忘れられた龍の秘跡 〜MonsterHunter Legend 〜   作:妄猛総督

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三界終了。ついにラスボスの回へ。しかし、ここは前編後編分けて書きますので、ご了承を。後編終わり次第、活動報告にて神龍編閲覧に向けての注意事項を載せます。




終焉を謳う、うつろいでいく宇宙の世
絶望の始まり、狂い啼け神の龍の雄叫び 前編


「く、くはは、ハァーーハッハハハ!!いいぞ、ついに、ついにこの時が!!」

 

淡く赤く光る【神龍のカケラ】を背後にして、目上で展開される映像を見て歓喜する黒衣の男。

 

峯陵龍の肉体に魔王シャドーナ・マキリスの因子を埋め込み、もろくんだ通り戦いの最中峯陵龍を食い破って覚醒。

 

精霊王というイレギュラーがあったが結果的に最後の龍帝は死に、目覚めた魔王はこれより行う工程の時間稼ぎとして立派に努めてくれた。

 

「さあ、目覚めの時であるぞ神龍よ。精霊王も祖龍も気づくのにまだ時間がかかる。クックック、救いのない話よな。すべては一万二千年前、精霊王よ、貴様が手をかけて要石にした人間と同じように同じ過ちを繰り返すのだ」

 

高らかに笑う男、ダモクレス。その背後にある神龍のカケラを縛る楔は全て砕けており、中心にある要石はヒビが入っていてカケラはドクンっと波打つのだった。

 

その要石は、悲しげに色あせて一雫の涙がホロリと流れたのだった。

 

ーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わったなーー、なあエクセリア」

 

「ええ、終わりましたねジェスト。これで元の世界に帰れますね。連れてきたソフォクレスさんがいないのがアレですけど……」

 

「そうか、たしかにこれで終わり、か。短いようで長え付き合いだったな」

 

元シュレイド王国城塞があった場所のクレーターの真ん中で大の字になって転がる三人。

 

「なんだか達成した、って気がしねえんだもんなぁ。帰ったら星焔龍と殺るか」

 

エクセリアの手を取りながらジェストは立ち上がり空を見上げた。どこまでも、青く、蒼くーー。

 

 

ふとするとオルタがジェストとは正反対の方向へ歩き始めていた。

 

「おい、どこ行くんだよ?」

 

「これで見納めさ、俺にはやることがある。せいぜい幸せになジェスト()

 

みずくさい、それが第一に抱いた感想。

 

「オルタさん、その、短い間でしたけどみずくさいじゃないですか。もう少しここにいても……。それに聞きたいこともありますし」

 

黒いリオレウスに背中を持たれながらエクセリアがオルタを引き止める。しかし、オルタはエクセリアの方を向かず歩を進めようとしてーー

 

蝕星龍が目の前に立っていなければ良かったのだが。

グルルルルル、と唸りながらエクセリアの方を向けと促しているかのようで。

 

「はあ、わぁーったよ。んで?聞きたいことってのは?」

 

「この世界のジェストとして聞きたいんです。この世界での()はどこにいるのでしょうか?」

 

 

 

訪れた静寂。ヒュゥウウウウウウウウウ…と風が吹き両者との間が沈黙と化した。

 

「貴方がこの世界、特異点とかいう世界のジェスト・スレイヤー、私の夫であるジェストとは別の未来を送ったと聞きました。ならば、この世界にも私がいる、違いますか?」

 

「こりゃまた、ドギヅイの聞いてきたな。あーー、あいつか。あいつはーー

 

 

 

 

 

集中治療室だ。もう、もう二度とライダーとして巫女としては絶望的なんだよ。ルークがある日、原因不明の病になった時にな不死鳥の聖山に単独で無茶してな……。何があったかは省くが、それだけ必死だったんだよあいつは。結果的に『涙』を手に入れたが、その代償に、な」

 

