バカとテストとウチの弟   作:グラン

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なんとか週一投稿できた・・・
仕事が忙しく、執筆時間が減っていく・・・



第百四十五問 ボクとムッツリの恋愛事情 後編

放課後、土屋康太はFクラスでぼんやりとしていた

理由は愛子と顔を合わせるのが気まずいからである

 

 

「・・・そろそろ帰るか」

 

 

もう愛子は学園の外に出ただろうと思い、教室を後にする

 

 

(・・・今頃、工藤は黄島とかいう奴と・・・)

 

 

愛子が他の男と楽しく歩く姿を想像し、顔をしかめる康太

 

 

(・・・いや、これでいいんだ。工藤が幸せならこれで・・・)

 

 

と、その時

 

 

「土屋!」

 

「・・・?北条か」

 

「工藤は!?一緒じゃないのか!?」

 

「・・・ああ。どうした?そんなに慌てて」

 

「・・・お前には話しておいた方がいいな。実は今朝、工藤が告白されて・・」

 

「・・・それは工藤本人から聞いた」

 

「そうか、なら話は早い。その様子を俺は偶然聞いたんだ。その時、男は『星凰学園の水泳部』と言ったんだ。シュウ・・・新藤に確認を取ったんだが、星凰の水泳部は去年の三年生の卒業で部員がいなくなって廃部になっているんだ」

 

「・・・何?」

 

「それでシュウに調べてもらって、さっき連絡があったんだが、星凰学園に黄島という生徒はいないそうだ。それとシュウから聞いた話によると、最近、星凰の生徒を名乗って悪事を働く奴が出没しているらしい。もしかしたら工藤も・・・」

 

「・・・くっ!」

 

 

そこまで聞いた康太は走り出した

どこにいるのかはわからない

 

 

(・・・くそっ!俺はまた何もできないのか!?いつだって俺は無力だ・・・いや、諦めない!諦めてたまるか!!)

 

 

自分の無力さに腹を立てながら康太は走る

 

 

「あ、ムッツリのお兄ちゃんです!」

 

「土屋じゃない。どうしたの?そんなに慌てて」

 

 

買い物袋を持った葉月と美波に遭遇

 

 

「・・・島田、工藤を見なかったか?」

 

「愛子?見てないわよ」

 

「愛子お姉ちゃんならお姉ちゃんが迎えに来るちょっと前に小学校の前で見たです!知らないお兄ちゃんと一緒でした」

 

 

美波は見てないようだが、葉月は見たと言う

 

 

「何?アンタ達、喧嘩でもしたの?ちゃんと仲直りを・・・って、ちょっと!」

 

 

美波の言葉を聞き流し、康太は再び走り出した

 

 

「ムッツリのお兄ちゃん。どうしたですか?」

 

「青春ね」

 

「?葉月にはよくわからないです」

 

 

美波は康太が嫉妬しているものと勘違いして笑って康太の背中を見るのだった

 

 

  ※一方その頃※

 

 

(ど、どうしよう・・・つい勢いで来ちゃったけど、よく考えたら黄島くんには凄く悪いことしてるよね・・・)

 

 

康太の態度にカッとなってここに来た愛子だが、冷静になり、黄島への罪悪感が芽生え始めた

 

 

(やっぱり、謝って帰ろう)

 

「あ、あのさ・・・」

 

「友達から聞いたんだけど、あそこのシュークリームが美味しいんだって。行ってみない?」

 

「行く!」

 

(・・・って、違ぁぁぁう!!)

