バカとテストとウチの弟   作:グラン

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試合当日の朝の様子をお届けします


第百九十五問 それぞれの朝

  ※島田海人の場合※

 

 

時は流れ、練習試合当日の朝

 

 

「おはよう姉さん」

 

「おはよう海人。朝ごはんできてるわよ」

 

「うん。ありがとう」

 

 

早朝であるにも関わらず、美波はすでに起きて朝食の準備を済ませていた

 

 

「いよいよね」

 

「うん。頑張らないとね」

 

 

ご飯を食べつつそう答える海人

少し緊張しているようだ

 

 

「お父さんとお母さんは試合開始には間に合いそうだって。試合前に海人に会えないって悔しがってたわ」

 

「あはは。まぁ仕事だから仕方ないね」

 

 

ちなみにこの親バカ二人は試合が決まったその日から死ぬ気で仕事をし、無理矢理有給を取ったのだ

しかし、それでも前日には戻れず、帰国は試合開始直前となったのだ

海人の表情が少し曇るが、それが寂しさから来るものではないことに美波は気付いていた

 

 

「海人、アンタが今考えてること、ウチには手に取るようにわかるわよ」

 

 

そう言うと美波は海人を優しく抱きしめた

 

 

「不安なんでしょ?一度負けた相手に自分の力が通用するのか・・・それと、この大舞台に大好きな先輩を連れて来れなかった後ろめたさね」

 

 

そう言うと海人はピクリと反応する

どうやら図星のようだ

 

 

「アンタの尊敬する先輩は自分が参加できないからって妬むようなちっぽけな人間じゃないでしょ?それにアンタは一人で戦うわけじゃない。野球は一人じゃできない。それは常にチームワークを大切にしてきたアンタが一番よくわかってるはずでしょ?一人で抱え込む必要はないの。仲間を信じなさい」

 

「そうだね・・・ごめん。僕、どうかしてた」

 

「緊張し過ぎよ。大丈夫。海人の力はちゃんと通用する。アンタの一番最初のファンのウチが保証するわ」

 

 

美波は海人に笑顔でそう言った

 

 

「ありがとう・・・姉さん」

 

 

 

 

  ※北条智也の場合※

 

 

「ん・・・朝か」

 

 

智也は眠たそうに瞼を擦りながらベッドから降りる

 

 

「いよいよか・・・色々あったな」

 

 

朝食をとりつつそう呟く智也

中学時代までバッテリーを組んでいた親友との戦い

 

もし秀一と出会っていなければ自分は野球を始めていなかっただろう

もしさやかが亡くなっていなければ自分は秀一と同じ学校に行き、海人とは出会っていなかっただろう

いくつもの偶然が重なり、自分は今ここにいる

そう考えると何とも言えない不思議な気持ちになるのだった

 

 

「・・・らしくないな・・・」

 

 

もしもの話を頭に思い浮かべた智也は自分らしくないとクスっと笑う

 

 

(久しぶりだな・・・こんな気持ち)

 

 

初めて野球をした時のような高揚感

智也は親友との戦いを楽しみにしていた

 

 

「さてと・・・行ってくるよ・・・さやか」

 

 

智也が視線を向けた先は写真立て

そこには智也と秀一の間に割り込むように入り、智也に抱き着く一人の少女の姿があった

 

 

「・・・ホント、らしくないな」

 

 

智也は再び自嘲気味に笑うのだった

 

 

 

  ※中島英雄の場合※

 

 

「さっさと・・・起きろこのバカ英雄!!」

 

 

中島家では幼馴染の小山友香が叫んでいた

 

 

「ふぁ・・・まだ眠いで・・・」

 

「今日は大事な試合でしょうが!さっさと起きなさい!」

 

「あ~気合入らへんわ。友香がおはようのキスとかしてくれたら気合入るんやけどn・・・むぐっ!」

 

 

英雄が冗談交じりでそう言っていると、友香はその口を塞ぐように唇を重ねた

 

 

「・・・気合、入った?」

 

 

頬を赤く染めながら友香は英雄に問いかける

そして・・・

 

 

「・・・ワンモアプリーズ」

 

「調子に乗るな!!」

 

 

・・・殴られた

 

 

「ったく、さっさとご飯食べなさいよ」

 

「ん?友香が作ってくれたんか?」

 

