忘れられた龍の秘跡 〜MonsterHunter Legend 〜   作:妄猛総督

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多分一番多く書いたんじゃないかな。

感想、ブクマ、評価ありがとうございます。海王龍編ももうすぐ終わります。どうぞ、応援よろしくお願いします(●´ω`●)


終局の狼煙、凍れる世界に防げ、大海嘯

ああ、はじまってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

世界が、鳴いた

 

 

 

 

 

 

 

 

世界が、泣いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界が、啼いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界が軋んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界が壊れていく。

 

 

お願い、悲しい力を怒りのままに振るわないで。

 

母なる海から、父なる空へ。母なる原始から、父なる星核へ。

 

貴方に祈りを。

 

 

どうか帰ってきて、今の命の廻りを閉じないで。

叫びは終わったの、黒い厄災は過去へ消えたの。

 

だから、貴方の役割はもう終わったの。

 

 

海の王、神龍を縛る海の楔の一柱。もう、眠る時間。

 

 

帰ってきて、我が子アモン・レヴィアタンーーーー。

 

 

 

 

ーー

 

 

 

 

「なんだい、ありゃァ‥‥‥」

 

「デケエ‥‥‥‥津波だ‥‥‥‥‥‥」

 

空を見上げても全貌が見えぬ世界規模の津波が海王龍によって引き起こされた。

 

重要なのは今なお海が凍りついていて津波は海から発生していないことにある。

 

これはもう創造の領域。ある星では海と大陸の割合は7:3である。

 

もし、7割ある海が全て凍りついていたとすると津波を引き起こすのは不可能である。起こすための水がないからだ。

 

なのにそれが起きている。

 

理由は、単純なもの。

 

海ではなく、空気中、生物、あるいは鉱石、それらから含む水分を増幅させて集めているから。海に対して大気中、生物などが持つ水分は微々たるもの。しかし、それでも水分を持つことは変わらない。水分の総合量に全人口、全生物、全ての水分を持つ鉱石の数だけ掛けて出た量を海王龍は扱えるのだ。

 

そうして発生した津波は水分であるから凍りつく。

 

さらに津波は発生する。

 

凍りつく。

 

それを延々と繰り返して、真っ白な世界が世界を覆い尽くして行く。

 

 

 

 

この日、『灰の日』と呼ばれこの日だけは正に氷河期が到来したのだ。

 

大海嘯とは、星全てを氷で覆い尽くして、それを水に還す(・・・・)

 

海が凍りついているとはいえ、そのままなのだ。ならば海と同等の量と計算されるこの世界を覆い尽くす氷の壁が水に変換されたらどうなるか。

 

そして海が再び戻ったらどうなるのか。

 

完全に世界を覆い尽くしてしまえば、打つ手はない。ならば、覆い尽くしてしまう前に

 

 

 

 

 

倒すしか他ない。

 

 

時間は、およそ二時間。

 

 

 

 

 

 

 

ーー

 

 

海面が完全に凍りついているために地上と同じように動くことが出来た。

 

凍土と同じ感じなので滑ることはないだろう。むしろ滑るならばハンターとして未熟ではないだろうか。

 

海面が凍っているために一番気にしていたことがあった。

 

見た目は完全に魚類、正確には海生哺乳類の見た目だが精霊種であるアマノヌボコヌシである。

 

自分たちが目覚めさせた切り札の1つがここで戦えないなど笑い話にもならない。

 

そう懸念していると、

 

パキパキ、ピキイ‥‥‥

 

ガシャアアアアアアアアアアアアン!!

 

ドリルのように体を回転しながら飛び出してくるおおよそ15mの魚類モンスター、精霊種アマノヌボコヌシ。

 

背ビレにある刃のようなもので氷を引き裂きながら問題なく凍った海を渡る。

 

立つ位置が地上と変わらないと知ったハンター達は各々の武器を抜刀、海王龍へと疾走した。また、ハンター達を巻き込まぬようトリヴィスは推進機能を使い、ヴァルキュリア号は掘削して進んで行く。ただ、幾分遅く感じてしまうのは仕方ないのかもしれない。

 

やはりというかハンターが動き出したと、同時に海王龍の翼は完全に完成したようで翼の形状はまるで蝶のよう。

 

翼膜は淡い空色で葉脈のような濃紺なラインが美しくも毒々しい景観を出す。

 

胸元から露出した赤い紅玉は心臓のようにドクンドクンと脈を打ち、やがて周囲の甲殻が縒り集まり紅玉を覆い尽くして行く。

 

四肢はより鎧のように固まり、甲殻の隙間から赤黒い波動が迸る。

 

世界が凍りつこうとしているのに海王龍の上空は空が赤紫色に染まり、白い稲妻が轟音を立てて凍りついた海面を砕く。

 

あまりの威力に直撃した場所は『ナニカ』と戻っていた。

 

