これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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ついに……登場!!(一部)


Episode86 分店 ~Branch~

「こ、こんにちは……」

「いらっしゃいませー」

 

かわいらしい声と共に、小さな少女が小綺麗な店に入る。

 

入ってすぐ見えてきたのは、きらびやかに装飾された銃器の数々。

 

炎を模したペイントのアサルトライフル。

オモチャみたいな、緑と黄色、それに青をふんだんに使ったカラーリングのハンドガン。

 

ちょいと視線を動かしてみると、今度はなにやらちっこいアクセサリーが所狭しとならんでいる。

 

「ふぉぉ……!!」

 

それらGGOではなかなかみれない貴重で奇妙な代物に、その小さな少女、レンは目を輝かせた。

 

すごいなにこれめちゃかわいいあこれすごかっこいい……

見るところ見るところみんなかわいらしく、またかっこいい代物ばかりで、レンの心は感想が尽きることなく溢れかえる。

 

「うっほ〜!? こんなお店あるんだ!?」

 

すると、少し遅れてピトフーイが入ってきた。

こちらも同様、目を輝かせながら。

 

「うわぁ……よくこんなの作れるなぁ……」

 

そして店内を見回すや否や、ピトフーイは一つの銃をまじまじとみながらそう呟く。

 

「こ、こういうの作るのって、難しい……の?」

 

おや、あなたがそういうなんて珍しい。

そう言わんばかりの目をして、レンはピトフーイの隣に立った。

 

するとピトフーイは、レンを一瞬チラリと見た後、すぐまた眼前の煌びやかな銃に視線を戻し、熱く語り始める。

 

「レンちゃん……これは、ほんっとにお目にかかれない、相当貴重な代物よ」

「えっ、そ、そうなの?」

 

そう語るピトフーイに、異常なほど熱い視線を注がれている銃を見つめ、レンは息をのむ。

 

赤の下地に、金の龍がペイントされた、AK−47。

グリップからマガジンまで、ものの見事に赤く塗られ、そして煌びやかな金の点が散りばめられている。

 

確かに、こんなものは見た事がない。

ピトフーイでさえ見た事がないのだ、レンが見た事あるわけない。

 

「GGOのシステムはね……()()()()()を作るための機能なんて、はなから搭載されてないのよ」

「……ど、どういう……?」

「ようは、()()()()()()()()()()()()()()()なんてものはないの」

「……?」

「この世界のペイントカスタマイズでできることなんて、せいぜい()()()()()()()()()()()()か、何かの図形、マークをちょこんと入れられるくらいなのよ」

「……!?」

「こんなどでかい龍なんて、作り上げるのにいったいどれだけ時間がかかることやら。きっとこれ、図形を何百、いや何千枚も重ねて作られてるわ」

「な、何千!?」

 

わ、私またとんでもないとろにきちゃった!?

レンは、内心で悲鳴を上げる。

 

レンの何千倍もやり込んでるピトフーイがこんなこと言うのだ。

恐ろしいったらありゃしない。

 

すると、その時だった。

 

「それはだいたい……1週間くらいかかりましたよ」

「「へっ?」」

 

後ろから、いきなり声が飛んできた。

ピトフーイとレンは、二人揃って同時に振り向く。

 

「いやぁすみませんね。あまりにマジマジと見てくれるものだから嬉しくてつい」

「「……!?」」

 

するとそこには、糸目のこれまたニコニコした店主、と思われる男性キャラクターが立っていた。

体は細くも筋肉質で、糸目なのも相まってどこかほんわかしている。

 

「それは、赤基調の迷彩模様の一部を下地に、だいたい3千5百枚の四角と円の図形パーツを組み合わせて作ってあります」

「さ、さんぜん……!!」

「価格は……ごめんなさいね、ディスプレイ用に作ってあって非売品なので……」

 

ひばいひん!?

レンはいよいよもって頭がクラついてきた。

 

非売品になる物なんて、この場合はおそらく、あまりに高額すぎて市場に出回ったらまずい物、と言う意味だろう。

 

「こ、これ……欲しい……」

「は?」

 

ほしいぃ!?