 

 

反射的に答えてしまった愛子

 

 

(うぅ・・・どんどん帰りにくくなっていくよぅ・・・)

 

 

欲望にあっさり負けた自分を情けなく思い、頭を抱えるのだった

そして食べ終えて・・・

 

 

「はい。オレンジジュースでよかった?」

 

「あ、うん。ありがとう」

 

 

紙コップにストローが刺さったオレンジジュースを愛子に手渡す黄島

 

 

「・・・やっぱり、俺とは付き合えない?」

 

「え?」

 

「ずっと浮かない顔してるからさ」

 

「・・・ごめんなさい。ボク、好きな人がいるんだ。バカで鈍感でちょっとエッチなんだけど、いざっていう時すごく頼りになる人。だから黄島君とは付き合えない。ごめん」

 

「そっか・・・その彼とうまくいくといいね」

 

 

残念そうにそう言う黄島

 

 

「じゃあ最後にもう一か所だけ付き合ってくれないかな?それでスッパリ諦めるから」

 

 

そう言って二人は再び歩き出した

しばらく歩き、二人がいるのは薄暗い裏路地

この時愛子は全く警戒しておらず、どこかへの近道かな?程度にしか考えていなかった

 

 

「ところで工藤さんはさ、保健体育が得意なんだよね」

 

「あ、うん」

 

(・・・あれ?なんで黄島君が知って・・・)

 

「いやなに大したことじゃないよ。ただ・・・ちょっと『俺達』にも手解きしてもらおうかと思ってね」

 

 

黄島のその言葉と同時に、正面に二人、背後に一人の男が現れた

そしてその男に愛子は見覚えがあった

 

 

「え・・・君たちは根本の・・・」

 

 

そう、根本の取り巻きの北内、世古、緋堂の三人だった

 

 

「黄島君!?これは・・・」

 

「ギャーギャーうるせえよ。メスガキ」

 

 

先程までの優しい表情は消え、冷たい目で愛子の方を見ている

混乱してはいるが、愛子はAクラスに所属しているだけあって頭の回転は速い

故に、今の状況はすぐに理解できた

 

 

「ボクを・・・騙したの?全部ウソだったの?」

 

「ああ、水泳なんてやったこともねえよ」

 

「じゃあ、ボクの事を好きって言ってくれたのも・・・」

 

「嘘に決まってんだろ?誰がテメエみたいな色気のかけらも無い女を好きになるかってんだ」

 

 

バカにされた悔しさと簡単に騙された情けなさで愛子は涙を流す

 

 

「おいおい、絶望するのはまだ早いぜ。コレで終わりなわけない。Aクラス所属の工藤さんならわかるだろ?」

 

 

愛子はもちろんわかっていた

ただバカにするのが目的ならこんな人通りの少ない場所に来るわけがない

 

 

「なんで・・・こんなことを・・・」

 

「テメエらのせいだよ!テメエらが余計な事をしやがるから根本の奴がどっかに行っちまったんだろ!」

 

「そんなの、根本が海人君やみんなに酷い事するから悪いんじゃないか!」

 

「うるせえ!テメエらがどうなろうが知ったことか!ったく、おかげで大事な金づるがいなくなっちまった」

 

「・・・え?な、なんで・・・?根本は君たちの友達なんじゃないの?」

 

 

根本の事を金づると言った北内に驚く愛子

 

 

「はぁ?んなわけねえだろ?アイツと一緒にいれば金には困らなかったからな」

 

「あんな世間知らずの坊ちゃんと仲良しなんざごめんだね」

 

「ま、アイツも俺らの事は駒としか思ってなかったんだろうしな」

 

 

三人の下衆っぷりに怒りを通り越してあきれる愛子

 

 

(こいつら・・・最低だ・・・)

 

 

それよりもこの場から逃げることを考えないと、そう思う愛子だったが・・・

 

 

(え!?)

 

「か、身体が・・・動かな・・・」

 

 

膝をついて動けなくなる愛子

 

 

「お、やっと薬が効いてきたか」

 

 

(薬・・・?そっか、あの時)

 

 

黄島から受け取ったジュースが脳裏に浮かぶ

 

 

「あ、心配すんなよ。媚薬とかそう言うのじゃねえよ。ただの痺れ薬だ」

 

「俺らは女を喜ばせる気は無いからな」

 

「嫌がって泣き叫ぶ姿を見るのが好きなんだ」

 

「こ・・の・・・外道・・・」

 

「ん?おいおい、薬の分量を間違えたんじゃねえか?舌まで痺れてんじゃねえか。これじゃあ悲鳴が聞けねえよ」

 

