バカとテストとウチの弟   作:グラン

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前編後編に分けてちょっとおまけ小説を書きます
優子と海人の甘々な日常をご覧ください




第百七問 木下優子の悩み 前編

 フローラたちの帰国から数日が経過

今日も海人たちは練習に勤しんで・・・

 

 

「じゃあな海人。飛ばされんように気をつけや」

 

「僕はそんなにちっさくない!!」

 

 

・・・は、おらず台風接近の為、今日の練習は中止

室内でミーティングとなった

ちなみにマネージャーの優子は台風が酷くなる前に新キャプテンの智也の判断で先に帰らせた

 

 

「にしても凄い風だなぁ・・・」

 

 

幸いまだ雨はそこまで強くないものの風がかなり強く吹き荒れている

海人は傘を飛ばされないように気をつけつつあることを考える

 

 

「・・・なんか、最近優子さんに避けられてる気がするなぁ」

 

 

そう、ここ数日、海人と優子はろくに会話を交わしていない

実際は優子が自分の気持ちに気付き、海人の顔をまともに見れなくなっているだけなのだが、海人は自分が何か怒らせるようなことをしたんじゃないかと不安に思っていた

 

 

「ん?あれは・・・」

 

 

そんなことを考えつつ歩いていると一人の少女が雨宿りしているのを発見

 

 

「こんにちは」

 

「え?あ、葉月ちゃんのお兄さん」

 

 

その少女は妹である葉月の同級生の女の子だった

 

 

「傘、壊れちゃったんだね」

 

「はい・・・」

 

「じゃあこれを貸してあげる」

 

 

海人は少女に自分の使っていた傘を差し出す

 

 

「え?でも・・・」

 

「いいからいいから。女の子なんだし、風邪を引いたら大変でしょ?僕なら大丈夫。折り畳み傘を持ってるから。雨が酷くならないうちに早く帰ろうね」

 

「は、はい。ありがとうございます」

 

 

そう言って少女は海人から傘を受け取り、去って行った

 

 

「さて・・・どうしたものか」

 

 

少女にああ言ったものの本当は折り畳み傘なんて持っていない

 

 

「・・・あっ!」

 

 

海人はふとある事に気付く

自分が彼女を家まで送ればよかったのだということに・・・

 

 

「僕、超バカじゃん・・・」

 

 

優子とのことで頭がいっぱいで冷静な判断ができなかったことに対し自虐的に笑う

 

 

「仕方ない。走って帰りますか」

 

 

まだ雨は弱いので走ればあまり濡れずに帰れる

そう思った海人は自宅に向かって走り出した

 

 

  ※数分後※

 

 

海人の考えはあっさりと打ち砕かれた

まるでバケツをひっくり返したような大雨が降り始めたのだ

すでに海人はずぶ濡れ

自宅に連絡しようにも・・・

 

 

「まさか雨で携帯が水没するとはね・・・」

 

 

雨は一向にやむ気配がない

むしろ酷くなっていっている

とはいえここで立ち止まっているわけにはいかない

時間を掛ければ心配した美波が自分を探しに来るかもしれないからだ

海人としては大事な姉がこの危険な天候の中、外出するのを避けたい

なので急いで帰ろうと思ったその時

 

 

(ゴロゴロゴロっ!!)

 

「ひっ!」

 

 

雷の音が鳴り響いた

お忘れかもしれないので一応補足しておこう

海人は雷が苦手です ※第九十七問参照※

早く帰らなければ・・・

そう思うものの恐怖で足が動かない

 

 

「・・と・・・海人!しっかりするのじゃ!」

 

「え?秀吉君?」

 

 

と、そこに偶々通りかかった秀吉が海人に声を掛ける

 

 

「一体どうしたのじゃ?ずぶ濡れではないか」

 

 

海人はここまでの経緯を秀吉に話す

 

 

「知人に傘を渡して自分はずぶ濡れ・・・お主らしいのう(相変わらずのお人好しじゃ。まぁ海人がそういう奴だからこそ、姉上が惚れたのかもしれぬがの)」

 

 

秀吉は海人にそう言いつつ微笑む

 

 