「無論、俺も世界中回ってあいつを治す手段を探したさ。だが、見つからなかった、いや存在しなかった、が正しいな。まあ、生きているだけ良かったというべきか」

 

ホロリと涙を流しながら空を仰ぐオルタ。その顔は後悔だろうか、それとも自分自身に対する怒りだろうか。

 

「私に合うことは出来ますか?」

 

「オススメはしねえな、これはこの世界の俺たちの問題だ。さて、湿った話はこれで終わりだ。そろそろ迎えが来るんじゃねえのか?」

 

『やあ、呼んだかい?呼ばれた気がしたから来てみたよ』

 

陽気な、女性の声がオルタの背後から聞こえてきて反射的に飛びのいた。見れば魔王に吹き飛ばされておきながら服が多少破けている以外は無傷であった。

 

 

「ソフォクレス、お前不死身なのか?」

 

ジェストが抱いた疑問に三人とも同じ感想を抱いていたのは事実。

 

『うん?私はね、人の姿をしているけど人じゃないんだよ。命というより現象のようなものでね、そうだなぁ幽霊に近いものかもね。あー、エクセリア君、幽霊と聞いて卒倒しないでくれあくまで例えだからね?』

 

幽霊と聞いて思わず生理的に卒倒しそうになったエクセリアをサッと支えるソフォクレスは苦笑しながらエクセリアを立たせるのだった。

 

「それで?これで元の世界に帰れるんだよな?」

 

『その通り、三界は倒して魔王も倒した。これで君たちは晴れて元の世界に帰れるというわけさ。

 

 

じゃあ、早速時空間を開いてーーーーー』

 

 

 

 

 

 

 

ズズウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥン!!!

 

天地が突如として震えだした。

 

「な、なんだ!?何が起きた!?」

 

『まさか……!?いや、ありえない!!こんなことは起きるはずがない!!』

 

「お前、何か知ってるのか!うわ、た、立てねえぞ地震なんてもんじゃねえ!!」

 

 

天地が震え、大気が軋み、まさしく突如として起きた天変地異。空は、飛竜や鳥類が大慌てで四方八方に散り散りに逃げていくのが見えた。

 

ソフォクレスは顔を青ざめてガタガタを体を震わせ始める。明らかに異常事態である。

 

すると、空間が砕かれ、聞き覚えのある声が聞こえる。精霊王だ。

 

【ソフォクレス!!今すぐ戻れ!!!認めたくない、認められないが要石がある封魔殿で、要石が壊れ始めている!!至急帰還せよ!!】

 

『済まない!!緊急事態だ!君たちを元の世界に戻すことは今は無理だ。君たちは至急ドンドルマに向かってほしい。拠点で一時的に休んでほしいんだ』

 

「あ、ちょっと待ってくだーー、行ってしまいました……」

 

「一体何があったんだ。尋常な雰囲気じゃなかったぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー

 

 

フォンロンにある崩れた古塔の頂上にて二人の男女が震わせる世界を見て一雫の汗が流れ出す。

「っ!アリストテレス!!」

 

「まさかっ、本当に目覚めるとは……。これが忌龍のーー」

 

「本当に目覚めるなんて……!あの子の決死の行動が、精霊王の覚悟が消えちゃう………!繰り返される!」

 

 

「王よ、かの一万二年前のことは知りませんなんだ。故に確かめに行くことを提唱します」

 

アリストテレスは精霊と精霊王の過去のことは知らない。けれどだいたいは知りえていた。かつて、神龍は目覚めかけた際一人の人間を精霊王は泣く泣く要石にしてその封印を確固たるものしたということだ。その人間は、精霊が堕天する前、すべての精霊から愛されていたということも。

 

 

「うん、わかってる。行くよアリストテレス、封魔殿に。何が起きているのか確かめに行こう!」

 

 

少女は白く輝く龍へ姿を変えて時空を超え精霊王のもとへ。

 

 

 

 

 

ーー

 