 

声もほとんどでなくなっている愛子を見て北内はそんな下衆な発言をする

 

 

「まぁいいじゃねえか。それよりさっさとヤッちまおうぜ」

 

 

そう言いながら黄島はビデオカメラを構える

 

 

「定番の『この映像をばら撒かれたくなければ』ってやつだ」

 

「交友関係の広い工藤を手駒にできりゃあ色々と便利そうだからな」

 

「心配すんな。お前が言うこと聞いてる内はこの映像は誰にも見せねえからよ」

 

 

そう言って愛子に近づく三人

 

 

(声が出ない・・・いや、出ても多分ここじゃ表通りには届かないし、助けは来ない)

 

 

愛子はこの状況に絶望する

思い浮かぶのは一人の友人の顔

 

 

「たす・・・け・・て・・・こうた・・・くん」

 

 

目尻に涙を浮かべ、擦れそうな声でそう言った

その時、愛子の隣を何かが通り過ぎる

そして・・・

 

 

「グハッ!」

 

 

北内が吹っ飛んだ

 

 

「お、お前は・・・土屋!」

 

「こう・・た・・・く・・・なん・・で・・?」

 

 

そこに立っていたのは愛子の想い人、康太だった

 

 

「・・・お前ら・・・絶対に許さない!!」

 

 

座り込んでいる愛子に上着を掛け、康太は緋堂と世古を睨み付ける

 

 

「テメエ如きに何が出来・・・ガッ!」

 

 

緋堂が喋っている途中なのに容赦なくスタンガンを当てる康太

 

 

「緋堂!テメエ!!」

 

 

世古が殴りかかってくるが、喧嘩には慣れていないのか大振り過ぎて掠りもしない

 

 

「グァアア!!」

 

 

そして隙を見てスタンガンで気絶させる

 

 

「動くな!!」

 

 

康太が声の方を見ると、最初に倒したはずの北内が愛子にナイフを突きつけていた

 

 

(くっ、浅かったか・・・)

 

「形勢逆転だな。いいか?工藤の顔に傷をつけたくなければ大人しく・・・痛っ!」

 

 

その時、北内の持っているナイフが弾け飛んだ

 

 

(今だ!)

 

「し、しま・・・」

 

「・・・工藤を傷つけることは俺が許さない」

 

 

北内の顔面に康太の拳が突き刺さった

 

 

(それにしても今のは・・・?)

 

 

辺りを見渡す康太

 

 

(多分『あいつら』の仕業だな)

 

 

「こう・・た・・く・・・」

 

「・・・工藤、大丈夫か?」

 

 

静かに頷く愛子を見て一安心する康太だった

 

 

 

  ※少し離れたビルの屋上※

 

 

「この距離で正確に得物を持った右手の親指を狙撃・・・見事な腕前だな。サバイバル研究部の武田」

 

「風と障害物が無かったのはラッキーだったな」

 

(pipipi)

 

『須川か?情報を手に入れたぞ。他校の女子生徒で同じように騙されて強姦被害にあった奴が何人もいるらしい。その生徒は今回のようにビデオで撮られ、誰にも言わないように脅されているらしい』

 

「そうか・・・わかった。よく調べてくれたな」

 

 

そう言って電話を切る須川

 

 

「・・・予想以上の下衆だな」

 

「どうするんだ?会長」

 

「警察に通報だ。被害に遭った女の子の為にも動画は完全に処分させないといけない」

 

「だな。ところで黄島とかいう奴はどうした?」

 

「ああ、それなら・・・」

 

 

  ※裏路地にて※

 

 

「くそっ!なんなんだよ!アイツは!」

 

 

黄島は康太の登場の直後、すぐに逃げていた

 

 

「どこに行く気だ?」

 

 

裏路地からあと少しで大通りと言うところで一人の男が立ちはだかる

黄島は慌ててきた道を戻ろうとするが・・・

 

 

「おっと、こっちは通行止めや」

 

 

関西弁の男が道を塞いでいた

 

 

「ま、待ってくれ!俺は・・・」

 

「刑務所の中で反省してこい!」

 

 

黄島は道を塞いでいた男、北条智也に殴られあっさりと気絶した

 

 

「終わったな」

 

「ああ、悪いな英雄。わざわざ来てもらったのに無駄足になっちまった。まさかこんなに仲間が少ないとは思わなかった」

 

「気にせんでええで。工藤ちゃんは俺にとっても友達やからな」

 

(しっかし、あんなに感情的な智也は初めて見るなぁ・・・やっぱり内容が内容やからかいな?)

