バカとテストとウチの弟   作:グラン

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今回はほのぼのとした日常パート


第百五十四問 中学校での日常

「おーい、トモ。お客さんだぞ」

 

 

秀一は智也の打席が終わったのを見て声を掛ける

 

 

「客?俺にか?って、アンタは・・」

 

「・・・」

 

「?おい、どうした?」

 

「ハッ!な、何でもない!」

 

 

智也の顔を見てポーッと頬を染めているさやか

秀一に声を掛けられ我に返る

 

 

「昨日はよくも私を弄んでくれたね」

 

「トモ・・・お前・・・」

 

「おまけに人前であんな事・・・凄く恥ずかしかったんだから!」

 

「待て、誤解を招く言い方するな」

 

 

さやかの発言に周囲はざわめき始める

智也は慌ててさやかの手を引き人目につかないところに移動

 

 

「はぁ・・・お前な・・・?どうした?」

 

「ふぇ?な、何でもない!」

 

 

智也に掴まれた手を見て頬を赤くするさやか

声を掛けられ再び我に返る

 

 

「あー・・・昨日はたしかにやり過ぎた。悪かったな」

 

「う、ううん。私の方こそ強引だったよ。ごめん」

 

 

互いに謝り一件落着・・・と、思いきや

 

 

「ねえ、トモ君はその・・・か、彼女とかいるの?」

 

「?いや、恋人はいないが・・・」

 

「じゃ、じゃあ好きな人は?」

 

「特には・・・」

 

「わ、私は・・・その・・・トモ君の事、す、好きになっちゃったかも・・・」

 

「・・・はい?」

 

 

  ※数日後※

 

 

「・・・なぁトモ」

 

「・・・言うな」

 

「トモ君頑張ってー!かっ飛ばせー!と・も・や♪」

 

 

告白から数日後、さやかは毎日のように智也の元に来ている

 

 

「アイツ別の中学だよな?」

 

「・・・」

 

 

どうしてこうなった?と、頭を抱える智也

あの日さやかの告白を智也は断った

 

『俺はお前の事をよく知らない。だからお前とは付き合えない』

 

告白されることに慣れていない智也だが、なるべくさやかを傷つけないように断る・・・が

 

『じゃあ今から知っていけばいいよね♪』

 

さやかは諦める気は無いようだ

その日からさやかは野球部に出入りし始めた

普通は先輩方が黙ってないのだが、『華があっていいじゃないか』と容認

顧問は顧問で『はっはっは、モテモテだな北条』と言い、あっさり許可するのだった

 

 

「お疲れ様トモ君。はいタオル」

 

「あのな・・・お前は中学が違うんだから出入りしちゃダメだろ」

 

 

小学校時代も熱っぽい視線を送られることはあったが、ここまでグイグイ来る女の子は初めてで智也は戸惑っている

 

 

「こらこら北条、可愛い彼女をそう邪険に扱うなよ」

 

「いや、彼女ってわけじゃ・・・」

 

「えへ♪そう見えます?」

 

「お前は黙ってろ」

 

 

腕に抱き着いてきたさやかを引き剥がそうとする智也

さやかは智也だけではなく、ほかの部員にもタオルを配ったり飲み物を用意したり後片付けを手伝ったりとマネージャーみたいになっていた

ただし・・・

 

 

「おい・・・何で俺だけ熱々の緑茶なんだよ!?」

 

「・・・」(フイッ)

 

 

秀一にだけは少々冷たい

と、言うのも秀一は智也とバッテリーを組んでいるため、智也と一緒にいることが多い

ようするに嫉妬である

 

 

「しょうがないなぁ・・・はい、タオル」

 

「おう・・・って雑巾じゃねえか!しかも生臭っ!これ牛乳拭いた奴だろ!?」

 

 

零した牛乳を拭いた雑巾を秀一の顔面にぶつけるさやか

この騒がしい光景がもはや野球部の日常となっていた

 

 

  ※更に数か月後※

 

 

この日、智也は少しご機嫌だった

今日から試験週間の為、部活は禁止

つまり、さやかも部に来ることはないのだ

野球をできないのは少々残念だが、久しぶりに静かな場所でゆっくりできる

そう思い、智也は学校を後にする

 