けたましい警報とともに輝きの丘には虹色の空ではなく赤黒く雷鳴が轟く地獄へと変わっておりその中で精霊王は原因を調べていた。

 

【一体、何が起きている!これは、封魔殿か!?封魔殿のマナが異常に変動している……まさか二重の封印が解けている?!】

 

そもそも封魔殿は厳重に封印されており入ることは出来ない。精霊王が封印したということもあり立ち入れないはずだった。つまり、精霊王の目を盗み何者かが封魔殿に侵入して封印を外しているということになる。

 

【ソフォクレスめを呼び戻さねばならんか、む、祖龍だと?霊位ではないな、特異点の祖龍か。世界を預かるものとしてきたということか】

 

「精霊王、ただならぬ気配がしたのできてみたけど何があったの!?」

 

【見ての通りだ、封魔殿の要石に異変が起きている。ソフォクレスの合流を持って封魔殿に突撃する。

何をしているのだ、ソフォクレスは】

 

精霊王は時空をこじ開けて、ソフォクレスの元に集合せよ、と声をかけた。すると、顔を青ざめてソフォクレスが輝きの丘に飛んでくる。

 

【来たな、ソフォクレス。これより封魔殿に突入する。ソフォクレス、合図に合わせて空間の座標を合わせよ】

 

『御意、相転移、座標固定、空間固定、定義完了ーーー!いつでもいけます!』

 

ーーブゥンーー

 

 

その後に彼らは空間から消えて、雷鳴が轟く輝きの丘があるだけだった。

 

 

 

 

 

ーー

 

 

怒っているような、悲しんでいるような、絶望しているようなありとあらゆる負の感情が風になって吹き荒れる洞窟のフロアのようなエリア、封魔殿。

 

中央に座するように神龍のカケラがあり、三つの鎖が杭によって繋ぎとめられカケラを縛り、カケラを覆うように要石が円環状に配置されている。

 

ーーバシュゥゥゥゥゥゥンーー

 

 

「ここが…封魔殿。気持ち悪い……」

 

【ここは、世界の異物による世界の負のエネルギーを溜め込む場所でもある。転生者も然り、ありえざるものたちが死することにより彼らの恨みつらみが宇宙の負のエネルギーとなる故に。それらを並行世界含めてここに溜め込まれる。祖龍よ、お前が感じたのはそういうものだ】

 

『やはり要石が砕けてる。中央はまだ大丈夫だけど、鎖は三界が滅したことでもう縛るための機能は失ってる。結論的には目覚めかけてる、ねーーー」

 

「その通りだ、ようやく来たか。精霊王、祖龍、伝道者よ。随分と待たせてくれたではないか」

 

カケラのすぐそばから声が聞こえる。するとカケラの陰から黒衣の男が姿を現した。

 

 

 

 

 

ーーー

 

【貴様、貴様か!!ダモクレスゥ!!!一万二千年前の襲来を忘れ、今再び目覚めさせるつもりか!!!】

 

「クッ、ハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!愚問、愚問だ精霊王!!忌龍の復活こそ我が悲願、我が夢よ!一万二千年前は外から飛来したばかりで大した力を震えず、失敗したがかつてよりやりやすくなったぞ!なにせこの要石を破壊して今度こそ世界を滅ぼせばいいのだからなぁ!」

 

精霊王のいつもと違い怒りを何より表に出して声を荒げている。そして、誇らしげに、歓喜を隠さず高笑いをする黒衣の男ダモクレス。二人は時を遡り一万二千年前から因縁があったのだ。

 

怒りのままに精霊王はダモクレスに向け疾走するが謎の見えない防壁により阻まれる。

 

【小癪なーーー!】

 

拳を握り殴りつける。それだけで結界のようなものは砕け霧散する。そして、ダモクレスに向けて飛びかかった。

 

【ダモクレス、死ねえェェェェェェェェェェェェ!!!】

 

「ーーー。いいのか?大事な、大事な要石が壊れても?」

 

