バカとテストとウチの弟   作:グラン

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今回は誰もが忘れている人物が再登場
その人物とは・・・


第百四十六問 謝罪

「ど、どう?」

 

「うん。すごく美味しいよ」

 

「本当!?よかった・・・」

 

 

ある日の昼休み

今日のお弁当は優子が作ってきており、海人に美味しいと言ってもらってホッと胸を撫で下ろす

 

 

「確かに美味しいのじゃ。これならいつでも海人の元に嫁げるのう、姉上」

 

「ぶっ!ひ、秀吉!」

 

「なんじゃ?嫌なのかの?」

 

 

ニヤニヤとしながらそう言う秀吉

他の一同もジッと優子の方に注目する

 

 

「い、嫌じゃないわよ。け、結婚するなら相手は海人君しかいないわ」

 

 

耳まで真っ赤にしてそう言う優子

それを聞いた海人も顔を赤くし、他の一同はニヤニヤと二人を見ている

 

 

(く・・・帰ったら覚えてなさい)

 

 

からかわれたことに対する復讐を心に誓う優子だった

 

 

「あ、ここにいたわね」

 

「あ、尾賀間君」

 

 

屋上のドアを開け、入ってきたのは元根本の取り巻きの尾賀間だった

海人は普通に対応しているが、他のメンバーは警戒をしている

特に翔子は雄二を狙ってきたのではないかと思い、とっさに雄二と尾賀間の間に立ちはだかる

 

 

「そんなに警戒しないでちょうだい。別にあなたたちに危害をくわえようって気はないわよ」

 

 

両手をパタパタ振りながらそう言う尾賀間

実際、今までに尾賀間に何かをされたということは無い

体育祭の時の根本の策で愛想を尽かせてグループから抜けたという噂も出ている

 

 

「・・・何の用?」

 

 

みんなが警戒を解くなか、翔子だけは警戒を解かず、用件を聞く

 

 

「用があるのはアタシじゃないわ。宮野君、入ってらっしゃい」

 

 

尾賀間がそう言い、入ってきたのは一人の男子生徒

それは・・・体育祭の時、根本に協力して海人を抑え込んだ生徒だった

 

 

「あ、アンタは・・・!!」

 

 

彼の顔を見た瞬間、美波の怒りメーターは一気に上がり、彼に殴りかかろうとするが・・・

 

 

「すまなかった!!」

 

 

宮野は勢いよく頭と膝を地面につけ土下座した

 

 

「すぐに謝らなきゃいけなかったのに、俺が臆病なばっかりにこんなに遅くなっちまった!本当に申し訳ない!!」

 

 

いきなりの行動に、キレかけた美波も手を止める

 

 

「と、とりあえず顔を上げてよ。もういいからさ」

 

「だが!」

 

「何か事情があったんでしょ?あの時、『・・・すまん。悪く思わないでくれ。こうするしかなかったんだ』って言ったでしょ?」

 

「なるほど、根本に何か弱みを握られているってところか?」

 

「・・・俺のバイト先のレストランが根本グループの傘下の店なんだ。ウチは母子家庭で母さんが一人で俺と妹を養ってくれてたんだけど、先日過労で入院しちゃって・・・そのことを根本に知られて、『協力しないとバイトをクビにする』って言われたんだ。貯金も底をついてて、バイトをクビになるわけにはいかなかったんだ」

 

「そう・・・だったんだ・・・」

 

 

静かに宮野の事情を聞く一同

 

 

「まぁ結局、レストランは先日閉店になって俺は職を失ったわけなんだけどな。それで学園を去る前に島田には謝らないとって思ったんだ」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!?学園を去るってどういう・・・」

 

「そのままの意味さ。新しいバイトを探さなきゃいけないからな」

 

「そんな・・・」

 

「そんな顔するなよ。きっと罰が当たったんだよ。自分の為に人を傷つけてしまった事に対する・・・な」

 

 

このご時世、高校中退では将来まともな職に就くことは出来ない

つまり、彼はこれからも苦労し続けることになるのだ

話を聞いた一同の表情は暗い

 

 

「話は聞かせてもらいましたわ!」

 

「清水さん?」

 

 

屋上の入り口の方から声が聞こえ、そちらに視線を移すと美春がこっちに向かって歩いてきた

そして携帯電話を取り出し、どこかに電話する

 

 

「もしもし、お父さんですか?例の件ですが、条件のそろった人物を見つけましたわ。詳細はまた後で」

 

 

電話を切る美春

 

 

「レストランでバイトをしていたといいましたね?担当は?」

 

「え?えっと・・・ホール。簡単なものならキッチンもできるけど・・・」

 

「美春の実家の『ラ・ペディス』の場所は知ってますわね?」

 

「あ、ああ」

 

「最後にもう一つ、お兄様を嵌めたときのフィードバック・・・アナタは知っていたんですか?

 

「・・・信じてもらえないかもしれないけど、何も聞かされていなかった」

 

「そうですか・・・時給は800円です」

 

「・・・は?」

 

「不満ですか?」

 

「あ、いや・・・え?」

 

「鈍い人ですわね。ウチで雇うと言っているんです。ちょうどバイトが辞めて人数不足で経験者を探していたところです」

 

「ほ、本当に・・・いいのか?」

 

「知らなかったとはいえアナタはお兄様に酷い事をしました。それを謝ってはいサヨナラなんて美春が許しません」

 

「ありがとう・・・ございます」

 

 

涙を流しながら頭を下げる宮野

 

 

「ありがとう清水さん」

 

「礼には及びませんわ。美春はお兄様やお姉さまの困った顔を見たくないだけです。それにしても、自分を嵌めた相手の心配をするだなんて、お兄様は本当にお優しいですわ」

 

 

美春は笑顔で海人にそう言う

そんな中、美波は宮野に近づく

 

 

「・・・アンタ、妹がいるって言ったわよね?」

 

「あ、ああ」

 

「大切にしなさいよ」

 

 

そう言うと美波はそっぽ向いて歩き去って行った

 

 

「ふふ、美波は素直じゃないなぁ・・・ん?秀吉?どうしたの?」

 

「ん?な、何でもないのじゃ」

 

「?」

 

(・・・誰も傷つかず、ハッピーエンドのはずなのに・・・何故じゃ?宮野の為に清水が動く姿を見ているとモヤモヤするのじゃ)

 

 

今のやり取りを見て秀吉は原因不明のモヤモヤを抱えるのだった

 

 

 

  ※おまけ・後日小学校にて※

 

 

「葉月ちゃん、おっはよ♪」

 

「瑠璃ちゃんご機嫌です!何か良いことあったですか?」

 

「お兄ちゃんが新しいお仕事見つけて明るくなったの!」

 

「そうなんですか?よかったです!」

 

「うん!」

 

 

宮野の妹は葉月の親友なのだ

そして、第百七問で海人が傘を貸した女の子なのだが、そのことを一同が知る由もない

 




言うまでもないでしょうが、宮野君はオリキャラです
この様子を見ていた秀吉の様子がおかしい・・・
秀吉の胸の中のモヤモヤ・・・この感情の正体は・・・

次回も頑張ります

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