バカとテストとウチの弟   作:グラン

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憑りつかれた小保川に立ち向かう一同
はたしてどうなる

そしてある意外な人物が登場


それでは本編へどうぞ


第百四十一問 幼児化 後編

召喚フィールドが広がると同時に視聴覚室のドアが閉まった

 

 

「あ、開かないのじゃ!」

 

「・・・やるしかないってわけね」

 

「クケケ・・試獣召喚」

 

 

小保川が召喚獣を召喚する

 

 

「「「「「試獣召喚!!」」」」」

 

 

一同もそれに応じるように召喚

すると次の瞬間、小保川の召喚獣が一気に詰め寄り、秀吉の召喚獣を消し飛ばした

 

 

「う・・・ゴフッ!」

 

「ひ、秀吉!?」

 

 

すると秀吉は召喚獣が殴られた個所と同じ部分を抑えながら崩れ落ちた

 

 

「ま、まさかフィードバック!?」

 

「秀吉!大丈夫!?」

 

「・・・どうやら気を失っているだけのようですわ」

 

「クケ・・・クケケケケ」

 

 

気味の悪い笑い声をあげる小保川

完全に精神が狂い始めている

 

 

「戦死したにも関わらず、西村先生が来ないところを見ると援軍は期待出来そうにねえな」

 

「下がってください!ここは僕が・・・」

 

「いいえ、下がっておくのはあなたですわ吉井君」

 

「な、なんでですか!?僕だって皆さんに比べれば点数は低いかもしれませんけど、操作技術なら・・・」

 

「勘違いしないでください。別にあなたが劣っていると言っているわけではありません」

 

「・・・隙をついてネックレスの破壊。それは物理干渉能力のある吉井にしかできない事」

 

「そういうこった。ここは俺達に任せろ」

 

「で、でもあの点数は・・・」

 

 

  科学

 

3-A 小保川理香 886点

 

 

「・・・相変わらず高ぇな・・・」

 

「科学だけなら生徒どころか教師よりも点数が高いですからね」

 

「・・・勝てないかもしれない」

 

「だったら!」

 

「三年生を舐めんなよ」

 

「道を間違えた友人を止めるのは友達として当然ですわ」

 

「・・・乗りかかった船」

 

 

小保川に立ち向かって行く三人

 

 

「美波!今のうちに海人を・・・?美波?」

 

「お・・・お化け・・・はふっ・・・」←気絶中

 

「あぁ・・・そういえば美波はお化けが苦手だったな・・・」

 

「明久君は美波をお願い」

 

 

そう言って優子は海人の拘束を解いた

 

 

「海人君。大丈夫?」

 

「優子さん・・・ごめん。僕、優子さんがピンチの時に何も出来なくて・・・」

 

「縛られてたんだから仕方ないわよ。それよりここは危険よ。早く離れて・・・」

 

 

優子がそう言った瞬間、背後でドサッという何かが倒れる音

振り向くとそこには・・・小暮、常村、琴音が倒れていた

 

 

「う、嘘・・・でしょ?」

 

「Aクラス生を三人もこの一瞬で・・・?」

 

「ケケケ・・・次ハキサマダ・・・」

 

 

そう言って小保川は優子の方に視線を向ける

 

 

「くっ!」

 

 

身構える優子

と、その時、優子の前に海人が立ちはだかる

そして海人は・・・小保川を睨み付けた

 

 

「グ、グガガガッガガ!!」

 

 

すると小保川は頭を抑え、苦しみ始めた

 

 

「ナゼ・・・ナゼ私ヲそンな目デ見ルの!?私ハこンなに海人様ヲ愛シテイルノニ!!」

 

 

小保川はそう訴えかけるが、海人は視線を逸らさず睨み続ける

 

 

「・・・モウ・・イイ。私ノ物にナラナイなら・・・アナタヲ殺シテ私も死ヌ!!」

 

「か、海人!逃げ・・・」

 

 

瞬間、凍てつくような冷たい殺気が流れた

 

 

「誰を・・・」

 

 

恐る恐る視線を向けるとそこには・・・

 

 

「誰を殺スデスッテェェェェェェ!?」

 

 

魔王様が復活していた

 

 

「邪魔ヲスルナラ、貴様カラダァァァ!!」

 

「海人ヲ傷ツケル者ハ許サナイィィィィ!!」

 

 

小保川(悪魔)と美波(魔王)の戦闘開始

 

 

「クケ!クケケケケケ!!」

 

「コロコロコロコロコロ!!」

 

 

お互いに百烈拳をぶつけ合う二人(隣では召喚獣も殴りあっている)

 

 

「す、すご・・・」

 

「悪魔相手に互角に戦ってる・・・」

 

「いや・・・」

 

 

3-A 小保川理香

 

507点→455点→412点

 

 

2-F 島田美波

 

255点→180点→107点

 

 

「ダメだ!点数が低い分、美波の方が僅かに圧されてる!」

 

 

そしてついに美波の召喚獣が消滅

フィードバックの痛みからか、怯んだすきを逃さず小保川は美波を殴り飛ばした

 

 

「きゃあ!」

 

「美波!!」

 

「姉さん!」

 

 

倒れる美波に駆け寄る明久

 

 

「く・・ゥケケ・・・今度コソ殺ス」

 

 

再び優子の方に視線を向ける小保川

 

 

(美波がだいぶ削ってくれたけどまだ向こうの方が点数が高い。でももう明久君と海人君以外はみんな倒れたし、海人君は今の身体じゃあフィードバックの衝撃に耐えられないかもしれない。アタシが戦うしかない!)