 

 

英雄の予想通り、過去に強姦被害で恋人を失っている智也はこの手の犯罪者が許せなかったのだ

 

 

「北条、そいつが・・・?」

 

「ああ、黄島とかいう奴だ。本名か偽名かはわからんがな」

 

「そうか。あとは任せてくれ」

 

「頼む」

 

「よし、じゃあ部の方に戻ろか?海人達も心配するしな」

 

 

そう言って智也と英雄はその場を後にした

 

 

  ※帰り道※

 

 

康太は未だ立ち上がれない愛子を背負って彼女の家へと向かっていた

 

 

「康太君・・・ごめんね」

 

「・・・何がだ」

 

「色々。変な態度取ったこととか、黄島君にホイホイついて行った事とか・・・ボク、ホントにバカだよね。初対面の人の告白を真に受けてさ。ボクみたいな色気のない女を好きになる人なんているわけないのに・・・ホント・・・バカみたい」

 

 

涙声でそう言う愛子

 

 

「・・・工藤」

 

「何?」

 

「・・・俺の傍にいろ。何があっても俺が守ってやる」

 

「そ、それって告はk・・」

 

「・・・嫌か?」

 

 

愛子の言葉を遮るようにそう問いかける康太

ちなみに康太の顔は赤くなっている

 

 

「・・・嫌じゃない。嫌なわけないよ。ボク、康太君が好きだもん」

 

「・・・そうか」

 

 

冷たい返しだが、康太の表情を見て照れているのだと愛子にはわかった

 

 

「ありがとう。康太君」

 

 

康太に背負われたまま後ろから抱きしまる愛子だった

 

 

「・・・工藤。お前、ホントはもう歩けるだろ?」

 

「・・・バレた?」

 

 

実は痺れ薬の効果はとっくに切れていた愛子はてへっと笑うのだった

 

 

 

 

  ※おまけ※

 

 

『次のニュースです。文月市の高校生四人が女子生徒への強制わいせつ及び脅迫の容疑で逮捕されました。容疑者の少年達は『一目惚れした』などと言い、女子生徒を騙し、人気のない場所へ連れて行き、わいせつな行為を行い、その様子を撮影し、『言うことを聞かなければネットでばら撒く』と被害者少女を脅迫したようです。容疑者宅から押収したパソコンには撮影した動画が残っており、少年四人は容疑を認めているとのことです』

 

『なお、警察が現場に駆け付けた時にはすでに犯人は縛り上げられており、『強姦事件の犯人はこいつらです。被害者の為にも、画像や映像はきちんと処分してください。byかよわい女の子の味方』と書かれた張り紙が付けられていたそうで、何者かが犯人を捕まえたと思われます』

 

 

「・・・物騒だね。姉さんも優子さんも葉月も気をつけてね」

 

「アタシは平気よ。だって、世界一の彼氏がいるんだもん。誰に告白されたってついて行かないわよ」

 

「優子さん・・・」

 

「ラブラブね」

 

「ラブラブです!」

 

 

島田家に遊びに来ていた優子とテレビを見ながらそんな会話を交わすのだった

 




卑怯四天王の三人が逮捕されてしまいましたね・・・
ついに結ばれた愛子と康太
ムッツリーニがカッコよすぎる・・・
『かよわい女の子の味方』・・・一体誰なんだ?w
そしてやっぱりラブラブな海人と優子
さて、次は何を書こうかな~?

次回も頑張ります

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