バカとテストとウチの弟   作:グラン

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智也から語られるさやかの死の真相
そしてやはりあの男が・・・




第百二十七問 真相

「海人君、大丈夫?」

 

「うん、平気だよ」

 

 

爆弾停止から数分後、海人は拘束を解いてもらったが、昨日の夜からずっと拘束されており、食事もとっていなかったこともあって足元はふらついて優子に支えられて何とか立っている状態だ

美波も学園長がパソコンを操作し、ワイヤーで檻を持ち上げ何とか脱出した

 

 

「さて、覚悟はデキテルワネ?」

 

 

美波は明久に押さえつけられている竹原を睨み付ける

 

 

「・・・なぜだ・・・?」

 

 

呆然としている竹原はそう呟く

 

 

「なぜ邪魔をする!?さやかと付き合っていたと言うのなら貴様にはわかるはずだ!!さやかの苦しみが!!無念が!!痛みが!!なのになぜ邪魔をするんだ!?北条智也!!」

 

「アイツは復讐なんて望んでいない」

 

「黙れ!!貴様に何がわかる!!」

 

「わかるさ。それに、一つあなたは勘違いをしている」

 

「勘違い・・・だと・・・?」

 

「さやかは殺されたんじゃない・・・・・・・・・自殺したんだ」

 

「なっ!!」

 

 

智也の言葉に思わず全員が息を飲む

 

 

「俺の家の郵便ポストに手紙が入っていたんだ。遺書だった。それに気づいたのはさやかが死んだ翌日だ」

 

「なぜだ!?なぜさやかが自殺なんて・・・」

 

「それは・・・『強姦されたからだろ?』・・・!!」

 

「この声は・・・根本か!?」

 

 

智也の言葉を遮るようにアナウンスが聞こえる

 

 

『クハハハッ!!竹原先生!俺はね、ぜーんぶ知ってたんですよぉ!アンタが娘の復讐の為に学園長を狙っていることも犯人が学園長じゃないことも全部ね!!』

 

「な・・・んだと・・・?なぜお前がさやかのことを・・・いや待て・・・なんでさやかが強姦されたなんて知って・・・?ま、まさか・・・」

 

『ククッ、娘さん、良い身体でしたよ。発育が良くてしっかり楽しませてもらいました』

 

「な・・・き・・・キサマアアアアアアア!!!」

 

『しっかし、お前があいつの彼氏だなんて知らなかったぜ?北条智也!知ってたら俺からアイツを奪ったテメエを真っ先に狙ったって言うのによ!ほらどうだ?恋人の初めてを奪われた気分は?悔しいか?』

 

「・・・」

 

 

根本の挑発するような言葉に智也は何も答えない

 

 

『ケッ、だんまりかよ。冷たい野郎だな』

 

「根本!テメエいい加減にしろよ!!」

 

「アンタ最低よ!!」

 

『黙れよバカ代表に似非優等生。まぁ、負け犬は好きなだけ吠えればいいさ。最後に勝つのはこの俺だ!!』

 

 

根本がそう言った直後、爆発音と共に建物が崩れ始めた

 

 

「きゃ!!」

 

「マ、マズイ!!崩れるぞ!!」

 

『クハハッハハ!!テメエら全員そこで死にやがれ!!』

 

「ま、待て!!くっ、おのれぇぇぇぇぇ!!」

 

 

悔しそうに叫ぶ竹原

 

 

「と、とにかく脱出だ!!」

 

「ダ、ダメだ!!衝撃でドアが歪んで開かない!」

 

「崩れる!!」

 

 

そして・・・建物は崩壊した

 

 

 

  ※一方その頃※

 

 

「はぁ・・・はぁ・・・つ、着いた」

 

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ここが地図の場所?」

 

 

翔子と瑞希は廃病院の前に辿り着いていた

さっそく中に入ろうとしたその時・・・

 

 

(ドォォォン!!)

