バカとテストとウチの弟   作:グラン

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ちょっと長くなってしまいました


第百三十二問 入れ替わり

「ふぅ・・・ただいま帰ったぞい」

 

『※◆〇Ⅷ☆Д×¥△Ⅲ~~~♪』

 

「な、なんじゃこの奇声は!?」

 

 

秀吉が慌ててリビングに入るとそこには・・・

 

 

「あ、姉上?(海人がいない寂しさで壊れてしもうたのかの?)」

 

「・・・ぐすっ・・・ひでよし~たすけて~」

 

 

秀吉の姿を確認すると涙目で秀吉にしがみつく優子

 

 

「お、落ち着くのじゃ。一体どうしたというのじゃ?」

 

 

  ※事情説明※

 

 

「なるほどのう。プロモーションビデオの撮影で校歌を・・・できないなら断ればよかろうに・・・」

 

「だってアタシが断ったら海人君を呼び戻すしかないって言うんだもの・・・断れないじゃない!」

 

「ふむ、しかし歌が苦手と言うことぐらいはできたのではないかの?」

 

「それは・・・その・・・後々海人君が見るんだと思うと・・・」

 

「・・・見栄を張ったんじゃな?」

 

「・・・うん」

 

 

顔を赤くしてコクリと頷く優子

 

 

「その程度で海人が姉上の事を嫌うとは思えぬがのう・・・」

 

「それは・・・そうなんだけど・・・」

 

 

それでも好きな人に短所を見せたくないと思うのが人のサガというものだろう

 

 

「仕方ないのう・・・それならワシが姉上に変装して代わりに校歌のシーンを引き受けるのじゃ」

 

「え?いいの?」

 

「うむ。他でもない姉上の為じゃ」

 

「ありがとう!」

 

 

笑顔で秀吉に抱き着く優子

 

 

「こ、これ姉上!!当たっておる!姉上の微かにある胸が当たって・・・ゴフッ」

 

「微かで悪かったわね!!」

 

 

口は災いの元である

 

 

 

  ※撮影当日※

 

 

「全く・・・秀吉ってば・・・」

 

 

秀吉と入れ替わった優子はブツブツ文句を言いながらFクラスへと向かっていた

入れ替わりの際に秀吉に『姉上の胸のサイズなら詰め物は必要ない』と言われたのだ

 

 

「・・・海人君は・・・やっぱり大きい方が好きなのかな・・・?」

 

 

自身の胸をペタペタと触りながら溜息をつく

そうこうしている内にFクラスの教室の前に到着

 

 

「さて、美波達にばれないようにしないとね」

 

 

そして優子はドアを開けた

 

 

「あ、秀吉」

 

「どこに行ってたのよ?」

 

「ちょっとトイレ・・なのじゃ。それより補習はどうしたのじゃ?」

 

 

入った瞬間に現れた美波と明久にたどたどしい言葉で返事をする優子

 

 

「なんか今日は自習だって。はい。これ、秀吉の分のプリント」

 

「うむ、ありがとうなのじゃ」

 

「・・・」

 

 

明久からプリントを受け取る優子

その様子を見ながら美波は何かを考え込む

そして・・・

 

 

(むにゅ♪)

 

 

優子の胸を触った

 

 

「ななっ何するのじゃ?」

 

「どうしたの美波?」

 

「・・・やっぱり・・・微かにある」

 

「殴るわよ・・・・・・・あ」

 

 

・・・失言だった

 

 

「やっぱり、アンタ優子ね」

 

「え?優子さん?」

 

「ななっ何を言っておるのじゃ!?ワシは姉上ではないぞい!」

 

 

必死に誤魔化そうとする優子

 

 

「へぇ・・・あくまでシラを切る気ね?ならこっちにも考えがあるわよ」

 

 

そう言って美波は優子に詰め寄り優子のネクタイを取る

そしてボタンを一つ外した

 

 

「な、なにするの!?・・・じゃ」

 

「あらどうしたの?秀吉は男なんだから別に問題ないでしょ?」

 

 

悪戯っぽく笑いながら二つ目のボタンを外す美波

余談だが美波と秀吉は苗字だと紛らわしいのでお互い下の名前で呼び合うことになった

そして美波が三段目のボタンに手を掛けたその時・・・

 

 

「や・・・やめてぇぇぇぇ!!」

 

 

耐えられなくなった優子は自分の胸を両手で隠すように抱き地面に座り込んだ

 

 

  ※数分後※

 

 

「・・・ぐすん」

 

「わ、悪かったわよ。さすがにやり過ぎたわ」

 

 

恥ずかしさで泣き出してしまった優子を見て美波はさすがにやり過ぎたと罪悪感を感じていた

 

 

「そ、それで、優子さんは何でここに?たしか今からプロモーションビデオの撮影のはずじゃ・・・」

 