レンはもはや、自分が正気でいるのかどうか定かではない。

 

いくらピトさんとはいえ、非売品を欲しがるわけがない。

きっと今のは聞き間違えだろう、何を勘違いしているのだ私は。

 

……と、思っていたら。

 

「値段にしていくら!?」

「え、ええ〜と、うーん」

 

どうやら頭がおかしかったのはレンではなく、ピトフーイのようであった。

 

 

「あ、なぁんだあそこの紹介か!! なるほどね」

 

それから、数分後。

何故かレンもお店側に回り、何とかピトフーイを諌めた後。

 

それで、なにかご要件で?

と問うてくれた店主の優しさに甘え、レンはやっと本題に入ることが出来ていた。

 

「この店、あそこの分店だからねぇ。来てくれて嬉しいよ」

「え、分店なんですか!?」

「そうよー? あそこの店主さんに色々お世話になっててね」

「そ、そうなんですか……」

「たまたまね、ペイントやその他装飾的なカスタマイズ専門店としてお店出してみたら……? って言われたんだ」

「は、はぇ〜……」

 

なるほど、道理でとんでもないわけだ。

レンは内心でため息をついた。

 

そんなレンを見かねてか、その店主はどんどん話を切り出してくれる。

 

「たぶん……あれでしょ、新しく銃を新調したから、何か個性を持たせたいーって、ここに来たんでしょ」

「そ……!! そうです!!」

「うんうん、だろうね」

 

レンは、今度は安堵のため息をつく。

今度は、心を抉られなくてすみそうであった。

 

 

「ギフトのやつ、やたら楽しそうだな」

「はは、そういう君だってニヤニヤしてるじゃないか、プルーム」

「な、た、タウイ!! べ、別にそんなこと……!!」

 

一方、店の奥。

 

この店にも設けられているレストスペースに、2人の男性プレイヤーが腰掛けて、やたら騒がしいこの店の店主、ギフトと呼ばれた男性キャラクターの方を見て、微笑んでいる。

 

プルーム、と呼ばれた方の男性キャラクターは、背中にHK416A5-11、後ろ腰にP228を装着した、最もベーシックな軍隊スタイルな装備。

ただ、最もベーシックとは言えど、見る人が見たら……いや、GGOを始めて少しした人なら見ればわかる、相当なカスタマイズが銃器のみならず、服装などにも施されていた。

 

対して、タウイ、と呼ばれた方の男性キャラクターは、背中には何も背負っていないものの、右肩から長く細い鉄の板らしきものを垂れ下げている。

そしてその板には、白線が適度に切られて描かれており、左上には大きく「タ」と書いてあった。

 

「しっかしあの子、ちぃさいねぇ。うちのライト君とひけをとらないんじゃない?」

「そうだなぁ……、までも、ライトはボス……いや、タスクとどっこいどっこいだから、あそこまで小さくはないかと」

「それもそうか……なんにせよ、珍しいね」

 

そんな会話をしつつ、2人はそれぞれの飲み物を啜る。

 

「あんなちっこいの、相手をするなんてことになったらたまったもんじゃない」

「はは、それは言えてる……な」

 

そして、プルームのぽつりとした呟きに、タウイは頷いて笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……ただ、その予感は、的中することになるのである。




いつもありがとうございます。
駆巡 艤宗です。

いやぁ、アリシゼーション2期、いいですねぇ。
アリスの凛々しさと言ったらもう……!!
是非たるんだ僕の日常をお叱り頂きたいです……(*´﹃`*)デレデレ

!!!( ゚д゚)ハッ!!!
ごほん、ええー、大変失礼しました。

さて、本題に入りましょうか。
大変お待たせ致しました、今話より、ついに『ストーリーダイブ・キャンペーン』のキャラクターの登場になります!!

1周年記念としてスタートしたこの企画、気づけば2周年記念になってしまいました。
(おいこら、反省しなさい)

またそれにあたり、今話登場したキャンペーンキャラクター分の設定集の更新を行いました。
(未登場のキャラクターの情報はまだ開示しておりません)

読者さんが一生懸命考えてくれた、渾身のキャラクター達です。
是非御一読ください。

最近だんだん寒くなってきましたね。
皆様お体に気をつけてお過ごしください。

台風に関する被害を受けられた方々、いち早い復興を心よりこの作品と共にお祈り申し上げております。

では。

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この動画にしかない物語の鍵があります……。

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