これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode43 妖精たち 〜Fairies〜

一面に広がる黄土色。

風に巻き上げられて飛ぶ砂。

所々に突き刺さる、「廃墟」と化したのであろう、ビル。

くすんだ色の雲に遮られ、まったく姿を見せない太陽。

 

そんな世界が、ALOのとある個室に吊り下げられた、巨大なモニターに映し出されていた。

それを、まるで祈るかのように固唾を飲んで見守る妖精達。

 

コンコン……

「ん?」

 

そんな、一見異質な空間の、個室の扉が叩かれた。

その一瞬後に、ガチャリ、と扉を開けて、一人の妖精が入ってくる。

 

その妖精は、眼鏡をかけ、水色の髪をした、長身で細身な体格だった。

 

「……クリスハイト!」

 

その個室の中にいた妖精たちの一人、桃色の髪をした妖精、「リズ」が、その水色髪の妖精の名前を呼ぶ。

そしてそのまま続けてリズは、クリスハイトの遅刻に釘を刺した。

 

「もう……!遅い!」

「こ……!これでも、セーブポイントから超特急で飛んできたんだよ?」

 

クリスハイトは、あはは、と笑いつつ言い訳を繰り出す。

……が、そんなクリスハイトに向けられた、その場にいる妖精たちの目は、リズを含め、あからさまな険悪感に包まれていた。

 

でも、そうなるのも分かる。

なんてったって、彼らはキリトと親密な関係にある上、SAO 生還者(サバイバー)という折り紙付きの人達だ。

 

そんな彼らにとって、今回クリスハイトがしでかしたことは、そう簡単に許せるものではない。

 

「……何が起きてるの?」

 

するとその時、いきなり、その妖精たちの中の一人、「アスナ」が立ち上がり、クリスハイトに詰め寄る。

 

クリスハイトは、あっさりその気迫に気圧されて、後ずさった。

 

「な……何から何まで説明すると、時間がかかるかもしれないなぁ……」

「……」

「それに、どこから説明すればいいのやら……」

「誤魔化す気!?」

「いっ……いやその……!」

 

アスナにさらに気圧され、目を逸らしつつも、言葉が出てこないクリスハイト。

だが、そんなクリスハイトの助け舟は、意外な所から現れた。

 

「ならその役、私が変わります!」

 

そんな声が、クリスハイトやアスナの下から聞こえてくる。

その声の主は、その個室にある低いテーブルの上にいた、小人サイズの妖精だった。

その正体は、『カーディナル』の『メンタルヘルスカウンセリングプログラム試作1号』、コードネーム『ユイ』である。

 

「……」

「……」

 

クリスハイトはもちろん、周りの妖精たちも、黙りこんで肯定の意を示す。

クリスハイトに聞いても「埒が明かない」と、ユイを含め、皆が悟ったのだろう。

それを察したユイは、黙々と説明を始める。

 

「11月9日、死銃を名乗るプレーヤーが、ガンゲイルオンライン内でモニターに銃撃を行い…………」

 

身の毛がよだつ、恐ろしい事件の内容が、次々に小さな妖精の小さな口から出されていく。

 

ゲーム内からの銃撃と、それに伴って死に至る現実世界のプレイヤー。

そしてその原因が、全くと言っていいほど分からない現状。

 

周りの妖精たちは、その説明に聞き入り、事態の深刻さを感じ取っていた。

 

「これはこれは……!全く、驚いたな。短時間にそれだけの情報を集め、その結論を引き出すとは……!」

「……何が言いたいの?」

 

すっかり暗く、そして重くなってしまった雰囲気をぶち壊すかのように、クリスハイトがあっけらかんな声を出す。

それを鋭い目でアスナが咎めた。

 

そんな目に気づいたクリスハイトは、諦めたかのように顔を真剣な表情に戻す。

そして…

 