「そうよ。どうせおばさんが仕事でいないからオニギリとかで済ませようとしてたんでしょ?ちゃんと食べないと力が出ないわよ」

 

 

英雄はまじまじとテーブルに並んだ朝食を見つめる

 

 

「・・・喰えるん?」

 

「殺すわよ」

 

「冗談や。ありがとな。友香」

 

 

笑顔でそう言う英雄を見て友香も嬉しそうに微笑む

 

 

「あ、せや。なぁ、今日の試合でヒット打ったらなんかご褒美くれへん?」

 

「はぁ!?アンタ、アタシがここまでやってるのにまだ何か求める気!?」

 

「だってその方が気合入るやん」

 

 

へらへら笑いながら欲張りな発言をする英雄に呆れる友香

 

 

(はぁ・・・なんでアタシ、こんな奴を好きになっちゃったんだろう?)

 

「な、な、ええやろ?」

 

「ああもう!鬱陶しいわね!わかったわよ!向こうのエースからホームランを打ったら何でもしてあげるわよ!」

 

「え?マジで!?よっしゃぁぁ!!気合はいったで!!」

 

「言っとくけど、ホームランよ!ヒットも二塁打も三塁打も認めないんだからね!」

 

「わかっとる!欲望全開の俺に不可能はあらへん!友香の身体は俺のもんやぁぁ!!」

 

「うっさい!!」

 

 

再び殴られる英雄

 

 

「ほら、後片付けはアタシがやっておいてあげるから、さっさと行きなさい」

 

「ああ、ありがとな。ほな、行ってくるで」

 

 

そう言って家を出る英雄・・・だが

 

 

「友香ァァァ!!」

 

 

窓の外から声が聞こえ、友香は窓を開ける

 

 

「愛してるでぇぇ!!」

 

「さっさと行け!!」

 

 

顔を真っ赤にして叫ぶ友香

ふぅ、と溜息をつき・・・

 

 

「・・・なんでアタシ、あんな約束しちゃったんだろう・・・?」

 

 

後悔先に立たず

先程の約束を思いだし、友香は再び溜息をつく

 

 

「だ、大丈夫よね。甲子園優勝投手からホームランなんてそんな・・・」

 

 

自分に言い聞かせるように呟く友香

 

 

「・・・下着、もっと可愛いのに変えようかな?べ、別に見せるわけじゃないけど、そう!なんとなくよ!なんとなく!」

 

 

誰もいない部屋の中で言い訳をする友香だった

 

 

 

  ※海人出発後の島田家※

 

 

「ふにゅ・・・おはようです」

 

「おはよう葉月。ほら、顔を洗ってきなさい」

 

「はいです」

 

 

眠たそうにフラフラと洗面所に向かう葉月

美波はその間に台所で朝食の準備をする

 

 

「あ!フローラお姉ちゃんです!」

 

「え?あ、ホントだ」

 

 

葉月の声を聞いて美波がリビングに向かうと、テレビにフローラが映っていた

 

 

『今日の注目人物はドイツで人気急上昇中の女子高生モデル、フローラ・アルベルトさんです』

 

 

テレビでやっていたのは、これから人気が出そうな人を紹介するコーナーでそこにフローラが紹介されていたのだ

 

 

「へぇ~もう雲の上の人って感じね~」

 

「フローラお姉ちゃんすごいですっ!」

 

「でもこんなに有名になっちゃうとあまり日本に遊びに来れないかもね」

 

「あぅ・・・寂しいです」

 

「大丈夫よ。フローラは優しいからいくら有名になってもウチ達の事は忘れたりしないし、またいつか遊びに来てくれるわよ」

 

「はいです!」

 

(ピンポーン!)

 

「美波、葉月ちゃん。迎えにきたよ」

 

「明久お兄ちゃんです!」

 

「あ、そろそろウチも準備しなくちゃ」

 

 

葉月は玄関に向かい、美波は自分の部屋に向かった

 

 

 

 

 

『なお、フローラさんは現在、休暇を取っているとのことです。体調を崩しているというわけではなく、事務所関係者の話によると、本人の個人的な用事との事です』

 

『旅行にでも行ってるんですかね~?もしかしたら日本に来たりするかもしれませんね』

 




フローラは休暇を取って一体どこに・・・?
まぁ・・・想像つくよねw

次回も頑張ります

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