忘れられた龍の秘跡 〜MonsterHunter Legend 〜   作:妄猛総督

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エピソード01: 探検、浮遊大陸 覚醒する天帝

「おい、なんだよこれ‥‥‥‥。」

 

 

それは彼らが以前いた場所とは大きく乖離していて原型を留めていない、綺麗な湧き水で満たされた湖のはずだった。

 

「知るか!この前釣りした場所がなくなって、現れたのはどでかい風穴だなんて知るかよ!!」

 

 

「ほお、てめえら地図作んのサボって釣りしてたわけだ。」

 

 

「あっ、」と声を漏らすとあっという間に調査団長オルトにぐるぐる巻きの簀巻きにされてしまい転がされてしまう。

 

 

「よーし、てめえら罰としてこの風穴に潜り込んで調査してこい。いやとは言わさねえぞ。」

 

 

有無も言わさず罰を伝える。釣りをしてた三人は否定できないので承諾するしかなかった。簀巻きにされて調査しろというのもおかしな話だが。

 

風穴は底から冷気を絶えず吹き出しており、ホットドリンクは必須であると思われた。一応慈悲として防寒に優れたマフモフSシリーズに装飾品をいくつかつけたものを渡されて命綱と一緒に風穴に降下していく。

 

光源は松明のみであるが先に閃光玉を投げて一時的に明るくしておく。モンスターさえ怯む閃光玉であるがこういった見通しの効かない風穴の中だとむしろ必須である。

 

数メートル間隔で縄梯子に金具を取り付けて取れないように固定する。

やがて最深部にたどり着くと雪山とかくや凄まじい寒さが彼らを襲った。

 

 

「クソ寒いな、ホットドリンク飲まねえと‥‥‥‥‥。」

 

 

「ヤベエよ、雪山や極海よりも寒いんだが‥‥‥!?」

 

 

「ホットドリンクと合わせて強走薬も飲んでおこう、おい俺の予備だ。」

 

「ありがたい、使わせてもらう。」

 

「サンキュー!」

 

 

 

 

 

松明を手に降り立った場所を見渡してみると、そこは本当に湖の底なのかと疑ってしまいたくなる光景だった。

 

 

それは形成されてから何千、いや下手をすれば万年単位で作られた天然の鍾乳洞。そして鍾乳洞のほぼ全て永久凍土に覆われているのだ。

 

さらに冷気を溜め込む永久塊が重さに耐えきれず崩壊していくのも見えた。崩壊する際に多大な冷気を吹き出して。

 

「っ、とにかく先に進むぞ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このフィールドを彼らは浮遊大陸地下鍾乳洞と名付けて羊皮紙を広げてエリアを確認していく。

 

彼らの持つ松明だけが唯一の光源であり、不安の拠り所でもあった。

 

 

「一つ一つのエリアがかなりの広さを持っているな。エリアは四つ。通路は大体小型モンスターなら通れる広さだな。」

 

「ああ、エリアの広さは最大で絶島地下並みの広さだ。これは骨が折れるぞ。」

 

「というか地上じゃ生き物がいなかったって言ってたよな。だったらよ、ここならいるんじゃね?」

 

 

彼らは今記録したエリアの中で最も広いエリアを探索していた。

 

 

最大の広さをもつエリアこれをエリアGと仮称しているがいかんせん広すぎるのだ。

 

絶島の主人であるラヴィエンテが三つ並んでいることが出来るほど。

 

此処まで広すぎると当然見落とすものもあり、見つけるものもある。

 

 

 

 

「ん?なんだこれ?」

 

「どうした?何か見つけたのか?」

 

 

「いや、これって‥‥‥‥‥‥、鉱石調査してた連中が投下した信号灯じゃね?」

 

「確かに‥‥‥‥、消えてるが‥‥予備がつけてあるな。着けるぞ。」

 

シュワッ!!と音が鳴り響きあたりを強く照らし出した。

瞬間だった。彼らの背中にゾクッとした感覚が走ったのは。彼らとて最前線で力を振るうG級ハンターだ。そんな感覚は新人でハンターなりたての頃、初めてリオレウスに対峙した時と同じでーーーーーー。

 

そして彼らは見てしまった。

 

 

信号灯が消えかけた時に映し出したものを

 

 

「おい、なんだよアレはよ‥‥‥‥‥。」

 

そうこぼした言葉で理解する。これは理不尽な塊。ハンターでは手に負えぬ、ギルドですら知らない古の大禁忌。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤き衣の男と彼が王と呼ぶ存在からはこう呼ばれた。

 

 

 

 

 

【蒼穹の天帝】の異名を持ち、全天を支配し、世界を意のままに掴み取る古龍ーーーーーーー

 

 

 

【天空龍 : グラン・アガレス】と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー

 

 

 

 

 

信号灯が映し出した時と違うのは、それは彼らを凍てついた大地の中から見つめていたことだ。

 

そして閉じ込められているからかその巨体を小刻みに動かし始める。やがて大きくなる振動とひび割れる永久凍土、崩れ始める鍾乳洞。

 

 

「やべ‥‥‥‥‥、逃げるぞ!!!!!!」

 

「言われなくても!!!!」

 

「やべえ事には変わらねえ!!」

 

暴れる事で次第に崩壊が大きくなり崩れる音が鳴り響く。振り向いている時間はない。足を止めれば待っているのは死だ。

 

 

彼らは死に物狂いで元来た道を全速力で走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴコゴゴゴゴゴゴゴゴゴっっ!!!!

