バカとテストとウチの弟   作:グラン

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予定を変更し、中学生編に突入します
あまりにも停滞し過ぎたものですから・・・
と、いうわけでついに『あの子』の登場です


第百五十三問 初恋

時は流れ、今日は小学校の卒業式

二人が野球チームに入ってから色々なことがあった

ある時は女投手のいるチームと対戦

セカンドとショートの坊主とモヒカンの男の子の連携プレイが強く印象に残った

またある時は関西弁の少年と対戦

秀一がホームランを打たれたのはこれが初めてだった

その日から秀一はフォークボールの練習を始めた

 

 

「おーい、トモ」

 

 

智也が過去を振り返っていると秀一が智也に近づいてきた

 

 

「何やってんだ?」

 

「いや、色々あったなと思ってな」

 

「そうだな」

 

「シュウ」

 

「ん?」

 

「俺、シュウに会えてよかったよ」

 

「俺もだ。これからもよろしく頼むぜ」

 

「ああ」

 

 

二人はガッチリと握手を交わすのだった

 

 

  ※その日の夜※

 

 

「それじゃあ智也君の卒業を祝って・・・」

 

「「「「「カンパーイ!!」」」」」

 

 

施設では智也の卒業祝いが行われていた

 

 

「あの・・・気持ちは嬉しいですけど、いくらなんでも大袈裟じゃ・・・」

 

「いいじゃない。たまにはパーっとやりましょうよ」

 

 

桜はたまにはと言っているが、彼女は施設の子の誕生日やクリスマスはもちろん。入学祝い、卒業祝い、子供の日までご馳走を用意してパーティーを開催している

しかもこれは桜が個人的に行っていることなので施設のお金ではなく。桜の自腹である

何か理由をつけて経費で落とせばいいのだが、彼女にそんな狡賢い考えはない

智也の相続した遺産に目が眩んだ醜い大人を『黒』と表現するなら、桜は『白』

『純白』と言っても過言ではないほどにお人好しなのだ

彼女は施設の子供たちを本当の家族、いや、それ以上に愛している

そんな彼女が保護者をしているからこそ、ここの子は複雑な環境であるにも関わらず誰一人ひねくれることなく育っているのかもしれない

 

 

「智也君ももう中学生か・・・ちょっと前までこんなに小さかったのになぁ」

 

「桜さんのおかげです。本当に感謝してます」

 

「ふふ、どういたしまして。ほら、どんどん食べて。今日の料理は自信作なんだから」

 

「はい。いただきます」

 

 

そう言って智也は桜の作った料理を食べ始めた

 

 

  ※入学式※

 

 

「トモ、この後どうする?」

 

「野球部の仮入部は明日からか・・・今日は大人しく帰ろう」

 

「そうだな」

 

 

そう言って智也は秀一と別れ、施設に向けて歩き出した

・・・と、その時

 

 

「ごめーん。おまたせ!」

 

「え?」

 

 

智也の腕に抱き着く少女

待ち合わせをしていたかのような言い方だが、智也はその子に見覚えはなかった

周囲を見渡すとぞろぞろと少女の後ろについてくるガラの悪い男達の姿が見えた

 

 

(ああ、そういうことか・・・)

 

 

少女の目的を理解した智也は・・・

 

 

「いや、そんなに待ってないから気にするな」

 

 

話を合わせることにした

 

 

「ちっ!野郎連れかよ」

 

「しゃーねーよ。あんな上玉、男がいない方がおかしいって。次いこうぜ」

 

 

意外とあっさり引き下がっていった男達

 

 

「えへへ、ありがと。助かったよ。『遊びに行こう』ってしつこくて困ってたんだ」

 

「いや、気にするな」

 

 

少女は智也の腕を離し、笑顔でお礼を言う

 

 

(他校の生徒か。同い年・・・いや、年上か?)

 

 

智也は少女の顔を見て同い年位と思ったが、胸元のしっかり育ったメロンを見て年上かもしれないと考える

 

 

「あ、自己紹介がまだだったね。私は芹沢さやか。一年生だよ。って、あ、タメ口使ってるけどもしかして年上だった?」

 

「(同級生だったか)いや、大丈夫。俺も一年だ。名前は北条智也」

 

「そっか。よかった。私の事はさやかでいいよ。トモ君」

 

(いきなりあだ名かよ)

 

 

そう思った智也だが、まぁいいかと特に気にしない

 

 

「じゃあ俺はコレで・・・」

 

「おっと、このまま帰すわけにはいかないな」

 

