バカとテストとウチの弟   作:グラン

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智也に初めての友達が・・・


Q、さて、一体誰でしょう

1、芹沢さやか
2、島田海人
3、新藤秀一
4、中島英雄


答えは後書きにて


智也「なんでクイズ始めてんだ?」

優子「前書きに書くことが思いつかなかったらしいわよ」

海人「それじゃあ本編へどうぞ!」


第百五十一問 初めての感情 初めての友達

智也の母が亡くなって数日が経過

智也は児童養護施設へと預けられた

本来なら父親が引き取ることになるのだが、智也の存在がマスコミに知れ渡り、テレビでは連日『大物政治家不倫女性との隠し子』と騒がれていてそれどころではないのだ

 

母方の親族も誰も智也の事を引き取ろうとはしなかった

親族間で彼女は嫌われていたし、彼女は貯金がほとんどなく、智也が相続する遺産もほぼ無い

つまり智也はお荷物でしかないのだ

 

・・・が、ここで事件は起こった

智也の父が妻と共に車でしつこいマスコミを振り払おうとした際、運転操作を誤り、崖から転落、二人とも死亡してしまったのだ

二人の間に子供は無く、彼らの遺産は全額智也の元に舞い込んできた

 

すると、智也の母の親族は掌を返し、我こそはと智也を引き取ろうとしたのだ

理由は言うまでも無く智也の相続した多額の遺産である

 

 

「・・・醜い」

 

 

五歳の少年とは思えない冷たい表情でそう呟く智也

結局、智也は親族の受け入れを拒否

今いる児童養護施設に『ここにいさせてください』と言い、この施設で生活をすることを決めた

そして智也が小学四年生になったある日、一つの出会いが訪れた

その日はたまたま掃除当番と日直が重なり遅くなり、すべきことが終わった時には誰も残っていなかった

通常、日直は二人なのだが、運悪くもう一人が風邪で休んでいて、教師は代わりに誰かをと言ったが、智也が一人で大丈夫と言った為、時間が掛かったのだ

智也が靴を履きかえ、学校を出ようとしたその時・・・

 

 

「あ!君。少し時間ある?手を貸してほしいんだけど・・・」

 

 

声を掛けてきたのは同級生位の男の子

 

 

「まぁいいけど・・・」

 

 

智也はそれに了承し、男の子の後についていく

施設の方は特に門限は無く、『あまり遅くならないようにね』と言われてるだけなので時間は気にする必要はなかった

 

 

「・・・なんだこれ?」

 

「ん?野球は初めてか?」

 

 

男の子は智也の問いかけにきょとんとしながら答える

智也はてっきり何かの作業を頼まれるのだと思っており、遊びに誘われているとは思わなかったのだ

 

 

「いやー助かったよ。人数が奇数だとバランスが悪くってさ」

 

 

断って帰ろうかと思った智也だが、周囲を見ると智也を入れて8人

帰りにくくなった智也は渋々参加することになった

 

 

「そういや名前聞いてなかったな。俺は新藤秀一。お前は?」

 

「・・・北条智也」

 

「じゃあトモだな。よろしくな」

 

 

初対面の人間にいきなりあだ名をつける新藤

『馴れ馴れしい奴だな』と思ったが、智也には怒るという感情は無い

なので、まぁいいかと思いスルーした

 

そして試合開始

とは言っても8人しかいない為4対4の変則ルール

スリーアウトで交代ではなく打者一巡で攻守交代。3イニングやってヒットを打った回数が多い方が勝ちという内容だ

智也は初心者なので打順を最後にしてルールをチェック

 

 

(なるほど、ボールを打って相手が取れなければいいのか。簡単じゃないか)

 

 

智也は運動神経には自信があったので、楽勝だと思った

そして智也の打順がまわってくる

ここまで一人がヒット二人がアウト

 

 

(これがバットか。思ったより重いな)

 

 

そんなことを考えながらバットを握る智也

 

 

「よーし、行くぞ!トモ・・・って、おいおい。それじゃ握りが逆だよ」

 

「え?」

 

「そのまま振ってみ」

 

 

言われるがままにバットを振る智也

 

 

「今度は左手を下にして右手と左手の間は開けずに雑巾を絞るような感じで握って振ってみな」

 

 

もう一度振る智也

 

 

「どうだ?」

 

「・・・こっちの方が振りやすい」

 

「だろ」

 

 

ニカっと笑う新藤

 

 

「じゃあ気を取り直して・・行くぞトモ」

 

(右の奴と真ん中の奴の間が広い。狙うならあそこだな)

 

 

智也は狙うところを考えながらバットを振る

が・・・結果は掠りもせず三振

 

 

「ドンマイドンマイ」

 

「初めてなんだから仕方ねえよ」

 

「勝負はこれからだぜ」

 

 

同じチームの男の子たちは智也を励ますようにそう言い守備に入る

正直、智也は衝撃を受けていた

狙った所に飛ばないかもしれないとは思っていたが、まさか掠りもしないとは思わなかったのだ

そして智也の二度目の打席

・・・も、今度はピッチャーゴロでアウト

このイニングは2ヒット2アウト

この2ヒットはさっきアウトだった二人が打ったもの

つまりこのチームでノーヒットは智也だけ

この結果に若干責任を感じる智也だが・・・

 

 

「気にすんなよ」

 

「遊びなんだから楽しくやろーぜ」

 

 

チームメイトは全く気にしてないようだ

そして智也の最後の打席

このイニングは全員ノーヒット

智也のチームは後攻で現在の点差は5対3

つまり智也が打っても打たなくても負けなのだが、別に本気で勝ち負けを競っているわけではないので続行

 

 

「行くぞトモ。俺は負けるのが嫌いだからな。初心者でも手加減しないぜ」

 

 

そう言って構える新藤

智也とてここまで何も考えなかったわけではない

他の奴と自分の打ち方の違いを細かくチェックしていたのだ

 

 

(足をあげてタイミングを合わせる。バットを振るときは腕だけで振らずに腰を回しながら・・・)

 

 

そして・・・智也の振ったバットはボールを捕らえ、キンッという音を立ててサードを守っていた男の子の頭上を越えた

 

 

「マジかよ・・・初心者なのにスゲーじゃん!ナイスバッティング!」

 

 

打たれた新藤は一瞬驚くものの、素直に智也を称賛する

 

 

(な、なんだ・・・この感じ)

 

「おっ!やっと笑ったな!」

 

(え?)

 

「俺は・・・笑ってるのか?」

 

「おいおい何言ってんだ?そんな嬉しそうな顔しやがって」

 

「嬉しい・・・これが嬉しいって気持ち・・・」

 

「そりゃそうさ。ヒット打ったら嬉しいし、打てなきゃ悔しい。どうだ野球は?面白いだろ?」

 

「わからない・・・でも・・・もっとやってみたい」

 

「おう!またやろうぜ!」

 

「いいのか?」

 

「何言ってんだ?友達なんだから当たり前だろ?」

 

「・・・ありがとう」

 

 

智也は一緒に遊んだ男の子たちにお礼を言い、その場を後にした

 

 

(たしか施設の図書室にスポーツのルールブックは一通り揃っていたはず。帰ったら読んでみよう)

 

 

また彼らと遊ぶ日を楽しみにしながら智也は施設へと急ぎ足で帰るのだった

その姿は今までの無表情な少年ではなく、放課後に友達と遊んだどこにでもいる普通の男の子だった

 




前書きクイズの正解は3の新藤秀一でした

法律などに詳しい方は違和感を感じた部分もあるでしょうが、そこはスルーの方向で・・・

次回も頑張ります

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