これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode62 決闘前夜 〜The night before the duel〜

「明日……よね、決闘」

「……はい」

 

シノンがそんな呟きを放ち、タスクがポツリとその呟きに言葉を返す。

 

時刻は、ALO内時間で午後5時。

彼らは、もちろんALO内の、とある酒場で、酒場全体を見下ろすことが出来る2階のカウンター席に肩を並べて座っていた。

 

「……」

「……」

 

特に会話することもなく、ただ黙々と、おのおのが注文した品物を口に運んでいく。

 

そんな彼らの背中には、どこか「緊張」のような雰囲気があった。

 

「……ねぇ」

「……はい?」

 

そんな中、いきなり、その沈黙を破るかのように、シノンが、ポツリと声を出す。

タスクは、その声にぴくりと反応した。

 

そんなタスクを見たシノンは、すこし言葉に詰まりつつ、ポツリポツリと、まるで絞り出すように、声を出していく。

 

「明日の……あいつ、キリトとの決闘……」

「……!」

「そ、その……」

「……?」

 

「が、がんばっ……て……ね」

 

「!!」

 

するとその瞬間、タスクがすごい勢いで首を回し、シノンを凝視した。

シノンもシノンで、すごい勢いで首を回し、必死になって顔を逸らす。

 

「……!」

「〜〜!!」

 

驚き唖然としているのか、タスクは、シノンを見つめて固まった。

そんなタスクにはなから耐えかねたのか、シノンが慌てて言葉を付け足す。

 

「も、もちろん!あんたがあいつに負けるなんて思ってない!」

「……!」

「で、でも、あいつもあいつで強いから……その……!!」

「……!!」

 

恥じらいで顔を真っ赤に染めて、そんな顔を隠すかのように必死に逸らすシノンを見て、タスクは、未だ呆然と見つめ続ける。

 

そんなタスクのその目には、驚きと言うより嬉しさが含まれているように見えた。

 

「……ありがとう、ございます」

「……!」

 

すると、そんな感情からか、タスクはほぼ無意識に、そう呟いてしまう。

 

 

 

-それっきり、二人は会話を交わすことなく前夜を過ごし、そして帰っていった。

 

 

「明日……だよね、決闘」

「……ああ」

 

一方、こちらもALO。

タスクとシノンが、イチャイチャは愚か、ギクシャクしているのと同刻。

 

キリトとアスナは、広大なALOについ半年ほど前に実装された、「浮遊城アインクラッド」の22層にある()()()にて、団らんのひとときを過していた。

 

……とは言うものの、実際はどちらかというと、「決起集会」のような感じだったが。

 

「頑張ってね、応援してる」

「ああ……ありがとう」

 

アスナの素直な応援に、キリトはつい口元が緩んでしまう。

 

《何度この笑顔に助けられただろう》

 

不意にそんなことがキリトの頭をよぎる。

SAOのあの時や、ALOで奮闘した時、その後のGGOで戦った時はもちろん、そして今でも、このアスナの笑顔が見たくて、キリトは戦えるのだ。

 

その笑顔が見たいから、そして同時にそれを守りたいから、キリトは剣を握り続けることができる。

 

「……」

「……?」

 

だが、その反面、恐ろしくもなるのだ。

 

もし、守りきれなかったら。

もし、そのせいで、自分が生きている内に、アスナの身に何かあって、もう二度と会えなくなってしまったら。

 

今まででもなくはなかったように、今後、またそんなことが起こるかもしれない。

そして今度こそ、終わりかもしれない。

 

そう思うと、キリトは震える程、本当に怖くなる。

もしかしたら、剣を握り続けることができているのは、その恐怖から逃れようとしているからなのかもしれないなんて事も、考えてしまう。

 

「……っ!」

「キリト……くん?」

 

でも……いや、だからこそ、キリトはあえて、「()()」とも思える賭けに出たのだ。

 

