バカとテストとウチの弟   作:グラン

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ついに始めりました、智也の過去編
今回はプロローグ的なお話なのでかなり短め
そしてかなり重くて悲しいお話
それでは、本編へどうぞ



智也の過去編
第百五十問 智也の過去 序章


みなさんは最後に泣いたのはいつでしょうか?

小学校?中学校?それとも高校の頃でしょうか?

おそらくそれが普通でしょう

 

しかし、北条智也は今まで一度も泣いたことが無い

生まれた時ですら死んだように無言で生まれ、その後も全く泣かなかったという

いや、それだけではない

彼には喜怒哀楽の感情が全て欠けていたのだ

笑うことも怒ることも悲しむこともなく、まるでロボットのように感情無く成長してきた

 

智也の父は有名な政治家だった

しかし、智也の母とは別の女性と結婚していた

ようするに不倫関係だ

彼は彼女の妊娠を知り、お金を渡し、堕ろすように指示した

しかし彼女はそれを拒否

結果、彼とは縁を切られ、彼女は一人で智也を育てることを決意した

 

彼女に味方はいなかった

元々、周囲の反対を押し切り不倫関係を続けていたため、親族の間では『関わりたくない相手』と認識されていたのだ

それでも彼女は智也さえいればそれでいい

この子さえいればどんな困難も頑張れる。そう思っていた

 

しかし現実はそう甘くはなかった

智也を出産してから五年

子育てと仕事の両立

子供の為に早退するたびに起こる周囲の冷たい視線

自分に全く笑いかけてくれない息子

彼女の精神はもう限界だった

そして・・・彼女は言ってはならない言葉を言ってしまった

 

 

「アンタなんて生まれてこなければよかったんだ」

 

 

智也に対してそう言ってしまったのだ

しかし・・・それでも智也が泣くことはなかった

相変わらず無表情の智也

彼女は何も言わず家を出て仕事へと向かった

黙々と仕事をこなす彼女

働いているうちに感情の無い智也に対する苛立ちはだんだん後悔へと変わっていった

 

 

「私ってばなんて酷い事を・・・」

 

 

仕事を終えた彼女はコンビニでプリンを二つ購入

急ぎ足で智也の待つ我が家へと向かう

愛する息子を傷つけてしまった事への後悔と焦り

そのせいで彼女は見落としてしまった

・・・真っ赤に変わった信号機を・・・

 

智也の母は車に撥ねられ死亡した

彼女の葬儀が行われているが、智也の表情は変わらない

周囲の人は『まだ幼いから母親の死を理解していない』と思っている

だが、智也は全て理解していた

母が二度と目を覚まさないこともわかっていた

それでも彼は・・・涙を流すことはなかった

 

 

 

  ※おまけ※

 

 

『ひ、人が撥ねられたぞ!!』

 

『まだ生きてる!早く救急車を・・・』

 

「・智也・・・ごめんね・・・ダメなお母さんで・・・ごめんね・・・大好きだよ・・・と・・も・・・」

 

 

そう言い残し、彼女は静かに息を引き取った

 




短っ!と思った方、申し訳ございません
ここで切らないと中途半端になってしまうもので・・・
次回からはもっとしっかりと書きますので何卒ご容赦を・・・

次回も頑張ります

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