これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
バタン!
店主の店の扉が、勢いよく開けられる。
「やばい……!」
中から出てきたのは、黒髪ロングの
彼は今、ものすごく焦っていた。
「間に合わない……!ってか、エントリーってどこでするの!?」
だんだん、彼の焦っている理由である、BOBのエントリーし忘れどころか、それ以前の問題まで発覚し出す。
「ええと……ええと……!」
そんな彼が、焦りと混乱の渦に巻き込まれようとした時。
バタン!
「ちょっと!ねえ!」
「ひっ……!?」
いきなり、背後にある店主の店の扉がまた勢いよく開いた。
キリトは、まさか自分と同じことをする人間がいるとは思わず、後ずさるどころか飛び上がる。
しかも、その人間が声をかけてきたのだ。反射的に顔がそちらへ向く。
そんな事をしてまで声をかけてきたのは、シノンだった。
「ねえったら!」
「シ……シノンさん!?」
「あんた、私を置いてくつもり!?」
「あっ……!!」
キリトは、シノンのあまりの怒り様に、少し狼狽える。
それもそのはず、キリトはここまで案内してくれたシノンなど、焦りからか、今の今まで視界に入っていなかったからだ。
確かに、悪いことをしたのは自分だが、それ以上に事態が切迫しているのも事実である。
もしここでBOB参加を取り逃せば、何が起こるかわからない。
そんな思惑を、キリトはシノンに説明しようとする。
……だが、その必要はなかった。
「で、でも……!!」
「分かってる!分かってるわよ!BOBに出るんでしょ!?」
「えっ……!?」
キリトは、一瞬固まる。
なぜ、シノンがその事を知っているのか。シノンにそんな話をした覚えはない。
「どうしてそれを……!」
「あっ……!いや、その、店の中だと、聞こえちゃって……そっ……そんなことよりも!エントリーする場所、分かってんの!?」
「そ、それは……!!」
「だから……その……案内してあげる!」
「ええ!?いいんですか!?」
シノンが何かを隠すようにどんどん話を進める中、ひょんな事から救いの手飛んできた。
なんか上手く話をはぐらかされた気もするが、それはいいとして、キリトはそれに飛びつかざるを得ない。
だが、それと同時に疑問も浮かび上がってきた。
「……でも、何故ですか?」
「え……?」
「何故、そんな、お店を飛び出してきてまで、案内してくれようと……」
「そ、それは、その……」
キリトの素朴な疑問に、シノンがふいっと顔を逸らす。
不思議そうに顔を見ていたキリトは、次の瞬間。
そんなシノンが放った言葉に、言葉を失った。
「だって……私も、出るから……その、忘れてて……!」
「……!!??」
今、シノンが放った言葉。
キリトが聞いたその言葉には、シノンがBOBに関する色んな事を知っている事の証明であると同時に、もう一つの事を意味していた。
まずキリトは、シノンがキリトがBOBに出ることを知っている理由を理解した。
シノンだって、BOBに出るということは並大抵のプレイヤーではないはず。
そんな彼女なら、あの狭い店内でBOBの話をされたら、自然と聞き耳を立ててしまうだろう。
それに、お互いエントリーを忘れているときた。
もうここまで状況が揃えば、一緒に行動してもおかしくない。
それはもう、分かりきっているのだ。
では、そのもう一つの意味とはなんなのか。
それは、「これから
もちろんキリトは、前提として無駄な争いは好まない。
勝ち上がるために他人を蹴落とす事はあっても、なんの利益も生み出さない戦いはしないのだ。
だが、今キリトは、その「
当然の如く、悩みが生じる。
いくら死銃を捕まえるためとはいえ、ある意味、ものすごく助けてくれた、そしてまた今から助けてくれるシノンに、そんなことは出来ない。
偶然とは言え、シノンがあの店まで案内してくれなければ、キリトは彼らに会うことは出来なかったからだ。
……が、シノンはそんなキリトの思惑など意に介さずに、そそくさに走り出す。
「こっち!急がないと間に合わないわ!」
「はっ……はい!」
キリトは、そんな葛藤を抱えた複雑な気分のまま、シノンに引かれるがまま走り出した。
……だがそれは、そんなキリトを引っ張っているシノンとて、同じだった。
その葛藤の種、それは、「店主からの仕事」である。
でもそれは、また後の話だ。
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