「……はぁ。分かった。正直に言おうか。この期に及んで誤魔化す気は無いよ」

「……!」

「今、このおチビさんがしてくれた説明は……」

 

 

「事実だよ。すべて」

 

 

「!」

「そして、その事件の調査のために、キリトくんを送り込んだのも、僕だ」

「!!」

 

その場の空気がピリッと張り詰める。

クリスハイトに向けられる目は、言うまでもなくさらなる険悪感に溢れた。

 

それを口に出すかのように、クラインがクリスハイトに食ってかかる。

 

「おい!クリスの旦那よ」

「……?」

「あんた……あんたが、キリトのやつのバイトの依頼主なんだってな」

「……そうだが」

「てことはてめぇ、その殺人事件の事を知っててキリトをあのゲームにコンバートさせたのか!」

「……!」

「あいつを……あいつを……!また危険なところに!送り込んだってのかよ!クリスハイト!」

 

大切な仲間を思う故か、激昂して問い詰めるクライン。

その主張は実に最もであり、また、クリスハイトを含めた周りの妖精たち皆の気持ちを代弁していた。

 

「……」

 

それを理解しているが故に、黙りこくるクリスハイト。

その場を沈黙が支配し、しん……と静まり返った時。

 

ガチャリ。

「……!?」

 

いきなり、その個室の扉が開かれる。

そして、

 

 

「ちょっと待った。クラインさん」

 

 

「な……!だ……!誰だあんた!?」

 

()()()()()()、黄土色の髪をした、大柄なケットシーが、部屋に入ってきた。

しかも、クラインのことを名指しで。

それに続いて、小さな青緑の髪をしたケットシーも入ってくる。

 

何を隠そう、店主とタスクだ。

それを見たクリスハイトは、息を呑んだ。

 

「な、なんで……?」

 

今ここで横槍を入れても、クリスハイト諸共袋叩きにされるのは目に見えているはずだ。

何故わざわざこんなタイミングで入ってきたのかが分からない。

 

クラインのなにかの言葉に苛立ちを覚え、耐えきれなくなって入ってきたようにも見えないし、そもそもそんなことをする人達ではない。

 

かと言って、クリスハイトを一緒になって袋叩きにするために入ってきたようにも見えない。

というよりも、そもそもそれは困るし、自らの首を絞めるようなことをさせるために、ここまで連れてきた訳では無い。

 

「どうして……!?」

 

従って、呆然とするクリスハイトと、当然の如く、誰だ、という目を二人に向ける妖精たち。

 

そんな視線などものともせず、今度は青緑の髪をした小さなケットシーが、声を上げた。

 

「はじめまして。皆さん。……いや、正確には、」

「……?」

 

 

「お久しぶり……ですかね」

 

 

そんな青緑髪のケットシー、もとい「タスク」のその声は、どこか自信に満ちている。

 

「お久しぶり……!?」

「……!」

 

疑問と驚きが入り交じった顔をする妖精たち。

 

そんな彼らは、タスクたちから感じる不思議な「自信」と「強さ」をひしひしと感じ、口を開くことができなかったのは、言うまでもなかった。




あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いします!
駆巡 艤宗です!

書き始めてから約半年。
まさかここまで多くの方に読んでいただけるとは思ってませんでした。
本当に感謝感激です!
__(⌒(_ ´-ω・)▄︻┻┳══━<感謝! バァン

感想も、ご指摘も、たくさんの方々からいただいておりますし、それらによってこの作品は成り立っております。
本当に、ありがとうございます。
また、よろしくお願いしますね?|ω・)

今年は……そうですね。(*´ω`*)
・推薦を貰えるような展開を作る!
・お気に入り1000人!
を目指そうと思います。

まだまだプロットは続いてますし、それを本文に書き起すのが楽しみでなりません。

それではもう一度、改めて。
皆様、本当にありがとうございます。
これからも、よろしくお願いします。

では。∠(・ω・´)ケイレーイ!

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