バカとテストとウチの弟   作:グラン

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前話にて、止まった時計を見て時間を勘違いし、男子の入浴時間にお風呂に入ってしまった優子
さてさてどうなるのか・・・?




第百九十問 お風呂場でハプニング

(なんで・・・こんなことに・・・)

 

 

木下優子は焦っていた

なぜなら・・・

 

 

(なんで・・・なんで男子が入ってくるのよぉぉぉ!!)

 

 

優子の入浴中に男性陣が入ってきたからだ

不幸中の幸いはこの大浴場が露天風呂になっていて、無駄に凝った造りで隠れるところがあったことだ

優子は複数の男子の声を聞き、すぐさま湯船から出て、大きい岩場の物陰に隠れた

 

 

(ど、どうしよう・・・)

 

 

混乱する優子だが、まずは現状をどうにかしなければならない

今、優子がいる場所は入り口から最も離れた岩場の影

複数の男子の目を掻い潜り、脱衣所に向かうことは不可能

そもそも辿り着いたところで脱衣所に誰もいない保証がない

さらに、彼女がいる場所は普通は誰も立ち入らない場所だが、絶対に人が来ないとは限らない

おまけに彼女は風呂に入っているわけだから当然裸だ

少し進めば湯船に入れるが、そこだと隠れる場所が無い

 

 

(でも、このままじゃ風邪を引いちゃうし・・・)

 

 

まさに絶体絶命

そんな時に彼女に好機が訪れた

恋人である海人が一人だけ近くにいるのだ

彼の様子は毒島や英雄が騒いでいるのから逃れ、ゆっくりと湯船につかっている感じだ

 

 

(は、恥ずかしいけど・・・)

 

 

恋人とはいえ裸を見られるのは恥ずかしい

しかし、この状況を一人で打破するのは不可能

不特定多数の男子に見られるくらいならと優子は決心した

 

 

(海人君!海人君!)

 

「ん?」

 

 

優子は海人にだけギリギリ聞こえる位の声で呼びかけ、海人もそれに気づいたようで周囲をキョロキョロと見渡す

そして、岩場から手だけが出て、手招きしているのに気づき、海人はそっちに移動そして・・・

 

 

「ゆ、優k・・・!!むぐむぐ」

 

(しー!声が大きい!!)

 

 

海人は大声をあげそうになり、優子は慌てて彼の口を塞ぐ

この時、胸を隠していた手を離したので、彼にしっかりと見られたわけだが、今の彼女にそれを気にしている余裕はない

 

 

(大声出さないで。いい?)

 

 

海人はコクコクと首を縦に振り、優子は彼の口から手を離す

 

 

(な、なんで優子さんがいるの!?)

 

(だって今は女子の入浴時間でしょ?十二時前位で・・・)

 

(え?ま、まだ九時過ぎだよ?)

 

(嘘!?だってアタシ、ちゃんと時計で・・・)

 

 

そう言って反論する優子だが、それ以上は何も言えない

なぜなら彼の言葉が嘘ではないことを今の状況が物語っているからだ

沈黙の中、優子は両手で身体を隠そうとするが、隠しきれていない

 

 

(あ、あまり見ないで)

 

(ご、ごめん!!)

 

 

海人とて健全な男子だ

目の前に女性、しかも好きな女の子が裸でいたら当然視線はそこに向いてしまう

 

 

(でもどうしよう?このままじゃ風邪ひいて・・・)

 

「クシュン!!」

 

「っ!!

 

 

突如、身体が冷えてきた優子がくしゃみをしてしまう

 

 

「ん?海人。今なんか声がしなかったか?」

 

「あ、ご、ごめん。僕がちょっと、くしゃみをしちゃって」

 

「気をつけなアカンで~ほな、俺はそろそろ出るから」

 

「う、うん」

 

 

英雄はそう言うと早々に出て行き、おどおどしながら受け答えをした海人はホッと溜息を吐く

 

 

(中島君、やけに速いわね?)

