これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode88 電話 〜phone〜

確かあれは、SAOから帰ってきた直後ぐらいだった。

菊岡とかいう男の事情聴取の後、もう一人、話を聞きに来た男がいたのだ。

 

名前は、「三村光」。

覚えが正しければ、この男は「サイバー対策課」という部所に属する、警視庁に務める立派ないち警察官だった気がする。

 

「どうしてあなたがここに……?」

「いやぁ、とんだご縁がありましてね」

 

その男……三村は、そう言ってはにかむ。

そしてそのまま、菊岡の隣に座った。

 

菊岡と三村はどちらともスーツで、対してタモンは普段着のような感じの服装。

なんだか居心地が悪くなってきたな、とタモンは苦笑する。

 

すると、三村が早速、と言わんばかりに鞄をあさり出し、そしてそれを見た菊岡が、満を辞したかのようにこう、話し出した。

 

「まずは……()()を読んでくれるかい?」

()()?」

「こちらです」

 

菊岡の言葉に首を傾げたタモンに、三村がわざわざ両手で()()()()を差し出す。

タモンはそれを受け取り、上から順に目を通す。

 

……そして。

 

「これは……!!」

()()には、これに協力してもらいたい」

「……!!」

「悪くない話だろう? タモン」

 

驚きの顔をしたタモンに、光の反射で目が隠れた菊岡がそう、切り出した。

 

その言葉を聞いて、タモンはすぐに我に帰ると、また疑いの眼差しで書面を見つめる。

少しの間を置いて二人を見つつ、眉間にシワをよせため息をつく。

 

そんな彼を見て、菊岡は言葉を捕捉的なニュアンスで割り込ませてきた。

 

「その計画は、()()()()()()()()()()ものだ」

「……!!」

「それと同時に、僕ら警察にも来たみたいで……」

「ふむ……ということはだ、菊岡」

「ん?」

「お前のいう、我々って……」

「そう、()()()のことだ」

「はぁ……」

 

一段と深い息をつくタモン。

それを見てにっ、と微笑む菊岡。

 

「協力……してくれるよな?」

「僕からも是非、お願いします」

 

まるでトドメのような言葉。

タモンは思わず書面から目を離し、背もたれによりかかって身を引いた。

 

この書面は、確かに我々にはまたとないチャンスだ。

ただ同時に、この書面の計画に乗っかれば、それ即ち菊岡の()()()()()()()管理下になってしまう。

 

それはなかなか許容しがたい事だった。

だいたい、それ以前にだ。

 

「……」

「どうしたタモン、何か迷うことでもあるのか?」

 

黙り込んでしまったタモンに、菊岡が白々しく疑問符をかけてくる。

するとタモンは、その言葉を聞いて、何かが切れた気がした。

 

同時に、ぎらりと菊岡を睨む。

菊岡は思わず身を引く。

 

「だいたい、それ以前にだ、菊岡」

「っ……!?」

「この話、きちんと()に通したんだろうな?」

「……!!」

 

すると菊岡は、タモンがそう問うた瞬間、しまった、というより、バレた、といったような顔をした。

 

それを見たタモンは、書面をぺっ、と机に投げる。

 

「そもそも彼に話が通っていないのなら、この話には我々は乗らない。我々のボスは彼だ。彼が我々の動きを決める」

「だ、だがなタモン、彼はまだ()()()なんだぞ」

「それ以前に、彼が僕らの()()なんだ。すまないな菊岡」

「ど、どうして君はいつもそうやって……!!」

「呆れるなら呆れればいいさ、僕は僕のボスに従っているだけだ、自衛官としてそれくらいは分かるだろ」

「ぐ……!!」

 

明らかに焦っている菊岡に、いつになく怒ったタモンは毅然と言い返す。

 

何度も彼……タモンと話してきた菊岡は知っている。

こうなってしまった彼はもう、なだめすかす事は不可能なのだと。

 

こちらが譲歩しなければ、そもそもこの計画自体が頓挫してしまう。

仮に失敗した時、依頼した団体が「()()()()()()()()()()()」なんて事が発覚したら、タダじゃ済まされない。

 

でも……彼らはそれでも頼む価値があるのだ。

ここはこちらが折れるべきだ、菊岡はそう悟った。

 

「わ、わかったよタモン、今から電話でいいかな、電話越しに彼と話させてくれ」

「…………」

 

タモンはそれでも納得いっていなかったようだが、黙々と携帯を取りだし、彼……タスクに電話をかけた。

 

 

「……で、あの電話でこちら側に編入を希望してきたプレイヤーが、あの人ですか」

 

数日後。

GGOの店主の店、『ガン・マリア』にて。

 

カウンターに座ったタスクは、奥に立つ店主にそう、問うていた。

 

「そ、名前はコルト、コードネームは、ベネットだよ」

「ふーん……」

 

店主のその囁きを聞き、タスクは頷きながら丸椅子を回転させ、スタッと飛び降りて立つ。

 

そしてそのまま、てこてこと奥のテーブル席に座る男……コルトの前まで行くと……

 

「こんにちは、コルトさん。これからよろしくお願いします」

「えっ……あっ、ああ」

「僕の名前はタスクです。コードネームは……」

「……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()

「!?」

 

コルトが驚いて目を見張ったのは、言うまでもないだろう。




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