「じ、実は・・・」

 

 

居心地の悪さを誤魔化すように明久が優子に尋ねる

そして

優子はもはや誤魔化すことを諦め、事情を説明した

 

 

「・・・と、いうわけなの」

 

「なるほどね。それで秀吉に代役を・・・」

 

「でも優子が歌が苦手だなんて意外ね」

 

「・・・うん」

 

「?どうしたの?誰にだって苦手な事はあるんだから別に気にしなくても・・」

 

「そうじゃないの。ただ・・・本当にコレでいいのかなって思って・・・」

 

「?どういうこと?」

 

「最初は自分の短所を知られたくないって思ってた。でも悪い言い方をすれば、今アタシがやっていることは海人君やみんなを騙していることになる。今更だけど、本当にコレでいいのかわからなくなってきたのよ」

 

「・・・そうね。でも、自分の短所を隠そうとすることをウチは悪いとは思わないわ。でもこれだけは覚えておいて。海人は人の長所を褒めることはあっても短所をバカにすることは絶対にしない」

 

「・・・うん」

 

「そろそろ始まる時間じゃない?」

 

「そうね。えっと・・・」

 

 

優子はポケットから何かを取り出して卓袱台の上に置いた

 

 

「?これは・・・?」

 

「土屋君から借りた無線機よ。これで秀吉に指示を送るの」

 

 

そう言いつつ電源を入れると音が聞こえ始めた

 

 

『・・・優子』

 

『あら代表。どうかしたの?』

 

「この声・・・翔子よね?」

 

『・・・なにか良いことあった?』

 

『あ、それボクも思った』

 

「この声は工藤さんだね」

 

『え?どうして?』

 

『だって昨日まであんなに海人君がいなくて寂しいって言ってたのに』

 

『・・・今日はやけに明るい』

 

「「ほぅ・・・」」

 

「うぅ・・・」

 

 

この会話を聞いた明久と美波はニヤニヤしながら優子の方を見る

優子は顔を真っ赤にして俯いている

 

 

『いつまでも落ち込んでいられないしね。それにもうすぐ帰ってくるし』

 

「さすが秀吉ね」

 

「うん。自然に返したね」

 

 

さすがは演劇部のホープだなと感心する二人

するとそこに・・・

 

 

『おう木下!今日は元気そうじゃねえか!』

 

『え、ええ。まぁね(姉上、こやつは誰じゃ?)』

 

 

小声で優子に問いかける秀吉

 

 

「この無駄にデカい声・・・間違いなく毒島筋太郎(ぶすじまきんたろう)君ね」

 

「どんな人なの?」

 

「海人君達と同じ野球部の生徒でチーム一の怪力よ」

 

「あぁ、どおりで聞いたことのある声だと思ったわ」

 

「あ、でもこれはちょっとマズイわね」

 

「「?」」

 

 

『ん?』

 

『ど、どうしたの?』

 

『いや、木下。お前、腕の筋肉が細くなってねぇか?』

 

『え、そ、そうかしら?』

 

『ああ!俺の目に狂いはねえ!ちゃんと鍛えねえと筋肉はすぐに衰えちまう!さぁ!俺の筋肉を見てみろ!』(ガバッ!!)

 

『・・・毒島、教室内で脱ぐのはやめるよう何度も言ってる』

 

『おぉすまねえ代表!つい熱く語ってしまったぜ!!』

 

 

「・・・この暑苦しささえなければいい人なんだけどね・・・彼は俗に言う筋肉バカなのよ」

 

「なんでそんなのがAクラスにいるのよ?」

 

「・・・あれで成績は悪くないのよ」

 

 

『む!!』

 

『こ、今度は何?』

 

『・・・なんてことだ・・・俺としたことが・・・右腕と左腕の筋肉のバランスが崩れている!こうしちゃいられねえ!すぐに鍛えなおさねば!!』

 

 

「・・・行ったみたいね」

 

「嵐のような人だったね」

 

 

その後、愛子と翔子も秀吉から離れたようで声が聞こえなくなった

 

 

「静かね」

 

「秀吉にはなるべく本でも読んで大人しく過ごすように言って・・・」

 

 

『やぁ木下さん。今日も美しいね』

 

 

「うげぇ!!」

 

「ど、どうしたのよ優子。花の女子高生とは思えないような奇声だったわよ」

 

 

『え、あ、ありがとう(姉上、こやつは誰じゃ?)』

 

 

「・・・鳴資洲当夜(なるしすとうや)君」

 

 

優子はこれ以上とないくらい嫌そうな表情でそう呟く

 

 

『どうしたんだい木下さん。ああそうか。美しい僕に見惚れていたのかな。ははっ無理もない、美しいものを見入ってしまうのは人として当然の事さ』

 

『(なんじゃコイツは?)』

 