 

(英雄君はいっつもあんな感じだよ。長風呂は好きじゃないみたい)

 

 

そして現状を打破するため、周りを見渡す

すると・・・

 

 

(優子さん、あっちの岩陰なら湯船に浸かれるし、人目につかないよ)

 

 

海人は湯船の一番奥の岩陰に目を向ける

 

 

(でもあそこまでどうやって行くのよ)

 

 

しかしそこに辿り着くには男子の目を掻い潜らなければならない

 

 

(僕が壁になるから背中に隠れて移動しよう。幸い、あそこまでの進路上には誰もいないし・・・)

 

(そ、そうね。他に方法はなさそうだし、わかったわ)

 

 

優子は海人の背中に隠れながら音を立てぬよう湯船に浸かる

そして海人の背中に抱き着くようにくっついた

 

 

(ゆ、優子さん!!あ、当たってる!)

 

(し、しょうがないでしょ!離れたらバレるんだから!)

 

 

海人は背中に微かに当たる柔らかい感触を感じ、顔を赤くさせながら、横歩きのように移動し、無事に優子を岩陰に送り届ける

しかし、現状は最悪だ

海人の言うとおり、今の時間が九時過ぎなら女子の時間に変わる十一時まで二時間近くある

二時間も湯船に浸かっていると間違いなくのぼせてしまうだろう

 

 

(こうなったら秀吉のフリをして外に出てやろうかしら?)

 

(そんな、タオルも無いのに危険すぎるよ!)

 

(アタシだって海人君以外の男に裸を見られるなんて嫌よ。でもいい加減暑くて・・・)

 

 

そんな会話をしているその時・・・

 

 

「おぉ・・・これは凄い風呂じゃのぅ」

 

((タイミングが悪い!!))

 

 

秀吉の登場にツッコむ二人

 

 

「お、俺、そろそろ・・・」

 

「俺も・・・」

 

 

秀吉の姿を見た部員たちは『なぜか』前かがみになりながらぞろぞろと外に出て行った

残っているのは秀吉と智也、そして海人と優子だ

 

 

(これは・・・チャンスかも)

 

(え?)

 

(あの二人なら事情を説明すれば何とかなるかもしれないって事よ。秀吉は弟だし、北条君は後ろを向いててとか言えば・・・)

 

「お~でっかい風呂じゃねえか」

 

「学園長も凝ってるよね」

 

 

((タイミングが悪い!!))

 

 

再びツッコむ二人

運悪く、明久、雄二、康太の三人が入ってきた

いや、脱衣所で鉢合わせしなかっただけマシか・・・

 

 

「・・・ムッ!」

 

 

勢いよく康太がこっちに向かってくる

そして・・・

 

 

「ど、どうしたの?康太君」

 

「・・・海人か・・・もう一人いる気がしたんだが、気のせいか」

 

「おいムッツリーニ、掛け湯くらいしてから入れよ」

 

「・・・すまん」

 

 

康太が戻っていく

それと同時に湯船の中に潜って隠れていた優子が出てくる

 

 

(びっくりした・・・なんであんなに勘が鋭いのよ!)

 

(危なかったね・・・)

 

 

 

  ※数分後※

 

 

「さて、部屋に戻ってダウトでもしようぜ」

 

「いいね。負けないよ」

 

「腕が鳴るのじゃ」

 

「・・・」

 

「どうしたのじゃ?ムッツリーニ」

 

「・・・なんでもない(やっぱり誰かいるような気がする。勘が鈍ったか?)」

 

 

海人の方を見ていた康太は首を傾げながら明久達に着いていき外へ出て行った

 

 

(バレた・・・?)

 

(いや、康太君が鼻血を出してないってことは確証はないって所じゃないかな?)

 

(そう言えば秀吉の裸を見てるのに鼻血を出してないわね)

 

(工藤さんが色々仕掛けてくるせいである程度は耐性がついてきたらしいよ)

 

 

残りは一人、智也のみ

 

 

  ※10分経過※

 

 

「・・・」

 

「「・・・」」

 

 

  ※20分経過※

 

 

「・・・」

 

「「・・・」」

 

 

  ※30分経過※

 

 

「・・・ふぅ」

 

((女子か!!))

 

 

予想以上の長風呂にツッコむ二人

 

 

「海人、今日は随分長いじゃないか?」

 

((お前が言うな!))

