バカとテストとウチの弟   作:グラン

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なんとか今週も更新



第百八十一問 お人好し

正一の話を聞いた一同は全員、言葉を失う

 

 

「あとは君たちも知っての通り、父さんは彼女の父親の竹原さんの元に警官を向かわせ、藤堂学園長を犯人に仕立て上げた」

 

「なるほどな。教頭に言った内容も全部が嘘ではなく、半分は真実が含まれていたわけだ」

 

 

学園長が犯人と言ったのは嘘だったが、薬物が使われたのは本当だった

嘘というのは全部が全部ウソであるよりも、真実を含んだ嘘の方が信憑性が高いのだ

 

 

「・・・僕は・・・ただ彼女を助けたかったんだ・・・もう苦しむ姿なんて見たくなかった。泣き声なんて聞きたくなかった・・・なのに・・・結局、僕が逃がしたせいで彼女は自殺してしまった・・・」

 

 

地面に膝をついて涙を流す正一

 

 

「北条君・・・君の大切な人を奪ったのは僕だ。すまなかった」

 

 

そう言って彼はもう一度頭を下げた

 

 

「・・・あなたの取った行動は間違いではありません。きっとさやかも、苦しみから解き放ってくれたあなたに感謝しているでしょう。アイツは・・・バカがつくほどお人好しですから反省している人を恨んだり責めたりはしません」

 

 

目を閉じ、さやかの顔を思い浮かべながら智也は正一にそう告げた

 

 

「俺もまだ心の整理はついていませんが、今の話を聞いて、あなたを恨もうとは思いません」

 

「・・・すまない」

 

 

そんな会話が続く中、智也以上に動揺している人物が一人

 

 

「な、何だよそれ・・・親父が芹沢を監禁!?じゃあ俺が部屋にいるとき、芹沢は・・・」

 

「・・・ああ、家の地下で犯されていた」

 

 

その言葉に恭二は衝撃を受ける

自分の部屋の真下で好きな女が知らない男に犯されていたのだ

動揺するのも無理はない

 

 

「恭二、あの子は・・・最後までお前を恨みはしなかった」

 

「う、嘘だ!!好きでもない男に犯され、それが原因で酷い目に合って・・・恨まないわけがない!!」

 

「嘘じゃない。『キョウ君は悪くない』って何度も言っていたよ・・・これが、彼女がお前に宛てた手紙だ。あの日からお前は変わってしまって渡せなかった。でも、捨てることもできなかった」

 

 

そう言って正一は恭二に二つに折りたたまれたメモ用紙を渡す

タクシーの中で書いたせいか、所々字がブレている

 

 

『キョウ君へ

 

ごめんなさい。私、キョウ君の気持ちを全く考えず、無神経な事を言ってキョウ君の事を傷つけちゃったよね?

キョウ君が私の事をそんな風に思ってくれてるなんて知りませんでした。ごめんなさい。

私は遠いところに行くけど、キョウ君は私の事なんて忘れて幸せになってください。

キョウ君は本当はとっても優しい人だって私知ってるよ

だからきっと私なんかよりもっといい人が現れるよ

キョウ君の幸せを心から祈ってます。

さようなら

 

さやかより』

 

 

「・・・バカじゃねえの・・・なんでお前が謝るんだよ・・全部・・・俺が・・・」

 

 

そこまで言って恭二は手紙を強く握り締め、泣き出した

そこにはもう狂気に満ちた姿は無い

そこにいるのは・・・たった一人の友達を傷つけ、死なせてしまった事を後悔し涙を流す一人の少年の姿だった

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か姫路」

 

「はい。平気です」

 

 

 

その後、智也は姫路の縄を解き、その場を後にしていた

 

 

「本当によかったのか?根本を警察に突き出さなくて」

 

「はい。根本君は反省していましたから、きっと自分で出頭すると思います」

 

 

姫路は恭二の事を許し、何もせずにその場を去ったのだ

理由を聞くと自首するのと突き出されるのでは罪の重さが違うからだそうだ

 

 

「お前は本当にお人好しだな」

 

「・・・お人好しな女の子は嫌いですか?」

 

「・・・ノーコメント」

 

「言うと思いました♪」

 

 

にこやかに笑う姫路

そんな二人の姿を見る二つの影

 

 

「俺らは出番無しやな~」

 

「だな。ったく、せっかく大暴れできると思ったのによ」

 

「っていうか、智也の奴、絶対俺らを呼んだこと忘れてんで」

 

 

雄二と英雄である

姫路の安全を最優先した智也は二人を呼び出し、建物の背後に回らせ、いざという時は救出できるように対策を取っていたのだ

しかし、根本の兄、正一の乱入により、出るタイミングを失い、そのまま解決してしまったのだ

 

 

「ま、姫ちゃんも無事やったし、よかったやん」

 

「そうだな。ここは北条への貸しにしといてやるか」

 

 

などと会話をしていると、智也達の会話も聞こえてきた

 

 

『あ、あの、智也君』

 

『どうした?』

 

『その・・・根本君が私の携帯でお母さんに友達の家に泊まるって送っちゃったみたいで・・・その・・・』

 

『・・・帰るに帰れない・・・』

 

『・・・はい。それで・・・その・・・と、智也君の家に泊めてもらえませんか!?』

 

『は!?』

 

 

姫路の発言に動揺する智也

 

 

『やっぱり・・・ダメですよね。わかりました。私は近くの公園で野宿を・・・』

 

『アホか。危ないだろ。わ、わかったよ。ウチに来い』

 

『あ、ありがとうございます!』

 

 

嬉しそうにそう言う姫路

 

 

「・・・姫ちゃん大胆やで」

 

「ククッ、弄るネタが手に入ったぜ」

 

((こいつは面白いことになった))

 

 

智也をからかうネタを手に入れた二人はニヤリと笑うのだった

 

 

 

 

 

 

 

「・・・兄貴・・・俺、兄貴に迷惑かけるかもしれない。いや、もう充分掛けてるけど、それ以上に・・・」

 

「わかっているよ。自首するんだろ?」

 

「・・・うん」

 

 

取り残された根本兄弟

恭二の気持ちを正一は理解していた

 

 

「それでいいんだ。迷惑なんていくらでも掛ければいい。だって・・・僕達は兄弟だろ?」

 

「ありがとう・・・兄貴」

 

「それに、ようやく準備が整ったんだ」

 

「え?」

 

 

正一の言葉に首を傾げる恭二

 

 

「根本グループは・・・僕が終わらせる」

 




正一の真意
姫路の大胆な行動
一体どうなる?

次回も頑張ります

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