タスクと店主のあの二人は、自分やアスナと同じ状況を経験しながら、自分にはない「強さ」を、持っている。

 

その「強さ」を知りたい。

ただ、それを本人達に聞いたところで、答えが出てくる事はまず無いのを、キリトは知っている。

 

「……ふ」

「……キリトくん?」

 

だから、あえて「決闘」という、少々無理矢理な形で知ろうとしたのだ。

 

第一、彼らの剣技というのを、まだキリトを含め、アスナ達もは知らない。

タスクと店主の過去は、アスナから聞いているが、ただそれはあくまで、「聞いただけ」。

 

そのせいか、実際にはどうなのか、なんていう、検証じみた感情もなくはないのだ。

 

もちろん、到底負ける気はない。

ただ、勝てるかと問われれば、首を縦に振るのはどうやっても無理というものだ。

 

……そう、これはそんな、先の見えない戦いなのだ。

 

そう思うと、キリトは体から緊張が抜けていくのを感じる。

 

「……キリトくん?」

「……パパ?」

 

するとその時、聞き慣れた2人の声が、その思考を打ち切るように頭へと流れ込んでくる。

キリトは、その声が聞こえた瞬間、はっとしたように顔を上げた。

 

「もう……また怖い顔して……」

「ああっ、ごっ、ごめんて!」

 

アスナの顔がぷくーっと膨らむ。

キリトは、そんなアスナを宥めようと慌て出す。

 

ただ、キリトはそんな中でも、はっきりと感じていた。

 

今のこの状態、SAOのあの時からずっと変わらない、この状態こそが、今、一番キリトの落ち着ける場であること。

そしてそれを守るために、守る力をつけるために、明日、彼らに戦いを挑むということ。

 

これはゲーム。

あくまで、「遊び」なのだ。

例え、かかっているものがどんなものでも、ゲームであっても遊びではない、あの世界とは違うのだ。

 

……となれば、後は当たって砕けるだけ。

 

「……明日、頑張るから……さ」

 

そんな意思が、キリトの口をつたって、言葉になって流れ出る。

 

 

 

緊張の決闘は、確実に近づいてきていた。




お久しぶりです。
駆巡 艤宗です。

まずは、大変お待たせ致しました!
え?最近毎回?か、勘違ぃ……(目そらし)

すみません(笑)
今後はなるべく早くしますね……( ´・ω・`)



さて、毎回恒例(おい)の前置きはさておいて。

今回は、「大型アップデート」についてのお知らせです。

まず現在、
・各キャラクターの使用兵装情報の設定集追加
・前書き及び後書きの更新・改稿・削除
・その他、細かい部分の修正・訂正
・文章作法の最適化(…→……への変更等)
の、4つを完了しました。
これにて、ほぼ全ての作業が終了という形になります。

……が。

恐らく、皆様が1番心待ちにしていらっしゃるであろう、
・「ストーリーダイブキャンペーン」にて誕生したキャラクター達の情報を設定集に追加
については、皆様にお詫びを申し上げさせていただきます。

当初、今回の大型アップデートにて、追加を予定しておりました上記の項目ですが、少し延期とさせていただきます。

理由としては、流石にそこまで手を回す時間がなかったこと。
また、次話を書きつつ、並行して作業をするのは、双方の質の低下に繋がると判断したためです。

ただ、今回の措置を行った場合、今後この決闘編が終わり次第、次章は「日常&ユウキ編」(仮称)へと入っていく予定が、予定より早くなりますので、恐らく設定集に手を回すよりも早く本編に登場できると思います。

言い訳じみて申し訳ないですが、併せてご理解をよろしくお願いします。



だんだん季節が変わってきましたね。
ちなみに作者は風邪を引きましてですね、ただ今、布団のなかで執筆をしております。

あ、咳したら画面に唾ついたうわぁぁぁゲッホゲッホ
ヾ(>y<;)ノ

今後ともよろしくお願いします。
では……

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この動画にしかない物語の鍵があります……。

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