これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「……さて!キリトさん。今から、あなたに合った武器を選ぶために、3つだけ、質問します。いいかな?」
シノンに連れられてやってきたこの店で、「彼」ことキリトは、早速、その店主と武器選びを始めた。
「3つ……ですか」
「そう!あ、でも、そんな細かく聞くわけじゃないよ?簡単な質問さ」
「は、はい。なら……」
「ふふ、ありがとう」
店主は、優しい笑顔で話しかけてくるから、キリトも自然と笑顔になる。
したがって、和やかな雰囲気の中、話は進んでいった。
「よしじゃあ、まずは1つ目。あなたのステータスを教えて?」
「ステータス……ですか。ぼ……私はコンバートなので、だいたい出来てます」
「ほほう……と言うと?」
「えっと……筋力優先で、次に素早さです」
「なるほどね。メインがSTR(筋力)で、サブがAGI(俊敏性)……と。ふむふむ。そうすると、中距離戦闘がいいかなぁ」
「中距離……ですか」
「そう。いわゆる「アサルトライフル」をメインに持つタイプだよ。えっとね……あ、あれさ。あんな感じの銃」
「へえ……!」
首を傾げたキリトを見た店主は、そう言ってとある方向へ指を指す。
キリトは、素直に店主の指を指した方向に振り向いた。
するとそこには、「89式5.56mm小銃」という札が横に置いてあるショーケースがあり、その上によく見るような「銃」が置いてあった。
「あれが……」
「そう、典型的な「アサルトライフル」。銃っていうと、普通の人はあんな感じのものをイメージするんじゃない?」
「は、はい、確かに……」
「ふふ、だよね。銃って案外難しいからね……あ、そうそう。ちなみに、あれは、リアルでは日本製だよ」
「え……!?」
「日本の、陸上自衛隊の正式装備さ」
「え、あれが……!てか、そんな銃まであるんですか……!?」
「あはは、すごいでしょ?」
キリトは、流石に驚く。
このゲームが銃のゲームということは知っていたが、まさかそんな日本の銃まで実装されているとは知らなかったからだ。
……いやむしろ、日本で銃が生産されていること自体に、驚いたのかもしれない。
「へえ……GGOって、色んな種類の銃が揃ってるんですね……」
「ふふ……ま、銃なんて無限にあるようなもんだからね。この店にあるのはほんの一部さ。GGOにはもっとあるし、リアルの世界にはまだまだあるよ」
「そう……なんですか」
キリトが素直に感嘆する。
店主は、そんなキリトを相変わらずの笑顔で見ながら、話を戻した。
「さてと……キリトさんのステータスは分かったから……」
「はい」
「じゃあ、2つ目の質問。……というか、お願いかな。次は、一回そこに立ってみてくれる?」
「え?」
「ああ、いや、普通に立ってくれるだけでいいよ。ぴったりな武器を選ぶには割と重要なんだ」
「は……はい。なら……」
そこまで言われれば、と、キリトは席から立ってその場に直立する。
すると店主は、そのキリトの姿をまじまじと見だした。
机に肘をつき、ぼーっと眺めるような目をしつつ、キリトの体の至る所を見ていく。
「あっ……あの……」
「………」
そんな店主の視線に段々耐えられなくなりそうになっていく。
いくら彼とは言え、まじまじと見られるのは恥ずかしいのだ。
「………」
「………」
「えっと……!」
「………」
「う、うう……!」
「………」
そしてついにキリトが耐えられなくなりそうになった時。
「……よし、ありがとう!座って?」
「はっ……!はぁぁ〜」
やっと店主が、キリトを見るのをやめ、座るのを許可してくれた。
キリトは大きく息を吐き、さっきの椅子にすごすごと座り直す。
そんなキリトを見た店主が、優しい目で声をかけた。
「あはは、ごめんね、恥ずかしいよね。大丈夫、もうしないからさ」
「はい……」
「ふふ、ごめんってば」
カウンターに座り直し、俯くキリトを見て、再度謝る店主。
キリトは未だ俯いたままだったが……
「……でもね、おかげでよく分かったよ」
「え?何がです?」
「何って……君の事さ」
「……!?」
キリトは、店主の言葉を聞いて、何故かふっと店主に目を向ける。
そして次の瞬間、店主から、驚くべき言葉が飛んできた。
「キリトさんさ、さっきコンバートっていったけど……」
「……?」
「前のゲームってさ、ファンタジー系のゲームだよね?」
「な……!?」
「もっといえば、装備は剣だね?背中に背負うタイプのものだ。違うかい?」
キリトは呆気に取られる。
確かにコンバートの話をしたのは事実だが、それ以上の事は話していない。
ファンタジー系のゲームにいた事も、武器が背中に背負うタイプの剣である事もだ。
それなのに、この店主は、キリトをまじまじと見ただけでいとも簡単に見破った。
キリトには当然、疑問が生まれる。
「な、なぜそれを……!?」
「なに、簡単な事さ。君の視線や姿勢の癖から見抜いたにすぎないよ」
「姿勢……!?でも一体どうやって……」
「う〜ん、『長年の勘』って奴かな」
「か……勘……ですか」
「そう。……でもね、僕が分かったのは、これだけじゃないんだ」
「というと……?」
「僕はね、何でも分かる……というよりは、知っているんだよ。キリトさん……いや、」
「?」
「キリト
「……!!」
キリトはさっと店主に警戒の目を向ける。
店主から、普通じゃありえないような異様な雰囲気を感じ取ったからだ。
今、店主は「知っている」と言った。
その証拠に、今まで女性を装ってきたのを簡単に見破り、わざとらしく「さん」から「君」へ言い直している。
もちろんキリトは、店主に対して問い詰めた。
「どういう事ですか?店主さん。何を知っているんですか?」
「どういう事って……そのままだよ。僕はあなたを知っている。あなたが何故ここに来たのか。誰に送り込まれたのか。そして今から何をしようとしているのか。そしてその協力者として、」
「……!」
「
そう言って店主は、キリトをじっ……と見据える。
キリトはその視線に、キッと睨み返した。
その目には、あからさまな警戒心が宿っている。
そして店主は、満を持したように、ゆっくりと口を開いた。
「さて、キリト君。最後の、3つ目の質問だ。君の探している人の名前。それは、」
「……!」
「『ビッグ・ボス』だろう?違うかい?」
「……!!」
その時の店主の言葉にキリトは、敵対心以外の何かを感じ取った。
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