これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode56 聞き耳 〜Listeners〜

「あなたが……?あの……?」

 

キリトは、呆気に取られて言葉に詰まる。

 

いつの間にか後ろに立っていて、その存在を視認した瞬間、ただならぬ威厳のような何かを感じさせた「あの彼」と、

今目の前で無邪気に笑い、威厳など微塵も感じさせない少年の姿は、どうやっても重ならないからだ。

 

だからなのか、キリトは口をパクパクさせながら呆然とタスクを見つめていた。

 

そんな彼を見たタスクは、

 

「ええ!僕が、「ビッグ・ボス」ですよ!」

「……!」

「なんなら、今ここでボスになりしょうか?」

 

なんて冗談事を言いながら、またニカッと可愛い笑みを浮かべる。

 

やっぱり信じられない。と言わんばかりに、またキリトはタスクを凝視した。

まるで、あのビッグ・ボスとの共通点を、ひとつでも探し出そうとするように。

 

すると今度は、そんなキリトの代わりに店主が、タスクに声をかけた。

 

「おや、タスクくん。その様子だと……結構前から聞いていたみたいだけど」

「もちろん!キリトくんが来るってことは、なにかがおこるってことですからね」

「はは……まあね」

 

店主はタスクのキリトに対する酷い言い草に苦笑する。

だが、それは現状を含めあらかた間違ってはないので、店主はあえて苦笑するだけに留めた。

 

そんな中、キリトがやっと、言葉を発する。

 

「ちょ、まっ……あんたがほんとに?」

「あれ……、まだ信じられないですか?なんなら……って言いましたけど、割と本当にボスになった方がいい感じですか?」

「え……いや……」

「?」

 

キリトのぼやっとした物言いに、タスクは首を傾げる。

そしてそのまま、店主の方へと視線を向けた。

 

「……」

「……OK。分かったよ」

 

すると店主は、タスクそんな視線から、彼の意図していることを察し、タスクに、はたまたキリトに、声かける。

 

「とりあえず落ち着こうか。そこへ座って?タスクくん」

「はーい」

 

そして()()()、タスクとキリトと店主の面談が始まった。

 

 

 

……後ろの席に座る、シノン達など目もくれず。

 

 

時は戻って、数分前。

カウンターの向かいにある、対面式の机。

 

そこですっかり意気投合し、笑いあい談笑していたシノン達の目に、「その彼」は入ってきた。

 

……そう、キリトである。

 

「あ……」

 

長い髪に、腰にぶら下げたフォトンソード。

後ろ腰についた「FN Five-seveN」。

 

そんな見慣れた格好の彼に、シノンは咄嗟に声をかけようとする。

 

……が、それは、フォートレスに止められた。

 

「え……?」

「待ってシノンさん。今日のキリトくん、なんか……違う」

「……!」

 

どこが?……と言おうとして、シノンは咄嗟に口を噤んだ。

 

確かに、キリトの顔がいつも以上に硬くなっているのが分かる。

 

だが、それがなんだというのだ。

 

そんな顔、BOBで幾度となく見てきた。

そこまで何かを予感させるものでは無い気がするが……。

 

「……シノンさん。ここは、気付かないふりをしよう」

「そうね。それがいいわ」

「……!」

 

だが、そんなシノンの考えそっちのけで、ウォッカも相槌をうち、椅子に座り直す。

結局、シノンもそれに倣って、キリトのいる方に背を向けるようにして座り直した。

 

「……俺らは君らを、BOBの間ずっと見てきたからな」

「……!」

 

するとフォートレスは、シノンの押しとどめた疑問に感づいて、あるいは新たな話題として、そんなことを言い出す。

 

「良くも悪くも、彼を知ることが出来た。もちろん、シノンさんもね」

「……!」

「だからわかる。今のキリトくんは、()()()()()

「つまり……ここは店主に任せようってこと!」

「は、はい」

 

フォートレスが確信したように呟いて、ウォッカが簡潔に話をまとめる。

結局シノンはそれに、頷くことしか出来なかった。

 

そして後ろから、予想通り、店主の声が聞こえてくる。

 

「おや、キリトくん……!!」

「こ、こんにちは」

「あはは、いらっしゃい。よく来たね」

 

「さぁて……どうでるかな」

「ふふふ……」

「……え?」

 

無意識に机を見つめつつ、耳に意識を集中させ、店主達の声に聞き耳を立てていると、不意に今度はシノンの前からそんな言葉が聞こえてくる。

 

不思議に思いそちらを見てみれば、フォートレスとウォッカも、無意識にか、シノンと同じように机を見つめ、耳に意識を集中させていた。

 

「あ、あの……」

 

シノンは、苦笑いでそんな彼らを見る。

するとウォッカが、

 

「しっ!シノンさん!いまいーとこ!」

 

そう言って、ニヤニヤしながら口に人差し指を当てた。

 

結局、気になるのね……と思いつつ、シノンも彼らと同じく、また聞き耳を立てる事にする。

 

そしてその瞬間、とてつもなくびっくりするような言葉が、飛んできたのである。

 

 

「俺とタスク、決闘させてもらえませんか!!!」

 

 

「「「……!!??」」」

 

シノン達3人が、店主達の方に振り返りたいのを必死に堪えたのは、言うまでもないだろう。




いつもありがとうございます。
駆巡 艤宗です!

今回は少し短かったですね。(笑)

え?ストーリーダイブキャンペーン?
ま、まだ準備中です。(;^ω^)

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