 

 

「な、なんだ!!何が起きた!?」

 

オルトは馬鹿どもを風穴に叩き込んでから目算二時間以上だった時のこと。

 

突如として浮遊大陸が大きく揺れだす不測の事態に陥った。

 

「ぜ、全員、避難だ!飛行船に全速力で迎えっ!!」

 

 

「オルトさんは!?オルトさんはどうするんですか!?」

 

 

1人の女性ハンターがオルトの身を案じて声をかけてきた。

 

「俺はアイツらを待つ。お前は先に行け、アイツらを拾ったらすぐ追いつくさ。」

 

そういうと女性ハンターは一度振り向いてからすぐ走り出した。それを後ろ目に風穴にかけられた縄梯子を見つめ続けた。

 

 

「早くしろよ、ずっと待ってられねえぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を同じくして、ドンドルマの大長老の前に1人の男がいた。

 

「久しいな、ドンドルマの大長老よ。」

 

 

「赤き衣の男よ、いやこう呼ばせてもらおう。アリストテレス。此度は何用に参ったのだ、言葉次第では、ギルドナイトに命じて捕縛させてもらう。」

 

剣呑な雰囲気に彼を取り囲むギルドナイト達。それを見てほくそ笑むアリストテレスと呼ばれた赤き衣の男。

 

「では、簡潔に。聞くがいい、終焉のラッパは鳴らされた。第一の災厄、【天帝】が目覚めた。我が王は【神龍】の目覚めを危惧しておられる。

【天帝】が目覚めたならば残る三界、【海神】、【世界樹】も目覚めるだろう。これを倒さねばならないがーーー、倒せば世界が終わる。星を喰われ骸と化すだろう。回避するにはただ一つ。精霊種について調べる事だ。かの者たちの封を解き、三界撃破に当てよ。」

 

「それだけだ。この星は急速に死に向かっている。終わらせたくば、急ぐ事だ。」

 

 

 

 

それだけを言い残し、ギルドナイトをくぐり抜けて窓から飛び降りる男。窓から覗いてみれば彼はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

ーー

 

 

 

 

「急げ、飛行船は準備できてる!」

 

オルトは辛うじて調査に向かわせた三人を拾い、全速力で拠点を目指す。

 

「助かった、あんたが引き上げてくれなかったら瓦礫の下敷きになるところだ。」

 

「ああ、走りながらでいいか、オルト。俺たちはあの場所で見たモンスターについてだ。」

 

「結論から言うぞ?ラヴィエンテの大討伐と想定したモンスターだ。正直言って勝てる相手じゃねえ!」

 

 

三人から聞いた限り、この浮遊大陸の異変は浮遊大陸地下に眠っていたモンスターが目覚めたときの影響だと言う。

 

 

「詳しい話は後だ!まずは飛行船に乗り込むぞ!!」

 

 

少しでも早く、早く拠点を目指して走る。彼らは結論から言えば、飛行船にたどり着き浮遊大陸から全員脱出したとだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界を当てもなく漂い続ける浮遊大陸。

 

 

異変は突如として起きた。

 

まず大きな振動と共に中央の山脈が吹き飛び、多大な瓦礫が世界中に降り注いだ。

砂埃の中、飛行船を操作しながら彼ら調査団はそれを目の当たりにした。

 

 

 

 

 

もはや原型を留めない浮遊大陸に巻き付くように蠢く影。

 

 

身体は嵐龍アマツマガツチと同じく竜蛇型で翡翠色の鱗が目立つ。

 

頭部は王冠のように中央の巨大な角とそれには劣るが立派な無数の角を生やし、ラヴィエンテの牙のように大きくしなった牙。

 

背中には甲殻が発達したと思われる背ビレのような物があり、背中と腰に当たる部分にはそれぞれに一対の翼がある。

 

 

 

腕はさほど発達してないが、それでも大地をえぐり取る事が出来そうな鋭い爪を有していた。逆に足は退化しているのか泳ぐ形になっておりヒレ状になっている。

 

 

今、永き時の眠りから【天帝】が【天空龍: グラン・アガレス】がこの時代に天を支配せんと咆哮する。

 

 

 

 

《ゴアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈緊急クエスト 発令〉

 

 

「目覚める天帝は万物を睥睨す」

 

クリア条件: なし (強制敗北)

 

受注料: 0z

 

報酬金: 0z

 

 

赤き衣の男: 遂に目覚めた天帝を君達は目にしただろう。かの者は我が王と神の座と全天をかけて争い痛み分けになった古の龍帝、その1である。

 

刮目するがいい、あらゆるモンスターを狩りし狩人たちよ今こそ真の絶望を目にする時である。

 

フ、フフ、フハハハハハハハハっ!!!ハァーーーーーハッハッハッハーーーーっ!!!!

 

 

 

 


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