バカとテストとウチの弟   作:グラン

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ちょっと纏まりが悪かったかな?
とりあえず更新です


第百六十七問 元神童と優等生の恋愛事情 後編

あれから数日が経った

あの日から雄二は学校に行っていない

当然、翔子も学校には行っていない

そして今日は土曜日・・・

翔子の結婚式が行われる日だ

あまりにも急な話。普通は準備でもっと時間が掛かるものだが、霧島家が本気を出せばこの程度、造作もないことだ

 

 

「雄二!!」

 

「なんだ明久か。そんなに慌ててどうした?」

 

 

自宅でぼんやりとしている雄二に明久が怒鳴り込んできた

 

 

「どうしたじゃないだろ!?霧島さんが結婚しちゃうんだぞ!?」

 

 

平然としている雄二に苛立ちながら明久が叫ぶ

一緒に美波と瑞希も来ている

 

 

「ああ・・・それが?」

 

「な!?」

 

「アンタ!翔子が他の男と結婚するのよ!?」

 

「だからわーってるよ。なんだ?お前ら招待状でも貰ったのか?」

 

 

全く動揺することなく返答する雄二

 

 

「坂本君は翔子ちゃんがいなくなってもいいって言うんですか?」

 

「ああ、これ以上付き纏われないで済むと思うと清々するね」

 

「雄二ぃぃぃ!!」

 

 

その言葉にあきひさがブチ切れ、雄二の胸倉を掴みあげる

 

 

「・・・んだよ?」

 

「テメェ・・・本気で言ってんのか?」

 

「・・・ああ」

 

「そうかよ・・・じゃあ勝手にしろ!!帰ろう二人とも」

 

 

明久は雄二を離し、美波と瑞希を連れて帰っていった

 

 

「・・・ったく、余計なお世話だってんだ」

 

(学力が全てじゃないって証明する?そんな自己満足の為に俺は翔子を何年待たせた?翔子の好意から逃げ続けて今更何て言えっていうんだよ)

 

「結婚か・・・そうさ、これでもう俺は付き纏われずに済むんだ。ハハッ、俺は自由だ」

 

 

雄二は冷蔵庫から缶ジュースを一本取る

そしてリビングでソファーに座り、テレビを点けた

適当にチャンネルを回し、バラエティ番組を見ることにする

 

 

「ハハっ!バカみてー。この番組おもしれーな。翔k・・・」

 

 

雄二はいつもの癖で誰もいない自分の隣に話しかけていた

ソファーに座った時も無意識のうちに翔子の座るスペースを開けて座っていた

彼にとって翔子が隣にいるのは当たり前になっていたのだ

いつも隣にいると思っていた

ずっと自分を想ってくれると思っていた

だけど・・・彼女はもういない

数日後には彼女の隣には自分じゃない他の男が・・・・

 

 

「・・・クソが!!」

 

 

雄二は手に持ったジュースを乱暴にテーブルに置くと、勢いよく玄関から飛び出した

っと、そこに・・・

 

 

「危ねっ!誰だよ?こんなところに自転車を止め・・たのは・・・」

 

 

玄関前に止めてある自転車にぶつかりそうになる

雄二はその自転車を見て表情を変える

 

 

(これは明久の自転車・・・なんでここに置きっぱなしなんだ?いや、そもそも島田だけならともかく姫路が一緒なのに自転車で来るわけが・・・)

 

 

明久の自転車が置いてある事に違和感を感じる雄二

しかも鍵は掛かっていない

 

 

「・・・全部お見通しってわけか。恩に着るぜ明久!!」

 

 

雄二はその自転車に乗って一目散に走り出した

そして雄二が去った路上に現れた三つの影

 

 

「やれやれ、世話が焼けるな」

 

「アキはこうなるってわかっていたの?」

 

「うん。アイツが霧島さんを諦められるわけがない」

 

「坂本君、大丈夫でしょうか?」

 

「僕達には何もできなかったけど、雄二ならきっと大丈夫だよ」

 

 

明久達とて今まで何もしてこなかったわけじゃない

しかし、翔子の家に行っても『お引き取りください』と追い返され、電話を掛けても電源を切られており、メールをしても返事は無い

 

 

「そういえば海人は?」

 

「それが朝にはもういなかったのよ」

 

「智也君達とも連絡がつかなかったんです」

 

 

海人の性格を考えると友人のトラブルを放っておくとは思えず、首を傾げる美波

瑞希も他のメンバーと連絡がつかないと言い首を傾げるのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

「翔子、時間だ」

 

「・・・うん」

 

 

父親に声を掛けられ翔子はドアの前に立つ

ウエディングドレスを着た彼女

しかしその表情は暗い

 

 

(・・・雄二)

 

 

思い出すのは大好きな彼の顔

そしてドアが開けられた

中にいるのは大勢の親族と・・・自分の夫になる男性

その男性は父が霧島グループの後継者とするために婿養子として迎え入れた人物

翔子自身は今日、初めて会う人物である

彼女の本心としては雄二以外の男と結婚なんてしたくない

しかし、彼女は約束してしまった

父に『叶わない想いは諦めた方がいい』と言われた時にカッとなって反論

売り言葉に買い言葉といった感じで『17歳の誕生日までに恋人になれなかったら』と約束したのだ

雄二との今までを思い出しながら父に連れられ新郎の元へ歩く翔子

そして新郎と腕を組み歩きだし、神父の前に立つ

 

 

