これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode42 二つ目の要件 〜The second requirement〜

「人()……ですか」

「そう。きっと君たちも知っている人達だよ」

 

そういって、メガネを光に当てて白一色にするクリスハイト。

タスクと店主の二人は、一瞬だけ、脳裏に不安がよぎった。

 

いくらクリスハイト、もとい菊岡の話とはいえ、今後に影響しない確証がある訳では無い。

そもそも、彼らに自分たちは()()()()()()()で接していいのか分からない。

キリトを支える、『裏世界プレイヤー』なのか、『単なる協力者』なのか。

場合によっては、今後に影響しかねないのだ。

 

そんな不安を募らせ、口を開けずにいると、クリスハイトから補助が入る。

 

「と、言うのもね?キリト君のプライバシー上、詳しいことはその場でしか言えないけど……とにかく、君たちには、『裏世界プレイヤー』として、彼らに会ってほしいんだ」

「『裏世界プレイヤー』として……ですか。それで?」

「そこで君たちには、「()()()()()()G()G()O()()()()()」を証明してほしいんだよ」

「なるほど」

 

タスクは言われたことが意外だったのかポカーンとしていたが、店主は脳内で事を瞬時に推測し、納得がいっていた。

 

まずクリスハイトは、「キリトくんのGGOでの安全」を証明してくれ、と言った。

それはつまり、その保証する相手が、キリトとなんらかの親密な関係にあることを意味している。

 

キリトやその周りの人間関係は、店主はSAO時代の仕事によってある程度は把握していた。

親族はともかく、その他に親密に関わっている人間は、彼の通っている学校の関係もあり、大多数は「SAO 生還者(サバイバー)」だ。

 

その彼らにとってキリトは、とても大事な戦友か、それともそれ以上の何か、である事は明白だ。

 

つまり、クリスハイトが会わせたい人達、つまり証明する相手とは、彼らSAO 生還者(サバイバー)の可能性が非常に高い。

 

自分達もそうだが、SAO 生還者(サバイバー)といのは、至極単純に、「殺される事」の怖さを身をもって知っている。

一般人が想像出来ない程、リアルに体感した、その怖さを。

 

そして今、GGOでも、その状況が起こっている。

いつ、どこから、どのようにして、自らの命を絶とうと攻撃に出てくるのか。

店主ですらまた怖くなるようなあの状況にだ。

 

そんな状況のあの世界に、クリスハイトがキリトをどうやって話をもちかけて送り込んだのかは知らないが、十中八九、無理矢理だろう。

つまり、クリスハイトはキリトをまたその「いつ殺されるのか分からない」不安な状況に、無理矢理陥れた訳だ。

 

そんなことをしでかしたクリスハイトが、ただでさえその怖さを知っていて、なおかつ親密な関係にある彼ら、SAO 生還者(サバイバー)に、真正面から反論できるとは到底思えないし、格好の口撃目標になるのは目に見えている。

 

そこで自分たちには、その時の悪く言えば「言い訳」の一部を、担って欲しいという訳だ。

「リアルでもGGOでも、キリトの身は安全だ」という、「言い訳」を。

 

いつもは現場にいる自分達が、キリトの安全を証明しなければいけない所からも、会わせたい人達がSAO 生還者(サバイバー)である裏づけができる。

 

結局、リアルのキリトはクリスハイトが、GGOでのキリトは自分達が、安全を証明できる唯一の人間なのだ。

 

「つまり……」

「ん?」

「クリスハイトさんの……いや、菊岡さんの、「助け舟」を出せと。そういう事ですね?」

「……!」

 

クリスハイトが、バツが悪そうに体を起こして目を閉じ、ため息をつく。

店主は、もちろんその行動を見逃さなかった。

 

「図星……ですね?」

「はぁ……察しの良すぎる男は嫌われるよ?」

「騙す上に、前の借りにつけ込む男の方が嫌われると思いますが」

「う……!」

「店主さん、そこまでにしないと、()()なクリスハイトさんがかわいそうですよ」

「そうだね、いくら()()()()とはいえ、かわいそうだね」

「もう……君たちって本当に怖いよ」

 

クリスハイトが顔を手でふせながらしみじみと呟く。

……が、店主は、そんなクリスハイトの落胆ぶりなど気にも止めず、淡々と、核心を突いた言葉を言い放った。

 

「これくらいしないと、()()()()()()()()()

「その通り」

 

「……!」

 

クリスハイトは、その言葉に驚き、はっと顔を上げる。

するとそこには、いつもと変わらない、彼らがいる。

 

そんな彼らのその姿から、クリスハイトは「強さ」を感じた。

 

異常なほどに強い、歴戦の兵士のような。




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