忘れられた龍の秘跡 〜MonsterHunter Legend 〜   作:妄猛総督

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駆けよ嵐の航海者、荒波の子守唄を謳う

其処は海でありながら地獄の光景。

 

 

嵐の海は別に珍しいものではないだろう。

ただ、其処にたった一つのぞいて生きるものがいない暴威の海域は、ただ一つの生命を許さない。

 

そんな海域の深奥部。

 

海中に佇む巨大な影。

3つの首を持ち、背中には巻き貝のような甲殻をもつ。四肢は太く、されど爪はなんでも引き裂くほど鋭い。

 

翼らしき器官が見られるが未発達なのか退化しているのかは不明だが小さく、歪だ。

頭部には角が縒り集まり固まって出来た王冠を抱き、瞳はホウズキのように赤く命あるものと別の存在とを区別する。

 

 

甲殻は時節隙間から赤い光が漏れており、表面にはフジツボやサンゴの死骸などが付着していて永き時を生きていることが分かる。

 

 

タンジアと周辺の島々、禁忌の領域たる厄海を丸ごと自らの海域に引きずり込んだソレは静かに待つモノを臨んでいた。

 

 

 

 

突如として海中に赤い流動性をもつ液体が流れてくる。更に響く地響き。

 

身体のいたるところから溶岩のようなものを吐き出す異形の龍がやってくる。禁忌のモンスター、煉黒龍グラン・ミラオスは己の縄張りを瞬く間に侵し、奪った存在に怒りを露わにしていく。

黒龍の系譜であるグラン・ミラオスは目の前の存在の理不尽さに本能が先に警告を出した。

かつて大地を生み出したともされる巨人と称えられるグラン・ミラオス、それでもこの海王龍はその一歩先を行くのだった。

 

世界すべてをたった7日で水の底に沈める能力。

津波を自在に操り、大渦潮を生み出し、海上竜巻と、サイクロンを引き起こす太古の大災害。

 

ある二柱の涙が混ざったことで生まれたと伝わるソレは命をリセットし、再生を促す役目を持つ。それが【海王龍 アモン・レヴィアタン】である。

 

対峙する海に関する神話の激突が今起ころうとしていた。

 

 

 

 

 

エリエンテのある壁画にはただ1つだけ最古の痕跡がある。今の大地と異なる海王龍が滅ぼした古い大地の唯一の痕跡が。

 

目覚めた海の王は、増えすぎた命を再編成すべく終焉の幕引きである災害、『大海嘯』が起こるという‥‥‥‥‥。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

「おおう、凄えな。ここからじゃ圧巻の一言だぜ」

 

大撃龍戦艦ヴァルキュリア号船長、そうそう名前はトリヴィスというのだが、このヴァルキュリア号を含めかの海王龍討伐艦隊の数と乗員する水中戦のプロであるハンター達、そして合流した他のキャプテンが集結する様に驚きとは他に滅多に見ることが出来ないこの光景に完全に食い込まれていた。

 

「なーに言ってんだい、このメンツでもあの化け物には五分五分だろう?ならもっと集めんだね!ウチらを纏めんならそれぐらいできるだろ、トリヴィス」

 

「勘弁してくれよ、レガリアの姉御。俺らみたいな連中の航海に耐えられるハンター達は少ねえんだからよ。だから、世間から嵐の航海者とか言われんだよ」

 

「私を姉御と呼ぶのをやめなっていうのを忘れたのかい!キャプテンレガリアと呼べと何度行ったら分かるんだい!?」

 

レガリアと呼ばれた女傑にぶん殴られるトリヴィスはこれでも足りないと言われ、軽くショックを受けた。

寄せ集めではなく、連帯が取れる精鋭を集め結成した艦隊。

 

ヴァルキュリア号をはじめとして撃龍船7隻、小型船25隻、戦列艦5隻からなる艦船決戦なら明らかなオーバーキル。

 

しかし、相手は人智を超えた古龍種にして三界の龍帝の一角である海王龍が相手なのだ。これでもなお力不足を感じ得ないのは何も不思議ではなかった。

 

しかし、船はこれ以上は集められない。よってハンターを集めるしかないのだが大長老により各ハンターに対してハンター業を規制するよう指示してるためギルドに頼ることも出来ないでいた。

 

撃龍船は乗員五十名、ヴァルキュリア号は百名以上乗せることが出来るが実に人数が足りない。

 

 

「くそ、ここでつまずくのか‥‥‥‥。メゼポルタに送った伝書鳩が承認されればいいんだが‥‥‥‥‥‥」

 

 

トリヴィスは皆に悟られぬよう舵を取りながら静かに溜息を吐くのだった。

 

 

大海原を駆ける船団は、各地を回りながら飲み込まれたタンジアを目指す。

風に揺れるマストの音が彼らの子守唄になるだろう。

 

 

 

 

嵐が、二度目の厄災が海を舞台に吹き荒れる。

 

ワイルドハントの始まりである。

 

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

《グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォっ!!!》

 

 

《ギュオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!!!》

 

 

海底内で激しくぶつかり合う巨龍。

 

煉黒龍グラン・ミラオスの身体に3つの首を持つ海王龍が噛み付いて押し出していく。

 

踏ん張ろうとするが虚しいかな何処までも押されて行った。

壁にぶつかると押される力は弱まるが、今度はその巨大な手足でグラン・ミラオスを押さえつけ、何度も何度も踏みつけていく。

 

グラン・ミラオスの流れる溶岩など怖くないというように崩れる岩も視界を封じる砂埃も全く気にしないようで反撃の機会を与えない。

 

ここで初めてグラン・ミラオスが攻勢に出た。砂埃を利用して下から熱戦を吐いたのだ。

 

突然の反撃に戸惑った海王龍であったが、

 

 

 

 

 

 

ダメージは皆無。

 

 

 

 

 

海中に渦を形成してグラン・ミラオスを噛み付いて投げ飛ばした。

行き先はもちろん渦の中だ。凄まじい吸引力でグラン・ミラオスを飲み込むと周囲の瓦礫を吸い込み、渦の中のグラン・ミラオスは吸い込んだものすべての攻撃を受けた。

 

更に、崖に積もっていた泥層を干渉して乱泥流を引き起こし、渦ごと飲み込ませた。

 

濁る海中。

 

不死の心臓とも言われる機関を持つグラン・ミラオスは疲弊しているが、まだ戦う意思がはっきりと感じ取れた。

 

大きく咆哮、四肢踏みで周囲が火山として形成されていく。

吹き出る溶岩を浴びて、枯渇していた噴出口の溶岩液が復活する。

 

両者は、生み出すもの、洗い出すもの。

 

作るもの、壊すもの。

 

互いに相容れぬ存在で、海中で小さいながらも天地開闢の権能を振るう。

 

溶岩で大地を生み出して、水の流れですべて押し戻していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海上では、巨大な大渦巻が周囲の海水を飲み込み、天に届く水柱が見える。

 

雷鳴が轟き、大雨が降る。

 

竜巻が海水を巻き込んで無数に出現する。

 

嵐の夜、二体の龍が引き起こしたこの異変はトリヴィス達の目印であり目的地である。

 

のちに大長老からこの一帯をこう呼んだという。

 

 

 

 

『トリトンの絶海』、と。

 

 




前章より表現が難しくて、稚拙に感じるかもしれません。

脳内でイメージです。ごめんなさい。

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