『あなたは妻を生涯、愛することを誓いますか?』

 

「誓います」

 

 

新郎は間髪入れず、そう答える

 

 

『あなたは夫を生涯、愛することを誓いますか?』

 

(・・・雄二・・・さようなら)

 

「・・・誓いm・・・」

 

『翔子ぉぉぉ!!!』

 

 

勢いよくドアが開き、大声で彼女を呼ぶ声

聞き間違えるわけがない

その声は彼女の最も愛する人の声だった

 

 

「・・・雄二!」

 

『お客様!困ります!』

 

「翔子!行くな!行かないでくれ!」

 

 

係員に取り押さえられながら大声で叫ぶ雄二

 

 

「お前には俺よりふさわしい男がいる。お前の俺への想いは勘違いだ。・・・そう言って、俺は逃げてきた。だからお前が他の奴と結婚すると言われても仕方ない。全部の自業自得だ。そう思っていた。でも・・・やっぱりダメだ!身勝手なのはわかっている!それでも俺は・・・お前がいないとダメなんだ!!お前の事が大好きなんだ!!翔子!!」

 

「・・・雄二」

 

 

雄二に好きと言われ、嬉し泣きをする翔子

そして思わず雄二の元に駆け寄ろうとするが、それよりも早く霧島父が雄二の前に立った

 

 

「どういうつもりだね?雄二君」

 

「・・・翔子は誰にも渡さねえ」

 

「随分勝手な事を言うじゃないか。今まで散々翔子の想いを無下にしておいて今更渡さないだと?」

 

「・・・言い訳はしねぇ」

 

「せっかくの式を台無しにして・・・私がその気になれば君を社会的に消すことくらいたやすいのだよ?」

 

「!!」

 

 

霧島父の言葉に翔子は顔を青くする

 

 

「お父さんやめて!私はあの人と結婚する!これからもお父さんには逆らわないって約束するから雄二だけは・・・『上等だよ』・・雄二!」

 

「世界中を敵に回したって翔子はわたさねえ!翔子は俺が守る!」

 

「・・・そうかい。じゃあ・・・」

 

 

そう言って霧島父は懐に手を入れる

 

 

「いや・・・やめてぇぇぇ!!」

 

 

その瞬間、翔子は走り出し、雄二に向かって飛びつき、彼を庇うように抱きしめた

直後・・・

 

 

(パン!パン!パパン!パン!!)

 

 

大きな音が会場全体に鳴り響いた

 

 

「しょ・・うこ・・・?翔子!?」

 

「・・・雄二?」

 

 

銃声だと思い、慌てる雄二

だが・・・雄二も翔子も特に撃たれた様子はない

恐る恐る霧島父の方に視線を向ける二人

霧島父が手に持っていた物は・・・・・・クラッカーだった

 

 

「「・・・は?」」

 

 

きょとんとする二人

辺りを見渡すと会場中の人がクラッカーを手に持っていた

そして全員が拍手をし始めた

混乱する雄二と翔子

 

 

「こ、これはどういう・・・」

 

「雄二君」

 

 

霧島父が笑顔で会場の正面を指差す

するとそこには大型モニターが設置されており・・・『ドッキリ大成功』と表示されていた

 

 

「「・・・はい?」」

 

「いやぁ、すまなかったね。二人ともどう見ても両想いなのに、なかなかくっつかないものだから一芝居打たせてもらったよ」

 

「じゃあこの結婚式は?」

 

「もちろん嘘」

 

「学校を辞めるってのは?」

 

「提出したのは退学届じゃなくて休学届。ちなみに学園長もグル」

 

「あのババァ・・・ハッ!まさか明久や島田もグルか!?」

 

「雄二君と同じクラスの子達は何も知らないよ。Aクラスの方には話を通しているけどね」

 

 

雄二の疑問に答えていく霧島父

 

 

「アンタ・・・これをやるために事前に仕込んでいたのか?」

 

「そうだよ。いやぁ、なかなか雄二君が来ないから内心、焦ったよ。でもまぁ僕は楽しめたし、二人は無事結ばれて万事解決・・・うん?翔子?なんでお父さんの顔を掴むんだい?」

 

「・・・お父さんの・・・バカァァァ!!!」

 

「グァアアアアァ!!僕の頭蓋がぁぁぁ!!」

 

 

翔子にアイアンクローを決められて悶え苦しむ霧島父

 

 

 

  ※一方その頃※

 

 

「よかったね、代表」

 

「一時はどうなる事かと思ったわ」

 

「雄二君、間に合ってよかったね」←優子に事前に事情を聞いていた

 

「そうだな」

 

 

舞台袖で様子を見ていた愛子、優子、海人、智也の姿がそこにはあった

 

 

 

  ※数日後※

 

 

「翔子ぉ~お父さんが悪かったからいい加減機嫌を直しておくれ」

 

「・・・フンっ!」

 

 

やり過ぎてしまった霧島父はしばらくの間、翔子に口をきいてもらえなかったのだった

 




美波「かぁ~いぃ~とぉ~?知ってたのに黙ってるなんて冷たいじゃない」

海人「ご、ごめんね姉さん。優子さんから絶対に黙ってるようにって言われて・・・」

美波「問答無用!お仕置きよ♪やっておしまい」

秀吉「任せるのじゃ」

海人「ひ、秀吉君。なんでスカートを持ってこっちに・・・や、やめ・・・」


数分後、海人の女装撮影会が開始されるのだった


次回も頑張ります

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