 

「なんなのコイツは?」

 

「簡単にいえばナルシスト。自分大好き人間よ」

 

「自分の事、美しいって言ってるけど実際はどうなの?」

 

「中の下」

 

 

辛口コメントである

 

 

『別にアタシはそう言うわけじゃ・・・』

 

『はは、照れることはない。好きなだけこの美しい僕を見るといい』

 

 

「・・・ウチ、こういう奴、無理」

 

「・・・アタシもよ」

 

 

生理的に受け付けないのか、優子と美波は顔色が悪い

 

 

「Aクラスには変人しかいないの?」

 

「アイツらが異常なだけよ!」

 

 

変人二人と同列扱いされた優子が叫ぶ

 

 

『それはさておき木下さん。先日の件は考えてくれたかな?』

 

『え?』

 

『忘れてしまったのかい?僕と付き合ってほしいといった事さ』

 

 

「・・・優子、アンタまさか・・・」

 

「ち、違う!誤解よ!アタシはちゃんと断ったわ!アタシが好きなのは海人君だけ!本当よ!信じて!」

 

 

美波の言葉に優子は必死に弁解する

ちなみに美波の現在の表情は無表情に光の灯ってない目

ある意味怒りの表情より怖い

 

 

「ふふ、やぁね。ウチが優子を疑ったりするわけないじゃない。ちょっとした確認よ。でも・・・万が一海人の想いを裏切るようなことがあったら・・・ワカッテルワヨネ?」

 

「は、はい(目が笑ってない)」

 

 

ニッコリと笑ってそう言う美波に優子は怯えながら頷くのだった

 

 

「っと、それより秀吉!わかってるわね!?断りなさいよ!でないと死ぬことになるわよ!(アタシが)」

 

『(叫ばないでほしいのう)気持ちは嬉しいけど、ごめんなさい。アタシには好きな人がいるから』

 

『島田海人君だったかな。はぁ・・・木下さん。いい加減目を覚ました方がいい。君のような美しい女性はあんな泣き虫なチビより僕のように美しい男と付き合うべきだ。アイツは君にふさわしくない』

 

 

「・・・この・・・黙って聞いていれば・・!!(バキッ!!)・・・え?」

 

 

優子がキレそうになったその時、隣で何かが割れるような音がした

恐る恐る視線を向けるとそこには青ざめた明久と・・・素手で無線機を握りつぶしている美波の姿があった

 

 

「み、美波・・・さん?」

 

「あら音が聞こえなくなったわね。故障かしら?」

 

「い、いや、美波が握り潰して・・『故障かしら?』・・そ、そうね!故障したのかもね」

 

「さて、ちょっとウチ、行くところができたから」

 

「え、ちょ、待って美波・・・って、もういない!?」

 

「・・・鳴資洲君、死ななければいいわね・・・」

 

「そうだね・・・」

 

 

  ※その頃Aクラスでは※

 

 

(こやつ・・・ワシの友人をバカにして、おまけに姉上の目が曇っておると言うのか?もう許せぬ!)

 

「いい加減に・・・!」

 

 

秀吉が反論しようとしたその時、教室内に突風が起こる

思わず目を閉じて再び開けたときにはそこには鳴資洲の姿はなかった

 

 

『ひぃぃ!ま、待ってくれ!顔だけは!僕の美しい顔だけは傷つけないd・・・ぎゃああああ!!』

 

「ま、魔王が降臨したのじゃ・・・」

 

 

遠くから聞こえる悲鳴に顔を青くする秀吉だった

 

その後、プロモーションビデオの撮影は無事終了

部活も終え、優子は自宅にて考え事をしていた

 

 

「・・・やっぱり・・・このままじゃダメよね」

 

 

そして優子はある決意をする

 

 

  ※数日後※

 

 

「海人君、アタシね、ずっと海人君に内緒にしていたことがあるの。実はアタシ・・・音痴なの!!」

 

「え、あ、う、うん。そ、そうなんだ?」

 

 

突然の優子のカミングアウトに戸惑う海人の姿がそこにはあった

そしてプロモーションビデオの出演者の欄に『木下秀吉』の名前が追加されたのだった

 




  ※オリキャラ紹介※


 毒島筋太郎(ぶすじまきんたろう)


基本的に大声で喋る筋肉バカ
仲間想いで成績も悪くないし、顔立ちもそれなりに良い
『あの暑苦しささえ無ければモテる』と周りからは言われている



 鳴資洲当夜(なるしすとうや)


ナルシスト
自分のことを美しいと言っているが、実際はそうでもない
他の人を見下す部分があるので周りからはあまり好かれていない
ちなみに前話で高橋先生が『出たがりそうな生徒』と言っていたのは彼の事である



キャラの濃いオリキャラでしたね
今後の登場は未定です


次回も頑張ります

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