【ーー!?】

 

だが、ダモクレスが中央の要石を人質にするように立ったことで精霊王は止まざるをえなかった。

ダモクレスの手から暗黒の光弾が打ち出される。精霊王は大きく後退すると拳を一閃して光弾を弾く。弾かれた光弾は天井に直撃し、瓦礫が降ってくる。

 

「貴様らの相手をしていても時間の無駄だ。この要石を破壊すれば我が悲願は果たされる!!」

 

ーーチャキ、一振りの剣がダモクレスの手に握られて要石に切っ先が向く。

 

『君だったんだね?峯陵龍に魔王の因子を埋め込んだのはーー!確実に滅させるためにーー!!』

 

「その通りだ、伝道者よ。ピクシーめの目を盗むのは精霊王貴様の目を盗むより難しかったぞ?まあ、貴様はあの星焔龍どもの分体を向かわせるのに力を削いでいたからな、盗むのは容易だったよ。お礼を言わせてくれ、ありがとう」

 

振り下ろされる切っ先、中央の要石はやすやすと突き刺さった。

 

【や、ヤメロオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!】

 

ーー要石が砕けると同時に、カケラから暗黒の光の柱が天井を突き破って放出される。その余波で天井が崩れ、大地はめくられて地割れが起き、かつての封印は奈落へと落ちていった。それと同時にダモクレスも高笑いをしながら飲み込まれていった。

 

『精霊王、脱出しましょう!!もう、ここは危険です!』

 

【ッ!!!庇護する約束は守れなかったーー】

 

ーー

 

 

 

ーーある世界では。

 

「お姉ちゃん、これは、一体ーー!?」

 

「嘘でしょ…!?なんで、なんで目覚めるのよーー!!」

 

 

星の焔と、霊位祖龍は世界が崩落するのを見た。とりわけ姉である祖龍はもはや自分たち禁忌を含めても法則が一切存在出来ない、勝てる見込みが一切ないーーー、神龍の覚醒をじかに感じ取っていた。

 

 

ーーある世界では。

 

 

ズズゥゥゥゥゥゥン!

 

「な、何が起きているんだ……!!?」

 

大地が、世界が震えだしたことで銀滅龍は庭園でただならぬ事態を感じ取っていた。すると、空間を破って祖龍が現れる。

 

「ここにいたのね!?銀滅龍、急いでーーー

 

 

 

 

逃げてっ!!」

 

 

ーーある世界では。

 

 

「神龍が、目覚めたっ!!」

 

恐れていた事態だ。まだ、この世界で強者となるはずのモスはまだその領域に達していない。

「く、なんてことなの!?よりによってこのタイミングで目覚めるなんてーーー!」

 

 

ーーある世界では、

 

 

ーーある世界では

 

ーーある世界では

 

それぞれの並行世界含めて忌龍の覚醒を感じ取っていた超越者たち。されど、自分たちでは勝てる見込みがほぼ見つからなかった。

 

ーー

 

 

 

「おい、なんだよアレ……」

 

天地が震えだすと同時に宇宙にむけて暗黒の光の柱か登るのが見えた。取り残されたジェストらはあの光の柱に始めて明確な恐怖を覚えたのだ。

 

「みてくださいジェスト!!アレは、アレはなんですか!?」

「あ?アレは………、おい。オルタ、アレは俺の見間違いじゃなけりゃーーー」

 

「見間違いじゃねえよ、ありゃぁ……刻竜の群れだな。何体いんだよ、数万、いや億の数いるんじゃねえのか?」

 

刻竜ラ・ロ、あるいはunknown。別名、黒いリオレイア。その刻竜はこの世界だけではなく、並行世界から何億、何兆という群れを伴ってこの特異点に集約していた。

 

 

一万と二千年の時を超え、かのものは宇宙より来て、星を食らうもの。人と古龍と精霊達の敵対者が、今目を覚ます。

 

 

 

 


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