忘れられた龍の秘跡 〜MonsterHunter Legend 〜   作:妄猛総督

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堕ちよ天帝 掴んだ空は泡沫に消ゆる

ーーーーこれは

 

 

懐かしい夢を見た。

 

ーー

 

 

 

塔もなく、樹海もまだ生まれてから時間が経っていない。のちの時代に古塔と呼ばれるあの場所で、真赤の祖と天の皇帝が対峙していた。

 

両者も世界中を回り続けて、戦い続けた。

 

 

人からは神々の戦いと呼ばれた時もあった。

 

常に戦い続けてきた。

 

常に傷だらけだった。

 

だからこれが今まで戦ってきた中で、最後の一撃だった。

 

これに打ち勝てば、自分はあの広大な空を手にする大きな躍進になるはずだった。

 

 

最後の、渾身の光の奔流を互いに打ち出す。

 

だが、運命は数奇なもので、光は衝突しなかった。互いの身体に突き刺さるように直撃したのだ。

 

戦い始めてから、休むということをしなかった。

だからだろうか、両者の天の雷は胸に突き刺さったのだ。

 

引き分け。いいや。

 

敗北だ。その日初めて、天から堕ちたのだ。

 

祖龍も自分も、大きな地響きを立てながら堕ちた。

 

 

なのに、いつもなら体制を立て直しているのに、全く動かないのだ。冷えていく身体に死の恐怖が浮かぶ。

 

違う、これは()()()()()いる。

 

そう気づく時には、すでに遅かった。いつから見せられていたのか、祖龍はこちらを見ながら、赤い瞳を微かに揺らして見つめている。

自分はもう一度空を見た。

 

黒い瘴気のような幻幕を身に纏い、九つの尾を不気味に揺らしてその其々の尾からは赤黒い光の玉が不気味に輝かせる漆黒の狼とも狐とも言えるものがあり、それは

 

天高く、大きく吠えた。

 

 

《クオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッッッッッッッッ!!!!》

 

自分の周囲の空気が瞬時に凍りつき、大地を巻き込み、瞬く間に己を氷の壁に押し込めた。それだけではない。

 

九つの尾が従えていた赤黒い光の玉が光の筋を放つと大地を切り裂き、更に己の中にある重力を制御する力に干渉してきた。自分の持つ力でこの大地を空高く浮かびあげて、周囲の土の瓦礫を凍りついた壁に無造作に繋ぎ合わせる。

 

それは二重に折り重なる牢獄で、世界を彷徨う浮遊大陸となった。

 

何千年の間、人が踏み込むまで、この身は永遠の眠りになったのだ。ーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天空龍を吹き飛ばし、更に押さえつけた存在に気づくと祖龍は人に戻った。

即座に現れたアリストテレスに解放されると崩れ落ちた塔の一室に解放されていた。

 

 

「王よ、大事ないですか?」

 

 

「アリストテレス‥‥‥‥、あの時の再現だ。でも今回は封じるだけでは済まないと思う。」

 

「結局、決着は‥‥‥‥‥‥‥‥付かなかった!」

 

「天の皇帝は、貴女様をあそこまで追い詰めた。永き時の中で、あそこまで迫れたのは、 このアリストテレスの記憶を辿ってもかの天空龍のみでございます。」

 

「故に、何故あのタイミングで割り込んだのか、精霊の意思が読めませぬ。」

 

 

 

 

 

 

 

「精霊の意思は私達でも読めないよ、だってーーーー星の使いに意思なんてないんだから。」

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

許せない、

 

 

例えこの身が許されざる存在とて

 

 

二度目だ、天を、神の座に近づくための我が闘争を

 

此奴は二度も遮った。

 

 

天空龍の身体全体が、ドス黒い雷が走り出す。

 

精霊は何かの危険を感じとり、その場を離れる。

ゆっくりと起き上がる天空龍。翡翠色の鱗の隙間からそのドス黒い雷が漏れ出している。

 

更に空の雷雲も何処か黒く染まっているのも間違いではないかと思ってしまう地獄の光景。

 

黒い雷は天空龍の黄金の雷と一体となり、金と黒の入り混じった雷となる。

変化はそれだけではない。鱗から漏れ出した黒い雷は天空龍の身体全て覆い隠し。

 

 

《オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッ!!!!!》

 

今までの咆哮が可愛く見える、咆哮だけで周囲の存在概念が消し飛ぶ、光速を超えた音だけで爆撃が響き渡る。

 

天空龍を覆い隠していた黒い雷が晴れるとそこにかつての美しい鱗を持った天空龍は存在せず。

 

全てが黒く染まり、翼膜や背びれ、牙や角といった特徴のわかりやすい場所は脈打つように点滅する赤黒い光を湛えていた。

 

モンスターというものは怒り状態と言われる形態がある。無論、ハンターやギルドがそう定義しているだけで正しくもあり、正しくない。

 

それでも、

 

 

この天空龍の姿はまさしく怒り狂う天帝に相応しいといえるだろう。

 

 

いつの間にか消えていた祖龍を無視し、この目の前の敵を全力で、屠るべく、何処に瞳があるのか分からぬ爛々とギラつく目で眼下の存在を睨みつける。

 

そして、黒い一閃。

 