 

 

柱が爆発し、建物が崩れ始めた

 

 

「・・・え?」

 

 

翔子は地図を見直す

間違いだと思いたい

ここじゃなかったと思いたい

しかし・・・地図に記された場所は間違いなくここだった

 

 

「・・・ゆ・・うじ・・・?雄二!!」

 

「お、おい君!何やってんだ!危ないぞ!」

 

「・・・離して!雄二が中にいるの!」

 

 

偶々通りかかった通行人の静止を振り払い、翔子は瓦礫の山と化した廃院に近づき必死に瓦礫をどけ始めた

 

 

「・・・雄二!雄二!!雄二!!!」

 

 

綺麗な彼女の指先は傷だらけになり、爪が割れ、血が流れ始める

しかしそれでも翔子は手を止めない

隣では瑞希も必死に瓦礫を除去している

 

 

「・・・雄二?」

 

「翔子ちゃん?どうしたんですか?」

 

「・・・雄二の声」

 

「?何も聞こえませんよ?」

 

「・・・こっち!」

 

 

そう言って翔子は走り出した

外側を大回りして裏側に回り込むとそこには・・・

 

 

「痛てて・・」

 

「死ぬかと思ったわ」

 

「危なかったね」

 

 

雄二達の姿があった

奇跡的にも彼らを避けるように崩れており、ほとんど無傷だった

 

 

「・・・雄二!!」

 

「翔子!?なんでここn・・うおっ!」

 

「・・・ぐすっ・・・心配した」

 

「・・・悪い」

 

 

雄二に飛びつくように泣きながら抱き着いた翔子を抱きしめ返す雄二

 

 

「北条君!みなさんも無事で・・・?あれ?海人君は?」

 

 

瑞希の言葉に一同は固まる

そう、海人と犯人の竹原の姿だけがそこにはなかった

 

 

 

  ※瓦礫の中※

 

 

「・・・ぐ、ここは?そうか、あの時建物が崩れて・・・」

 

 

瓦礫の中で竹原は目を覚ました

そしてその直後、ある疑問が頭に浮かんだ

 

 

「?なぜ私は生きている?たしかにあの時、天井が崩れて・・・」

 

 

そして自分の身体の上に温かさを感じた

視線を向けるとそこには竹原に覆いかぶさるように海人が倒れていた

 

 

「そうだ思い出したぞ。あの時私は誰かに突き飛ばされて・・・ま、まさか・・・私を庇ったのか?」

 

 

記憶を整理しつつ海人の顔を見て竹原は固まった

海人の額から血が流れているのだ

 

 

「な!?お、おい!しっかりしろ!!」

 

 

竹原は慌てて海人の傷口を確認

 

 

「見た目ほど傷は深くないな」

 

 

ホッと一息ついて竹原は周囲の状況を確認する

幸い、折れた柱に崩れた天井が立てかけられた状況になっているため身動きが取れないと言うことは無いが、周囲は真っ暗でどっちが出口なのかわからない

 

 

「くっ・・・出口はどっちだ?」

 

 

下手に崩すと倒れかけの天井が崩れてペシャンコだ

しかし、もういつ崩れてもおかしくない状況なので悠長にしているわけにもいかない

 

 

「・・・絶体絶命・・か。だが、この子だけは死なせるわけにはいかん。私の命に代えても守って見せる」

 

 

竹原は海人を見ながらそう呟いた

先程の根本の話が正しいなら学園長は無罪

海人は完全に巻き添えだ

これだけの愚行を働いた自分を海人は我が身を省みず庇った

それに・・・怒り狂っていた時には気付かなかったが・・・

 

 

(なぜだろうな・・・?外見はまるで違うのに・・・彼にさやかが被って見えるのは・・・)

 

 

心優しい目の前の少年に死んだ娘の面影を感じていた

 

 

「とはいえどこを掘ればいいのか・・・教えてくれさやか。私はもうどうなってもいい。だが私が巻き込んでしまったこの子だけは救いたいんだ」

 

 

胸ポケットから娘の写真を取り出しそう呟く竹原

と、その時、写真がわずかに揺れていることに気付く

 

 

「これは・・・風か!?」

 

 

そう、肌では感じないほどのわずかな風

しかし、この密閉された空間で、風が吹き込んできているということは出口が近いかもしれないと言うことだ

 

 

「こっちか」

 

 

竹原は風が吹き込んできていると思われる壁を確認

その壁を崩れないようにゆっくりと掘っていく

そしてついに光が差し込んだ

 

 

「いたぞ!こっちだ!」

 

「海人!」

 

「海人君!しっかりして!」

 

 

光が差し込んだ先に海人の友人達の姿を確認し、もう大丈夫だと安心した竹原はそのまま意識を手放した

 




海人の行動に心をうたれ、改心した竹原
黒幕はやはり根本でしたね

無事に救出された海人と竹原
そして次回はいよいよ皆様お待ちかねの・・・

次回も頑張ります

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