 

「あ、う、うん。気持ちいいなって思って」

 

「そうだな。良い湯だ」

 

 

目を閉じてそう言う智也

 

 

「そろそろ出るか?海人は?」

 

「ぼ、僕はもう少し」

 

「そうか、じゃあお先に」

 

 

そう言ってやっと出て行く智也

 

 

「ふぅ・・・やっと出てくれたね。優子さ・・・」

 

 

海人が視線を向けると・・・

 

 

「・・・暑い」

 

 

優子は湯船の外で身体を隠すことも忘れてぐったりしていた

 

 

「ゆ、優子さん!とにかくこの隙に外に出よう」

 

 

海人は脱衣所に人がいないことを確認して優子に向かって手招きする

優子はいつ誰が入ってくるかわからない状況なので身体を拭いて、大急ぎで浴衣を身に纏う

と、その時!

 

 

「すっかり遅くなっちまった・・・あれ?海人先輩と・・・木下先輩!?え?あれ?」

 

 

控え投手の藤本君登場

海人と優子が一緒にいるところを目撃して絶賛混乱中

 

 

「も、もしかして混y・・・」

 

「お、お主はたしか藤本じゃったな?」

 

 

とっさに秀吉の真似をする優子

 

 

「あ、弟さんの方でしたか・・・よく考えたら当たり前ですよね。すいません」

 

「気にするでない。今から風呂かの?ゆっくりするとよいのじゃ」

 

「はい」

 

 

そう言って優子はそそくさと立ち去っていった

 

 

「ホント、そっくりですね。あれ?海人先輩。顔が赤いですよ?」

 

「ちょ、ちょっと長風呂しちゃってね。のぼせたかな」

 

「気をつけてくださいね」

 

「う、うん。それより、藤本君は今まで何してたの?」

 

「あ、えっと・・・ちょっと自主練を・・・」

 

「ちゃんと休まなきゃダメだよ」

 

「そのセリフ、そっくりそのまま普段の海人先輩にお返ししますよ」

 

 

苦笑いしてそう言い、風呂に入っていく藤本

 

 

「危なかった・・・寿命が縮みそうだよ。全く・・・」

 

 

海人はそう呟き、素早く着替えて脱衣所を後にした

 

 

 

 

  ※おまけ・もう一人のラッキースケベ※

 

 

「あぁ・・・いい湯だな」

 

 

海人達と入れ替わりで風呂に入った藤本は湯船に浸かりながらそう呟く

 

 

「気持ち良くてだんだん・・・眠く・・・」

 

 

藤本の意識は遠のいていった

 

 

「・・・い、おい、藤本!」

 

「んん・・・ふぁ・・・」

 

「お前、こんなところで寝るなよな。危ないだろ」

 

 

うたた寝しているところをマネージャーの椎名真琴に叩き起こされた藤本

しかし忘れるなかれ。ここは風呂場だ。つまり・・・

 

 

「あぁ・・・悪いな、椎名・・・って、のわぁ!!」

 

「おわっ!急に叫ぶなよ」

 

「お、お前、何て格好してんだよ!!」

 

「?何がだ?」

 

「だから!なんで裸なんだよ!?」

 

「?風呂に入ってんのに服着てる方がおかしいだろ?」

 

「あ、そっか・・・じゃなくて!!ちょっとは隠せよ!!

 

 

真琴は全裸である

しかも全く隠そうとしていない

 

 

「別に減るもんじゃないし、いいだろ」

 

「いいわけあるかぁ!お前は女の子だろ!」

 

「ま、そうだけどさ」

 

『真琴ちゃん。誰かいるの?もしかして優子先輩?』

 

 

奥から近づいてくる一つの影

 

 

「ああ、藤本」

 

「なんだ。藤本君か・・・って・・・ほぇ?」

 

 

藤本は見てしまった

整った顔立ち、しっかり育った胸、引き締まったウエスト

そう・・・もう一人のマネージャー、朝比奈あやかの裸を・・・

 

 

「き・・・キャァァァァァアアア!!」

 

(これが正しい反応だよな・・・)

 

 

目を閉じてウンウンと頷く藤本

 

 

(スコンっ!)

 

「フゴッ!」

 

「お、ナイスコントロール」

 

 

あやかの投げた桶が藤本の顔面に命中

目を覚ましたばかりの藤本は再び気を失うのだった

 




ラッキースケベと言えば海人!!
と、思っていたが海人を上回るラッキースケベが・・・

次回も頑張ります

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