バカとテストとウチの弟   作:グラン

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ついに悲しい事件が・・・


第百五十六問 さやかの手紙

デートの翌日、智也はいつも通り部活動に参加していた

 

 

(アイツ・・・今日は来ないのか・・・)

 

 

普段は毎日来るのに今日に限って姿を見せないさやか

 

 

(まぁ正直助かるけどな。今はアイツを直視する自信が無い)

 

 

昨日の事を思いだし、少し顔を赤くする智也

 

 

「なぁトモ、芹沢の奴今日は来ないんだな」

 

「みたいだな。どうしたんだ?いつもは鬱陶しがってるくせに」

 

「いや、いなきゃいないで静かすぎると思ってな。トモ、芹沢と何かあったのか?例えばデートしたり抱き着いてキスしたり・・・」

 

「お、お前!見てたのか!?」

 

「・・・え?」

 

「え?」

 

 

カマを掛けただけのつもりだった秀一は智也の反応に呆ける

智也も墓穴を掘ったと慌てた表情を見せ、秀一は面白いオモチャを見つけた子供の様にニヤッっと笑う

 

 

「ほほう、そうだったのか。そしてホテルに行ってあのしっかり育った胸を揉んでその先も・・・「そこまでしてねえよ!!」・・・つまりキスまではしたんだな?」

 

 

再び墓穴を掘り、やっちまったという表情をする智也

その後、野次馬と化した先輩達の質問責めにあい、結局、付き合い始めたことがばれてしまったのだった

 

それから三日が経過したが、さやかは一向に姿を見せない

智也はさやかの考えを読む

何かの駆け引きのつもり・・・というのは無い

なぜなら彼女にそこまでの知能は無い

となれば一番可能性が高いのはやはりキスの件が恥ずかしくなったか・・・

 

 

「しばらくそっとしておくか・・・」

 

 

更に二日経過、デートの日から五日経過している

未だにさやかは姿を見せない

そっとしておくつもりだった智也だが、もう限界だった

智也は携帯で一言『会いたい』とメールを入れた

しかし、さやかからの返信は無かった

 

その翌日、部活を終え帰宅した智也

この日もさやかは来なかった

メールも帰って来ない

明日は日曜日で部活は休み

智也はさやかに直接会いに行く決意をする

 

そしてその翌日、デートからちょうど一週間後

朝早くにさやかの家に向かおうとする智也

非常識だと思ったが、さやかに会いたいという気持ちが勝り施設を出る

と、その時、郵便受けに入っている新聞に気付く

桜は朝食の準備で忙しいので一旦新聞を持って入ろうと思い、郵便受けから抜き取る

・・・が、その一面を見て智也は固まった

そこにはさやかの写真が掲載されていた

しかも大きな文字で・・・『女子中学生投身自殺』と書かれていた

 

 

「う・・そだ・・・」

 

 

智也は新聞を郵便受けに突っ込んで走り出す

さやかの家に到着

そこは病院からさやかを送り届けたときと何も変わっていなかった

・・・玄関に『忌中』と書かれた張り紙が貼ってあること以外は・・・

 

 

「あ、あの!すいません!この家の人は・・・」

 

「あなたはさやかちゃんのお友達?・・・さやかちゃんのお母さんならあそこで泣き崩れてるわ。そっとしておいてあげてちょうだい」

 

「さ、さやかは・・・」

 

「・・・亡くなったわ。自殺だったそうよ」

 

 

そこから先、智也には近所のおばさんの言葉は何も聞こえなかった

ただ頭の中が真っ白になってフラフラと施設に帰っていった

 

 

「と、智也君!」

 

「・・・桜さん・・・」

 

 

施設に戻った智也を出迎えたのは心配そうな表情を浮かべた桜だった

手元には新聞

おそらく記事を読んだのだろう

 

 

「智也君。コレ、郵便受けに入っていたわ。差出人は・・・さやかちゃんよ」

 

 

桜は一枚の手紙を智也に差し出す

 

 

「・・・ありがとうございます」

 

 

智也は静かにそれを受け取り部屋に戻っていく

部屋に戻った智也はしばらく呆けていた

たった今起こった事実を現実のものと認識できず、ボーっとしていた

そして先ほど受け取った手紙を眺める

宛名には『トモ君へ』差出人には『さやかより』と書かれていた

 

 

「・・・名前書けよ」

 

 

悪態を突きながら智也は封筒から手紙を取り出す

 

 

『トモ君がこの手紙を読んでいる頃には私はもう死んでいると思います。トモ君とデートをしたその日、私はある男の人に襲われ、『初めて』を奪われました。相手は私の友達、でもトモ君に復讐とかしてほしくないから名前は書きません』

 

 

その先にはさやかの心境が書かれていた

それを読んだ智也の手紙を持つ手に力がこもる

 

 

『長くなったけど、最後にトモ君に二つお願いがあります。一つはさっき言った通り、私は復讐を望んでないからこの事は誰にも言わないでほしいと言う事。お父さんやお母さんにもです。私を襲った男の子は凄く努力家で目標に向かって頑張る子なの。彼は悪くないの。悪いのは私。彼の気持ちも知らずに無神経な事を言ってしまった私・・・今まで頑張って来たのにたった一回の過ちで人生を棒に振って欲しくない。努力が実らないのは可哀想だから・・・』

 

「・・・どこまでお人好しなんだよ・・・自分を襲った相手まで許すっていうのかよ!」

 

 

思わず声を荒げながら手紙を握り締める智也

 

 

『二つ目は・・・トモ君。私の事はもう忘れてもいいから、トモ君は幸せになってください。トモ君に名前を呼んでもらえた。トモ君に好きって言ってもらえた。トモ君に抱きしめてもらえた。トモ君と・・・キスすることができた。それだけで私は幸せです。だからトモ君は私なんかより優しくて頭が良くて可愛い女の子と幸せになってください。今まで本当にありがとう。さようなら。さやかより』

 

「・・・バカ野郎・・・そんなに簡単に忘れられるなら好きになったりしてねえよ!名前なんかいくらでも呼んでやる!好きでも愛してるでも気が済むまで言ってやる!辛い時は抱きしめるし、お前が望むならキスだってする。いくら汚されたって俺はお前を嫌ったりしない!なのに・・・なんで死んじまうんだよ・・・さやか・・・」

 

 

ポタポタと涙を流す智也

この日北条智也は生まれて初めて涙を流した

 




初めて愛した人を失った智也
これから先どうなってしまうのか・・・

次回も頑張ります

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