忘れられた龍の秘跡 〜MonsterHunter Legend 〜   作:妄猛総督

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kalafina 『magia』、MHX『オストガロア第2形態』bgmなどがよろしいかと


神話の再現、現界するは夢幻の狐

天が震える。

 

 

赤き雷が、黄金の雷が古びた塔の上で互いにぶつかり合い、打ち消し、消滅していく。

 

天空龍の能力、重力操作により、塔の瓦礫が互いの雷でスパークし帯電、天空龍の従者として付き従う。

 

別に瓦礫を帯電させて攻撃手段とするのは、古龍種であるルコディオラなどが行うため珍しくはない。辿り変異したルコディオラも数が増えたがさほど変化はない。

 

 

が、問題は大きさだった。天空龍は帯電した瓦礫を寄せ集め、更に周囲の土砂内の鉱物を重力操作でガチガチに固めてそれを無数に生成する。

 

それは最大で、直径200㎞。ちょっとした小惑星である。

 

それを重力操作で巧みに操り、祖龍の視界を塞ぎ背後から同じものをぶつけていく。

 

《グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?》

 

 

わかっていたが、躱せなかった。物体の質量が桁違いであった為だ。

赤雷である程度砕いたが、焼け石に水で、圧倒的質量がぶつけられてやや、体制を崩してしまう。

 

その隙を見逃すわけもなく、追い打ちとばかりに、重力操作で祖龍の周りの重力に過負荷を掛け撃墜を試みる。

 

なんともあっさり堕ちていく祖龍は塔に激突する。幾多もの瓦礫を撒き散らし更にその上に瓦礫や土砂が降り注いで祖龍を覆い尽くしてしまう。

 

瓦礫に埋もれた祖龍を遥か上空にて眺める天空龍はいつでも祖龍の反撃に対応できるように体制を万全にしている。

その判断は間違っておらず、直ぐに瓦礫は赤雷により木っ端微塵に吹き飛ばしていく。僅かに血が滲んでいるが、闘志は薄れてはおらず喝を入れるように大きく咆哮する。

 

 

《グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!》

 

 

《ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!》

 

 

 

負けじと天空龍も大きく咆哮し、両者の咆哮は激突時に凄まじい衝撃波を伴い、空間震が発生する。

 

そして周りに降り注ぐ赤と黄金の雷が全てを壊し、無へと送り返している。

 

 

それはまさしく神話の再現であった。ーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆さん、避難です。急いで〜〜!!」

 

「押さないでください、慌てず落ち着いて避難してください!」

 

ギルドの職員とハンター達の誘導でフォンロン近くの村や町には避難勧告が即座に発令された。

 

神話の再現に人間が割り込もうなど、塵に帰すなど生ぬるい。大長老はアリストテレスの言った通り、天帝と呼ばれた古龍が今塔で白い龍と戦っていると情報が流れた途端、真偽を確かめる間も無く即座に避難勧告を発令した。

 

 

「ふう、此度は‥‥‥、我らもハンター達に任せるということは出来んのう‥‥‥。」

 

「仕方ありません、大長老。あれは存在が桁違いであります。重力操作ともなれば、私達に勝ち目はありませぬ。」

 

「アリストテレスめが言っていた龍達の調査は何処まで進んでおる?」

 

 

「リッカートの調査結果が更新されるまで特に進んでいません。なにぶん、此処に所蔵する書物全てに記述がないゆえ‥‥‥。」

 

 

「精霊については何かわかったことはあるか?」

 

 

「そちらに関しては、彼女が調べています。エルミィ、報告頼む。」

 

エルミィと呼ばれたギルドナイトの女性は束になった羊皮紙を大長老に提出する。

 

「精霊に関してですが、此方は此処の所蔵する書物にいくつかありました。」

 

「断片的なものですが、かなり凄まじい力を持つ存在のようです。

 

例えば、森を背負う天の雄牛、灰から灰へ転生する焔の翼、夢幻の毒性の天狐などあります。ですが、近年姿を見たという情報は一切ありません。最後の記録が、竜大戦の一度のみ、です。」

 

 

「古の龍帝に対して、優位に立つには、精霊の力が必須と言っていましたが‥‥‥‥何処にいるのかもわからなければ動こうにも動けません。」

 

 

「自然の摂理に従うしかあるまいて‥‥‥。情報を待つのみじゃ。今は耐えるときぞ。」

 

「「ハッ」」

 

 

 

人は何も手をこまねいているわけではない。今は時を待つことを選んだ。この時ばかりは、ハンターを派遣するわけにはいかないからだ。煌黒龍の時も、黒龍の時も、いつも可能性があるハンターを派遣し、見事に果たしたのを知っている。しかし、此ればかりはどうしようもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

赤雷と黄金の雷が線を描いてぶつかり合う。

 

祖龍は赤白い稲妻の光を、天空龍は神の雷の如く黄金の光を放つ。

 

