これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

53 / 189
Episode52 休息 〜Rest〜

「なあ……シノン?」

「?」

「この後、時間あるか?」

「な……!」

 

菊岡との会談を終え、レストランをでた二人。

 

和人のいきなりの質問に、詩乃は驚きつつ歩道を歩く。

 

「べ、別に……今は特にないわ」

「そうか、じゃあ……!」

「あっ!でも、夜には、GGOに行くつもり」

「……分かった。その、実はさ、少し……付き合ってほしい場所があって……!!」

「……?いい……けど」

 

詩乃の答えを聞いた和人は、すこし頬を赤らめつつ彼女をどこかへ誘う。

 

詩乃はそんな和人の仕草を少し疑問に思いつつも承諾し、二人はヘルメットを被ってバイクに跨る。

 

そして……

 

ブォン……!!ブォンブォン……!!!!

 

エンジンをふかしながら、すぐに街の中へと消えていった。

 

 

同時刻。

GGO内、店主の店で、店主とタスクは、カウンターに向かい合って座り、だべっていた。

 

死銃事件が終わり、緊張が解けたのか、二人の顔にはなんの陰りもない。

 

いくら彼らといえど、人間である。

心の休息は不可欠なのだ。

 

「ふふ……やっぱり、シノンさんは真面目だったねぇ〜!」

 

すると店主が、だべりの中で、そんな言葉を漏らす。

タスクはもちろん、疑問を持った。

 

「やっぱり?前々から知っていたでしょう?」

「……いや、ね?実はさ」

 

首を傾げるタスクに、店主は種明かしをするようにニヤリと笑う。

 

「僕ね、シノンさんに、キリトくんが菊岡さんに送り込まれたプレイヤーだって、教えてないんだよ」

「はいぃ!?」

 

タスクは反射的に立ち上がる。

 

店主がシノンに、BOB参加の仕事を斡旋したのはもちろん知っている。

その理由も、「ボスへの報告」という形で聞いていて、把握していた。

 

だが、それを知っているから、むしろだからこそ、分かるのだ。

今店主の言ったことが、とてつもなく頓珍漢であり、本末転倒なことが。

 

しかし、よくよく考えてみれば、シノンもシノンで、しっかり仕事をこなしていた。

 

矛盾に矛盾が重なり、訳が分からなくなる。

 

すると、店主が、

 

「と、言うのもね?」

「……はい」

 

ニコニコしながら、話し出した。

 

「僕さ、実はシノンさんに、BOBを楽しんでほしいと思って、あの仕事を斡旋したんだ。彼女、過去のことを掘り返しちゃって、少し気分が落ちてたから……」

「あ、ああ……」

「そしたら、バッチリのタイミングで死銃事件が発生しちゃってね」

「……まあ、彼らも合わせてきましたからね」

「それでね?一応と思ってあういう依頼をしたんだよ」

「……」

「……けどさ」

「さ?」

「よくよく考えてみれば、これって僕らが表から手を出しちゃってるじゃない?」

「まあ……たしかに」

「それはまずい。菊岡さんに怒られちゃうからね。だから、キリトくんがそのプレイヤーであることはあえて言わなかったの。これで一件落着」

「……」

「まあでも、結局、何らかの形で気づいたんだろうね。しっかりと仕事をこなしてくれた。だから、真面目だなぁと。……ね?」

「……ブチッ」

「……ね?た、タスク君……!!」

 

そこまで話して、店主は何かをタスクから感じる。

 

……そう、それは、「タスクの怒り」であった。

 

「店主さぁん……?」

「ひっ……!!」

「なにが……ねっ!なんですかねぇ……?」

「い、い、いや、そのあの……!!」

「なぁに店主さんの優柔不断にシノンさんを巻き込んでるんですか!」

「ひいいい!!」

「全くもう、可哀想でしょう!?」

「は、はいっ!」

「すべて、今聞いたこと、洗いざらい、ぜーんぶシノンさんに話しますからね」

「ええ!?そ、それはどうか……!!こんなこと言ったら、シノンさんはきっと……!」

「ダメです!僕がいくら言ってもこれですからね。たまにはこってり他の人に、というより、被害者に絞られてください!」

「……ひ、ひーん!」

「嘘泣きしたってダメです」

「はいっ」

 

ぷい!と、そっぽを向くタスク。

やらかした……と言わんばかりに沈む店主。

 

二人の間に、重苦しい雰囲気が漂いだす。

 

……と思われた、その時。

 

「まあでも、こんだけ言うって事は、タスクくんもシノンさんのこと、思ってるんだよね……」

 

そんなことを、店主は机に伏せながら、小声でぼそりと呟いた。

 

するとその時、タスクの頬がみるみる赤くなる。

 

「〜…!!」

「青春だね〜……ふふふ!」

ガタッ!

 

そしてタスクはいきなり立ち上がると、無言で射撃演習場へと走って行った。

 

「慣れてないなぁ、タスク君」

 

そんな背中を、おかき上がって見た店主は、そう呟いて微笑んだ。

 

するとその時。

 

ガチャリ…カランカラーン!

「……!」

 

店の扉が開き、扉についたベルが来客を告げる。

 

そして、

 

「やっほー!!店しゅー、息してるー?」

 

妙にハイテンションな声が響き、

 

「……ちーす」

 

妙に沈んだトーンの声があとからやってきた。

 

もちろん店主は対応する。

 

「はーい!いらっしゃい!」

「やほー!」

 

 

「ウォッカさんとフォートレスさん!」

 

 

と。




いつもありがとうございます。
駆巡 艤宗です。

やっとです。(笑)
大変、お待たせ致しました。

新キャラの登場です!

……と言っても、名前だけですけどね。
‪ちなみにこのキャラのどちらかは、今後「とあるネタ」の要員になります。‬‪お楽しみに!‬

今後とも、よろしくお願いします。

【作者Twitter】
https://mobile.twitter.com/P6LWBtQYS9EOJbl
作者との交流、次話投稿の通知、ちょっとした裏話などはこちら!!

【作者 公式LINE】
https://lin.ee/wGANpn2
公式LINE限定セリフ、各章あらすじ、素早い作中情報検索はこちら!!

【今作紹介動画】
https://youtu.be/elqnCcV7R_0
この動画にしかない物語の鍵があります……。

【感想】
下のボタンをタップ!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。