、英雄君!」

 

「おう!来い!海人!」

 

 

そして海人君が大きく振りかぶってボールを投げた、中島君はバットを振らなかった

 

 

「ストライク!」

 

 

大島先生が手を上げてそう言った

確か、ストライク3つでアウト1つだったわね

アタシだってそれ位は知ってるわよ

そんなことを考えているうちに二球目を投げた

 

 

「ファールボール!」

 

 

二球目はファール、これでツーストライク・・・で、合ってるわよね?

そして海人君は三球目を投げ・・・って・・・遅っ!?

 

 

「くっ!」

 

 

中島君は体勢を崩しながらも、かろうじてバットに当て、ファールにする

 

 

「今の球、遅くなかった?」

 

「あれは島田君の持ち球の一つ、スローカーブ。タイミングをずらす球よ。同じ速度ばっかりじゃ簡単に打たれるからね。」

 

 

なるほど・・・あれが変化球ってやつね

 

 

「多分、次は速球で来るわね。球速差があるとバッターはタイミングを取りにくいの」

 

 

隣で友香がそう呟く

さすが、いままで中島君を見てきただけあって詳しいわね

そして海人君が次の球を投げる

 

 

「「「「「え?」」」」」」

 

 

観客から驚きの声が上がる

海人君が投げた球は・・・スローカーブ。二球連続スローカーブだ

相手の読みの裏をかいた

速球に目標を絞っているなら打ちづらいはずだ

でも中島君は・・・

 

 

(パスッ)

 

 

・・・打たなかった。バットを振らなかったのだ

 

 

「ボール!」

 

「速球と見せかけてスローカーブ・・・しかも打てないようにボール一個分外に外しとる・・・さすが海人やな」

 

「くっ」

 

「振ってくれれば助かったんだがな・・・」

 

 

海人君と中島君、捕手の北条君はそんな会話を交わしている

 

 

「ボール一個分って・・・そんなことできるものなの?」

 

「普通できないわよ。島田君はコントロールが良いからできてるだけよ」

 

 

凄い・・・繊細なコントロールができる海人君も、それを見切る中島君も・・・

この勝負・・・どっちが勝つのかしら?

多分次は速い球でしょうね・・・

そして海人君が振りかぶって五球目を投げた

予想通り速球だ

しかし中島君はまたしても見逃した

 

 

「ボール!」

 

 

どうやらギリギリ外れていたようだ

もし入っていればアウトなのによく見逃せるなぁ・・・

さて、次は何を投げるんだろう?

速球?それともスローカーブ?

海人君が投げた球は・・・速球だ

それがバッターの胸元を過ぎてミットに・・・

 

 

(キンッ!)

 

 

・・・は届かず、中島君に打たれてしまった

これで中島君が一勝か

 

 

「これはキツイわね・・・」

 

「え?」

 

「今のはカットボール。ストレートとほぼ同じ速度でバッターの胸元にえぐり込むように曲がる変化球、そして島田君の一番の得意球よ。ピッチャーにとって決め球を打たれることは精神的にキツイわ」

 

 

海人君の方を見ると、辛そうな表情を浮かべていた

怯えているようにも見える

そして次に海人君が投げた球は大きく外れてボール

表情の曇っている彼を見てアタシは・・・

 

 

「海人君!」

 

 

気がつくと大声を出していた

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 美波

 

 

「お兄ちゃん・・・」

 

 

隣で葉月が心配そうな声をあげる

海人は決め球を打たれてしまった事がこたえているようだ

本来なら捕手の北条君がマウンドに駆け付けるべきなんだろうけど、今回は二人の戦いということで動こうとしない

とにかくウチは海人の応援をしようと思ったその時

 

 

「海人君!」

 

 

誰かの叫び声が聞こえた

あれは・・・

 

 

「ゆ、優子さん!?」

 

「あっ!メイドのお姉ちゃんです!」

 

 

木下さんだ

 

 