「は?」

 

「助けてもらったお礼をしないとね♪」

 

「いらない」

 

 

さやかを置いて去って行こうとする智也

 

 

「・・・なぜついてくる?」

 

「ふっふっふ。お礼を受け取ってもらうまでいつまででもついていくよ♪」

 

(・・・助けるんじゃなかった)

 

 

厄介な女に目を付けられたと後悔する智也

 

 

「家までついてこられたくなければ素直にお礼を受け取りなさい」

 

「・・・助けた相手を脅すのかよ・・・わかったよ。で?俺にどうしろと?」

 

「なんか飲み物でも奢ってあげるよ」

 

(まぁそれぐらいなら付き合ってもいいか)

 

 

このままだと本当に施設までついてきそうなので素直に好意を受け取ることにする

 

 

  ※数分後※

 

 

「・・・ごめん。ホントごめん」

 

(新手の詐欺じゃないだろうな・・・)

 

 

商店街の美味しいと人気のミックスジュースを買いに来たのだが、注文した後にさやかは財布を持ってきてない事に気付く

すでに商品は準備されてしまったので仕方なく智也が支払った

 

 

「絶対今度返すから!」

 

「いや、もういいから」

 

 

これ以上付き纏われてたまるかと智也は断る

 

 

「そうはいかないよ。助けてもらった上にジュースまで奢らせて、このままじゃ私、最低じゃん」

 

(・・・めんどくさい奴に目を付けられたな・・・仕方ない)

 

「・・・それじゃあ今すぐに借りを返してもらおうか」

 

「ふぇ?」

 

 

智也はさやかの目をジッと見て頬に手を当てる

さやかは何をしようとしているのかに気付き、顔を真っ赤にする

 

 

「と、トモ君!?」

 

「目を閉じて」

 

「でで、でも・・・」

 

「早く」

 

「ひゃい!」

 

 

さやかは目を閉じる

 

 

(こ、これってそう言うことだよね?ど、どうしよう。私、初めてなのに・・・でもお礼するって言っちゃったし、トモ君カッコイイからいいかな?今日出会ったばかりの相手といきなりキ、キスなんて、トモ君って意外と大胆・・・でもでもやっぱりファーストキスはもっとロマンチックなシチュエーションが良いななんて・・・)

 

 

さやかの脳内はオーバーヒート寸前である

・・・が、目を閉じてしばらく経つが、一向に唇が重なる気配がない

 

 

「と、トモ君?」

 

 

さやかが恐る恐る目を開けると・・・

 

 

「・・・あれ?」

 

 

そこにはすでに智也の姿は無かった

 

 

  ※翌日の放課後※

 

 

「と、いうわけで、私はトモ君の学校の前に来ております」

 

 

誰もいないのになぜか説明口調のさやか

 

 

(って、勢いで来ちゃったけどここからどうしよう?)

 

 

悩むさやか

中を覗き込みながらウロウロする姿、どこからどう見ても不審者である

 

 

「アンタ、何やってんだ?」

 

「ふぁ!?わ、私は怪しい者ではないぞ!」

 

「いや、十分過ぎるほど怪しいぞ」

 

 

背後から秀一が声を掛ける

彼は一度家に戻り、グローブを取って来たのだ

突然声を掛けられたことにより慌てふためくさやか

 

 

「で?何か用か?不審者」

 

「む、初対面のレディーを不審者とは失礼な!私はトモ君の用があるだけだもん!」

 

「トモ君?もしかして北条智也か?」

 

「知ってんの!?」

 

「ああ、トモは俺の相棒だからな。トモならグラウンドにいるはずだぞ」

 

「そっか。では案内したまえ」

 

「なんで上から目線なんだよ。ま、いいけど」

 

 

(しっかし、こいつアテも無しにここまで来たのか・・・)

 

(コイツが持ってるのはグローブ、っことは野球部の癖にグローブ忘れたんだ・・・)

 

((頭の悪そうな奴だなぁ))

 

 

互いに同じことを考える

 

 

「お、いたいた。ハハッさすが弱小校。一年生にいきなりバッティング練習させてら」

 

 

そう言いながら打席に立っている智也に視線を向ける秀一

智也は真剣な目でバットを構え、そしてキンッといういい音がしてボールは飛んでいく

 

 

「・・・かっこいい」

 

 

さやかはそんな智也の姿を見てそう呟いた

この瞬間、彼女は初めての恋に落ちた

 




さやかのキャラが愛子と被りそう・・・

次回も頑張ります

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