これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode95 成功 〜success〜

「タスク!!」

「!?」

 

不意に、聞き覚えのある声で名前を呼ばれたタスク。

反射的にぱっと振り返る。

 

するとそこには……

 

「行くなら言ってよ……私も行ったのに……」

 

少しご立腹気味のシノンと、

 

「あー……はは、こんにちは、店主さん」

 

少しお疲れ気味のキリトがいた。

 

「……あれ、二人とも。 こんにちは」

「こんにちはじゃないわよ……!!」

 

驚いた顔をするタスクに、シノンはため息をつく。

その横に並ぶキリトは、愛想笑いを浮かべている。

 

「その様子だと……大変だったみたいだね、キリトくん」

「ま、まあ……はい」

 

そんな様子を見て、店主は微笑みを彼に向けた。

 

「どうやら、シノンさんに締められた感じだね、その顔は」

「そ、そうです……」

「あんたは余計なこと言わなくていいの!!」

「あっ……て!!」

 

すると、キリトの腹にどかっ、とシノンの拳が食い込む。

そんな彼らを見て、店主は相変わらず笑っていた。

 

「御三方……仲が良いのは結構ですけど、試合の方が……」

「あっ……!!」

 

そんな中、タスクがディスプレイを眺めつつ、三人に横槍を入れる。

三人は、その声にはっと我に帰り、ディスプレイの方を向く。

 

そしてちょうどそのタイミングで……

 

 

 

 

()()……が、作戦を成功させた。

 

 

タァン…‼︎

「がはっ!?」

 

二チーム間の激しい衝突の末、唯一生き残ったプレイヤーが、背中にたった一発の銃弾をうけ、死亡する。

 

「いくら手負いとは言え……流石に一発でやられちゃうとはな……」

 

そしてその様子を、平屋建ての建物の窓から見ていたプルームが嘆くように呟く。

するとその隣のライトが、構えていた銃を下ろしつつ……

 

「相当な乱戦だったんでしょうね……」

 

そう呟いて、ゴーグルを外した。

 

この瞬間、漁夫の利と言うにはあまりに寂しい結果で終わったが、彼らは作戦を成功させた。

 

乱戦に乗じ、お互い損耗した二チームを一気に叩いて殲滅する。

 

結果的には、その場に着いた頃には乱戦は既に終わってしまい、生き残ったのは体力ミリのプレイヤー1人だけだったのだが。

 

「他には?」

「いない……かな。デッドタグは12個全部確認できた」

 

さらに奥の窓から銃を覗かせていたベネットが、隣で顔だけ出しているタウイにそう尋ねる。

それに対しタウイは、淡々とタグの数だけ数えて答えた。

 

「一応、リロード挟みますねー」

「はいよー」

 

そしてその声を聞いて、最後の一人を屠ったライトが、自身の構えていた銃、【H&K MP5】のマガジンを差替える。

それを見つつ、プルームが代わりに銃を構えるが、どうやらその必要もなさそうだった。

 

「ここからどうする、タウイ」

「んー……」

 

それでも、万が一に備えてしっかりと警戒の目を光らせるプルームは、タウイにそう尋ねる。

すると、リロードを終えたライトも、プルームと反対側を見る役割に入る。

 

「こっち側見ときますね」

「おう、頼んだ」

 

そんな会話をしつつ、ピッタリと背中を合わせて窓から覗く2人。

 

「スキャンまで後数分かぁ……微妙だね」

「そうなんだよ……」

 

その後ろで、時計を眺めつつため息をつくレックスと、それに相槌を打つタウイ。

 

ベネットとギフトは、いつの間にか建物の2階に上がって、少し奥まで見渡せる大きな窓から、周りを見ていた。

 

「……よし、決めた」

「お?」

 

すると、突然タウイがそう声を上げて、立ち上がる。

その声は、通信アイテムを介して、皆の耳に入る。

 

「我々は、居住区に入る」

「居住区……というと、ここから西の?」

「そうだ。都市にいると死角が多すぎるからな」

 

そしてその声に、疑問調で言葉を返すベネット。

タウイは、立ち上がりつつ、その声に返事をした。

 

「なるほど……適度な遮蔽物を求めてってことか」

「待ち伏せかぁ、楽しみだ」

 

すると、ギフトとレックスがそんな反応を見せつつ、各々準備を開始する。

それを見たタウイは、プルーム達や2階にいる2人に指示を出しつつ、自分も出口へと歩き出した。

 

「よし、移動開始。プルーム、ライト、頼んだぞ」

「了解」

「はーい!!」

「ベネット、ギフト、後ろを頼む」

「了解、すぐ行きます」

「はいよー」

 

そして、出口からゆっくりと、かつ一人づつ、大通りへと出ていく。

 

ただ……次の瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()が、彼らを襲った。

 

 

一方、少し時を戻して、大型酒場。

何とか落ち着き、カウンターから個室へと場所を変えたタスク達一行である。

 

彼らは、中型のそれなりに大きなディスプレイを眺めつつ、広々とした個室の中で、各々好きな所でくつろいでいた。

 

タスクとシノンは中央のソファ。

店主はその右にあるクッションに腰かけ、クッションを抱いている。

キリトは、奥についている小さなカウンターに座っていた。

 

「……して、タスク君」

「はい?」

 

すると、不意に店主がタスクを呼ぶ。

タスクはその声に答えて、前かがみになり店主の方を向く。

 

そしてそれを見た店主は、少しニヤけながら、タスクにこんな質問を投げかけてきた。

 

()()()()()()として……彼らをどう見る?」

「……はは!!」

 

対して、それを受けたタスクは、彼も彼で楽しそうに笑うと、どっかりと背もたれに背中を預けて、ディスプレイを睨むように見る。

そして少し笑みを保ちつつ……声のトーンを変えて、質問に答えた。

 

 

 

 

 

「彼らには……決定的に()()()()()()がある」

「……ほう」

 

 

 

 

 

その声のトーンは、まさに彼、()()()()()()の声であり、隣に座るシノンは途端に背筋が伸びてしまう。

 

ただ、次の瞬間。

 

 

 

 

 

 

その()()が、悲劇に襲われた。




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