 

 

覚悟を決め、召喚獣を操作しようとする優子

 

 

「待ってください小保川先輩」

 

 

が、そこに海人が立ちはだかった

 

 

「アナタの要求を飲みます。僕は・・・あなたの物になります。だからみんなには手を出さないでください」

 

「海人君!?何を言って・・・」

 

「・・・ごめんね優子さん。でも、こうするしかないんだ・・・」

 

 

その言葉を聞いた小保川は・・・

 

 

「海人・・様・・・?本当に私の物に・・・?」

 

 

真っ黒に染まった目に光が灯った

 

 

「いや・・・嫌よ!!行かないで!海人君!!」

 

「・・・」

 

「悪いところがあるなら直すから!!もう浮気を疑ったりしないから!!だからお願い!行かないで!!」

 

 

ショックのあまり優子はその場に座り込み立ち上がれなくなる

海人に向かって涙を流しながら必死に呼びかけるが、海人は何も言わず小保川の元に一直線に歩く

 

 

「あぁ・・・海人様が私の物に・・・夢のようだわ・・・」

 

 

先程まで美波と死闘を繰り広げていたとは思えないような優しい目

その目尻には嬉し涙が溜まっている

そして海人は両手を小保川の首元に回し抱き着く・・・

 

 

(ピンッ)

 

 

・・・と、見せかけ、小保川からネックレスを奪い取り

 

 

「アキ兄さん!」

 

 

明久の召喚獣の前に投げた

 

 

「や、ヤメロォォォォォ!!」

 

 

小保川はとっさの事に呆然としていたが、すぐに海人の狙いに気付き、召喚獣を明久の元に向かわせる

 

 

「させないわ!!」

 

 

が、優子も海人の思惑に気付き、召喚獣を操作し抑え込む

そして・・・

 

 

「砕け散れぇぇぇぇ!!」

 

 

明久の召喚獣の木刀が振り下ろされ、ネックレスが砕け散った

 

 

「ぐ・・・グギャアアアアアアァァァァ!!!!」

 

 

小保川は頭を抱え、苦しそうに暴れ、その場に崩れ落ちた

すると、召喚フィールドが消え、辺りの嫌な空気も消えてなくなった

 

 

「全く・・海人は無茶するなぁ」

 

「でもアキ兄さんは僕の思惑に気付いていたよね?僕が小保川先輩の物になるって言った時に何も言わなかったし・・・」

 

「まぁね」

 

 

明久との会話を終えると、海人は優子に近づく

 

 

「優子さん・・・その・・・ごめんね」

 

「ひくっ・・・うわぁぁぁん。海人君のバカぁ・・・心配したんだからぁ・・」

 

「ごめんなさい。その・・・僕の事、嫌いになった?」

 

「なってない!バカ!」

 

 

泣き止まない優子にオロオロする海人、その様子を微笑ましそうに眺める明久

三人とも気付いてはいなかった

この部屋から小保川の姿が消えていることに・・・

 

 

 

  ※一方その頃※

 

 

「もう・・・終わりだわ」

 

 

あの後、すぐに気がついた小保川は海人達に気付かれぬよう視聴覚室を抜け出し屋上に来ていた

悪魔に憑りつかれていたとはいえ取り返しのつかないことをしてしまった

覚えていなければ少しは楽だったかもしれないが、皮肉なことに、憑りつかれている間の記憶はしっかりと残っていたのだ

彼女の脳裏に焼き付いた自分を睨み付ける海人の表情

 

 

「もう、海人様が私に笑顔を向けてくれることはない・・・」

 

 

もう死んでしまおう

そう思ったその時・・・

 

 

「そこで何をしているんだ?」

 

「誰!?」

 

 

小保川が振り向くとそこには野球部の元部長、田中が立っていた

 

 

「あなたは・・・確か同じクラスの山田!」

 

「田中だ」

 

「そんなものどっちでもいいわ!」

 

「よくねえよ。世界中の山田さんと田中さんに謝れ」

 

「で?なにか用なの?私がどこで何をしていようとあなたには関係ないでしょ?」

 

「おおよその話は常村から聞いた」

 

「・・・そう。それで何?説教でもするつもり?」

 

