これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
「SAO
「……!!」
店主の口から出てきた、驚きの言葉。
あまりの驚きに、シノンは固まっていた。
まさかこの2人が、あの事件の被害者だったとは思ってもみなかったからだ。
「……はは、そりゃあ驚くよね。あの事件の経験者が、こんなゲームの中にいるなんて、普通思わないよね……」
「そ、そりゃあ……。でも……何故?」
「ん?」
「何故、そんな経験をしてまで……」
「……」
「……?」
いきなり静まり返る店主。そんな店主の反応にシノンはポカンとする。
店主は、そんなシノンを横目で見つつ、話を続けた。
「……それはね、結構難しい話なんだ。僕らは、ただこのゲームを楽しむためにやってるんじゃないんだけど……」
「……」
「ま、そんなことぐらい分かるよね、ごめんね。……ええと、話を戻そうか。その事についても、今から説明するから」
「……分かった」
シノンは一旦自分の中に渦巻く疑問にケリをつける。
確かに、店主らが何故そんな経験をしてまでこのゲームをやるのかは気になる。その時点で、少し自分と重なっているからだ。
だが、そうなった経緯から聞いても、何ら問題はないだろう。そう考えた。
店主は、そんなシノンの気の移り変わりを見た後、話し出す。
シノンは、その言葉に今度こそ、耳を傾けた。
「まずは……そうだな、SAOがどんな所だったのかについて話そうか」
「……!」
「はは、そんな身構えなくていいよ。で、SAOの中はね……」
そして店主は、すらすらと語り出した。
その世界の武器やキャラクター、生活。
その話はシノンに、綺麗な世界を思わせた。
「……GGOとは全然違うわね」
「そりゃそうさ、どっちかって言うとSAOは、ファンタジーだからね」
「……それで?そんな綺麗な世界と店主さんたちの過去、なんの繋がりがあるの?」
「まあまあ、そう先を急がずにさ、ゆっくり話そうよ。それでね……」
今度は店主は、SAOのシステムについて語り出した。
階層の話やらお店での取引の話やら……
もちろんシノンは、その話を一字一句聞き逃さないように聞いていた。
そしてその中で、シノンは一つだけ、疑問を覚えたワードがあった。
SAOシステムの一つ、「ギルド」である。
「あ……!ちょっと待って!」
「ん?なんだい?」
淡々と話す店主を制して、シノンが質問する。
「その、『ギルド』っていうシステム……もう少し解説してもらえないかしら」
「……へえ」
「……?何か変な事言った?私」
「ふふっ……いやあ、流石だなと。これで無駄な説明の手間が省けたよ。なんの説明もなしにギルドに着目するなんて……シノンさん、一体何者?」
「いっ……いやあ……その……」
少し悪戯な目をしてシノンを覗き込む店主。
シノンはそんな店主の目から逃れようと、ふいっと顔を背けた。
「はは、冗談だよ。さて、戻ろうか」
「……」
「え……と、そうそう、ギルドだったね。……そうだよ、その通りなんだ。僕らの過去は、このギルドが深く関わっているんだよ」
「……!」
一つ話が進んだなと、シノンが感じる。
同時に、湧き上がる高揚も感じた。
店主は、そんなシノンを見て、微笑みながら話し続ける。
「まずギルドとは、同じ意志を持った人たちが集まった集団。これは分かるよね?」
「うん」
「という事は、野蛮な考えを持った人たちのギルドや、どうしても相反した考えを持って対立してしまうギルド達が存在してしまうのは、分かるかな?」
「……なんとなく」
「そうなると、どんなことが起こり得るか、分かるかい?」
「う〜ん……、争い……とか?」
「そう!その通り。でも、SAOには平和に暮らして攻略を待っている俗に言う一般市民プレイヤーもいて、そんな人達を巻き込む訳には行かない。だって、たとえゲームとはいえ命がかかってるからね。それに、SAOにはそんな争いを止めようとするギルドもあったんだ。あんまり大っぴらに争いはできなかったんだよ。……じゃあ、どうすればいいと思う?」
「……?」
店主は一旦話を切って、シノンに質問を投げかける。
シノンはその質問の答えが分からず、うーんと唸る。
だが、そんなシノンは、考え出してしばらくしたその時、不意に、とあることを思い出した。
「あっ……!」
「ん?分かったかな?」
「う〜ん、もしかしてだけど……」
「いいよ、言ってごらん?」
「もしかして……裏工作?」
「正解!そうなんだ。裏で工作して、内部から破壊したり、リーダーだけを倒して崩壊させたりして、敵対しているギルドを潰そうとしたんだ」
「へえ……そんな事が」
「あったんだよ」
シノンの中で、また疑問がするすると解けていく。
だが店主は、そんなシノンを見つめるだけで、何も話し出さなかった。
「……」
「……」
「……え?」
「……ん?分からない?」
「なにが……って、あっ!!!」
シノンは、ばっと店主の方を見る。
店主は、正解!と言わんばかりの笑顔だった。
「もしかして、その工作するプレイヤーが……!」
「そう、僕らだったんだ」
「そういう事ね……」
「ふふ、驚いたかい?」
「ええ……正直言うと、ものすごくね」
「でも、シノンさんもこの前やったじゃない?それに似たこと」
「ま、まあ……その事を思い出して答えれたんだけど……」
「あ、やっぱり?……ふふ、経験させておいてよかったよ」
そこまで話して、店主は話を切る。
そう、先程シノンがふと思い出し、店主がシノンに経験させておいて良かったと言った出来事。
それは、ビッグ・ボスの正体を知ると同時に遂行した、組織
結果として
そしてその記憶は、今から店主が言わんとしている事を容易に想像させた。
あの時のビッグ・ボスのステルス技術や、PKした数。
武器が剣と銃で違うとはいえ、あのような事を彼らはSAOの中で、命を懸けてやっていたのだ。
だが、それ自体が悪い事ではない。彼らも彼らで、「自分のギルド」と言う、守りたいものがあったのだ。
もちろん、人の命を奪うのは簡単にやっては行けない事だ。だが、そうでもしなければ守れないものもある。
シノンにはそれが、すごく良くわかった。
そしてその答え合わせをするように、店主はポツポツと話し出す。
彼らの、シノンに似た、過去を。
「……僕らもね、とあるギルドに入ってたんだ。それも、とっても大きな……ね」
「……」
「そのギルドを潰そうとする人達を、影で何人も追い返したさ。捕まえたり……脅したり……」
「殺したり?」
「……」
「……そう、だったのね?」
「はは、シノンさんは鋭いな」
「……ごめんなさい」
「いや、いいんだ、間違ってはないよ。そう……なんだよね。最初はギルドの影にいて、リーダーの指示で相手を捕まえに行ったりだったんだけど、段々勢力が増すに連れ、僕らもそうせざるを得なくなったんだ」
「……」
「あくまで防衛のため。でも、殺らねばならない時もあったのさ」
「護るべき物のために……ね」
「そう……。ね?似てるでしょ」
シノンが呟いて、店主が答える。
そのシノンの呟きは、自分の中に響き渡った。
「護るべきものの為に、誰かを殺す」
この言葉が。
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