バカとテストとウチの弟   作:グラン

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やや重たい内容になっております


第百七十七問 あの日のその後

 

時は遡り、4年前

恭二に襲われたさやかは一人泣きじゃくっていた

 

 

「ごめんね・・・キョウ君。ごめんね・・・」

 

 

さやかが泣いているのは自身を穢された怒りや悲しみではなく、自分がの行動や発言で恭二を傷つけてしまった事に対する後悔によるものだった

当然、彼女に悪意は無く、非があるわけでもないのだが、心優しい彼女は自分を責め続けた

 

 

「大丈夫かい?」

 

 

すると不意に声を掛けられる

顔をあげるとそこには恭二の父が立っていた

ほとんど面識のないさやかだが、良い噂は聞かない男ということもあり、警戒する

 

 

「恭二が慌てて走っているものだから何事かと思えば・・・これをやったのは恭二だね?」

 

「ち、違うんです!キョウ君は悪くない!悪いのは私の方で・・・」

 

 

さやかが慌てて恭二を庇うと、根本父はさやかに自分の着ている上着を掛けた

 

 

「とにかく、車で家まで送ろう。その格好じゃあ帰れないだろう?息子の不始末の尻拭いは親の仕事だ」

 

 

根本父に指摘され、自分が裸同然の状態だということを思いだし、顔を赤くするさやか

少し迷ったが、この格好で家に帰れないのも事実なので素直に送ってもらうことにした

車には別に運転手が乗っており、根本父は『隣にいられると恥ずかしいだろう』と助手席に乗り、さやかは後部座席に乗った

そしてルームミラーの角度を変えてさやかの方が見えないようにした

 

 

(悪い噂ばっかり聞くけど・・・いい人なのかな?)

 

 

そういった細かい気遣いでさやかの警戒心は薄れていた

その後、根本父は学校での恭二の様子を聞くなど、父親らしい質問をし、さやかは警戒を解いてしまった

 

 

(あ、あれ・・・?なんか眠く・・・)

 

 

さやかは気付いていなかった

これは全て根本父の策略だということを・・・

彼が助手席に座ったのもルームミラーの角度を変えたのも、さやかを気遣った訳ではなく・・・自分と運転手がガスマスクをつけていることに気付かれないようにするためだったのだ

 

 

「眠ったか・・試作品の催眠ガスの実験をこんなところですることになるとはな・・・」

 

 

根本父は車内の換気をしながらそう呟く

 

 

「全くあの出来損ないめ。余計な手間を増やしおって・・・しかしまぁ・・・これは使い道がありそうだ」

 

 

さやかの身体を舐めまわすように見て、根本父は何かを思いついたのかニヤリと笑い、運転手に車を走らせるように指示を出した

 

 

 

 

「う・・・ん・・・?ここは・・・?」

 

 

さやかが目を覚ますと、そこは真っ白な部屋だった

 

 

「そうだ・・・キョウ君のお父さんの車に乗って眠くなって・・・って!!な、なんで裸なの!?あ、あれ・・・?」

 

 

さやかは自分が服を着ていない状態で大の字になって立っていることに気付き身体を隠そうとする・・・が、縛られているわけではないのに手足が動かない

手首と足首にリストバンドのようなものが巻かれているだけなのにビクともしないのだ

 

 

「ふむ、強力な電磁力の拘束具の実験は成功か。これならすぐに実用可能だな」

 

 

部屋の中に入ってきた根本父は必死に抵抗するさやかの様子を見てそう呟く

 

 

「い、いや!!見ないで!!早くこれを外して!」

 

「そうはいかん。根本家の恥を世間に知られるわけにはいかんからな」

 

「キョウ君の事なら誰にも言いません!!」

 

「そんなもの信用できるわけがないだろう。だから・・・言えないようにしてやる」

 

 

さやかは殺されると思い顔を青くする

 

 

「殺しはしないさ。今日は急だったからな・・・お客さんは一人だけだ」

 

「・・・お客さん・・・?」

 

 

するとドアが開き、一人の中年の男が入ってくる

 

 

「本当にいいんですか?」

 

「もちろんです。その代わり、契約の方をよろしくお願いしますよ」

 

「ふふ、お安い御用ですよ」

 

 

そう言うと根本父は出て行き、さやかは中年男と二人っきりになった

 

 

「お、お願いします!助けてください!」

 

 

必死に懇願するさやか

しかし男はニヤニヤと笑うだけだった

そして男は・・・自分の服を脱ぎ始めた

さやかは男が何をする気なのかわかってしまい、顔を青くする

 

 

「う、嘘・・ですよね・・?お、お願い!!やめて!!い、いやあああああ!!!」

 

 

そしてさやかは・・・見ず知らずの男に犯された

それから何日経っただろう?

何人に犯されただろう?

さやかは精神的に追い詰められていた

 

 

(トモ君・・・助けて・・・)

 

 

心の中で大好きな少年の事を思い浮かべるさやか

 

 

「ふむ、だいぶ儲かったし、口封じ用の映像もあるし、そろそろ解放してやってもいいかもな」

 

 

その言葉にさやかは目を輝かせる

やっと帰れる

智也に会える

そう思うと嬉しくてしかたなかった

 

 

「言うまでもないことだが、ここでのことは誰にも言うなよ」

 

「は、はい!誰にも言いません!」

 

 

声に力が籠るさやか

しかし・・・

 

 

「ふん、まぁあの出来損ないにしては今回ばかりは役に立ったな」

 

 

根本父の言葉にさやかはピクリと反応をする

 

 

「出来損ないって・・・キョウ君の事・・?」

 

「他に誰がいる?」

 

「・・・るな」

 

「あ?なんだ?よく聞こえな・・・フゴッ!!」

 

 

唯一動く頭を使って、さやかは根本父の顔面に頭突きを決める

 

 

「キョウ君をバカにするな!!キョウ君は出来損ないなんかじゃない!!」

 

 

根本父を睨み付けるさやか

 

 

「こ・の・・クソガキがぁ!!」

 

 

抵抗できないさやかをサンドバックのように殴る根本父

 

 

「この俺に刃向った事を後悔させてやる!!」

 

 

そう吐き捨てると根本父は部屋を出て行った

 

 

「・・・やっちゃった・・・」

 

 

せっかく解放してもらえるチャンスを捨ててしまったさやかはそう呟くのだった

 




これがさやか強姦事件から自殺までの空白の一週間の真相
根本父に監禁されていたのです
次話では自殺に至る経緯を描きます

次回も頑張ります

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