それは天空龍が自らの尾にエネルギーを集中させ、剣のように、鞭のようにふるったからだ。

幻天狐は神速を超える天空龍の一凪ぎに青色に輝く膜のようなものを展開し、防ぐ。

即座に発生する爆発の嵐。そして余波で陥没する地形。

 

 

 

《ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッ!!!》

 

すかさず重力操作により、小惑星を大量に生成、祖龍に当てたものの比にならぬ漆黒の雷を纏った重機関銃の如くそれが炸裂する。

 

まだ終わらない。今度は身体中から、正確には鱗を強制的に剥離、再生を電気により行わせ雨あられと漆黒の雷を纏った鱗が降り注ぐ。

 

炸裂した場所には、ただ概念がない。綺麗な球形のクレーターがあるのみで。

 

 

だが、それでも目の前の青色に輝く膜のようなものは健在であった。

 

まだ、これで終わりではない。

 

 

天空龍は小さく吠えると、黒と黄金の雷を纏い、さながら長大な槍のように思えた。大きく上昇、厚ぼったい雲を抜け、眼下を見下ろす。

 

体を線のようにピシッと整えると、尻尾を振るい、推進力に変えるとそのまま落下した。

それだけではなく、体を回転させて更に勢いを増し、敵を屠らんとする。

 

 

それは、アリストテレス曰く、

 

 

(あめの)(すめらぎ)の破魔矢 】と呼んだという。

 

 

 

 

幻天狐の名を持つヒラサカノカミは青色の膜を今度は二重に展開し、天の矢を向かいうつ。

 

天より飛来する黒き雷を纏った矢を注視する精霊は確かに、ほくそ笑んだ、ように見えた。

 

間髪入れず、鳴り響く激突音。

 

大地は捲れ、所々から地底にあったマグマが溶岩となって吹き出す。

だが驚くべきは、激突するその場所だ。

 

青色の膜は天の矢を完全に受け止めていた。膜の周囲は矢の衝撃により、もはや大地とはいえず、広大な峡谷と化した。

 

だが、受け止めているは良いものの少しずつ亀裂が生じていく。

恐るべきは天空龍、天の皇帝に恥じぬ終焉の一撃。

 

 

パキ、

 

パキ、パキ

 

《クルルルルルルルゥゥゥゥ‥‥‥‥‥‥‥!》

 

やがて、もたぬことを悟ったのかヒラサカノカミは膜の内部から黒い瘴気のようなものを纏い、爪を一閃する。

 

なぜ、そんなことをしたのか。それはヒラサカノカミの特性である。

 

 

幻天狐ヒラサカノカミ。かの特性は、現実として成り立つ虚栄にして幻覚である。

 

つまり、ヒラサカノカミに対して、もたらす攻撃は現実のものとして存在しない幻覚であり、ヒラサカノカミがもたらす攻撃は幻覚でありながら現実として傷をもたらすのである。

 

だが、これには条件があり、ヒラサカノカミ単体に対してである。広範囲にもたらす攻撃は対象ではなく、身を守らなければならない。

 

天空龍が繰り出した天の矢は一点集中でありながら、もたらす被害は広範囲に及ぶ。膜の周囲がそれを物語るだろう。

 

一閃された爪は、まるで紙のように天空龍を吹き飛ばした。その余波は天の矢と合わせてクレーターが生じる。そして大きく九つの尾を広げ、黒い光が天空龍を追い詰める。

 

 

 

クレーターから這い出たヒラサカノカミは空中に浮かぶ、もはや気力を果たしたのかフラフラの状態の天空龍を見た。目は虚ろで、何を写しているのかさえわからない。

 

だが、この皇帝を相手取った経験からか何十もの膜をとっさに張り巡らした。

 

天空龍の背びれから黄金と漆黒の属性エネルギーが尾、背中、首、角と辿りつつ、光が蓄えられていく。

黒く染まった牙の変圧はもはや暴走状態にあり、天空龍の制御が追いついていない。

 

口元から形成された雷球は黄金と漆黒、そして、龍属性だろうか赤黒いモノが入り混じった物が作られていた。

 

その背後から余波として天空龍の体を焼き尽くしていき、空を焦がして、空気を燃やしていった。

 

 

そして、放たれる光の奔流。

 

ヒラサカノカミはその膜で受け止めることに成功した。だが、恐ろしいことに今なお攻撃力が際限なく上昇しているのだ。

 

ヒラサカノカミは九つの尾をきらめかせて、光の奔流を膜で包んだ。なおぶつかる光の奔流を常に包んだ膜へ送っていく。

 

球体に包まれた光の奔流を光の奔流へ送り出した。流れに逆らい、天空龍へ向かうそれはついに逆流の上にたどり着き、天空龍の頭部に炸裂した。

 

 

 

 

何秒、何分、何時間と感じたのだろうか今なお光で景色が見えず、空は晴れない。

 

やがて光が収まると、牙は全てへし折られ、角は砕けて、目は片目が潰れて、美しかった鱗は血を流し、空を包む二対の翼はグシャグシャに潰れてた、空に浮かぶ天空龍の姿が。

 

 

グラリ、と体制を崩し

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大地に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その巨体を墜としたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、天空龍編終了。

なお、文章が下手くそなので脳内でイメージ膨らませてくだせえ‥‥‥‥‥‥。


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