 

「ただいま」

 

「おかえり智也君。お友達が来てるわよ」

 

「え?あ、はい」

 

 

ここに来る友達と言えば秀一しかいない

おそらくまた『勉強を教えてくれ』と言いに来たのだろう

そう思い、智也は自分の部屋のドアを開け・・・

 

 

「あ、トモ君。おかえり。ご飯にする?お風呂にする?それとも・・わ・た・s・・(バタンっ)」

 

・・・閉めた

 

 

『ちょっと!せめて最後まで言わせてよ!!』

 

 

部屋の中からさやかの抗議の声が聞こえる

 

 

「ど、どうしたの?智也君」

 

「桜さん、不法侵入です。不審者が部屋の中にいます。警察に電話を・・・」

 

『トモ君!不審者じゃないよ!トモ君の愛しいさやかちゃんだよ!!』

 

 

ドアをバンバン叩きながら騒ぐさやか(ドアは開かないよう智也が抑えている)

とはいえこのまま放っておくわけにもいかないので渋々中に入ることにした

 

 

「で?なぜお前がここにいる」

 

「もちろん。トモ君に会いたかったから♪」

 

「・・・お前、試験期間の意味を知ってるか?」

 

「うん。授業が早く終わる日」

 

「・・・勉強するから帰れ」

 

「えートモ君と一緒にいたいよ。静かにしてるからさ、ね?いいでしょ?」

 

「はぁ・・・好きにしろ」

 

 

これ以上の口論は無駄と判断した智也はさやかを無視して勉強を始める

 

 

「クンクン・・・えへへ。トモ君の匂い♪」

 

「(ゾワッ)何をしてんだお前は!」

 

 

智也のベッドに顔を埋め匂いを嗅いでいるさやかに智也がキレる・・・が

足元に置いてあるさやかの鞄に足をとられ、ベッドの上に転倒

 

 

「智也君。お茶と買い置きのクッキーなんだ・・け・・・ど」

 

 

部屋に入ってきた桜が固まる

現在の状況はベットに転がったさやかに覆いかぶさるように転倒した智也

 

 

「さ、桜さん。違うんです。これにはワケが・・・」

 

「と、トモ君・・・優しくしてね♪」

 

「お前はちょっと黙れ!!」

 

「ごご、ごめんなさいね。お茶はここに置いておくわね!」

 

 

お茶を置いて慌てて部屋を出る桜

数分後、智也は頭に三段アイスクリームを作ったさやかと共に桜に誤解を解きに行くのだった

 

 

  ※夏休み※

 

 

「トモ君に宿題を手伝ってもらうのは私よ!」

 

「いいや俺だ!」

 

(・・・俺は手伝うとは一言も言ってないんだが・・・)

 

 

口論しているのは秀一とさやか

 

 

「ほら見てよ!私はまだほとんど終わってないんだから!」

 

「ふっ、甘いな!俺なんてほとんどどころか一問も終わってない!」

 

「威張るな!!」

 

 

智也がキレ、三発の拳骨の鈍い音が鳴り響く

振り分けは秀一に二発、さやかに一発だ

 

 

「「バカになったらどうするんだ!」」

 

「やかましい!今日はもう8月20日だぞ!あと10日ぐらいしかないのにほとんど終わってないとはどういうことだ!どうやって終わらせるつもりだ?」

 

「「そこは気合と根性で」」

 

「・・・見捨てるぞ」

 

「「すいませんでした!!」」

 

 

土下座する二人

ちなみに智也は宿題を終わらせている

 

 

「えっと・・・鎌倉幕府を成立させた人物・・・徳川家康?」

 

「まだ生まれてねえよ」

 

「はっはっは、芹沢はバカだなぁ。そんなもん聖徳太子に決まってんだろ」

 

「もう死んでるよ」

 

 

二人のおバカに頭を抱える智也

でも・・・騒がしくにぎやかな毎日

こういうのも悪くないと智也は思うのだった

 




二人の親友と楽しい日常を送る智也
しかしそんな彼らに悲劇が・・・

次回も頑張ります

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