忘れられた龍の秘跡 〜MonsterHunter Legend 〜 作:妄猛総督
海王龍編もいよいよ大詰め間近。神話の怪物とも語られる存在に精霊と人はどう戦うのでしょうか?そして三界の設定に変更に伴い徐々に明らかになる神龍の真実。
明らかに世界観ぶち壊しな感じになる可能性がデカイですが応援お願いします!
感じる。
世界の、今を維持しようとする世界の尖兵の気配。
忌まわしい精霊の気配。
一方は果ての海から神の魚。
一方は、丘の上。海割りの権能。幻の体現。【幻獣】の気配ーーー。
ーー
「なんつー速さだよっ!もう豆粒にしか見えねえ距離じゃねえか!!」
「相手は海生生物だよ!早いのは当たり前だろっ!?」
あまりの速さに思わず突っ込んだトリヴィスにレガリアは当たり前のように諭しながら彼を灰皿で一閃する。
取り舵を手放して頭を抑えるトリヴィス。見ればプクーと赤いたんこぶが。
(よ、容赦ねぇっス、レガリアの姉g‥いえ、キャプテンレガリア!)
(幼馴染らしいぞ、あの2人、噂じゃ互いに好きなのに、ソリが合わないという不思議な『余計なこと言うんじゃないよっ!!!』あ痛ぁ!?)
(マシトンーーー!?マシトンが死んだっ!この‥‥)
((((人でなし!!!)))
「あんたら、後でお話しなぁっ!!!でも今は仕事中だよ、さっさと動きなあ!」
カオスと化した船上で、レガリアは望遠鏡を用いて遥か彼方の、自分たちが復活させた精霊を一望する。
あれ程の速度、おそらく時速400㎞は出ているはず。船の速度で計算すれば215.984ノット。
しかも水中は抵抗により大幅に落ちているはずだから本来ならもっと出せるはず。
この船、大撃龍戦艦ヴァルキュリア号は最大速度で28.56ノット。
練石炭による蒸気機関による補助と帆による風の恩恵フルに使ってである。
2つの機能を最大限使ってのこの差。
文字通り化け物だ。
レガリアは嘆息する。これほどの化け物を野に放ってよかったのかと。
確かに世界の一大事だから出来た手札であり、策だ。もしすべてが無事に終わったら法のもとで裁かれるのかなと考えてしまう。
当たり前だ。非常事態じゃなかったらこんな生態系を破壊してしまうような怪物を世界に解き放つものか。
望遠鏡から目を離して、タバコを蒸すレガリア。煙と共に一涙の悩みも一緒に吐き出していたい。
「心配すんな、船乗りが法なんかに悩むようじゃキャプテンなんか勤まんねえだろ?堂々としてろレガリア。お前、そんな
ぽん、と肩を叩かれて我に帰ると舵を取りながら片手でトリヴィスが叩いたのだ。そのセリフに悔しさを感じてその手を払いのけてしまうが、同時に少しだけ嬉しかったのは自分だけの秘密にしておこうと決めたのだった。ほんのり頬が赤くなっていたのはきっと気のせいだろう。
海を見ればもう精霊なんか見ることもできず青い地平線が見えているだけだった。
「ふっ、これじゃあぜーんぶ終わっちまった後に合流かねぇ‥‥‥?」
「阿呆、んな事させるかよ。人間様があの野郎をぶち抜いてやるんだからな!」
ハハハハハっ!!
船乗りたちの陽気な笑いが響き渡る。この笑いは勝利の確信か、それとも心に無理やり安心させるための笑いなのかはわからない。
ーーー
ゴボボボボっ!