「ああそうだな。今までの事は島田に危害を加えるわけじゃなかったからフォローしてきたが、今回の事はさすがに放っておくわけにはいかない」

 

「今までの・・・?あなたまさか・・・」

 

「ああ、気付いていたさ。お前がちょくちょくウチの部室に忍び込んだり盗撮していることはな。ったく、島田に気付かれないようにするのは苦労したぞ。気付かれればアイツの投球に影響するかもしれないからな」

 

「そう・・・それは迷惑をかけたわね・・・でももう大丈夫。私は・・・消えるから」

 

 

そう言って小保川はフェンスの方を向く

 

 

「・・・死ぬ気か?」

 

「そうよ。私はもう死んで償うしかないのよ」

 

 

ポロリと涙を流しながらそう言う小保川

 

 

「・・・違うな」

 

「何がよ?」

 

「お前は償うために死のうとしているんじゃない。自分のしたことから逃げたいだけだ。さんざん人に迷惑かけて、謝りもせずに死んで償います?ふざけんな!!」

 

「に・・・逃げて何が悪いのよ!!自分の大好きな人に親の仇を見るような目で見られる気持ちがあなたにわかる!?」

 

「・・・お前は島田の事をずっと見てきたんだろ?だったら分かるはずだ。アイツは誰かが不幸になることは望まない。それがたとえ自分や友人を傷つけた奴でもだ」

 

 

その言葉を聞いた小保川の脳裏には誰にでも分け隔てなく優しかった海人の姿が浮かんだ

そして・・・フェンスから離れる

 

 

「・・・海人様に謝ってくるわ。葵や神崎さん、他の人たちにもね」

 

「そうか」

 

 

そう言って歩きだし、ドアの前で立ち止まる

 

 

「あ、あの・・・その・・・あ、ありがとう。家族以外に本気で叱られたのって初めてだったから・・・その・・嬉しかった」

 

「ん?なんか言ったか?声が小さくてよく聞こえな・・・」

 

「な、何でもないわよ!!」

 

 

顔を赤くしてその場を去って行く小保川

その後、視聴覚室に戻り、一同に謝罪

海人は『自分も先輩の想いを利用したからおあいこ』と言い

優子は『憑りつかれていたなら仕方ない。ただし、次やったら許さない』と言い二人とも本気で反省している小保川を見て許すことにした

 

 

(((三人がかりで瞬殺されたなんて言えるわけない)))

 

 

小暮、神崎、常村も思うところがあるようで特に何も言わなかった

美波は納得していなかったが、他の一同が小保川を許したことにより渋々和解した

 

ちなみに海人の身体の件だが、美波にお風呂に連れ込まれたり、葉月に抱き枕にされたりとさんざん振り回されたが、小保川の言うとおり三日後には無事元の姿に戻った

 

 

 

  ※おまけ、その後の3-A※

 

 

(チラチラ)

 

「ん?」

 

「!!」(フイッ)

 

(偉そうなことを言ったから怒ってんのか?)←鈍感

 

 

小保川が田中を目で追っては、目が合うたびに顔を赤くし視線を逸らす姿が目撃された

 

 

 

  ※おまけ2、小暮葵の正体とムッツリ商会のシステム※

 

 

「土屋君。新作は入っていますか?」

 

「・・・これ」

 

 

そう言って康太が差し出したのは海人の写真

 

 

「はぁ・・・癒されますわぁ~」

 

 

海人の写真を眺めながらそう呟く、海人ファンクラブ会長、小暮葵の姿がそこにあった

 

 

「・・・先輩は海人を狙おうとは思わなかったのか?」

 

「私にとって海人君はアイドルのようなもの。恋愛対象ではなくただ応援したいと言うだけですわ」

 

「・・・そうか。それで支払いは・・・」

 

「いつも通り、私の写真は好きなようにしてください」

 

「・・・了解」

 

 

そう言って小暮は去って行った

現在はムッツリ商会では本人の許可なく写真の販売はしておらず、了承を得たものだけを販売している

そして売り上げの一部を被写体に報酬として返金している

バイトがてらモデルを名乗り出る者もいるが、最近では想い人の写真の購入資金にする者がほとんどだそうだ

 

 

「やっほー、康太君」

 

「・・・工藤か。ちょうどよかった。コレ、写真の報酬だ」

 

「ありがと」

 

「・・・そう言えばお前は写真は買わないな」

 

「ん~まぁね。欲しい写真がないからね」

 

(・・・?大体は取り揃えているはずだが・・・)

 

(だって・・撮影者は被写体になれないからね)

 

 

ムッツリ商会は今日も好評稼働中である

 




ここでまさかの田中先輩(地味太郎)登場!!
フラグが・・・立ったのか?

小暮の正体は海人ファンクラブ会長!
癒し系弟キャラの海人は年上女子に大人気w


次回も頑張ります

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