これは【GGO】であって、【MGS】ではない。 作:駆巡 艤宗
ここから、だんだんとGGO本編へと話が入っていきます。
どうなるのかは…お楽しみです。
「こんにちは、シノンさん?」
「え……ああ、こんにちは」
一方、取り残されたシノンは、スナイパーライフルの弾を見ていた時に、いきなり店主に呼びかけられていた。
店主はやはりいつもの笑顔だが、シノンはその笑顔のどこかに違和感を感じる。
「……覚悟は、できていたみたいだね」
「……!」
「こちらへ。話そうか」
その違和感の答えがすぐに出てきて、シノンは少し慌てる。
だが、やはりその事か、と、納得する自分も確かにいた。
そして、そんな事を考えつつ案内されたあのカウンターに座る。
あの時、タスクと知り合う前に、店主に眼帯マスクが……と、相談を持ちかけた場所だ。
店主はあの時と同じく、迂回して机の向こう側に行き、シノンと向き合った。
ただし、シノンは座っているのに対し、店主は立っている。
よって店主は、腰を折ってカウンターに肘をつき、シノンと目線を合わせた。
「え……!?」
あまりの近さに、シノンが少し驚く。
すると店主は、すぐに腰を戻して立った。
シノンは、何がしたかったのかと疑問に思う。
すると店主は、にっこりと笑ってその疑問がシノンの口から質問として飛び出す前に答えた。
「あっはは、いやぁ、すまないね。君の目を見てたのさ。この世界はゲームだけど、精神が一番反映される世界でもある。精神が一番体に出てくる部位は、目なんだよ。だから、ぐいっと覗きこませて貰ったの」
「そ……そうですか」
「うん!シノンさん、君の覚悟はよく分かったよ。同時に……決意も」
「決意……?」
「そう、決意。シノンさんってさ、リアルで何か抱えてるでしょ?」
ガタッ!
「……!!」
シノンがいきなり立ち上がる。
店主は姿勢はそのままに、視線だけ驚きと焦りが混じったシノンの顔に当てていた。
シノンが、後ずさりながら店主を警戒の目で見る。
だが店主は、そんな視線など動じずに話を続けた。
「はは、そんな目で見ないでよ。長年の感って奴さ。別に、リアルを特定したり、探りを入れたりは一切してないよ。ただ、そうなんじゃないかって。違うかい?」
「……!」
シノンは、黙って俯く。
店主はそんなシノンを見て、席に座るように促した。
ストン、と、力なくシノンが座る。
店主はまた、机を迂回して今度はシノンの隣に座った。
そして、ふぅとため息をつき、ゆっくりと話し出した。
「実はねシノンさん。俺と彼、ビッグ・ボスは、とある過去の出来事を抱えて生きてるんだ」
「……!」
「過去を抱えて生きている」
このフレーズが、シノンの中に渦巻くあの出来事と一致していく。
あの時、手に持っていた、いや、持ってしまったもの。
あの時、見てしまったあの赤色。
それに共通するものを、彼等も持っているのか。
だとしたら、彼等はどのようにして今を生きているのか。
過去に囚われて、そこから抜け出せずにいる自分に、希望を与えてはくれないか。
「あっあの!」
「ん?」
「その話……もっと詳しく……聞かせてくれない!?」
「……ふふ、言うと思った」
「じゃあ……!」
「でもね。シノンさん」
「……?」
すると店主は、真っ直ぐにシノンの目を見つめ、淡々と、話の質はもちろんのこと、声の低さすらガラリと変えて、ぐっと見つめた。
そしてそのまま、ゆっくりと続けた。
「この話は、簡単に話していいものじゃないんだ。だから今はまだ言えない。ごめんね、シノンさん」
「そんな……!!」
シノンは落胆し、上がりかけていた顔がまた下を向く。
店主はそんなシノンを見て、ポツリと呟いた。
「でも……」
「……?」
「でも、シノンさんの目からするに、おそらく僕らとシノンさんの過去は共通しているものがあると思う」
「共通……?」
「……そう。僕らとあなた、シノンさんの、それぞれ違った辛い過去に共通して存在する一つの
「共通……しているもの……」
「トラウマを思い出させちゃうかもしれない。でも、よく考えてみて。僕の目を見てでもいい」
「……!」
そう言って、店主はシノンに体も向けて、じっと見つめる。
そこには、もうあの優しい店主はいなかった。
変わりにいたのは、必死になって顔の歪みに耐えている、店主の苦痛の表情。
シノンは、その目に、その顔に、過去の自分が重なった。
そしてはっと、その
「人の……命?」
「その通り」
シノンの顔からすーっと血の気が引き、気づけば涙があふれてくる。
そんなシノンが、静かに店主の胸に飛び込んできた。
店主は、そんなシノンを胸の中に受け入れつつ、視線を逸らさない。
そして静かに、店の扉の前にある看板を、左手のウィンドウを操作して「open」から「closed」に変えた。
「辛いよね、分かるよ。僕も分かる。彼も分かるよ。だから、打ち明けてごらん?」
そう言って、店主はシノンの背中をさすり、シノンはその優しさに大人しく縋る。
そして、シノンは話した。
あの時見た、あの光景を。
あの時自分が、起こしてしまった、あの光景を。
そのまま。
その話を聞いている時の店主の目は、シノンをいたわるようなものではなく、過去の自分を見るかのような、虚ろな目だった。
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