更に空気中の水分が凍りつき、海にいるのにも関わらず、乾燥している。湿度0、環境の温度は平均マイナス90℃。凍死するのも、凍傷起こすのも普通の人間ならば避けられない人間が生きるのには過酷すぎる第3層氷結結界(ムスペルヘイム)

 

さしずめ海王龍は霜の巨人ユミルといったところだろうか。

 

各々のハンター達はあまりの寒さにホットドリンクが数分で切れるのに気づくとスキルの実を取り出し食べる。

 

スキルの実『氷界創生』

 

凍王龍トア・テスカトラの持つ武具に含まれる希少スキル。内包するスキルは冬将軍、モンスターに対して防御率無視の削りダメージ、切れ味消費を抑えるなどだ。

 

寒さ対策をとると再び武器を構え抜刀ダッシュで間合いを詰める。トリヴィスとレガリアは防寒コートを羽織ると、ホットドリンクをがぶ飲みし破龍砲を起動する。

 

「さあ、ここが一番の踏ん張りどころだよ。ついてきな、トリヴィス!!」

 

「アホ抜かせ、てめえがついてこいレガリア!!」

 

 

 

「「破龍砲単発式短弾製撃龍槍(グングニール)、発射ァ!!!」」

 

 

ーー

 

 

「寒っ、寒いっ!!!」

 

「寒いのは分かる、結界維持を解くな!!」

 

この世界の何処か遥か上空、2人の男女が淡い光で世界を包もうとする氷結結界を抑え込んでいた。

 

「そんなこと言ったって!!!これを封じるのに物凄い力が使われてるんだよ?!あぁっ、手が、手が凍りついた!!」

 

見れば少女の手に霜が付いており、徐々に形が大きくなり少女の手を凍て付かさんとする。このままなら2人とも氷の彫像と化すだろう。

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜!!早く倒して!!私の肌を荒らす気!?」

 

「無茶を言うな!!人間も頑張ったんだ、俺たちも頑張んなきゃ意味ないだろうが!!」

 

この世のどこかで世界が凍らぬように踏ん張る2人がいた。

 

 

 

 

 

ーー

 

 

 

「大変じゃ‥‥‥‥、大老殿に通達せよ、タンジア沖合にて海王龍と何十人かの非公式ハンターと交戦、絶界の中、支援なし!!拘束用バリスタ搭載飛行船の許可を貰うのじゃ!!彼らを見捨てるわけにはいかん!!」

 

 

吹雪の中、古龍観測所の職員の竜人族の老人は望遠鏡に映る開戦の狼煙を見て救援を仰いだ。

 

印をつけた伝書鷹を放つと吹雪の中を勇ましく飛んでいく。

 

大老殿に到着した伝書鷹はヘトヘトになりながら大長老に届くことになった。

 

それからはあっという間に話が進んでいき、過酷な環境に耐えられる飛行船を15隻、それを海王龍との決戦に使われることになった。

 

大長老は、ギルドナイトと共に突如起きた真っ白な世界に驚きを隠せなかったが、海王龍の仕業であると確信するのは早かった。

 

 

「世界はどうなるのだろうな、このまま終局に突き進むのだろうか‥‥‥‥?」

 

「天空龍の時と同じです。此度も祈るしかないのです。我々は無力であると実感してしまった。触れてはならないものを触れてしまったのです。ならば過程を見届けるしかないのでしょう。信じましょう、彼らを」

 

 

白に染まった大老殿の中、何かに縋るように祈るギルドの人間達。

 

どうか、彼らに幸あらんことを‥‥‥‥‥

 

 

 

 

 

ーー

 

 

「貫通弾を調合するわ、カバーお願い!!」

 

「強走の旋律を重ねがけしておいた、しばらくは自由に動けるはずだ!!」

 

貫通弾を打ち込んでいた女性ハンター、見た目変更をしているが司銀龍の防具を着込んだライトボウガンの使い手。手待ちの貫通弾が尽きたようで弾の調合をするべく機材を展開するために船を目指す。極寒の地で味方のサポートなしではなし得ない。極寒の景色が、寒さがスタミナを奪う。

 

すると鳴り響く狩猟笛の音色で女性ハンターのスタミナは強走効果が付与され無事船の中に飛び込み調合を開始する。

 

 

 

 

「酸弾を打ち込んだぞ!集中攻撃だ!!」

 

「極鬼人化!!バックアップ頼む!」

 

ラヴィエンテの素材をふんだんに使用した進化武器から放たれた肉質を極端に軟化させる酸弾を打ち込む。すると海王龍の足の一部にシュワシュワと溶ける音が聞こえる。

 

肉が溶ける感覚に海王龍は悲鳴に近い咆哮を上げて近寄る小さきものを近付かせんと暴れまわる。

 

 

 