海底奥深く。
泡が呼吸と共に海面に上がっていく。
海流の大きな乱れがこの領域の新たな戦いを知らせる終焉の鐘になる。
ーーー来たか
海王龍は上昇し、海面に姿を現した。3つの首をそれぞれの方向へ向けて敵の正確な位置を知るためだ。
いた。
南東6時の方向。
凄まじい速度で目で見える範囲まで接近している。
景色は海の災害をこれでもかと発生しているが敵である精霊はなんともなく近づいて来た。そして向こうも敵の位置を知るためなのかメロン波を放出してきた。
もはや様子見する必要もないだろうと口元に周囲から集めた海水を凝縮して球体に、そして勢いよく発射する。
戦端の火種は海王龍から。
吐き出された水球は海面を叩き割り一時的に水面の浅い海底が露出する。押し出された海水は周囲の海流を乱して精霊の音波を妨害する。
一方で、精霊であるアマノヌボコヌシはスパイホッピングを使いながら確実に海王龍の元へと近づいていく。
ある程度近づくとアマノヌボコヌシは大きく海面を跳躍、周囲の海水を集めて複数のシャボン玉のようなものを形成した。それを一斉に打ち出す。
先ほどの海王龍が放った水球よりも頼りなさげな技であるが、これの本当の恐ろしさは別である。
放たれたシャボン玉のようなものは海王龍に向かいながら周囲の海水をさらに集め形を変える。
やがて水で出来た巨大な槍が形成され渦を巻き込みながら海王龍に衝突する。
大気が揺れる。
余波で雲が吹き飛び吹き飛んだ隙間から光が差し込んでくる。
直接直撃を受けた海王龍の表面は長年積み重なった表層が完全に消し飛び、本来ある甲殻が露出、その甲殻も穿たれた跡があった。
《グウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥルルルルル‥‥‥‥‥‥‥》
痛みに耐えながら、今度は海水を巻き上げ自身の周りにまるで鎧のように纏う。
この海の鎧とも言えるこれは圧縮された海流であり、鉄のように固くあらゆる攻撃が緩和される、自然の摂理を無理やり固めた海王龍が海王龍たる所以でもある。
それをみたアマノヌボコヌシは水の槍はこれ以降ダメージを見込めないことを悟ったのか再び水中へ。
深く潜り込み下からの強襲をかけるつもりなのだろう。
いや違う。アマノヌボコヌシは海底奥深く海流が一番安定しない、グラン・ミラオスと戦った水深まで潜り水流を操作。
海流を全て1つにまとめ巨大な大渦に変貌させ海王龍の足元に直撃させる。
体格が絶望的なために少しでも土壌を持ち込む策だ。
突如、足元に直撃した大渦は踏ん張りを弱らせて海中に引きずり込まれる形で倒れた。
余波で水柱が世界中で見れるくらいに。
アマノヌボコヌシは倒れた海王龍の首に噛み付いてその場で回転を始める。ワニが水中で確実に仕留めるデスロールと呼ばれるもの。
しかし、海の鎧のせいで深くまで牙が突き刺さらない。
すると大きく揺すられて放り出されてしまう。
崖壁に叩きつけられて岩が流れてくる。
呼気が一気に吐き出されて酸素不足に。
瞬発力を生かしてその場を離脱、さらに海面を跳躍して再びダイブ。その際に不足した酸素を補充。
そして海底からの攻撃を察知、くるのは撃流のブレスかーーー
噛み付かれた海王龍は起き上がる際脳震盪をしてないか確認した際に噛み付いていたアマノヌボコヌシを振り払ったのだ。
海面が大きく揺れたのを確認して海王龍は敵は真上であると確信。息を大きく吸い込み海面に向けて口を開けた。吸い込む時に海水も一緒に吸い込まれ亜光速で原始運動が変動、圧縮されていく。
放たれた3つの水流。何時ぞやに人間に化けた龍が、攻撃した際に牽制も兼ねて放ったブレスである。
海面下にいる精霊に向けてこれからに予測される海中ルートを算出してブレスを吐き出した。
海面を飛び出したブレスは雲を引きちぎり太陽に照らされて虹が出来た。そして水滴一滴一滴がまるで槍雨のように降り注ぎ遠くにいたルドロスやガノトトスなどに直撃、体中に穴が開いて海面に浮く。
海中に吐き出したブレスは海水を巻き込んでソニックブームを水中で起こして周囲を薙ぎ払う。
一方で精霊アマノヌボコヌシはそんなブレスをブレスの間を縫うことで回避。尾で加速をかけて全速力を叩き出すーーーー!!!
大きく接近し頭から頭突きをかます。時速400kmの突進。物質なら自壊も考えねばならない速度。
頭突きを受けて大きく仰け反る海王龍。後ろに二歩、三歩よろけて背後から大きく転倒する。
海中の第一次海戦は互いに決定打もなく膠着状態に入ることになった。アマノヌボコヌシは単体では精霊の中では最弱の部類であり他の精霊と組むことで真価を発揮するタイプである。
海王龍もまだ、目覚めきっておらず能力にも枷がかかっている状態。
互いに睨み合い、肉弾戦へと移行することになるーーー
ーーー
ある場所で、タンジア近くの入江、そのそばの丘にて。
1匹の獣が海を見つめている。
白銀の体軀、劔、いや槍を連想する白金の角。目は碧色で、四肢は蹄である。たてがみはライオンを連想するほどに立派なもので。そのたてがみも白銀のよう。
《キュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!》
一啼きしたかと思うと目の前の大海がまるで真っ二つの切り開かれていた。
ーーかつて神の声を聞き、神王の元を離れた聖人がいた。神王の軍勢が迫ると聖人が神に祈った。すると目の前の海が割れ、道が出来た。聖人と彼が共に逃げた大勢の人々はこの海割れの道を歩いた。
当然、軍勢が後を追うが彼の連れの最後が渡り合えると海は閉じられ軍勢は海の底へ消えた。
獣は割れた海を優雅に歩く。ふと振り向くとそこには誰もいないがまるで来いといわんばかりに頭を振る。
そこから1人のエルゼリオンと不退で装備で固めたハンターが。
彼はオルト。かつて天空龍にほとんどを奪われて、天空龍亡き後海王龍に挑むため独自で精霊を解き放った男だ。
割れた海を海をオルトは進む。今度は遅れはとらないと心に誓いつつ。
ユクモ村上空。
その日の夜嵐だった。
備蓄を避難させていたアイルー曰く、嵐の中に龍をみた、と