忘れられた龍の秘跡 〜MonsterHunter Legend 〜 作:妄猛総督
ユクモ村の事実上の孤立。
突如発生した海嘯ポロロッカにより渓流が水没し、付近にあった水没林や孤島、モガの森等はその被害を大いにうけ、大老殿はその処理に大慌て。
さらにロックラックや大砂漠の一部も水没したと報告を受けてギルドは海王龍を天空龍と同じく第一種禁忌指定に指定、海に近い場所に住んでいる、あるいは渓流と同じように海とつながっている場所に住んでいる人たちに避難勧告を出した。
そんな中、天空龍の被害を大いに受けたメゼポルタでは。
メゼポルタの一角、集中治療区で天空龍の攻撃から辛くも生還したハンター達が治療およびリハビリするための施設で。
「オルトさーん、診察の時間です‥‥‥‥‥‥よ?アレ?」
職員の若い女性が、此度の調査員団長であるオルトの治療にあたっていた。診察の時間を知らせるため、部屋を訪れて見たが誰もおらず。
窓が全開に開かれてカーテンが風に揺られてバタバタとしていたという。
メゼポルタのクエストを受けるための広場では。
「っ!?オルトさん!?」
「ああ、デメトリアか、マスターは何処だ!?」
狩猟迎撃戦の担当を担うデメトリア。彼女は高く止まったお嬢様だが根本的に誰でも優しく多くのハンターに慕われている。
そんな彼女は目の前に全身包帯だらけではたから見ればミイラのように見えるだろうメゼポルタが誇るG級ハンター、オルト・デリンジャー。
先日の天空龍の襲撃で生き残ったハンターの1人で粉々に破砕された調査用飛行船の操舵室から瀕死の状態で救助されたのだ。その他の乗っていたハンター達もギリギリ生きているという状態であった。
集中治療室で揃って治療に専念していたと聞いていたが何故ここにいるのか理解できなかった。
「オルト、お主何故そのような格好で出てきた!?怪我も治ってないというのに無茶をしおって!だいたいーーー」
「ギルドマスター!頼む、ハンターに復帰させてくれ!!」
「出てきていきなり何をいうのかと思えば!そんなの認める訳いかんじゃろうが!この愚か者が!!!」
女性の竜人族で和風な出で立ち、背中に二振りの刀を背負う此の方こそメゼポルタのハンターギルドのギルドマスターである。
この騒ぎを聞きつけて、他のハンターやギルドガールズが集まってくる。
(おい、あの人って‥‥‥‥‥‥)
(調査団の団長じゃない、例の天空龍の件の‥‥‥‥)
(あんな大怪我してるのに、ハンター復帰だと‥‥‥!むしろ舐めてんのか?)
(たぶん気持ちはわかるけどさ‥‥‥、でもなんで)
エトセトラ、エトセトラ。
「くっ、オルトよ、レジェンドラスタの酒場に場所を移すぞ、ここは人の目に留まりすぎる」
〜移動中〜
「オルトよ、気持ちは分かるが‥‥‥先ほど大老殿より通達があってな。天空龍は死んだ。ちょうど一週間前だ。古塔にて真祖ミラルーツと激しい戦闘を行い、そして精霊という未知のモンスターにより、だ」
「精霊だと‥‥‥‥‥‥!?」
「うむ、確認したところ黒い狐のようなモンスターで、牙獣種に似ているとのことだ。が、牙獣種とは全く違うらしいがな」
レジェンドラスタの酒場に場所を移した彼ら。
空気を読んだのかこの場所には彼らしかおらず、レジェンドラスタは皆外に出ている。
「天空龍に挑もうとしたのは意味がなかったな。だがーー」
「タンジアのことを聞いた。天空龍に匹敵する古龍種、ギルドはすでに動いているんだよな?」
「すでに耳に入っていたか。情報は規制されているというのに。
まあ、ここからが本題だ。近年発見されたエリエンテという場所には天空龍を含めた伝承がある。ツテを使って調べたよ。いや、まさかーーー」
「なんだよ、勿体ぶらずに公開できるなら公開しろよ」
「天空龍は滅び、次に出現した古龍種、ギルドは海王龍と呼んでいるがこれにはすべて三体だ。伝承では三界の龍帝と呼ばれていたらしい。三界の龍帝は、この世でたった一体しかおらずそして星を破壊してしまう超弩級の危険生物だ。ゆえに三界はその危険性を危惧されて封印されていたのだ」
「‥‥‥‥‥っ!?まさか。俺たちが調査していた浮遊大陸、あれは天空龍が封印されていて俺たちがその封印を解いた‥っ!?」
オルトが先発して率いた調査団は、危険極まりないモンスターを封印していた場所つまりは禁忌地であると知り顔が真っ青になる。
「そうだ。だが天空龍を含めて三界の力はお前達も知っての通りハンターでは太刀打ちできん。そのために精霊と呼ばれる星の守護者、彼らの権能により封印されていた。これも後々知ったことだったのだがな」
ドンっ!
