これは【GGO】であって、【MGS】ではない。   作:駆巡 艤宗

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Episode185 対極 〜The opposite〜

カウントダウンの0と同時に視界が変わる。

 

「……なるほど」

「一旦低く」

 

レンの一言で一同がしゃがむ。

 

ついに始まったSJ2。

レンはもちろんだが、フカも緊張の面持ちだ。

 

「まずはスキャンを待つ。変に動いても……だし」

「了解」

「了解しました」

「OK」

 

リーダーであるレンの声に、各々返事が返ってくる。

 

レン達が転送されたのは、外国にありがちな平屋建ての住宅街。

道は広く、建物も低いが、ひとまず初動で狙撃される心配は無さそうだ。

 

「レン……()が見える」

()……?」

 

すると、スコープを覗いていたシノンがレンを呼んだ。

レンも単眼鏡を取り出し同じ方向を見やる。

 

すると。

 

「あれが境界線……ってことか」

「おそらくは」

 

黒く巨大な壁が、地形を真っ二つに分断するかのように真っ直ぐそびえたつ様子が確認できた。

 

想像に難くない、あれがマップボーダー……いうなれば「()()()」だ。

 

「おーおー、なんか昔こんな漫画あったよね、でっかい人間が人食べるやつ」

「……また懐かしい話を」

 

フカの頓珍漢な話を聞き流しつつ、レンは単眼鏡から目を外す。

そしておもむろにサテライト・スキャン端末を取り出すと。

 

「今は……ここか」

 

マップを展開し光点を指さした。

 

正方形の斜め上、いわゆる端っこ。

方角でいえば北西の位置。

 

「ふむ……そういうことですか」

「……タスクさん」

 

すると、展開した地図を眺めつつ、タスクがふむふむと見入った。

 

「これ多分、シードを四隅に散らしてますね」

「たしかに……そんな気がする」

「え……? どういうこと?」

 

納得するようにマップを見る二人を尻目に、フカはイマイチ理解ができない様子。

 

「まてまて、シードって3組だろ?」

「……フカちゃん、ちょっと違う」

 

すると、ミーシャルがいつのまにフカの後ろに。

そしてそのまま真横にストンと座ると、顔を覗き込んで話し出した。

 

「シード、は、3位までの入賞チーム……の、()()()()なんだよ」

()()()()……」

 

フカの難しそうな顔に、ふふふと笑うミーシャル。

 

「そう。だからそのチームのメンバーが別チームに別れたら、それぞれシードになる」

「……あぁ」

「レンちゃんの元 チームメイトはMさん。そのMさんは、今回別チーム……でしょ」

「そゆこと……」

 

ゆっくりとした話し方に、なるほど、と納得した様子のフカ。

 

簡単な話、今回シード権を有するのは全部で4チーム。

前回入賞したチームのうち、レンとMさんが別れたことにより、シード権が2人の所属するチームそれぞれに与えられ、結果4つに増えた、ということだ。

 

すると、正方形の角の数とシード権を有するチームの数が一致する。

ただの推測ではあるものの、十中八九そうだろう。

 

 

 

「次のスキャンまではこのエリアから動かない。一旦そこの家の隙間に入ろう」

 

 

 

「了解」

「OK」

「よしきた!」

 

レン達はようやく、動き出した。

 

 

13時10分。

 

……の、少し前。

SJ2が始まって、ちょうど10分経過の直前だ。

 

それ即ち。

 

「そろそろですね、1回目」

「お願い、ピトさんの近くに……!!」

 

サテライト・スキャン 第1回目の時間までもうすぐだ。

 

「いやいや……どうせマップの隅のどこかっしょ? 言うて大差ないって」

「フカちゃん、3分の1でど真ん中突っ切らなきゃいけなくなるんだよ」

「え? あっ、そっか……そうだわ……」

 

祈るレンの横で、漫才に似た何かを披露するフカとミーシャル。

 

それも仕方のない話。

 

二人は遠距離支援専門で、この状況でやることがないのだ。

近距離を警戒するも何も、最強も最強が周りにいる。

 

加えて中・長距離はシノンがいるし、マジでほんとにやることが皆無なのである。

 

 

 

「来た!!」

「おっ」

 

 

 

するとレンが思わず声を上げる。

スキャンが始まったようだ。

 

今回のスキャンは、真北から。

ゆっくり舐めるように進むスキャンに、マップ上に光点が次々に出現しだした。

 

「PM4……PM4……」

 

変な呪文のように唱えつつ、片っ端から光点を触るレン。

手で触れなきゃ名前が出ない設計なのがなんとも意地悪。

 

そんな様子を見守るタスク。

彼もまた、レンの手が届かない所の光点を次々に触れていく。

 

そして。

 

「うっっっわ……!?」

「レンー?」

 

まるで最悪、と言わんばかりのレンの声に、フカが思わず声をかけた。

続けてレンをふと見ると、それはそれは典型的な苦虫を噛み潰したような顔。

 

「……まさか」

「引いちゃったんだね……」

 

怪訝な顔になったフカ。

その隣で息を着くミーシャル。

 

そんな2人と、周りを警戒し続けるシノンとキリトに、レンは一言。

 

 

 

 

 

 

 

「PM4、南東の角」

 

 

 

 

 

 

対極も対極。

 

最も遠く、最も都合の悪い位置に、ピトがいた。




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