「っ!!右の首からブレスのチャージを確認、退避よおーい!!っ!?危なっ!!」

 

「ちくしょう、やりやがったな!狩技『ドラグーンアーマー』!!重ねて狩技『獣宿し・闘覇』!!」

 

 

狩技ドラグーンアーマー。

 

使用時、回復系アイテムが使用できなくなる代わり武器倍率1.17倍になる。会心率が30%上昇効果。防御力1.5倍付与効果が付いている火力特化の狩技。

 

獣宿し・闘覇。

 

獣宿し系狩技の最高峰。スタミナが減り続ける闘覇に似た狩技で、使用時スタミナが減り続けるが次にモンスターに対して与える倍率を防御率なしで、3倍にする。

 

 

使用者であるこのハンターはメゼポルタに渡り、ラヴィエンテを狩猟し不退を手に入れた。

 

反則すれすれの狩技であるがラヴィエンテを狩猟したことで使用を許可されたという。

 

次の瞬間、酸弾で軟化した場所に破龍砲が直撃する。

 

《グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!!!?》

 

バシュゥゥウン!!

 

《キュウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!》

 

 

幻獣キリンの光の剣が更に海王龍の軟化した部位に直撃する。吹き出る鮮血、肉片。

もはや絶叫。最前線に立つG級ハンターが、精霊が互いに海王龍を追い詰める。

 

「よし、怯んだ!畳み掛けろ!」

 

海王龍は軟化していない方の腕を叩きつけると氷の壁が幾億の氷の波となってハンターや精霊を薙ぎ払うべく雪崩のごとく押し寄せる。

 

「戻り玉、用意!!」

 

フッと消えるハンター、対象を失った氷の波はそのまま氷海を滑る。

 

このままでは死ぬ。

 

海王龍は一策を練る。

 

全ての力を一点に集め‥‥‥‥‥待つ。

 

「よし、再び開始する‥‥‥‥‥‥‥‥ぞ!?退避!!!」

 

 

 

《グアオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!!!

 

去ね、小さきもの!

 

白い光の烈光が海王龍から放たれた。

 

「させるか!!」

 

レガリアが阻止するために破龍砲を放つ。

 

「待て、レガリア!!伏せろ!!!!!」

 

トリヴィスに頭を抱え込まれて甲板に伏せる。

 

 

近くにいたオルトも同じように咄嗟に物陰に隠れ、烈光をやり過ごす。直後、吹き荒れる極寒の風、いや嵐。

 

音が止み、顔を上げるとそこは銀世界。破龍砲から放たれた撃龍槍も空中で凍りつき、ハンターも氷の彫像と成り果てた。見ればまだ息があるので生きているがあれでは復帰は無理だろう。

 

精霊は、膜のようなものを展開しておりそれでやり過ごしたようだ。

 

 

 

 

形成逆転。

 

追い詰めていたはず。だが、海王龍が一計を案じて放った銀の烈光により反転するーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海王龍は逆転できたことに安堵し、この身動き取れぬ小さきものを薙ぎ払うべく3つの口から激流ブレスをチャージする。

 

 

その時ーー

 

 

 

海王龍の脳裏にあるシーンがよぎる。

 

 

白いエーデルワイスに似た氷の花弁。それは花吹雪となり脳裏を一時的に支配する。

 

 

 

遥か果てにて、吠える星の御使の雄叫びが死を告げる鐘のようにーーー

 

何処か遠くで、鐘の音が聞こえた気がしたーーー

 

 

 

 

 

 

 

ジャラジャラ、ジャラ!!!!

 

 

《ッ!!!!??》

 

キュラキュラキュラ、ジャラララ!!!

 

 

 

「くそう、一歩遅かったか!だが、まだ生きているな、待ってろ今支援する!!」

 

 

突如として拡声器から響く声と海王龍の体を拘束する杭が鎖とともに展開される。

 

遥か上空、嵐龍の風の追い風に守られ進む飛行船が。それにはメゼポルタの紋章、ドンドルマの紋章、ミナガルデの紋章‥‥‥‥ギルドの紋章を掲げた飛行船が、拘束用バリスタを打ち海王龍を縛る景観。

 

メゼポルタの飛行船には群青色に輝くオーブを持った巫女の姿が。

 

 

 

 

 

「海王龍、今一度告げましょう。暗き海へ帰りなさい。今の世に貴方の力は必要がないのだからっ!!!」

 

 

 

《グアアアアアアアァァァァァァァァァァァアアアアアアァァァァァァァァァァァ!!!》

 

認められない。このような小さき者などにーーー!!!そういうように吠える海王龍を凛とした声で海王龍を否定する。

 

 

 

役者は揃った。

 

後は海の終局へ走るだけだ。凍れる世界に後戻りできぬ戦いは終わりを鳴らす。




※ここに出ている狩技はオリジナルのものです。

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