「何やってるのよ!そんな逃げ腰で中島君を打ち取れると思ってるの!?打たれたっていい!負けてもいい!でも、その投球で本当に後悔しないの!?海人君はまだ全力を出してない!海人君がいままでどれだけ頑張ってきたか、アタシは見てきた。なのにそんなに簡単に諦めるの!?最後まで諦めないで!そうすればきっと勝てるから・・・」

 

 

その言葉を聞いた海人の姿を見てウチは笑みをこぼした

確信したからだ。もう・・・大丈夫だと

 

 

「英雄君、待たせてごめんね。勝負を・・・再開しようか」

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 英雄

 

 

海人の目つきが変わった

そして海人が振りかぶって投げた

その球を俺は・・・打てへんかった

これは見逃しやない。手が出んかった

 

 

「ええで・・・そう来なくちゃ面白うない!」

 

 

そして海人は振りかぶって二球目を投げた

これはさっき俺が打ったカットボールや

俺はそれを打ち返す・・・が・・・

結果はボテボテのピッチャーゴロ

手が・・・痺れる・・・

なんて球威や・・・

スピードは大したことないはずやのに、凄い威圧感を感じたで

さすが海人・・・俺の永遠のライバルや!

これで一勝一敗か

 

 

「次も勝たせてもらうよ!」

 

「負けへんで!」

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 優子

 

 

今度は海人君が打ち取った

これで一勝一敗ね

・・・あっ!

 

 

「ゆ、友香!その・・・ごめんね。友香の前で海人君の応援しちゃって」

 

「なに気にしてんのよ。それに・・・ほら」

 

 

友香が指差した先では海人君が投げた球を中島君がカットしてファール。その繰り返しをしている姿があった

 

 

「二人とも・・・楽しそうだと思わない?」

 

「そうね」

 

 

二人の表情はとても楽しそうで輝いていた

ここまできたらもうどっちが勝つかわからない

 

 

「海人!頑張って!」

 

「お兄ちゃん!頑張ってです!」

 

 

あっちにいるのは島田さんと葉月ちゃんだ

二人とも応援に来てたのね

 

 

『島田君!頑張って!』

 

『中島君も頑張れ!』

 

 

周囲からの物凄い量の声援が飛び交っている

そして海人君は振りかぶって投げた!

球種は速球だ

それを中島君は読んでいたのかバットを振る

タイミングはピッタリだ・・・打たれる!

そう思った・・・ところが・・・

 

 

(ズバンっ!)

 

 

中島君のバットは空を切っていた

 

 

「ストライク!バッターアウト!ゲームセット!」

 

 

中島君の空振りにより三振

二勝一敗で海人君の勝ちだ

その瞬間、大きな歓声がグラウンドに鳴り響き、海人君はガッツポーズを決めた

 

 

「おめでとう。海人君」

 

 

アタシは誰にも聞こえないような声でそう呟いた

・・・そういえば・・・なんで中島君は打てなかったんだろう?

 

 

  SIDE OUT

 

  SIDE 海人

 

 

勝負が終わった

やった・・・勝ったんだ!

 

 

「負けてしもうたか・・・完敗や」

 

 

バッターボックスに座り込んだ英雄君がそう話かけてきた

 

 

「ところで最後の球はひょっとして・・・アレか?」

 

「うん。『あの球』だよ。まだコントロールに不安があったし、失投も多いからできれば使いたくなかったんだけどね。英雄君に勝つにはあれしかないって思ったんだ」

 

 

僕が最近ずっと練習している変化球・・・『SFF』

ストレートとほとんど変わらない速度でわずかに落ちる変化球だ

まだ完成してない為、実戦で使うのはこれが初めてだ

 

 

「初めて使う球を一発で決めるか・・・ウチのエースは頼もしいなぁ・・・」

 

 

フッっと笑いながら英雄君は呟く

 

 

『それではこれより、ストラップ抽選会を始めます!勝者の島田海人君、お願いします』

 

「ほれ、出番やで。行ってき」

 

 

英雄君は立ち上がり僕に近づいて背中を押す

僕はいつの間にか用意されたステージの壇上へと向かった

 




野球対決は海人の勝利!
次回はストラップの抽選会
限定ストラップを手にするのは誰なのか・・・
そして・・・トラブルが発生!?

次回も頑張ります

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