これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「はい?」
衝撃の事実が告げられ、妖精たちがディスプレイを眺め唖然としていたその時。
クリスハイトが、まるで抵抗するかのように、声を上げた。
「タ、タモンさん!?君は今、「標的はシノン」さんって言ったよね!?」
「ええ」
「君達はそれで、なぜそんな落ち着いていられるんだい!?」
「なぜって……?」
「……!?」
クリスハイトは、確かに覚えている。
ここに来る前、集合した酒場で、店主が
「うちもうちで、大事なシノンさんがいますからね、
と言っていたのを。
それなのに、いざその状況になれば、なにも動こうとしない。
そんな店主達に、クリスハイトは半ば怒りのような感情が芽生えていた。
自分とて、これ以上被害を出されるのは困る。
それに、本来この仕事をするべきはずだった人間達が、この状況で、何も動こうとしない。
たしかに、仕事を彼らから奪ったのも自分であり、それは事実だ。
だが、こうなることを予見して、
「この死銃事件の、
したのだ。
それがまさに、今、ではないのか。
今ここで、助けに行けば、同時に死銃を倒すことだってできるはずだ。
「君……!!シノンさんの命が危ないんだよ!?」
「でしょうね」
「それで……そんな、というよりこんなところにいていいのかい!?」
「……」
クリスハイトの怒声に、店主は微笑みを保ったまま、押し黙る。
その声につられて、視線をこちらに向ける妖精たち。
その個室に、さっきまでとはまた違った、変な緊張感が張り詰める。
するとその時。
「だから。言ったでしょう?」
「!?」
店主ではない、またどこか、
「シノンさんは、たしかに僕らの仲間です。命の危険が迫っているのもわかってる。きっと本人も、分かっているでしょう」
「タスク……くん?」
「本来なら、今すぐ助けに行きたいですよ」
「な、そ、それじゃあ……!」
そんな声を上げたのは、もうお分かりだろう、タスクである。
クリスハイトは、なお落ち着き払っているタスク達に、抵抗する。
……が。
「それでも彼女は、
「……!?」
「今ここで、助けに行ってもいいでしょう。BOB会場に乱入することなんて、僕らの技術があれば容易いことだ」
「……!!」
クリスハイトはもちろん、妖精たちも、今までとは違った、
そんな感情などつゆ知らず、タスクはディスプレイを見つめたまま、まだまだ話し続ける。
「……でもね、もし、本当にそうしたとして、この事件が解決すると、思いますか?」
「……!?」
「クリスハイトさんが僕らに行動を許したのは、
「な……何が言いたいんだい?」
「つまり、ここまで「大罪」を犯した
「そ、それは……!」
クリスハイトはもちろん、話を聞いている妖精たちも、少しの間、考え込む。
たしかに、
答えは明白だ。
諦めるわけがない。
「だから、僕はここでは手を出さない。言ったでしょう?」
「……!!」
「
「わ……わかったよ」
クリスハイトが、すごすごと引き下がる。
すると今度は、今まで黙ってカウンターに座っていたクラインが、タスクへ質問した。
「な……なあ?えっと……タスクくん……?」
「はい?」
今までディスプレイから目を離さなかったのに、クラインが呼んだ瞬間そちらへ首を回すタスク。
「っ…!?」
「……どうしました?」
「い、いや、その……さっきよ、あんた、この世界で倒しても意味がないって言ったよな?」
「ええ。確かにそう言いましたが?」
「じゃ、じゃあ……今キリトがやってることだって、やっぱり意味が無いんじゃ……」
「……!」
はっ、と、妖精たちが振り向く。
確かにそうだ。
この世界で倒したところで死銃が諦めないと分かっているなら、今キリトが繰り広げている死銃との決闘だって、意味が無いのだ。
そんな、ある意味「盲点」だった事を指摘されでもなお、タスクはニコッと笑ってクラインと向き合う。
「まあ……」
「?」
また虚を突くようなことを言い出すのかと、身構える妖精たち。
……が。
「そうなんですけどね」
「へ?」
「結局、シノンさんが殺られる殺られないは、リアルでの事ですし、今までの話は、「死銃がリアルとの連携を続行し続ければ」、ですから」
「ま、まあ……」
「いくらシノンさんを守るって言ったって、キリトくんが守っているのはこの世界のキャラクターですから、現実のプレイヤーは守れませんよ」
「そんな……!」
「だって、ここまで追い詰められてるんですよ?もうゲーム内から殺したように見せる細工なんてせずに、さっさと殺す可能性だってあるわけで……ね?」
「そうか……そうだよな」
今までの話とは一転、どこかあっけらかん話し方に、妖精たちは、ポカーンとする。
するとその時。
「そこで!クリスハイトさん」
「な、なんだい?」
いきなり、タスクが雰囲気をぶち壊すかのような声を上げる。
そんな声で呼ばれたクリスハイトは、少し驚きつつも反応する。
そして……
「シノンさんの、住所、教えてください!」
「はい!?」
ある意味、虚を突かれた妖精たちと、クリスハイト。
それに対して、タスクはニヤリと笑いながら、話し続ける。
「そこで、決着をつけます」
「決着……!」
その時、タスクの顔が、いきなり真剣味が出てくる。
「そうです。というのことはつまり、そこが『僕の出る幕』である」
「……!!」
「『最終局面』です」
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