忘れられた龍の秘跡 〜MonsterHunter Legend 〜 作:妄猛総督
雷鳴が轟く。
空は分厚い雲に覆われその雲もこの世とは思えぬ戦火の空の如く。
翡翠色の鱗を内包するその巨体が空を唸りながら飛行する。
彼が目指すのはバシュバトム樹海、フォンロンの古塔、その頂上である。
【天空龍: グラン・アガレス】はかつての因縁に決着をつけるべく遥か遠き場所を嵐という戦火を従えながら突き進んでいく。
時節彼は、厚ぼったい雲を抜け、晴天たる高高度の空を駆けていく。
遥か遠くで自らが落とした人種の船が並行してついてくる。が、そんなことはどうでもよかった。
か弱い人間など、赤子の手を捻るよりも簡単なのだ。
高高度の空を生息地とする天翔龍や金塵龍、天彗龍を観測する高高度古龍観測隊のメンバーは遥か15000マイル離れた位置に突如現れたモンスターに驚愕する。
蛇竜種に、いや大巌竜によく似た体躯で二対の翼を備え、翡翠色の鱗が美しい。それだけではなく、背中の甲殻が発達した背びれは時節発光しており、その時には膨大な龍属性エネルギーが漏れ出していた。
「っ!隊長!!あれを!!!」
「わかっておる。あんなモンスター、見たことがない。長いこと生きてきたが何もわからぬ。」
「間違いなく、古龍でしょうね。サンプルが手に入ればいいけど‥‥‥‥‥。」
「やめておけ、あれには手を出すな。たった今思い出したが、アレは世界を終焉に導くいにしえの龍帝の一角じゃ。儂らには何も出来んよ。
天を駆けよ嵐の王、天空龍。
真祖と天の座を賭けて争うは
天地否、それ滅びなん。
天を駆ける天帝よ、全てを支配し
どこへ行かんーー
儂の故郷エリエンテの湖村に伝わる言い伝えじゃよ。」
「不用意に近づかなければ、いいのか?」
「残念だなぁ、新種でしょ?サンプル採りたかった〜〜〜。」
「諦めい、儂らも命は惜しいんじゃ。触らぬ神に祟りなし。この空域から離れるぞい。」
高高度古龍観測隊メンバーは未知なる新たなモンスターを目の前に、その危険性を危惧してその場を離れるのだった。
その判断は正しく、あともう少し留まっていれば雷撃を落とされ撃墜されていたのだから。
ーー
天空龍はゆっくりと塔への進撃を進めていく。
途中、縄張りを荒らされたと現れた天翔龍や金塵龍が雷ブレスや風ブレスをぶつけて来たが目立った傷も動きが阻害される様子もない。
ただ少し鬱陶しいと感じたのか自らの能力である重力操作で地上に叩き落としていく。
天空龍にとって自分以外のものは不要と考えている。天に昇るのはただ己のみ、それ以外は悉く疾く去ねというかのように。
更に高速で突っ込んでくる天彗龍もぶつかってくるところで何も痛くも痒くも無い。
空の王者リオレウスも雷の反逆者ライゼクスも空の山岳ヤマツカミも名も知らぬ飛竜種も関係ない。
邪魔立てすれば、堕とす。手をかける必要もない。この手で相対するは天を賭けて痛み分けにした真祖のみ。
ああ、見える。我が宿敵、天を焦がす赤雷よ。待っていろ、再び神の座をかける時だ。
ーー
「来たね。」
「王よ、ご武運を。」
遥か地平の彼方、目視でも確認出来るいにしえの天帝を見ながら白い少女は赤い電気を纏い塔の上空へ飛翔する。
そして赤き閃光の中から現れたのは白い龍、だがそれはいつも見慣れている王冠のごとき角ではなく、三本の角だ。透き通るような青い角で二本は後方に伸び一本はまるでキリンのように前方に突き出している。
翼をは天使の翼のような形状ではなく、悪魔じみた刺々しいものへと変わっていた。
真なる祖。
祖龍と呼ばれる存在がさらなる段階を遂げた。アリストテレスはかつて天帝と争った時、そして砦跡で試練を成し遂げたハンターの前に対峙した時、その時顕現させた姿に歓喜した。
《グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!》
咆哮で塔が崩れ落ちていく。
そして飛翔。その余波で更に崩れていく古塔。
アリストテレスは再び起こるであろう神話の続きの戦いに思いを馳せたのだった。
真祖となった祖龍は遥か上空にて、かつての宿敵と対峙する。
己より何倍も大きい、天の皇帝に相応しい風貌、そこから滲み出る他者に対する絶対的殺意もーーーー
互いに持つ属性は同じ。ただ能力が違うだけ。
かたや『起源』という始まりを表す力。
かたや『星の力』、重力という密度や質量、重さに対して絶対的優位を持つ力。
祖龍は赤い雷を纏い、天帝は金色の雷を纏う。
今、神話の再現が古き塔の上空で行われるーーーー。
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モンスターリスト追加。
【天空龍: グラン・アガレス】
全長:不明
種族: 古龍種
モンスター説明
近年発見された浮遊大陸の奥部にて凍結状態で発見された古龍種。
調査隊の踏み込み調査により復活。メゼポルタの誇る飛行船を短時間で全滅させるという力の差を見せつけ、新区分である第1種禁忌指定となる。
メゼポルタ近海で目撃される大巌竜に似た体格を持ち、二対の翼を備えるなど、今まで確認されたどのモンスターにも当てはまらない特徴を持つ。
種族は不明とされたが、生き残った調査隊の装備に僅かに付着していた組織片を徹底調査したことにより、古龍の成分が確認された。これにより大長老と古龍観測隊により古龍種と断定された。
なお時を同じくして開拓を進めていたエリエンテ地方のにて本種と思われる伝承が存在したことが明らかになった。今後更に調査を進めていく方針である。