「とにかくお主をこのまま放っておくわけにはいかぬ。とりあえずウチにくるのじゃ。このままでは風邪をひくぞい」

 

「でも迷惑じゃ・・・」

 

「構わぬよ。ここからならワシの家の方が近いしの。それに・・・(ズガァァァン!!)「ひぅ!」・・・お主、その状態では自力で帰れぬじゃろ?」

 

 

雷が落ちるたびにビクビク震えている海人を見て秀吉は苦笑いでそう言った

 

 

「もしもし母上かの?たった今ずぶ濡れの友人を発見しての、放っておけぬので今からウチに連れて行くのじゃ。なのでお風呂を沸かせておいてほしいのじゃ」

 

 

秀吉は携帯で自分の母親に連絡を取る

 

 

「さて、では早速行くのじゃ。このままでは風邪をひいてしまうぞい」

 

「う、うん」

 

 

二人は木下家に向けて歩き出した

 

 

 

  ※一方その頃木下家では※

 

 

「お風呂はこれでよしと。さて、何か身体が温まるものでも作っておこうかしらね」

 

 

木下母はそう言って台所へ向かった

そしてその数分後

 

 

「ただいま。酷い雨だったわ。小雨だったからって本屋になんて行かずにさっさと帰ってくればよかった。あれ?お風呂が入れてある。お母さんかな?まぁいいや、秀吉はまだ帰ってないみたいだし、先に入っちゃおっと♪」

 

 

そう言ってたった今帰宅した優子は部屋に着替えを取りにいった

数分後に自身の想い人が来るとも知らず・・・

 

 

  ※さらに数分後※

 

 

「ただいま帰ったのじゃ」

 

「お邪魔します」

 

「いらっしゃい。お風呂入れてあるわよ」

 

「海人、先に入ってくるとよいのじゃ。着替えはワシのものを貸すのじゃ」

 

「うん。ありがとう」

 

「お風呂場はそこよ。(そういえば優子はまだ帰って来ないのかしら。遅いわねぇ)」

 

 

木下母は海人を風呂場に誘導しつつ、まだ帰ってきていない(と思っている)娘の事を考えていた

 

 

「さて、着替えを取りに行くのじゃ」

 

 

そう言って秀吉は自分の部屋に向かう

 

 

「む?」

 

 

と、そこで優子の部屋のドアが半開きになっていることに気付く

 

 

「この散らかった部屋は海人には見せれぬ。閉めておくのじゃ・・・む?あれは姉上の鞄?しかし部屋にはおらぬしリビングにも・・・ま、まさか!?」

 

 

『きゃあああああああ!!!!』

 

 

直後、優子の悲鳴が部屋中に鳴り響いた

 

 

  SIDE 優子 ※悲鳴発生数分前※

 

 

「あー気持ちいい」

 

 

アタシは湯船につかりながらのんびりとしていた

 

 

「・・・今日も海人君の事避けちゃったな・・・」

 

 

これがアタシの最近の悩みだ

空港での出来事があってから今日まで、アタシはまともに海人君の顔を見れずにいた

海人君と出会ってから今日までの事を思いだせば思い出すほど恥ずかしい思い出がいっぱいだ

今となっては何で自分の気持ちに気付かなかったのか不思議なくらいだ

優しいし可愛いし成績も良いし運動神経抜群

これ以上とないくらい理想的な男性じゃない

 

 

「・・・あー暑くなってきた。そろそろ上がろう」

 

 

そう言ってアタシは脱衣所へのドアを開ける

 

 

(ガチャ)×2

 

 

・・・ん?今、ドアの音が二つあったような・・・

顔をあげるとそこには・・・

 

 

「ゆ、優子さん!?」

 

「か、海人君!?」

 

 

たった今思い浮かべていた想い人の姿がそこにはあった

・・・ハッ!

アタシはたった今までお風呂に入っていた

つまりアタシの今の格好は・・・.

 

 

「き・・・きゃあああああああ!!」

 

「ご、ごめんなさい!!!」

 

 

海人君はアタシの悲鳴を聞いて慌ててドアを閉めた

・・・もうアタシ・・・お嫁に行けない・・・

 




次話は木曜日までに投稿したいと思います(書ければいいな)ww

次回も頑張ります

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