拳をテーブルに叩きつけ知られざる真実を突きつけられ無気力になるオルト。自分の名を叫びながら落ちていく仲間の声が今でもこびりつく。
「マスター、海王龍は何処だ」
「っ!?挑むつもりか、オルト?!」
「天空龍はもういないんだろう?だったら海王龍を俺の、俺の手で倒さねえとあいつらが報われないだろう‥っ!?」
「生きてこそ報いてやれることがあるだろう!!お主は命が惜しくないのか!?そもそも三界はギルドで決議した際にーーー!」
ギルドマスターはオルトの真摯な眼差しを見てしまう。その覚悟した目を。多くのハンターが勝てないとわかっていながら腹をくくり死地に向かう目をーーー
「お主、その目、わしの言葉ではもはや止まらんか。好きにしろお前の防具や武器はすでに直してある。親方に感謝しておけ」
「感謝する。そして無理をいってすまない。」
酒場を去るオルト、ギルドマスターは彼の背中を見た。黒く塗りつぶされた生の世界がない黒の世界。
「謝るなら、言うではない。馬鹿者が」
ーーーー
大嵐が吹いていた。雷鳴が轟き、波が今にも船を転覆せんと常に荒ぶる。
彼の手には黄金のコンパスがあった。北を刺さず常にある方向へ。
コンパスをもつトリヴィスはヴァルキュリア号を操舵しながら思案する。
このコンパスは魔法のコンパスだ。ただ示すのは、あの海王龍を打倒する可能性を持つ精霊の一柱。
あの不思議な少女のアドバイスを受け入れ、タンジアに行きたい気持ちを抑えタンジアとは全く違う方向へ舵を切った。
「トリヴィスーーー!!!ここらから魔の海域だーーー!!引き返したほうがいいんじゃないのかい!?」
魔の海域、それはまさしく地獄と化したトリトンの絶海に近い人知の通じない魔の域。
キャプテンレガリアの言葉が響くがトリヴィスはただ、
「問題ない!コンパスはまっすぐこの先を示してる。レガリア、あんたが手札が少ないっていったんだ。その手札を増やすのにモンスターを使うのは別にいいだろう?」
「ヴァルキュリア号は別にいいだろうが、他の船がこの海域の嵐に耐えられないんだよ!!」
「ならヴァルキュリア号だけ進む!他の船は一旦引き返すよう伝えろ!」
「わかったよ!あんたはヴァルキュリア号を転覆させないように気をつけんだね!!」
「させるかよ、阿呆!!」
2人のやり取りを見ながら命綱をつけながら作業する乗員達。下手すればこの海域に落ちるので落ちたら待っているのは死だ。
彼らは火薬を湿らせないように艦内に運び入れる作業をしていた。戦艦ということもあり、武器が使えないのはただの木偶の坊だからだ。
ドガンッ!!!
一際大きな衝撃がヴァルキュリア号を横から襲う。
瞬時に舵を操作して体制を整える。
荒波が甲板を侵入して乗員の踏ん張りを妨げんとしている。雷鳴が響き、感覚が麻痺するのを感じる。
ピシャァンっ!!!!
近くで雷が落ちたのだろう。衝撃で皆動けなくなり、視界が真っ白になっていた。
視界が晴れたとき、目の前には嵐はなく、まるで幻のように消えていた。
代わりにいたのは死だ。
「これが‥‥‥‥‥精霊!?」
「し、死神の間違いじゃないのかよ!?」
ーーある世界では、海において無双にして海のギャングと言われる海生哺乳類がいる。
知能が高く、人間の言葉をある程度は理解し捕食者の1つ、サメをいたぶるように殺し、群れで自分より巨大な鯨を倒すと言う。
名をオルカ、一般的にはシャチと呼ばれる。
濡れ羽色の体色に、鋭利に輝く背びれ、胸ビレ、尾ひれ。
口元がまるで裂けたような、奥には何段にも構成する鋭い牙が。
全体には鎧のように固まった甲殻、そして目は龍のソレ。
体長はおおよそ15メートル、体重は3トン、いや5トンは行けるか。
それが天に届くような巨大な槍が突き刺さっており、動きが出来ないようだ。
感覚としてトリヴィスは黄金のコンパスをその槍にかざした。なぜそんなことをしたといえば体が勝手にとしかいえないだろう。
黄金のコンパスは光の粒子になって消えそして同じように槍も消えた。
《キュオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォっ!!!》
衝撃が波紋となって広がり、雲を吹き飛ばし、錨で固定していたヴァルキュリア号を何キロにも後退させる程の事象をこれは咆哮で起こしたのだ。
精霊種が一柱、海の守護神にして殺し屋。
【神魚 アマノヌボコヌシ】が人の手により解放され、そして知る。かつて世界を生み出した創世神の涙から生まれた海の王が再び世界を水の底へ沈めることを。
跳躍し、外界へ出発した精霊は止めるために進撃する。ヴァルキュリア号は精霊を追いかけるために出発するのだった。
サブタイがクソ長くなった‥‥‥‥‥‥。次回からバトルが始まります。
自信ないなぁ‥‥‥‥。応援お願いします!!
やっぱりサブタイ詰めました。ごめんなさい