ぶつかり合う光は完全に拮抗しており、その余波は一時的にオーロラを発生させる。拮抗する光の束はやがて大きく弾け、衝撃波は両者に襲いかかる。

 

それでも怯まず再度、赤雷と黄金の光の束が吐き出される。

 

何度繰り返しただろうか。数十回繰り返したあたりから光を放つことはなくなり、今度は身体に雷を纏わせてぶつかり合う。

 

 

祖龍と天空龍の体格差は最低でも5倍はあるだろう。

 

体格差を気にしないのか両者は取っ組み合いを始める。それは空中のみならず塔さえ巻き込み、地上でも構わず苛烈に行う。

 

祖龍は天空龍の首に噛みつき、天空龍はその長大な体を生かし、祖龍を圧壊せんと巻きつき、圧力を強めていく。両者とも雷を放ちながら取っ組み合いをなおも続いていく。

 

やがて大きく距離を取ると祖龍が先に動いた。

 

大きく吠えると、全身から赤雷が発生し天に向かって打ち出される。

 

そして天空龍の真下から光の柱が迸り、天空龍を覆い尽くしていく。

 

存在の完全消滅の概念を持つ祖龍最大の技、『雷鎚』

 

これを受けると、さしものの超人たるハンターさえ、概念ごと消し去ってしまう恐るべき技であった。

 

更にこの雷鎚は祖龍の本当の意味での全力であり、天空龍のいたあたりは大地概念ごと赤熱しており、所々スパークし、プラズマが起きているのがわかる。それ以外の場所は完全に黒焦げになっており、バシュバトム樹海はほとんどが焼け落ちていた。

 

煙が晴れると、黒焦げになった天空龍が映る。天空龍は球体になっており咄嗟に防御体制をとったのだろう。祖龍はそれを睨み付けると、ボロボロと焦げ付いた鱗が落ちていく。そしてなんともないように無傷の天空龍がいた。

 

 

《ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!》

 

 

無論見た限りで無傷である、当然ダメージは受けていた。だがこの痛みが天空龍の闘志を更に燃やすことになった。これこそ宿敵であると。ならば我が一撃受けるがいい。そう言っているかのようであった。

 

 

背中の背びれが尾から頭に向かって順に発光していく。その際、膨大な属性エネルギーがほとばしる。

 

口を大きく開けると瞼は瞬膜に覆われ、自らの力で目を焼かれぬよう措置を取ると今度は大きく発達した牙が左右に開く。牙は遂に頭部にきた属性エネルギーが口元に集中し、収束するときに牙から微細な振動が発生、左右の牙にはそれぞれプラスマイナスになっており、電磁航路になる。

 

天空龍の牙は変圧器の役割を持っており、もともと持っていた電気エネルギーを増幅し、極大な一撃を放つ際使用される。

 

そして電磁加速された雷球は更に大きくなり、突如縮小する。

 

そして、稲妻を描いた光とは違い、それはレーザーであった。

 

黄金の光のレーザー。祖龍はその危険を感じとり即座に離脱。外すもののそのまま祖龍を追跡、薙ぎ払う。

 

触れたところから大地は溶岩とならず、気体、岩石蒸気になり更にその熱に空気が触れたことで凄まじい爆発が起きた。

沼や湖などの水源に触れれば水蒸気爆発になり、周囲を吹き飛ばしていく。

 

祖龍は何度も何度も逃げ惑う。

 

祖龍の雷鎚が異なる世界において雷帝トールのもつミョルニルだとすれば天空龍のそれは全知全能のゼウスの持つ雷、雷霆に他ならないだろう。

 

そして、逃げ惑う祖龍に遂に天空龍のレーザーが直撃してしまう。直後に赤雷で反発させることで威力を半減することに成功する。電子運動による直線的レーザーであるため反発させれば威力は大きく落ちる。しかし、それでも威力は凄まじく、きりもみ状態になりながら地上へ落ちていく。

 

追い打ちとばかりに再度チャージを開始、レーザーを放つ。凄まじい爆音と崩れる塔。

 

 

 

《ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!》

 

眠りながら闘志を燃やし続けた者と永く時を見守り続けた者との差、実力差ではない、執念の差とも言える。

 

だが天空龍は知っている。この程度で倒せる存在ではないことを。そう、土煙の中、全身を赤く染め禍々しく変化した祖龍を見て、更に闘志を燃やす。

 

 

 

未だ、神話に終わりは訪れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遥か北方の山岳にて目を覚ました者がいた。全身は白と黒を基調とした動物としての狐に似ている。全長はおおよそ1,800㎝。何より特徴なのは尾である。

 

その数、9本。全身には雲をイメージする模様があり、目つきは龍のそれである。

 

 

彼は、精霊の一柱。かつて天を地に堕とし、その地を空浮かぶ浮島に封じた星の使い。

 

 

 

 

 

『幻天狐: ヒラサカノカミ』

 

死を司る黄泉の化身。奢り、慢心する天の皇帝に二度めの誅を下すべく自らの意思で覚醒した。

 

 

 

 


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